Re:異世界迷宮で奴隷ハーレムを   作:載せられた人

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 これは“ミチオ・カガ”が取り戻す物語

 一人目はもちろん



第04話 売約

 

 ロクサーヌ(・・・・・)

 

 我が(・・)愛し(・・)ロクサーヌ(・・・・・)

 

 

 本音を言えば、当然ものにしたい。取り戻したい。

 

 彼女をモノにできることはうれしい。

 

 

 

 うれしいが、はたして彼女を買ってもいいのだろうか?

 

 前回(チュート・リアル)、たったの3年で彼女をアアまで追い込んでしまった。

 

 もちろん、あんなことを繰り返す気はない! ないが……

 

 結局、周囲の思惑に流れ、流されてしまった前回の俺を思うと、自分を信用することが難しい。

 

 

 

 ロクサーヌ。

 

 先ほど、華やかな笑顔を見せてくれたことを思い出す。

 

 

   ロクサーヌを買いますか?   

 

    はい        いいえ  

 

 

 カーソルは、はい、から動かない。

 

 

 しかし、俺が買わなければ誰かほかのやつが買うことになる。

 

 

 もちろん性奴隷として。

 

 

 

 それは決して許せることではない!!

 

 

 

 それに思い至った瞬間、頭が一気に冷えた。心も決まった。

 

 

 

 俺は、ロクサーヌを、パーティのみんなとの楽しかった日々を取り戻したいんだ!!

 

 ─だから、第二夫人だった彼女のことは棚上げしておこう─

 

 ふと、アランの口角が緩んでいることに気がついた。

 

 どうやら、俺の葛藤は丸わかりだったようだ。

 

 

 

 もう決断したのだ、後は進むだけだ。

 

 

 

「彼女ならば高いのではないか?」

 

「そうですね……」

 

 アランの顔がほころんだ。

 

「ズバリ、60万ナールほどが相場でございます」

 

 

 

 ここは前回と同じのようだ。

 

 アランがロクサーヌの本当の実力を知っていたら、倍はいっただろうに…

 

 

 

「先ほどの衣装もおつけして、ここまでお薦めしたのですから、54万3600ナールでお譲りいたしましょう」

 

 アランが意気込んで告げてきた。

 

 

 

 おいおい、本当に値引交渉10%値引つけてないよな?

 

 その言葉に、俺は大きく息を吐き出した。

 

 

 

 そのとき、トントンと音がしてドアがノックされた。

 

 失礼いたします、と声があり、入れ、との返答のあと、部屋に給仕と一緒に、着替えてきたロクサーヌが入ってきた。

 

「準備ができましてございます」

 

 給仕服をきた店の従業員らしきおばさんが告げた。

 

「よろしくお願いします」

 

 ロクサーヌが頭を下げる。

 

 

 

 あぁ、ロクサーヌのイヌミミと尻尾だ!

 

 大きくてフニャンと垂れているゴールデンレトリバーみたいな垂れ耳だ!

 

 嬉しいときに無意識にピクピクと動くフサフサのしっぽだ!

 

 

 

「彼女が、ロクサーヌです。ロクサーヌ、こっちへ」

 

「はい」

 

 ロクサーヌがアランの隣にやってくる。するとアランは立ち上がりロクサーヌを俺の前のイスに、座らせた。

 

「いかかでしょうか?」

 

 

 

「ああ…ぃぃ……」

 

 

 

 ロクサーヌに見惚れていると、アランがロクサーヌに告げた。

 

 

 

「ミチオ様は、ロクサーヌを大変気に入られ、お求めでいらっしゃる」

 

「……」

 

 ロクサーヌは一度無言で俺を見た。

 

 俺と目が合うと、うつむくようにして視線をそらせる。

 

 困ったような、はにかんだような。

 

 そして、僅かに嬉しそうな……いや、それは俺の妄想だ! 錯覚だ!!

