Re:異世界迷宮で奴隷ハーレムを   作:載せられた人

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 これは“ミチオ・カガ”が取り戻す物語

 これは前回(チュート・リアル)の物語

 カシアの乙女心の暴走が止まりませんが事態(こと)は進んでいきます



第39話 Re:ガールズサイド 裏 3話

 

 

 

 そして、私が家の残りの迷宮と、実家のことで色々と動いているときに、

 

「カシア、ミチオ殿のパーティを今日の夕食会に招いたぞ」

 

「まぁ、本当ですか?」

 

 お姉さん、張りきって準備しちゃうわよ!

 

 

 でも、侍女Aから、あれ(ロクサーヌ)がゴスラーのパーティで一番の手練れの聖騎士と、木剣を使った模擬戦を実施し、引き分けになりました、って教えてもらったときは、ちょっとキレそうになったわ。

 

 多分裏で話を勧めたのは旦那だろうけど、夕食会に招かれたら騎士と模擬戦になりました、なんて噂がたったらどうしてくれるの!?

 

 

 でも、そろそろ来るというので、心を整えて食堂であの子を待つ。

 

 でも、ちょっと()()()()()けど、入口近くに立って待っていたの。

 

 そして、

 

 

「お待ちしておりました。ようこそおいでくださいました」

 

 そう言って微笑みながら頭を下げる。

 

 ほら、貴方のために、()()()水色のドレスを着てきたのよ?

 

 髪もいつもより多く(くしけず)ってもらったのよ。

 

 この前と同じ香水を付けて、全身マッサージしてもらったの。

 

 あの子の視線を感じるわ。()()()()()()()()()()()()()()を。

 

 うふふふん。そうよ、これよこれ!

 

 私の努力をわかってくれたのね。─勘違いです─

 

 

「ミチオ殿のパーティメンバー、ロクサーヌ、セリー、ミリア、ベスタだ」

 

 旦那が紹介してくる。

 

 そう。ようやく全員の名前が判明したわね。ドワーフのお婆さんがセリー、猫人族がミリア、竜人族がベスタね。

 

 うふふん。覚えたわよ。

 

 あの子の視線を満喫していると、あれ(ロクサーヌ)が凄い目で睨んでくる。

 

 

 うふふふん。()()()、あの子の視線はお姉さんが独り占めよ。

 

「余の妻のカシア」

 

 今日は、ゴスラーの奥さんも一緒なの。今日の今日だからあまり根回しできてないけど、従者+奴隷から色々と聞き出すのに協力してもらうようにお願いしている。

 

「ミチオ殿も皆も、座られるがよい。まずは食事にいたそう」

 

 旦那が饗応席の上段に座る。

 

 あの子も、それを知っているのか、堂々と旦那の前に座った。

 

 

 お姉さんに席を聞いてくるんじゃないかと期待していたのに、それ以上だわ。─過大評価です─

 

 私も旦那の隣に座る。

 

 私の向かいには、あれ(ロクサーヌ)が座った。

 

 まぁ第一の従者みたいだから、席順は仕方がないけれど。

 

 

 その後、飲み物を聞かれて、ハーブティか何かがあれば、ってあの子が答えて、旦那の言葉で夕食会が始まったの。

 

 私は仕方なく視線の矛を収めて、あれと歓談(情報収集)をすることにした。

 

 

「どちらにお住まいなのですか?」

 

 上品に左手を口元に当てて尋ねる。

 

「あっ、あのクーラタルの町の北側です。え~と、6区の7丁目です。そのクーラタルの6区の世話人のおばちゃんから紹介してもらいました」

 

 私の視線の変化に戸惑ったのか、口調が変になっているわ。

 

 そうね。6区7丁目123番地よね、って私が言ったらいけないわ。

 

 

「まぁ、どんな所ですの?」

 

「あの…周りも静かでいい所です。それに、家中の壁に全部遮蔽セメントが使われている白くて綺麗な家です」

 

