Re:異世界迷宮で奴隷ハーレムを   作:載せられた人

3 / 51

  これは“ミチオ・カガ”が取り戻す物語



第03話 ロクサーヌ

 

 俺はゴクッと息をのんだ。

 

 

 

「その……なんだ」

 

 

 

 ここでなんとかしてロクサーヌに会わなければ、買わなければ始まらない。

 

 とはいえ、飛び付くのも拙い気がする。

 

 

 

「ど、奴隷を買う……冒険者は多いのか?」

 

 かなり前のめりになってしまったが、なんとか話を繋げた。

 

 

 

 アランはしばし眼を細めると、

 

「それはもちろん(おお)ございます」

 

 と答えてくれた。

 

 

 

 そう、そうだったよな。

 

 俺は思わず手をテーブルの上で組んでいた。

 

 

 

 俺は自分の心臓の鼓動をうるさいほどに感じていた。

 

 

 

「そうなのか? いや……俺はまだ師匠の所から独り立ちしたばかりでな」

 

 ソファーに深く座りなおし、首を振りながら考えていた設定を持ち出す。

 

「こことは違う山奥での修行だった故、いろいろと疎いこともある」

 

 

 

 さようでざいますか、とアランは頷いた。

 

「確かに、まだお若いようにお見受けいたします」

 

 ふむ、としばし思案すると、

 

「では、この町近くの迷宮には行かれないのでしょうか?」

 

 と聞いてきた。

 

 

 

「まだ行ったことはないが、それも悪くないな」

 

「それならば、いずれご説明させてくださいませ」

 

「そうか。ではまたすぐ(・・)に来よう」

 

 

 

 なんとかアランの関心を引き出すことができた……のか?

 

 確かロクサーヌの買取条件は…

 

 

 

 ふと見上げるとアランの口元が緩んでいるのがわかった。

 

「本日お取り引きさせていただきましたお代を用意してまいります」

 

 奴隷商人はいったん部屋の外に出て、お金を持って戻ってくる。

 

 

 

「お待たせいたしました。こちらがビッカー様の半金、1万5000ナールになります」

 

 そう言ってお盆から巾着袋を一つビッカーに差し出した。

 

「確かに受け取りました」

 

 

 中身の確認すらしていないがいいのか?

 

 

「そしてこちらがミチオ様の……今後のお取り引きに期待する分も含め、1万6500ナールを支払わせていただきます」

 

 続いて、奴隷商人はお金の入ったもう一つの巾着袋を俺に差し出す。

 

 

 

 思わず、ボーナススキルの 買取価格10%上昇 を付けてないか確認しそうになった。

 

 

 

「確かに、受け取った」

 

 それでは次に参りましょうか?、とビッカーが帽子を被りながら立ち上がる。

 

 

 

「それでは、またのお越しをお待ちしております。ミチオ様」

 

 

 

 しっかりと名前を覚えてもらえたようだ。

 

 これで一歩前進か?

 

 

 

 まあいいや。迷宮のことも聞きたいし、すぐ(・・)にまた来よう。

 

 

 

 俺と商人が奴隷商の館を出る。

 

 商人が荷馬車をUターンさせた後、俺も荷馬車に乗り込んだ。

 

 

 

 先ほどの道に戻った後、大通りを中心部に向かって進む。

 

「おお。これがベイルの(いち)か」

 

 広い道の両側に、屋台が設けられていた。

 

「ミチオ様も、あとで見ていかれると良いでしょう」

 

 食料品や衣料品などが置かれ、人が集まって喧騒に包まれている。

 

「周囲の町からも出稼ぎが来ていますので、大概のモノはここで揃ってしまいますよ」

 

「そうだな」

 

 前回(チュート・リアル)の後半は、ほとんどベイルの町には来なかったら懐かしさを覚えていた。

 

 

 

「見えてきましたよ。ミチオ様」

 

 町の中心だろうか。

 

 道が広場を伴ったロータリーになっており、左手前に、鐘楼を備えた一際大きい建物がある。

 

「こちらが騎士団の詰め所になっております」

 

 

 