 

 

 

「そ、その…ありがとうございます」

 

 ロクサーヌが頭を下げた。

 

 

 

「…ああ、ロクサーヌ、いくつか質問いいか?」

 

「はい」

 

「聞いているかもしれないが確認しておく。俺はロクサーヌにも一緒に迷宮に入ってもらうつもりだが、問題ないか?」

 

「はい。戦闘ではお役に立てると思います。おまかせください!」

 

 

 

 ロクサーヌの眼の奥に()が宿った気がした。

 

 迷宮のことを話すと妖しく光る眼(・・・・・・)で、まっすぐ(・・・・)に俺を見てくるのも前回と一緒(・・・・・)だった。

 

 心なしか雰囲気(・・・)も変わったような気がする。

 

 前回の最期がトラウマ(・・・・)っていて、ちょっと怖い気がする…

 

 

 

 それに、前回、ロクサーヌの両親は迷宮で倒れた、と聞いた。

 

 その後もパーティに恵まれず、満足に迷宮の探索ができなかった、と聞いている。

 

 彼女の迷宮に懸ける思いは複雑で重い。

 

 

 

 い、いかん、こっちが主導権を握らねば。

 

 と、そこで、

 

 

 

「あ、あの……」

 

 

 

 ロクサーヌが何かを伝えたそうにして言いよどんだ。

 

 ロクサーヌはアランの方をうかがう。

 

 アランが小さくうなずいた。

 

「あの……私には少し込み入った事情があります。それでご迷惑を掛けるかもしれません」

 

 

 

 驚いた、最初にそれを言うなんて。

 

 確か、ゴルゴム、いやバラガム、違うな、…バラダム家だったかな? そこの娘との因縁(いんねん)のことだろう。 

 

 奴隷になるときに条件が付けられていて、一季節くらいアランの奴隷商館で教育──ブラヒム語と主人に対する礼儀作法を受け、給仕等を手伝っていた、と。

 

 

 

 アランが後を引き継いで告げた。

 

「ですので、ロクサーヌには“狼人族の方には売らない”という条件が付けられているのです」

 

 少し苦笑すると続けた。

 

「ですので、転売するような方や、後で売ったりオークションに出品されたりしないような方を選んで紹介させてもらいました」

 

 俺はアランのお眼鏡に適った、ということだろう。

 

 

 

 俺は、眼に力を入れ表情を改めると、眼を合わせて右手をロクサーヌに差し出した。

 

「ロクサーヌが自分から言わない限り、俺はロクサーヌを決して売ることはしない、ここで誓おう」

 

 そして…

 

「共に栄光を掴むか、あるいは志半(こころざしなか)ばで迷宮に倒れるその日まで、自分の一番奴隷としてパーティを組んでくれるか?」

 

 

 

「ご主人様のことは私がお守りします。私より先にご主人様が討たれるようなことは決してさせません」

 

 ロクサーヌは、俺の手を両手で握ってくれた。

 

 

 

「ありがとう、ロクサーヌの主人として恥じないようにすることも誓うよ」

 

 ロクサーヌの手を握りしめながら、

 

「…そうだな、将来的に、妻として奴隷から解放することはあるかもしれない」

 

 視線を明後日の方に向けて、少し冗談めかしながら続けて言った。

 

 

 

 傍に控えていた給仕のおばちゃんが、あらあらまぁまぁ、と喜色を浮かべているのが見えた。

 

 なお、このときロクサーヌは、真っ赤な顔をして絶句していたらしい。 

 

 アランが後にそう教えてくれた。

 

 

 

「それでは、お支払いの話といきましょう」

 

 

 

「そうだな。実は師匠からの餞別があってな。これなのだが…問題ないか?」

 

 そう言って、アイテムボックスの詠唱を始める。

 

八百(やお)千五百(ちいほ)のお宝を、収めし蔵の掛け金(かけがね)の、アイテムボックス オープン」

 

 詠唱終了に合わせて念じて開けると、1スタックに取り分けていた白金貨を取り出して皿に乗せた。

 

「「えっ!」」

 

 ロクサーヌとおばちゃんが目を丸くして驚いている。

 

「もちろんかまいません」

 

 アランは余裕の笑みを浮かべている。

 

「やはり私が見込んだ通りでございました」

 

 

 

 そう言われると、前回(チュート・リアル)はアアなってしまったわけで、

 

「どうだかな」

 

 …大丈夫だ、今回過ちは繰り返さないし、決して流されない!