 そうね。侍女に確認してもらったら外壁が全部遮蔽セメントが使われている、という話だったけど、内壁もそうなっているの。

 

 あの子の対フィールドウォーク対策は徹底しているのね。これは忍び込むのは難しそうね。

 

 

「あらあら、でも、それでは不便ではないの?」

 

「いえっ、その…て、帝都で買った絨毯を掛けているんです。なので問題ないです」

 

「そう」

 

 この娘は駄目ね。ペラペラと喋りすぎるわ。

 

 その後も、あの子の出自とかを探っていく。

 

 

「それに、あっ、お、お風呂があるんです。このごろは暑いので毎日一緒に(ピー)*1お風呂に入っています」

 

 あら、あの家のサイズでお風呂があるのね、お姉さんちょっとだけびっくりしたわ。

 

 旦那の予想通り、遠くの出で、そこから流れてきた元貴族なのかしら。─誤解です─

 

 

 そうそう、

 

「みなさまには(私の実家の)ノルトセルムの迷宮に入っていただけたようで、感謝しております」

 

 旦那が慌てているわね。それにあの子も乗っている?

 

 仲が良いとは思っていたけど、()()()()する気はないわよ!

 

 

 でも、仕方ないわね。お姉さん流されてあげようかしら。

 

「マーブリームが22階層の魔物である迷宮ですか?」 

 

「マーブリーム、です」

 

「そうです。あそこの22階層あたりは厳しいです。街から離れていることもあって、それで人気がないのですから。特に組み合わせが」

 

 あらあらいいのかしら? 旦那とあの子が慌てているわよ?

 

 

「(あそこの迷宮の)組み合わせですか」

 

「フライトラップ、ピッグホッグ、マーブリームですからね」

 

「マーブリームやピッグホッグ程度を恐れているようではいけませんね」

 

 お姉さんちょっと良いこと言ってみた。甘やかすだけでは駄目なのよ?

 

 

「らくしょう、です」

 

「ノルトセルムの迷宮は23階層も良くないのです」

 

「こ、この料理もどうかな」

 

「あそこは23階層のせいでほんとに人気がなくて」

 

 ごめんなさい旦那。でも負けられない戦いがここにあるの。

 

 

「そういえば、23階層では戦っていませんね」

 

「いえいえ。22階層に入っていただけただけでも」

 

 十分実家に貢献してくれているわ。

 

「23階層の魔物がドライブドラゴンだったので、戦ってないのです。あまりお役に立てなかったかと。申し訳ございません」

 

 ドワーフのお婆さんが謝ってきたわ。さすが年の功*2ね。

 

 

「それでもありがたいことです」

 

 ほんとに叔父上は……このままでは降爵の可能性すらあるというのに、楽天的で困るわ。ルティナの教育もなってなかったし。

 

 だいたい、アンセルム式のOHANASHIも知らないなんて。

 

 今度カッサンドラおばばにも伝えておかなくちゃ。

 

 

 

 あら、旦那があの子を横に連れ出したわ。例の話(帝国解放会)をするのね。合図をしても反応がなかった、とのことだから知らないのでしょうね。

 

 仕方ないわね。旦那、貸し1だからね。

 

「公爵は内密の話があるようだから、ちょっとだけ借りるわね」

 

「は、はぁっ。な、内密ですか…?」

 

 あら、ちょっと変な反応ね。

 

「ええ、でも、あなた達の主人のためになる話よ。それは約束するわ」

 

「はぁっ、ご主人様の役に立つのでしたら」

 

 

「納得してくれてうれしいわ。アナタも主人に貴族に戻ってほしいって思っているでしょう?」

 

「はい。ご主人様が叙爵されるのが楽しみです」

 

「あら、叙勲になるのじゃないの?」

 

 あの子の故郷は帝国とは制度が違うのかしら?