 荷馬車がその建物の前で停まった。

 

 

 ベイルの町 騎士団詰め所 

 

 

 入り口の扉のノッカーをゴンゴン鳴らすと、中から騎士が出てきてビッカーとなにやら話している。

 

<男・22歳>まだまだ新米

 騎士:Lv4

 

 そうそう、こいつだった。まだ新米か。

 

「ミチオ様、盗賊のインテリジェンスカードをお出しください」

 

「うむ」

 

 リュックサックを下ろし、中からカードを取り出して騎士に渡した。

 

 二十枚もあるからな、両手に持って渡したぞ。

 

 

「そ、それでは、インテリジェンスカードを確認させてもらう」

 

 黙って左手を差し出した。

 

滔々(とうとう)流るる(たま)の意思、脈々息づく知の調べ、インテリジェンスカード、オープン」

 

 左手の甲からインテリジェンスカードが出てきた。

 

 

 騎士が黙って覗き込んでいる。

 

 覗き込んでいる。

 

 ………

 

 おいおい、その沈黙が怖いぞ。

 

 

「……苗字持ち? ……いや。自由民のかたでしたか。結構です。ここでお待ちください」

 

 

 まったく焦らせやがって。

 

 騎士は詰め所に入っていった。

 

 

 

 ついでに、と俺は自分のインテリジェンスカードを見る。

 

 

 加賀 道夫<男・17歳>探索者・自由民 

 

 俺には漢字とアラビア数字で書いてあるように見えるが、他人にはそうでないらしい。

 

 

 

 カードの大半を占める逆さの系統樹のような模様。

 

 その枝の各所にある実がかなり黒くなっている。

 

 

 

 前回(チュート・リアル)最期は、対外的には 冒険者・男爵 だったんだが、無事?1stジョブが表示されているようだ。

 

 先端部分を軽く押して、手の甲に引っ込めた。

 

 

 

「盗賊のカードは中で確認を行っております。すぐに結果が分かりましょう」

 

 なかのギルド神殿で確認しているのだろう。

 

 やがて、詰め所の中から一人の女性が出てきた。

 

 

 

「盗賊を倒したのはそのほうだな」

 

 引き締まった体躯をもつキリッとした美人だ。

 

 亜麻色の髪を後ろでまとめていた。なお胸は控えめだった。

 

 ラディア・マキシナント・ゴッゼル<女・28歳>独神、お婿さん募集中

 騎士:Lv27

 装備:マジカルアーマー 加速のブーツ

 

 

 ぷっ、と吹き出しそうになるのを(こら)えた。

 

 おい、看破! だからこの説明はなんだよ! 独神とかセンス良すぎだろう。

 

 

「?? あれはこの町のスラムを根拠(ねじろ)としている盗賊団の一味だ。現在、壊滅作戦を展開中ゆえ一部が逃げていたのだろう」

 

 詰め所の中から、先ほどのLv4が走り出てくる。

 

「そのほうが倒した中の二人に懸賞金がかけられているが、他の者にはまだかかっていない」

 

 美人の騎士に白い袋を渡した。

 

「これがその賞金だ。受け取るがよい」

 

 そう言って、美人の騎士はその袋を俺に投げてよこす。

 

「ほい」

 

 あわてず片手で受け取った。

 

「受け取ったら、さっさと立ち去るがよいぞ」

 

 美人騎士は、そう言い残してすぐに詰め所の中に戻っていった。

 

 

 

 お貴族様とはいえ、自由民への扱いがひどいね~

 

「ありがとうございます」

 

 ビッカーはそう言って荷馬車に戻る。

 

 まぁいい、わかっていたさ。

 

 たとえ、村を一つ盗賊団から守っても、美人な騎士とは仲良くなれない。

 

 美女と仲よくできるのは『イケメン限定』であるということは。

 

 前回(チュート・リアル)のロクサーヌ達からも、イケメンとはいわれたことないしな!!

