Re:異世界迷宮で奴隷ハーレムを   作:載せられた人

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 これは“ミチオ・カガ”が取り戻す物語

 これは前回(チュート・リアル)の物語

 カシアは乙女心に従って少しずつ前に進み始めましたが…



第40話 Re:ガールズサイド 裏 4話

 

 

 そして、私の全てが狂い始めた。

 

 

 私の癇癪で、ルティナをあの子に奴隷として引き渡すことが決まってしまった。

 

 そうよ! 若い女奴隷って、性奴隷ってことになるわけじゃない!!

 

 となると、ルティナって、あの子のモノになってしまうんじゃないかしら??

 

 

『綸言汗の如し』

 

 私がもう少し落ち着いていれば…

 

 

 

 でも、それは始まりに過ぎなかった。

 

 あの子がルティナを目を細めて見つめていた。

 

 そして、

 

 ぴこ~ん

 

 鑑定の発動を感知しました 

 鑑定の対象の特定に成功しました 対象 ルティナ 

 鑑定者ミチオ・カガに対する抵抗 エラー 対象とは違うため抵抗が発動しません 

 待機状態の『エルフの一撃』の起動を開始します Lv不足のため失敗しました 

 経験値をスキル『エルフの一撃』の起動のために一時的に集約 実行中  

 鑑定者ミチオ・カガへの対抗手段として『エルフの一撃』の早期使用を推奨します 

 

 えっ!

 

 私の幻覚なのに、私が対象じゃないの?

 

 私じゃなくて、ルティナを対象にしているの?

 

 そんな。

 

 これって、貴方の私への愛の証ではなかったの?

 

 これって、私の貴方への愛の証ではなかったの?

 

 

 じゃあこれって…いったい……

 

 

「若いな。それに村人Lv1。低いな」

 

 ぼそぼそと貴方の呟く声が私の鼓膜を揺らした。

 

 若い! 村人? Lv1? 低い? 何のことなの?

 

 貴方は、なにを言ってるの?

 

 

 私が混乱している間に、旦那はルティナをインテリジェンスカードを操作して奴隷に落とした。

 

 

「これで彼女の身分は奴隷となった。継嫡家名もはずれている。後は、ミチオ殿が知り合いの奴隷商人のところへ連れて行って、所有者の名義を書き換えてもらえばいい」

 

「俺の知っている所でいいのか」

 

「そこまでは余の関知するところでない」

 

 

「それではお願いします。公爵を利するような命令は拒否させていただきますが、それ以外であれば一応従って差し上げましょう」

 

 ルティナが生意気な口をあの子に利いてる。

 

 もう、このアンセルムの面汚し!!

 

 ルティナって結局全然貴族としての勉強不足で、義務も、責務も全然理解してなかったじゃない!

 

 本当に叔父上は、蝶よ花よと甘やかして育て過ぎよ!

 

 アンセルム式OHANASHIもできないアンセルム持ちなんて、今まで聞いたことないわよ!!

 

 …そうね。おばばさまに連絡して、躾けしてもらわないと、あの子に迷惑が掛かってしまう。

 

 

「よろしく頼む」

 

「能力があるというのなら、奴隷であることはわきまえるつもりです……ちょっといい男だし

 

 ちょっとルティナ!

 

 口のきき方!!

 

 貴女は奴隷! あの子は主人でしょうが!!

 

 

 ルティナの教育不足に頭が痛くなってきたころ

 

 

「閣下」

 

「見つかったか?」

 

「は」

 

「ミチオ殿、今日のところはここまでとしよう。ミチオ殿のおかげで作戦は無事に成功した。助力に感謝する。彼女を連れて行ってほしい。何も持っていないようだし、このままで大丈夫だろう。パーティメンバーともども、家に帰ってもらってかまわない」

 

 旦那が何か言ってる。

 

「カシアもボーデに戻れ」

 

 いけない。そういえば、叔父上の最期を見届けなければ……

 

「ですが」

 

 旦那は、ゆっくりと大きく首を振る。

 

 叔父上の処刑に立ち会わせたくない、ということなのだろう。

 

 旦那が、優しい目をして、言い切った。

 

「これは余が余の責任において行う」

 

「わ、分かりました」

 

 了承するしかなかった。

 

 もうなんかどうでもよくなっちゃった。

 

 お姉さん疲れちゃったよ。

 

 それよりも、『エルフの一撃』ってなんなのよ!