 

「あ、あのご主人様は元貴族ではありません」

 

 やっぱり制度が違うのね。でも先程、一部音が聞き取れないところがあったような……

 

 

 まぁ、あれ(ロクサーヌ)の言うことだからたいしたことではないでしょう。

 

 それに、いつも()()()()()()にいられるなんて羨ましいわ。私が代わってあげたいくらいなのに。

 

 でも、ロクサーヌが何かしでかすとあの子が困るので、何か手を貸すくらいしてあげましょう。

 

 そのためにも、色々とお姉さんが聞き出してあげる。

 

 

 

 そして、夕食会が終わって、作戦室で取得した情報の共有を行う。

 

 本当に遠方から流れてきたようね。カッシームよりも遠いというのだから想像できないわ。

 

 それに、二度と帰らないって、これって私とのことを本気で考えてくれているのね。

 

 お姉さん嬉しくって泣きそうよ。

 

 

 ゴスラーの奥さんから、どうやら従者のうち猫人族は犯罪奴隷の可能性が指摘された。道理でブラヒム語は喋れないし。おかしいと思ったのよ。

 

 私は他にも、家の外壁内壁が全部遮蔽セメントで覆われていること、防諜意識が高い割に第一従者のロクサーヌが要教育ってこと、等々を共有する。

 

「カシアよ。お主ロクサーヌに一方ならぬ思いを持っておらんか?」

 

「はい。でもあれが第一の従者では後々問題になります。第二従者は年老いていますし、早期に躾が必要かと」

 

「ふむ。(あれは従者ではなくて奴隷ではないのか?)」

 

 

 

 

 

 そして、運命の日。

 

 なにか旦那が私に隠して進めていることは知っていた。

 

 愚かにも、私は実家のことと、あの子の帝国解放会の入会についてだと思って呑気に構えていたの。

 

 

 前日、あの子は無事に帝国解放会へ入会した、と旦那から聞かされていた。

 

 なので、それでは御馳走を用意しないといけませんね、とか考えていたの。

 

 私が気付いたのは、もう(さい)が投げられた後のことだった。

 

 

 

 旦那が一人であの子のパーティのメンバーを案内してきた。

 

「ようこそいらっしゃいませ。お待ちしておりました」

 

 いつも着飾ってばかりでは、あの子に呆れられるかもしれない、と普段着で出迎えた。

 

 うん、いつもの()()()()()()を満喫しようとしていたら、

 

 旦那が、少し申し訳無さそうな顔で言った。

 

「すまんが、ゴスラーは緊急の用事で来れなくなった。余とミチオ殿らは()()()で食事を取る。7人分だけ移動させるようにしてくれ」

 

 

「え? あ……はい」

 

 私は一瞬だけ驚きのあまり放心してしまったが、すぐに気付いて気を持ち直して心を整える。

 

 あぁ、とうとう旦那は決断してしまったのね。いえ、させてしまったのね。

 

 

 私は、部屋にいる人に指示を出し始めた。

 

「食事を7人分取り分けて例の会議室に移動させます。何人かは先行して部屋を整えて。最低限でいいわ。急いで」

 

「バタバタしてすまんな」

 

 旦那があの子たちを例の会議室に案内する。

 

 

 私は料理を運ぶワゴンと一緒に例の会議室に入っていった。

 

「夕食はこっちで取る。いろいろと説明が必要なのでな」

 

 料理が運び込み終わると、旦那が厳しさの増した声で言う。

 

 

「そろそろよいか? 手のすいたものは外に出てくれ」

 

 そして料理の配膳が終わり、ハーブティの入った水差しを置いて、頭を下げて出ていった。

 

 私と旦那と、あの子のパーティだけが残った。

 

 

 もう、何かが決まるか、作戦が終わるまで()()から出ることはできない。

 

 それでも、一縷の望みを懸けて、

 

「あの。これはどういう」

 

 隣の席に座った旦那に問いただす。

 

 

「カシアには悪いが、必要なことなのだ」

 

「まさか……。そうなのですか?」

 