 

 …ブサイクとまでいわれてないのが救いだが…

 

 

 

「最後は武器屋と防具屋か?」

 

「さようでございます」

 

 ビッカーはそのまま荷馬車を進ませた。

 

 

 

 ロータリーを渡ってしばらく行くと、剣を置いてある店が目に入る。

 

 ここが武器屋か。

 

 店の真ん中に立派な大剣が飾ってあった。

 

 スキルが三つある。が、知力二倍 火炎剣 浄化 と残念な構成だったが。

 

 

 

 また、防具屋が不在だったため、防具もまとめて買ってもらった。

 

 銅の剣 19本と、鉄の剣 1本        計  5750⇒7475ナール

 

 鉄の鎧 1個と、皮の鎧 2個 皮の靴 7個 計   2560⇒3328ナール 合計10803ナール

 

 で売った。

 

 騎士の態度がムカついたので、つい買取価格30%上昇をつけてしまった。

 

 恨むなら騎士団を恨め!

 

 

 

 これで、ベイルの町でやるべきすべての用事は済ませた。

 

「いろいろと世話になった、ビッカー」

 

 今回は村の取り分が無かったのだから。

 

「こちらこそ村を救っていただき感謝の言葉もございません。私はこの町で仕入れを行いますので、これでおいとまさせていただきます。ミチオ様もどうかお元気で」

 

 手を振って見送った。

 

 

 

 

 

 その後、俺は建物の陰に入った。

 

 誰も見ていないことを確認して、渡された礼金と懸賞金の小袋を開けた。

 

  村の礼金   17万ナール

 

  スライムスターチ代 400ナール

 

  奴隷の半額   1万6500ナール

 

  盗賊の懸賞金 16万5000ナール

 

 武器屋の売り上げを合計すると、36万2702ナール

 

 

 

 って、村の礼金が前回金貨15枚だったのに、2万ナール増えてるよ!

 

 おっさん(ティリヒの旦那)たち怪我人を助けた分、色を付けてくれたようだ。

 

 

 だいたい1ナール=20円くらいの価値ぐらいだから、ざっと725万円ってところか。

 

 とはいえ“これだけ”では全然ロクサーヌの値段(60万ナール)には届かないな。

 

 改めて金貨を33枚と銀貨127枚をアイテムボックスに入れていく。

 

 探索者がLv123だったので2スタックに分けて収めて、残りの4枚と銅貨は小袋に入れてリュックにしまう。

 

 

 ついでに、白金貨が2スタック分入っていることも再確認する。

 

 

 市が開かれている大通りに戻る。

 

 道は結構なにぎわいを見せていた。

 

 

 

「……よし、行くか!」

 

 市を抜け、奴隷商の館へ向かう。

 

 自分に気合を入れながら、アランの奴隷商会まで歩いていく。

 

 

 ベイルの町 アランの商館 

 

 

到着すると、扉のノッカーをゴンゴン鳴らす。

 

「あ、先ほどの」

 

 前と同じ、見習いらしい若い男が顔を出してきた。

 

「主人のアラン殿にお会いしたい」

 

「それでは、中に入って少々お待ちいただけますか」

 

 

 

 館の中に通され、入り口横の部屋に案内された。

 

 

 

 懐かしい…そう、この部屋だ。

 

 

 ここでロクサーヌと出会って、前回(チュート・リアル)(すべ)てが廻りだした。

 

 

 喜びも、楽しみも、怒りも、苦しみも、…俺の死すら。

 

 

 

 部屋は前回(チュート・リアル)の記憶通り、絨毯に、高そうな絵、花瓶に花、そして高級なイスとテーブルが置かれていた。

 

 そうだ。いかにも上客のための待合室、という感じだった。

 

 

 

「ミチオ様、お待ち申し上げておりました」

 

 

 

 奴隷商人──アランはすぐにやって来た。

 

 前回を懐かしんでいて、まだイスに近付いてすらいなかった。

 

 

 

「ああ」

 

「それでは、そちらへどうぞ」

 

 アランの勧めで椅子に座る。

 

「そうそう、実は先ほど売った奴隷のことだが、あの男は盗賊のバンダナを盗んだ。盗賊にツテがあるのかもしれん」

 

「さようでざいましたか。注意させていただきます」

 

 

 