 

 

 「ミチオ殿は明日の朝またボーデの城に来てくれ。ミチオ殿だけでいい。今夜はもう遅いし、これからどのくらい時間がかかるか分からぬ。朝の遅い時間でいい」

 

「了解した」

 

「では、ゴスラー」

 

 旦那は、ゴスラーを引き連れて、足早に部屋の外へ出て行った。

 

 

「それでは、戻りましょうか」

 

 あの子も私を促す。

 

「そうですね」

 

 私は、冥い目でうなずいた。

 

 

 

 ルティナは、旦那が去った後をにらむように見つめていた。

 

 もう悲しげな顔は見せていない。

 

 

「奥様」

 

 侍女Aが心配そうに聞いてくる。

 

「大丈夫です。ボーデに帰りましょう」

 

 帰ってから考えましょう。

 

 

 

 ボーデの城には、あの子のパーティのメンバーがいた。

 

「ご主人様」

 

 第一従者のロクサーヌがすぐに走ってくるのが見えた。

 

 

「こっちでは何もなかったか?」

 

「はい」

 

「なるほど。奴隷を抱えるごく一般的なフリーの冒険者というところですか」

 

 ちょっとまって!

 

 従者じゃなかったの? 全員奴隷だったっていうの!?

 

 そして、ルティナも奴隷として迎えたということ?

 

 

「ご主人様、このかたは?」

 

「家に帰ったら説明する。今日のところはひとまず終了でいいそうだ」

 

 そういって、いぶかしがるロクサーヌをなだめている。

 

 でも、この態度を見ていると、主人と第一従者なんだけど…

 

 

「ルティナ、今日のことにめげず、(奴隷として)強く生きなさい」

 

 一応、従姉妹として最後の言葉くらい送りましょう。

 

「当然のことです」

 

「(奴隷として)辛抱強くがんばれば、(あの子の力で)いつかは持ちなおすこともあるでしょう」

 

 なんてったって、あの子は帝国解放会にも入会した、迷宮討伐を間近としてる有望な叙爵候補なのだから

 

 

「再起の目があると、本当にそうお考えですか?」

 

「ですが(あの子たちはとても有望なのです)」

 

 ルティナは知らないけど。旦那が認めた人間なんだから!

 

「大丈夫です。いただいたチャンスは活かすつもりです。心配には及びません」

 

 

 はぁ、今は何を言っても駄目ね。

 

「ミチオ様、ルティナのことよろしくお願いいたします」

 

 私は、ルティナへの説教を諦めて、あの子に頭を下げてお願いした。

 

 いやだけど! ホントに大変不本意だけど!!

 

 死なない程度でいいのでルティナの面倒をみてください。

 

 

「はい。ルティナ、移動するけど、もういいか?」

 

「十分です」

 

「それでは、ルティナ。どうか(奴隷として)息災で」

 

 うらやましい。あの子のお手付きになれるなんて…、恨めしい…

 

「姉様こそせいぜい長生きを」

 

 

 

 

 後日、ルティナが、()()()()()にはあの子と()()()()()()に入って、()()()()()()て、()()()()、ということを聞いた時には………

 

 

 

 

 セルマー伯の首を挿げ替えてから、その対応に忙しむことで、私の中の虚無感を見ないようにしていたところ。

 

 あの日から4日後には、お願いしていたおばばさまから、ルティナとその主人を見てやるから一度こっちに顔出させな、との連絡を受けた。

 

 御用商人のルークを通じて、あの子に話が通ったので、あの子が来るのを首を長くして待っていた。

 

 

 侍女Aから、ミチオ様がいらっしゃいました、との連絡を受けて、執務室に向かう。

 

 途中で呼びに来たであろうゴスラーと合流した。

 

 中から、いまだにおばばに頭の上がらない旦那と、あの子の声が聞こえてきた。

 

 

「これはミチオ様、ようこそいらっしゃいました」

 

「では、私はこれで。えーと。今回はミチオ殿の係累の話ですので」

 

 これで終わりとゴスラーが去ろうとしている。

 

 

「ミチオ様、わたくしどもの一族の女性たちの長が、ルティナを手に入れたミチオ様にぜひ一度会ってみたいと仰せです。一度面談していただくことは可能でしょうか?」

 

「面会ですか?」

 

「別に何も心配することはありません。優しいお婆様ですので」

 

 ええ、とってもやさしいおばばですよ。

 

 って、旦那が首を振っている気配がする。

 

 

「長に会うならルティナも連れてきたほうがいいのでは?」

 

「はい。ミチオ様にはぜひそれをお願いしたかったのです」

 

 さすがに察しがいいわね。

 

「あー」

 

「変に里心がつきかねないことで申し訳なく思いますが、もちろんルティナにそんなことはさせません。これはカッサンドラお婆様も承知のことです」

 

 えぇ、あの子を奴隷から解放させることが目的ではありませんよ。

 