 いつもなら嬉しく感じるはずの、あの子の心配そうな視線を感じる。

 

 旦那は大きくうなずいてから

 

 

「すまん」

 

 

 万感の思いを感じさせる声だった。

 

 

 旦那にも葛藤があったのだろう。それを感じさせるものだった。

 

「いいえ。そうですか。いつかこのときが来ると覚悟はしておりました」

 

 

 私は、そう返すのがやっとだった。

 

 ごめんね、お姉さん実家を……叔父上を討つよ。

 

 旦那は一度だけ私に頭を下げると、あの子たちにこの会議室の慣習について説明を始めた。

 

「この会議室は…」

 

 

 旦那とあの子の言葉が耳を通り過ぎていく。

 

 説明が終わるまでに心を整えなくては。

 

 

「何はともあれ、説明の前にまず夕食からだ。カシアもよいな」

 

「はい」

 

「皆もいただこう」

 

 猫人族の少女が早速魚に飛びついているのを見て、少しだけ元気になった気がした。

 

 

「ミチオ殿は、領内の迷宮の討伐に失敗したとき貴族が爵位を失う場合があることを知っておるか?」

 

「いいえ」

 

「もちろん、迷宮や魔物がはびこって人が住めなくなれば、領地や爵位など持っていてもしょうがないからな。爵位を召し上げられるのも当然のことだ」

 

「セルマー伯のことですね」

 

 思わず呟いていた。

 

 

「当代の伯爵になってから、セルマー領内では迷宮討伐が進んでおらん。今すぐに貴族でなくなるわけではないが、降爵の機に瀕しているといっていい」

 

「そこまで…」

 

 もう、限界ギリギリとことに来ていたのね。

 

「エルフの貴族は、現在1公爵1侯爵2伯爵をキープしている。失爵であれ降爵であれ、エルフとしては現状を放っておくわけにもいかん。ミチオ殿に関係のない話で悪いが」

 

 

 これも旦那の優しさ。

 

 私の実家が……家族が消えるときを、あの子と迎えることができるようにしてくれた。

 

「いえ」

 

「別に違う種族を仲が悪いとか、差別を受けているとかいうことではない。しかしエルフとして譲れぬものはあるのだ。そこはわかっていただけようか」

 

 

 あれ、あの子、もしかして私のために迷宮討伐しよう、とか考えてくれているの。

 

「ま、まぁ」

 

 駄目よ、それは駄目。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。そんな邪な意思では無理なのよ。

 

「それで、セルマー伯を討つことにした。退場願うという言い方をしてもいいが、実態は討つということだ」

 

「それは……」

 

 

 あの子が私をうかがっているのに気付いて気を張る。

 

 耐えるのよ、お姉さんここで踏ん張らないと。

 

 近いうちに貴族に叙爵されるあの子に貴族の厳しさも教えてあげなければならないのよ。

 

 

「そのために、是非ミチオ殿の力を借りたい」

 

「どんな?」

 

「ミチオ殿は余と一緒にセルマー伯に面会したことがある。そこに余のエンブレムをかたどりし幕があったはずだ。あそこにフィールドウォークで移動してもらいたい」

 

 さぁ、頑張れ私。

 

「セルマー伯もあれでわりかし慎重な男だ。居城内部にはなかなか冒険者を立ち入らせないし、遮蔽セメントもふんだんに使ってあるらしい。迷宮は退治しないが自分の身を守ることには長けている。攻めるには難しいと思っておったが、ミチオ殿があの城に入ったことで条件が変わった」

 

 

 旦那はそんなに前から考えていたのね。

 

 私なんてあの子を親族に紹介できる!と浮かれていて…

 

 それが親族を討つための布石だなんて欠片も気付いていなかった……私ってホント、バカね。

 

 

「つまり尖兵になれと?」

 

 あの子が誤解してしまう。

 

 違うの。きっと旦那がちゃんと計算して、成功率が一番高い方法なの。

 