 その時、背後からノックの音(・・・・・)が響いた。

 

 

 

 全力で気付かない振りをよそおう。

 

 心臓の鼓動がバクバクいっているのがわかる。

 

 

 

「…さて、そういえば先ほど迷宮があると言っていたが、場所はどこに?」

 

 

 

 カチャっと扉の開く音がして、靴のたてる音がコツコツ(・・・・)と響いた。

 

 

 

「この町の西側、森に入ってすぐのところでございます。迷宮は二日前に…」

 

 

 

 カチャンと茶器の掏れる音がして、カップが差し出された。

 

 

 

「ああ、ありがとう…」

 

 

 

 さも、今気付いたように右を向いて手の持ち主に礼を言い顔を向ける。

 

 

 

 ああぁぁぁ、ロクサーヌだぁぁぁ!!!

 

 

 

 どうぞ、と、はにかみながら微笑んでいる。

 

 

 

 前回(チュート・リアル)の最後と同じ(・・)メイド服を着て…

 

 

 

 お盆を立てる仕草で、首輪の鎖が、チリッと音を立てた。

 

 

 

 血塗れ(・・・)じゃない! 瞳孔も開ききって(・・・・・)ない! 美しくて愛しい!

 

 

 

 そして、その笑顔の頬を一筋の涙が零れ落ちた。

 

 

 

「やっと会えたっ! って、あ、あれっ!?」

 

 

 

 まさか、前回(チュート・リアル)のことを覚えているのか?

 

 

 

「す、すみません。なぜかとっても懐かしくて愛おしい感じ(匂い)がして…」

 

 

 

 覚えてない? それとも、覚えてる?

 

 

 

「へ、変な感じ(臭い)じゃないか?」

 

 

 

「いえ、とても安心するいい感じ(匂い)です」

 

 

 

 覚えてないっぽいけど、悪い印象は持たれなかった…のか?

 

 

 

「そう、なら良かった」

 

 すると、ロクサーヌは華やかに微笑んだ。

 

 

 

 ボーーツとなりながら、ホーーッと心の中で溜息を吐いた。

 

 

 

 そんな会話をしている俺たちを、アランは眼を細めて見ていた。

 

(ほぅ、あのように積極的なロクサーヌは初めて見ましたね。これなら…)

 

 

 

「では、失礼いたしました」

 

 

 

 そう言ってロクサーヌは頭を下げてから出ていく。

 

 

 

「どうぞ、お飲みください」

 

「……悪いな」

 

 

 

 いまさらだが。

 

 アラン商人に勧められてカップを手に取る。 俺は震える手でカップを持つと一口含んだ。

 

 さっぱり味がわからん!

 

 

 

「ちょっと驚きました。しかし双方、お気に召していただけたようで、何よりでございます」

 

 

「え゛…あ゛……はい」

 

 

「あの娘は、当家でお売りできる中で、ミチオ様にもっともお薦めの奴隷でございます」

 

 

「お薦め、というと?」

 

 

「そうですね。どこから説明いたしましょうか」

 

 アランは顎髭を一撫でしてから答え始めた。

 

「ミチオ様もパーティーを組んだことはおありでしょう」

 

 

「ああ」

 

 まさにロクサーヌと組んでいたが。

 

 

「ミチオ様のようにソロの冒険者の方もおられますが、パーティーを組めば、より効率よく狩りを行うことができます」

 

 

 そうだった。かけがえのないパーティーだった。

 

 

「長時間迷宮に潜るなら六人全員をそろえた方が、まず有利です」

 

「それはそうだな」

 

「しかし、人数を揃えるにも問題があります。白金貨が出たら? あるいは非常に高価なアイテムが出たら? その分配はどうなるでしょう」

 

「もめる…なぁ」

 

「価値のあるものであれば、犯罪に走る者も出てくるでしょう」

 

「なるほど」

 

 迷宮で一番怖いのは、同じ人ですってセリーが言ってたな。

 

 

「ミチオ様のように、師匠と弟子というほど明確な力量差があれば、問題を防げるかもしれません。それでも起きてしまうのが揉め事というものです」

 

 …実は師匠などおらんがな。

 

 

「例えですが、迷宮の中で背後から一突き、ということも」

 

 背後から(後背位で)突きまくったな。

 

 いかん、浮かれてるのがわかるが、嬉しくて制御できない。

 

 

「そこで使われるのが奴隷でございます。パーティーメンバーが奴隷ならば、迷宮で見つけた物は主人へ。奴隷の全ては主人の物ですから」

 

 奴隷のものは俺の物、俺の物も俺の物、のジャイアニズム!