 

 

 

「ありがとうございます。確かに受け取りました」

 

 アランが皿を持つて立ち上がる。

 

「それではお釣りを持って参りますので、しばらくお待ちください」

 

 

 

「あのっ、あれはご主人様のお師匠様からの特別な餞別だったのでは?」

 

 アランが部屋から出ると、ロクサーヌが身を乗り出して話しかけてきた。

 

「だから俺の好きに使った」

 

 

 

 近付いてきたロクサーヌの頭を撫でる。

 

「あんなもん一枚よりもロクサーヌの方が価値がある」

 

 ロクサーヌたちと一緒に、迷宮を討伐したことは何度もあった。

 

「だから、もっと自信を持ってくれ」

 

 そのまま耳も撫でていく。

 

 

 

 ああぁぁ、シュークリームでもシフォンケーキでもマシュマロでもない、もっともっちりした磯辺焼きの感触だ。

 

 前回(チュート・リアル)の最期の時も触れていた、約一日ぶり?の感触だ。

 

 適度に弾力があって柔らかく、俺の心を引き付けてやまない。

 

 

 

 って、(まず)い。慌てて手を離して頭を下げる。

 

「す、すまなかった。つい頭を撫でてあげたくなって…」

 

「ぃぇ、あの…ご主人様に撫でられるの、気持ちいいです」

 

 視線を逸らしながら小声で言うロクサーヌは、頬を赤く染めていてとびっきり可愛かった。

 

 

 

「これがお釣りでございます」

 

 アランが小袋を皿にのせて運んできた。

 

「45万6400ナールのところですが、ミチオ様には特別に46万ナールでございます」

 

「いいのか?」

 

 メイド服代がチャラになったわけだが。

 

「問題ありません。今後とも長くお付き合い願います」

 

「そうか」

 

 八百(やお)千五百(ちいほ)のお宝を、収めし蔵の掛け金(かけがね)の、アイテムボックス オープン

 

 ダミー詠唱に合わせて念じてアイテムボックスを開けると、小袋からお金を1スタックに入れた。

 

 うん、46枚ある。

 

 なんと、俺のアイテムボックスは収納物の種類と数がわかるようになったのだ。

 

 

 

「では、ロクサーヌ、お客様の隣へ」

 

 すくっと立ち上がり、すっと俺のイスの背後に控える。

 

「それでは契約を行います」

 

 テーブルの対面にアランが立った。

 

「インテリジェンスカードを確認させていただきますか?」

 

 俺は立ち上がり左手を伸ばした。

 

 ロクサーヌも横に来て手を差し出す。

 

滔々(とうとう)流るる(たま)の意思、脈々息づく知の調べ、インテリジェンスカード、オープン」

 

 アランが呪文を唱えると、インテリジェンスカードが飛び出してきた。

 

 

 その後もアランは、なにやらブツブツと唱えている。

 

 

「これで契約が完了しました。インテリジェンスカードをご確認ください」

 

 

 

「えっと、はい」

 

 俺の前に、ロクサーヌが手を伸ばしてきた。

 

 

 ロクサーヌ<♀・16歳>獣戦士・奴隷 

 所有者 加賀 道夫         

 

 

 なるほど。確かに契約がなされたようだ。

 

 ロクサーヌにインテリジェンスカードを見せてもらったので、俺もロクサーヌの前に腕を出した。

 

「ん」

 

「あの……よろしいのですか?」

 

 ロクサーヌが美しい鳶色の瞳で俺の方をうかがうように聞いてくる。

 

 インテリジェンスカードは奴隷に見せるものではなかったらしい。

 

「まあ、見られて困るものでもないだろうし」

 

「……はい」

 

 ロクサーヌが俺のインテリジェンスカードを読んだ。

 

 

 加賀 道夫<男・17歳>探索者・自由民 

 所有奴隷 ロクサーヌ         

 

 

 この所有の証…

 

 

「当家の奴隷をお買い上げいただきありがとうございます」

 

 

 ついに、

 

 

「ミチオ様は本日をもちましてロクサーヌの所有者となりました」

 

 

 ついに、ロクサーヌを手に入れた…!!