 それに、叔父上もあのエンブレムに細工することはないわ。

 

 だって、あれは私が結婚した時に交換した友好と信頼の証しなの。

 

 それに私も…私と一緒に来た冒険者は絶対に使えないの。

 

 

 でも、頭がぐるぐるして、声がでない。

 

「最初の移動で騎士団の冒険者を数人連れて行ってもらい、その後も何往復かしてもらう予定だ。ミチオ殿に戦ってもらうつもりはない。それはエルフである余らが余らの責任において行う」

 

「移動だけ……」

 

 あぁ、このままでは駄目。

 

「もちろん万が一ということはある。絶対の安全は保証できない。含みおいてほしい」

 

 

 あの子が私を見てる。私は貴族、誇り高き()()()()()の名を継ぐもの。

 

「め、迷宮を退治することは貴族の義務です。その義務を怠り、果たせなかったのですから、仕方がありません」

 

 最初は言い淀んでしまったけど、最後はきっぱりと言うことができたわ。

 

「ミチオ殿の協力が得られぬ場合、セルマー伯の居城へは正面から攻め込むことになる。セルマー伯にも大きな被害が発生しよう」

 

「わ、わたしからもお願いします」

 

 お願い、私に力を貸して。

 

 

 さっきから幻覚が見えている。でも、意味がわからない。『エルフの一撃』って何? あの子に使えって……

 

「うーん。分かった。ここまで来たのだし、それくらいならば。乗りかかった船だ」

 

 ありがとう。あぁ貴方はやっぱり()()()()()なのね。

 

 ()()、間違ってなかった。

 

 

「ありがたい。さすがはミチオ殿だ。余が見込んだだけのことはある」

 

「ま、なんとかなるだろう」

 

 ()()()()()ように、()()()()()()()()で言ってくれた。

 

「出撃は今夜遅くになる。酒はないが、たっぷりと飲み食いして英気を養ってくれ」

 

 その言葉のあと、食事が再開した。

 

 私も無理して食べ物をお腹に詰めていく。

 

 今日は絶対長い夜になる。

 

 

 

 その後、ゴスラーが来て、決行時間が繰り上げられることになった。

 

「弟に何かあったのですか?」

 

 今更作戦を中止することはできない。それでも、時間を繰り上げるようなイレギュラーなことが…

 

「いや、彼に問題はない」

 

「そうですか」

 

 

 叔父上はもう仕方ないとしても、従弟まで巻き込まれてしまうかと思ったので、そうじゃないとわかって思わず息を吐いた。

 

「弟というのは、カシアの従弟でな。次期セルマー伯爵になってもらう予定だ」

 

「その人が次のセルマー伯に?」

 

「そのためには彼にも今回の挙兵に参加……」

 

 私は、覚悟を決めて、目を瞑ってその時を待った。

 

 

 そして、弟は連れてこられてきた。

 

 旦那による説得という名の脅迫が続く。

 

 ようやく事態がわかったのか、顔面蒼白になりながら言葉を絞り出す。

 

 

「伯爵を討たれるのですか?」

 

「こうなることは分かっていたはずです、しっかりしなさい」

 

 私が叱咤激励するしか無い。

 

 

「それは……そうですが」

 

 他ならない私の言葉だからこそ、弟は信じた。

 

 旦那は本当に効率主義なんだから。代わりに私のハートはぼろぼろよ。

 

 

「非公式ながら全エルフ最高代表者会議の賛同は受けている。非公式なのは……。 ……内々だが昨日皇帝にも話を通した」

 

 そう。もうこんなとこまで根回しされていたの。

 

「なっていただけるな」

 

「は、はい」

 

 旦那の最終確認に、弟はうなずいた。

 

 

「貴族の責務を忘れてはいけません」

 

 そう、従弟を通して()()()に語りかける。

 

 貴族の功罪を…義務を……責務を………

 

 あの子も貴族になった時に責務を忘れないように。

 

 

 