 

 

「奴隷が後ろから刺すとかは?」

 

「それはできません。所有者が亡くなった場合、基本的に奴隷も殉死します」

 

「しっ……死ぬんだ…よなぁ」

 

 そう、奴隷の契約ってIC(インテリジェンスカード)に記載される魔法的な契約だったんだ。

 

 文字通り『殉死する』とは当時は知らなかったんだよね。

 

 だから、あの(・・)奴隷は死に物狂いで立ち向かってきたんだ。

 

 

「大抵の場合、遺言を用意します。奴隷を誰かに相続させたり、よく働いてくれた奴隷の場合には遺言で解放することも」

 

「そうだな」

 

 俺も、解放する前のセリーたち(セリー・ミリア・ベスタ・ルティナ)には遺言を用意していた。

 

 

 でも、ロクサーヌだけは解放されることを嫌がって奴隷のまま()になった。

 

 

 これも、改定したいポイントだ。

 

 

「しかし迷宮では遺言を用意している暇がありません。従って奴隷がそのような行為に及ぶ可能性は考えなくてよろしいかと存じます」

 

 

 いや、前回(チュート・リアル)は、まさにそのような行為(主人を殺して自分も死ぬ)されちゃったんだけどさ。まぁ真正面からだったけど。

 

 

「では…殺せないなら逃げるとか?」

 

「よほどひどい所ならありえます。もっとも逃げ出しても元の所より、よい生活を送れる可能性はかなり低いでしょう」

 

 アランは肩を竦めて言った。

 

「食事に始まり寝床に至るまで、所有者が用意する義務がございますから」

 

 

「しかし、一生遊べるほどのお宝があれば?」

 

「逃亡奴隷は盗賊に落とされます」

 

 盗賊って、奴隷よりも下だよね、絶対。

 

 

「奴隷を殺せば罪になりますが、盗賊を殺せば持っているものは合法的に自分の物にできます。よほどの準備がなければ、こっぴどく買い叩かれるのが関の山。身体を売って日銭を稼ぐので精一杯でしょう」

 

 まぁ盗賊から親切にものを買い取るやつはいない、ということだな。

 

 

 

「…それなら逃げる可能性も低い、か…」

 

「はい。ですから、冒険者は奴隷を買われる方が多いのでございます」

 

「分かった」

 

 よほど信頼できるものでないとパーティーが組めない、というのは実は大問題だった。

 

 結局、前回(チュート・リアル)の俺は、パーティメンバー以外にそこまでの仲間を見つけることはできなかった。

 

 

 

「また、先ほどの彼女はパーティメンバーとしてすぐにでもミチオ様のお役に立つでしょう」

 

 

 アランがロクサーヌを強く薦めてくる。

 

 

「獣戦士…」

 

 

「よくお解りで。はい、彼女は狼人族(ろうにんぞく)という種族で、獣戦士は狼人族のみが就ける戦いに秀でたジョブでございます」

 

 

 

 そうだ。それもその(狼人族)中でも、飛びぬけて優秀で()()()を持っている。

 

 

 

「特徴などは見ていただいたほうが早いでしょう」

 

 そういって、ぱんぱん、と手を叩いた。

 

 

 失礼いたします。 先ほどの給仕に用意させなさい。 かしこまりました。

 

 

「お客様は奴隷をお買いになられたことは」

 

「いやぁ……」

 

 ここで買ったんだが。

 

 

「彼女は当家で、今お売りできる中でも、一、二を争う美女でございます」

 

 それはその通りだ。

 

 まぁ前回(チュート・リアル)カシア(ハルツ公爵夫人)に魔が差してしまったが…

 

 今回はそうならないよう、初めから近付かない!