「う~ん。まぁ連れてくるのはいいかもしれないが、彼女にとってここは親の仇の住む地になるのでは?」

 

「いいえ。ここではなく、カッサンドラお婆様の所へ直接行ってもらえればかまいません。わたくしも別にお婆様のところへ赴きますから。向こうで落ち合いましょう」

 

 ()()ルティナにもやさしいのね。

 

 でも向こうでは会えないようにおばばが取り仕切ってくれるわ。

 

「なるほど」

 

 そして旦那が大丈夫だ、それに…と言って、あの子の肩を叩いている。

 

「長には、公爵は城で暇そうにしていたと伝えておくか」

 

「そうですね。カッサンドラお婆様には、本人が行けなくて残念だと言っていたと伝えておきましょう。すぐにでも呼んでくれると思います」

 

 その後、話がゴスラーにまで及んだところで旦那も来ることにしたようね。

 

 ではお姉さんも、ちょっとあの子の思惑に乗ってやりましょうか。

 

「行かなかったのではないのですか」

 

「ほかならぬミチオ殿やカシアのためだ。余が労を取るよりあるまい」

 

「単なる顔見世程度なので、そこまでしていただくこともありませんが」

 

「だ、大丈夫だ」

 

 まったく旦那も無駄な抵抗をするから…

 

 

「冒険者の者が先にロビーに行っているので、そこでミチオ様にもパーティに入ってもらって、カッサンドラお婆様の居城に案内させていただきます。まいりましょうか」

 

「はい」

 

 途中ゴスラーに会ったが、

 

「これより、ミチオ様をカッサンドラお婆様の居城に案内するのです」

 

 と説明しておいた。旦那とあの子がゴスラーで遊んでいるようだ。

 

 

 そしてロビーについたので、

 

「では、冒険者に案内してもらいます。一度カッサンドラお婆様の居城に行って覚えてもらい、明日の朝、ルティナを連れてきていただくということでよろしいですね?」

 

 と説明した。旦那もゴスラーも、どうせおばばの前ではハナタレ小僧扱いだというのに。

 

「明日の朝ですか?」

 

「はい。早いほうがよろしいでしょう」

 

 ルティナのボロが出てからではまずいのです。

 

 

「軽い挨拶ですぐに終わるからな。じっくりと時間をとって挨拶したいなら、晩餐にでも招待してもらうことになるが?」

 

「すぐ行きましょう。明日の朝、行きましょう。なんならこれから行きましょう」

 

 あの子の、思いっきりがいいところとか、決断の早いところとか、おばばも気に入ると思うのだけど… 

 

「それでは、明日の朝にはお願いします。向こうで落ち合いましょう」

 

 といっても、おばばが会わないように取り仕切ってくれるのだけれども。

 

 だから、明日は会えないの。お姉さん寂しいわ。

 

 

 

 

 翌日は、当然ルティナ達とは入れ違いになるようにカッサンドラおばばが手配してくれた。

 

「カッサンドラお婆様、お久しぶりです」

 

「カシアかい。ちょっと雰囲気が変わったね。やつれてはいるが……眼に力があるね」

 

「はい。あの子に随分と助けてもらいましたから」

 

「…そうかい。まぁルティナの父親──あんたの叔父上のことは仕方の無いことだ。それはわかってるんだね?」

 

「はい。それはもう十分に」

 

「その分、あんたの従弟──新しいセルマー伯を助けてあげな。あいつも出来は今一だからね」

 

「なに。問題ない。余が後見するのだ。見事立て直してみせよう」

 

「ハナ垂れ小僧のブロッケン坊やが、いっちょ前の口を利くじゃないか。まぁいい。あんたには身内を処断するという大役を果たしてもらったんだ。最後までケツ持ちしてもらうよ」

 

「だから……はぁ、わかったわかった。余も最後まで面倒をみることにする」

 

「ふん。まぁ早いところ領内の迷宮残り2つを片付けることだね。それじゃあ、ここからは一族の女の話だ。カシアとだけ話すから、ハナ垂れ小僧は気い利かせな」

 

「…それではカシア。先にボーデにもどるので、後は頼んだ」

 

「はい。公爵、それでは」

 

 

 しばし、ハーブティを飲んで心を整える。

 

 

「それでルティナの方はどうでしたか?」

 

「あの小娘にも困ったもんだね。一応貴族として気概はもっているし、勘も悪くないし、地頭だって悪くはなさそうだ。でも貴族の誇り、功罪、義務、責務についてまでは、わかってないねぇ」

 

「…はい。通り一遍のモノは持っているようですが、正直アンセルムの名を継ぐという気概は……」

 