 そして、その時がきた。

「それでは、本日の会議はここまでとする。以降は部屋を外に出てもよい。カシアは、結婚の時にセルマー伯からついてきた者たちを集めて見張りを頼む。そろそろ騒ぎをかぎつけられかねん」

 

「私も城へ参ります」

 

 叔父上の最期には私も立ち会わなければ。

 

「もちろん行ってもらうつもりだ。ただし、先陣としてではない。今は決行前に向こうへ情報が伝わらないようにすることが最優先だ」

 

「分かりました」

 

 そして、最初に部屋を出された、あの子の私への気遣わしげな視線を嬉しく思いながら。

 

 私って駄目な女、こんなときでもあの子のことが気になるなんて。

 

 

 

 そして、作戦は、直前になって、あの子のパーティが先行偵察してから突入することになった、と聞いた。

 

 もう、()()()()にそんな()()()()()()()なんて、お姉さん駄目女だからますます好きになって、貴方に依存しちゃうぞ。

 

 

 そして、先行偵察は成功し、部隊の突入も成功した。残すは叔父上の首級のみ。

 

 私が突入しようとした時に、ちょうどあの子のパーティ戻ってきたところだったので、ちょっとしか顔を見ることしかできなかった。

 

 でも無事な姿を見れて未練も無くなったわ。

 

 いえ、実はお姉さん貴方のことが大好きよ、愛しているの、恋してるの、そう伝えたかった、っていう未練ができたわ。

 

 

 セルマーの城の雰囲気は思っていたよりも荒々しくなかった。謁見室を飛び出ようとした時に、前から旦那が、背後からあの子が一人でやって来た。

 

 ここは戦場だというのに一人で寄越すなんて! 従者は……ロクサーヌはどうして止めないのよ!! 貴方の主人なんでしょう!

 

 怒りで視界が真っ赤に染まるかと思ったわ。

 

 

「カシア、大丈夫だ。作戦は順調に推移しつつある。お。ミチオ殿もおられたか。ミチオ殿のおかげで、こちらにもセルマー側にも損害はほとんど出ていない」

 

 旦那は叔父上のことかと思っているみたいだけど……お姉さん叔父上のことなんて微塵も考えてなかったの、冷たい女でごめんね。

 

 

 すると旦那の背後から従姉妹のルティナが連れられてきた。

 

 よかった、無事に確保されたのね。

 

「綺麗だな…飛び抜けて美しい…圧倒的美人だ…カシアより少し幼い感じがする」

 

 その言葉が私ではなくルティナを指していることがわかったとき、()()()()()()()()()()

 

 

「ルティナっ」

 

「カシア姉、さま……」

 

 やめて、あの子だけは……()()()()()()()()()!!

 

「よ、よかった。ぶ、無事でしたのね」

 

「……いいえ」

 

 

 そんなルティナを思いっきり抱きしめていた。

 

 私の戦闘用の装備品が当たって痛いのか、小さく悲鳴を上げている。

 

 思わず抱きついて隠してみたけど、全然意味がないじゃない。

 

「父も爵位を継いだころにはがんばっていました。痛いっ、ですが、なかなか結果がで出ず。あっ、いつのころからか騎士団と統率はおざなりになりました。痛いって、さらには大きな盗賊団が暴れまわって有能な配下を何人も失ったとか。その後は酒に逃げるようにもなりました……お姉さま痛いですぅ…

 

 それでも、今更あの子に見せたくなくて抱きしめ続ける。

 

 ルティナ、貴女はちょっと運かタイミングが悪かったの。

 

 このままお姉さんが抱き潰してあ・げ・る。

 

 

 ギリギリと殺害を進めていると…

 

「すまぬが、伯爵が見つからん。どこにいるか知っておるか?」

 

 旦那がルティナに尋ねている。ちっ! 訂正するわ。ちょっとは運がいいようね。

 

 

「ぷはっ、お姉さま酷い……知りません。父が悪いことは知っています。こうなったことの責任が父にあるとも思います。それでも、知っていても、教えません……だからお姉さま痛いですぅ…

 

 いけない。あの子の雰囲気がルティナをより好意的な方に見ているのがわかる。

 

「カシアは、どこか隠れていそうな場所に心当たりはないか?」

 

「そうですね。冬場に暖を取るために薪を置く小屋が、寝室のどこかからつながっているはずです」

 

「やっぱりか…」

 

 うそっ。なんで、やっぱりって……貴方も見当を付けていたというの?