 

 

「所有者には、奴隷に住まいと食事を与え、また税金を支払う義務がございます。これらの義務を放棄したり、奴隷を著しく不当に扱った場合、契約が破棄されることもございます。遺言の作成と変更も我々の仕事となりますので、その際にも当館を是非ご利用ください」

 

 

 奴隷を購入した人への定型文だが、きちんと聞いておく。

 

 

 アランが手を振って入り口まで案内してくる。

 

 

 そうだ、その前に聞いておかないといけないことがある。

 

 

「すまんが。最後に一つ、いや二つある。しばらくこの町にとどまりたいが、どこかお勧めの宿はあるか? あまり高いのも困るが、安全で枕を高くして寝れる場所でなくてはならん」

 

「町の中心地のロータリーの南西側にあるベイル亭が、旅亭ギルド経営の宿でございます。騎士団詰所の隣ですので治安はよいでしょう」

 

「ふむ。そこへ行ってみよう」

 

 

「あと、本日どうしても外せない個人的な用事があってな。明日までロクサーヌを預かってもらうことは可能か?」

 

「奴隷のお預かりですか?」

 

「ああ、ロクサーヌに惚れ込んで買い上げてしまったが、本日どうしても顔を出さねばならぬ用事があるのを忘れていてな」

 

 

 そう、アレ(・・)の確認が必要だ。

 

 

「いや、無理ならロクサーヌには宿で待っていてもらうのだが…」

 

 チラリと視線をやると、眼を点にして驚いている。

 

「ただ一日部屋に籠ってもらっても退屈だろうし、ロクサーヌも、ここで世話になった人に挨拶とかしなくていいか?」

 

 

「ほう、そうですね」

 

 

「あ、あの…私がついていくことは?」

 

 

 ロクサーヌが不安そうに

 

 

「残念ながら、そこには俺しか入ることができないし、待ち合わせ場所も無い所なんだ」

 

 あくまでも、こっちの都合の話…という風に持っていく。

 

 

「では、1日だけ預かりましょう」

 

 

 ロクサーヌを売却済の部屋に移してくれ、かしこまりました

 

 アランが給仕のおばちゃんに命じた。

 

「はい。それでは、こっちへ」

 

 おばちゃんは、階段を挟んで反対の方にロクサーヌを導こうとする。

 

 

 その前に、ロクサーヌを呼び止める。

 

「ロクサーヌ、大変すまない。明日の昼頃には迎えに来るから」

 

 そうそう武器は何を使う? と聞くと、片手剣と盾です、と返してくれた。

 

 靴は?ブーツでもいい?鎧は? 動きやすい物であれば… ではそういうことで。

 

 **********、アイテムボックスオープン

 

 ダミー詠唱してアイテムボックスを開けると、レイピアと片手盾、革のブーツと小手と鎧を取り出した。

 

「これを装備して動けるように訓練しておいてくれ」

 

 そう言って装備を押し付ける。

 

 そうそう、手入れ用のブレード・カメリア・オイルも一瓶渡した。

 

 

「はい? あの、奴隷の私に渡してよろしいのですか?」

 

「どうせ明日からロクサーヌが使うものだからね。(俺は)構わないよ」

 

「はい…、では明日よろしくお願いします」

 

 

 ロクサーヌは頭を下げた。

 

 イヌミミがふわりと揺れた。

 

 手を振って階段を上がるロクサーヌを見送った。

 

 

「アラン殿にも、大変すまないことをしたな」

 

「いえいえ、こちらも仕事でございますから。それでは明日のご来店をお待ちしております」

 

 アランに見送られて、商館から一人で歩き出した。

 





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 めでたい×2ので投稿します。

 当二次創作は、スーパー・イージー・モードです。

 なので「合わないな」と思われた方はブラウザバックをお願いします。
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