 

 

「聡明で性格もよく、ミチオ様が初めて買われる奴隷にはぴったりかと存じます」

 

 奴隷商人がグイグイ押してくる。

 

「しかも狼人族というのがまた、彼女をお薦めできる理由でございます」

 

「狼人族が薦められる理由とは?」

 

 

「ミチオ様は、エルフは長寿だと聞いたことがございますか?」

 

「ああ」

 

「それは都市伝説でございます」

 

「そう……だったか?」

 

 

「エルフも、人も、獣人も、寿命はみな同じ。それでもエルフが長寿だとされるのは、エルフの多くがみな若々しいからでございます」

 

「そうなのか…」

 

 

「人と他の種族とでは、老化するポイント、あるいは老化を見分けるポイントが違うのです。例えば二歳の犬と八歳の犬を見て、八歳の犬が老化しているとは人はあまり感じません」

 

「確かに」

 

 

「六十、七十ともなれば獣人も人の目から見て分かるほどに老化しますが、四十、五十ではまだ若々しいまま。狼人族の彼女は、人であるミチオ様から見て、いつまでも若く美しくあり続けるでしょう」

 

「そっ、そうか?」

 

 ロクサーヌも若いままなのか? まぁその前に死んだんだが。

 

「それに、人以外の種族であることはミチオ様から見てもう一つメリットがございます」

 

 ずいっ、とアランが前に乗り出してくる。

 

「なんだ?」

 

 

 

「人は他種族の女性との間に子をもうけることができません」

 

「それな……」

 

 

 

 いや、それが前回(チュート・リアル)最大の大問題だったんだが!? 

 

 

 

「…それだが、例外とかないのか?」

 

 

 

 何か方法がないのか? こう、魔法的な方法とか…? 

 

 

 

「…そうですね…」

 

 アランは、こめかみを右手の指で揉みながら続けていった。

 

「都市伝説の一つですが、人間の固有ジョブを極めると他種族と子供ができるようになる、というのがございますね」

 

 あくまで都市伝説ですよ、と断定はしなかったが。

 

「いや、誠実な回答に感謝する」

 

 

 

 色魔かっ! 積極的に上げてこなかった! いや、夜の性活だけで上がったが。 

 

 

 

「さて、もちろん、彼女は生娘、処女でございます」

 

 

 

 アランは気を取り直して、営業トークを続ける。

 

 

 

「処女であれば病気の心配がございません。この町にも娼館などがございますが、ミチオ様が娼館に行くことはお勧めできません」

 

「了解した」

 

「そもそも彼女は……」

 

 

 

 そこで少し間を空ける。

 

 

 

「彼女は主人の夜伽相手……性奴隷となることを了承しております」

 

 

 

「……ふむ」

 

 思わず唾を飲み込む。

 

「もちろん、若い女奴隷であれば違いはございませんが、ミチオ様のような場合、意味が出てくるかと」

 

「何故?」

 

「ミチオ様は奴隷に手を出すことに心理的な葛藤がおありでしょう?」

 

「まあ……な」

 

 こればっかりは元日本人としてな。

 

 

 

「初めて奴隷を手にされるお若い方とは、えてしてそうなのです。そして、奴隷の中にはそれを逆手に取り、思わせぶりな態度でいつまでも体を許さない者もおります」

 

 アランの雰囲気が和らいできているのを感じた。

 

「初めから性奴隷であることを了承している彼女なら、そのような心配はございません」

 

「なるほど」

 

 

 

「最後にもう一つ、彼女はブラヒム語を話せますので、ミチオ様のどんな命にもきっと応じてくれるでしょう」

 

 

 

「それもそうだな」

 

 彼女の忠義

 

「以上が、私がミチオ様に彼女をお薦めする理由でございます」

 

 アランの営業トークが終了した。

 

 





 祝・総合:ルーキー日間(加点)20位(2023/12/11 0:00時点)

 めでたいので投稿します。

 目指せ、スーパー・イージー・モード!です。

 なので「合わないな」と思われた方はブラウザバック願います。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。