 すくなくともアンセルム式のOHANASHIをできるくらいにはなってもらわないと……。

 

 あぁ、もうアンセルムではなくなったけれど。

 

 

「まぁ、近頃の若い娘の中には、()()なってしまうものもいる。……父親が甘やかすんだろうね」

 

「残念な限りです。ルティナの母も肝心なことを教える前に逝ってしまいましたから」

 

「ましてや、あの人間の奴隷になっちまったからね。しばらくこっちに引き取って()()ようか提案はしたんだが、迷宮討伐のメンバーとして必要です、と来たもんだ」

 

「あの子は本当に何もやっていませんでしたから」

 

 

「それがちょっとおかしいんだよ。どうやら魔法使いにはなっているようだね」

 

「はっ?」

 

「カシアも会ったらわかるね。魔力の流れが洗練されているんだ。魔法使い……それも、なり立てじゃない。ぼやぼやしているとカシアより強くなってしまうよ?」

 

 

 それも『鑑定』以外にあの子のもつ『力』ということなのかしら?

 

「それは……ちょっと複雑です」

 

「でもね、あんなミソッカスをパーティに入れたっていうのに、50階層まであと少しなんていうんだ。おまけにこっちの言葉尻を捕らえて、一族の秘宝を一つかすめ取られてしまう始末さ。まぁ今頃あの人間が喜んで着けてるんじゃないかい?」

 

「……いったい何をかすめ取られたんですか?」

 

「魔法の威力を高める例のアレ(ボディークリップ)だよ」

 

「…って、結婚祝いにわたくしに贈ろうとした例のアレ(ボディークリップ)ですか?」

 

「かっかっかっ。それじゃよ」

 

 

 もう、おばばも冗談が過ぎるわ。だってあれって…ち、乳〇を挟んで着けるのよ。それも両方!

 

 ちょっとまって! それをあの子がルティナに着けてあげるってことは……

 

 

「それにの、ルティナのあの肌艶、あの男に相当可愛がってもらっているということじゃな」

 

 もしかして、もう肉体関係にあるというのっ!

 

 お姉さん、一季節くらい掛かってようやくいろいろとおしゃべりできるようになったというのに…

 

 ……やっぱり奴隷として下げ渡すんじゃなかったわ。

 

 

「それに、身綺麗なままだったからね。酷い扱いをされている、なんてこともなさそうだ」

 

「あの子は、優しい子ですから」

 

「ふん。あの男も、人間にしちゃ根性据わってるね。それに迷宮の高層の一層の重みもわかってそうだ。それに、そこそこ甘いところがあるから、ルティナにはちょうど良かったのかもしれないねぇ」

 

 

「まぁ。おばばが初対面の人を、そこまで褒めてくれるとはおもいませんでした。本当にかわいくていい子でしょう?」

 

「おやおや、あんたも結構入れ込んでるんだね。まぁカシアにもちょうどいい相手かもしれないが、ルティナを泣かすようなことはせんでおくれよ?」

 

「それはもちろん。私はわきまえてますから」

 

 

「ちょっと心配になるようなこと言わないでおくれ。で、ルティナがこのまま、あの人間の男の下にいて、あの男が貴族に叙爵されるとなると……私の後継者になる可能性も……まぁほんの少しくらいはありそうだしね。一族の長としては、少しずつ課題を与えて、躾けて鍛えていくつもりじゃよ。初歩の初歩なんで金勘定を進めておいたがねぇ」

 

「ありがとうございます。カッサンドラお婆様。…ルティナは幸せそうでしたか?」

 

「さぁね? でも、悪い顔はしてなかったよ」

 

「わたくしは親の仇の妻ということになるので、直接会うことは難しくなりました。その分カッサンドラお婆様、よろしくお願いします」

 

 私は頭を下げた。

 

 

 

 

 その後は、私はあの子と()()()で会うことも少なくなってしまった。

 

 領内の迷宮の討伐と、セルマー伯の援助、及び、迷宮の討伐の援護とかで忙しく過ごしている。

 

 

 

 おばば経由で、ネスコの奥の迷宮の攻略に参加していること。

 

 そして、野良の迷宮候補を与えるために、個人的にグリニアの捜索の依頼をだしたことも聞いた。

 

 あそこに行くまでの中継地には、手つかずの領地付きの迷宮がいろいろと揃っているからね、とはおばばの言い分だった。

 

 ほんとうにおばばも抜け目ないんだから。

 

 

 

 旦那も、帝国解放会の件や、領内の迷宮やセルマー伯の迷宮の件をネタにあの子に会って、助けてもらったり、『貴族』についての教育を始めているようす。

 