 

 

「ゴスラー」

 

「は」

 

「はぁはぁ、本当に、ここまで追い詰められていたのですね」

 

 いけない、ルティナのことを一瞬忘れてしまったわ。今更抱き潰すことも無理ね、ならば、ルティナの好印象を悪くしておきましょう

 

「あなたの父は元々あまり伯爵に向いていませんでした。荒事を避け、迷宮に入ることにも二の足を踏むような優しい人です。末弟なので本来なら爵を継ぐことなく、自由に暮らせたでしょうが。長兄である私の父と次弟で長く争ったため、やむなくお鉢が回ってきたのです。こうなったことについては、わたくしからも謝ります」

 

 だから、そんな父の所で育って、アンセルム式のOHANASHIもしらないミソッカスなんです。

 

 

「いいえ。貴族の義務と責務を怠った父が悪いのです。いけないことだとは知りつつ、その父に甘えてしまっていたわたくしも同罪です」

 

 あれ、あの子の雰囲気がもっと好印象に変わっている?

 

 

「ルティナ……」

 

 ギルティ! 貴女も一緒に死んで!!

 

「わたくしにもっと力があれば」

 

「大丈夫です」

 

 死んでしまえば力なんて関係ありません。

 

 これ以上ルティナの泣き顔を貴方に見せたくなくて頭を抱き寄せていた。

 

 

「覚悟はできています。もはやどうなってもかまいません」

 

 えっ、どうして! なんでルティナの印象が良くなっていくの? それにクッコロ? なにそれ? 私知らない!!

 

 

「ありがたい。貴女には奴隷になっていただきたい」

 

「奴隷に?」

 

 どうして! 叔父上と同罪だって言ったじゃない。

 

 後腐れなく殺しましょう? 今! すぐ!! ナウ!!!

 

 

「ミチオ殿」

 

「はい?」

 

「よければ、彼女をもらってくれ」

 

「は?」

 

 お姉さんも「は?」っていう心境よ!!

 

 

「今回もミチオ殿には世話になった。その報奨としてふさわしいだろう……あのクズが狙っているから普通の所には預けられん

 

「いや、なにを?」

 

 

 そして、旦那が継承権の話をしだした。私もアンセルムを継ぐものだからわかるけど、よりによってどうして貴方なの!

 

 頭がぐるぐるしているうちに話が進んでいく。

 

「迷宮をですか?……あら、ちょっとはいい男じゃない

 

 むか~~! それは私のだ~~~!!

 

 ルティナなんて、絶対に結ばれない奴隷になってしまえ!!

 

「ルティナ、わたくしもそれがいいと思います」

 

「……わ、分かりました。す、好きにすればよいでしょう……なんかお姉さまの雰囲気怖いですぅ…

 

 

 

*1
─カシアの乙女心が理解を拒否しました─

*2
─ハルツ陣営はセリーの実年齢を耳のせいで誤解しています─





 ぼちぼち先が見えてきたので続きを更新します。

 これは前回(チュート・リアル)の物語

 ミチオのパーフェクトコミュニケーションがカシアを襲う。

 カシアの乙女心の暴走がとまりませんが、事態は起こって進んで行きます。

 結果、最後に大ポカをしてしまいました。



 当二次創作は“基本的に”スーパー・イージー・モードです、迷宮&今生は。

 なので「ついて行けない」「合わないな」と思われた方はブラウザバックをお願いします。

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