 何故か、こと『貴族』については誤解?してることが多く、教育は難航している、とのことだった。

 

 おかしいわね? ロクサーヌに聞いたところでは、元貴族ではなかったようだけど、苗字持ちだし、それに準ずる立場にいたと思われるのに。

 

 

 私はあの子に会えないことに我慢ができなくなっていたこともあり、旦那を手助けするという口実で、配下の冒険者の侍女Aや侍女B、Cを使って、御用商人の言伝を(よそお)いながら、あの子と直接連絡を取れるようにした。

 

 そして、帝国解放会を隠れ蓑にしやすいように、帝都のハルツ公爵別邸や、セルマー伯爵の別邸、あとはアンセルムが帝都に用意しているセーフハウスを使ったりして、あの子を誘って5~7日に1回くらいのペースで、()()()()お茶会を開くようになった。

 

 その後は、解放会自体も使って連絡を取れるようにもなった。

 

 もちろん、旦那も私の行動を黙認している。少しは教育が楽になった、とこぼしているから、感謝はしてくれてるみたい。

 

 

 

 そして、私はあの子のことを好きなことを、もう隠すことを止めようと思うようになっていた。

 

 少し()()()()()けど、座り心地の良いソファーを用意して一緒に座って教えたり、ことあるごとに手を取ってみたり、テーブルの上で手が触れるようにしたり、内緒話をするように近付いて耳元で囁いてみたり。普段着にちょっと隙のある服を着るようにしたり、香水も誘うようなものを付けてみたり、と、色々としてみた。

 

 

 私としては、()()()()()に攻めているつもりなんだけど…

 

 侍女A、B、Cも、もう少しです。と言ってくれるのだけど、なかなか手を出してくれない。

 

 私の魅力が乏しいのかな?と少し落ち込むときもあるけど、会うと、いつも、あの子の視線からは熱と欲の混じった性欲を感じるので、魅力を感じていないわけでもないようだし。

 

 それに、ちょっと紳士的な態度を取られるので、お姉さん胸がキュンキュンとしてしまうの。

 

 

 こう、野獣のように、がばっ、ときてくれても喜んで受け入れる所存でいるというのに……

 

 

 お茶会の回数が二桁を超えるころに、季節は秋から冬になるころ、とうとうあの子は討伐する迷宮を決めて、帝国解放会の支援の下、装備品の充実を図り、これが最後、とラスボスを倒すこと33回。

 

 ラスボスと思われていた60階層から始まって、それの合間に聞いた時に「これは不味いのでは?」と思って忠告したのだけど、大丈夫だっ、もうすこしだっ、ってものすごく熱のこもった言葉を言ってくれるので止めることができずにいたの。

 

 これについては、旦那も途中から迷宮を変更するように注意したらしいんだけど、解放会的には快挙になることもあって、私的に会ったときに忠告することしかできなかった、と聞いた。

 

 それに、旦那に妙に対抗意識を持っていたようで、旦那の言葉に反発している面もあるようだった、とはゴスラーから聞いた。「まるで反抗期の息子のようでした」っていう言葉は的を射ているのだろう。

 

 

 おばばもルティナを心配して、別の迷宮を紹介しなおそうと画策したのだけれど、ルティナが調子に乗ってしまっていて、上手くいかなかったらしい。

 

 あの子は紛れもなく前セルマー伯の──叔父上の子ね。そしてロクサーヌと相性が良かったらしく、すっかりイケイケなところが合ってしまって。いまではロクサーヌお姉さまと呼んで慕っているとのこと。

 

 

 かくして、伝説の帝国初代皇帝のクーラタルの迷宮で記録した迷宮の91階層到達を超えて、92階層の迷宮を討伐する、という快挙を成し遂げてしまった。

 

 

 成し遂げてしまったの。

 

 

 旦那も大層困っていたわ。

 

 これで、遅くとも夏までにはクーラタルの迷宮へ当代皇帝による親征がなされることになる、って。

 

 当然、解放会という面でも、帝国の体制的な面でも公爵の旦那も、会長のエステル男爵のところも随伴することになる。もちろん、ミチオ殿も随伴してもらうことになるが、と。

 

 

 あの子は、私だけのヒーローから、一躍本当に帝国のヒーローになってしまった。

 

 

 近頃ようやくわかってきたのだけど、あの子は本当に慎重で臆病な子だった。

 

 私の誘いについても、実は少しずつ受け入れてくれていたの。

 

 ソファーに座るときも少しずつ近付いてきているし、手を取ったら握り返してくれるようになった、テーブルの上で手が触れてもそのままにしてくれるようになったし、そ、その……服の開いたところやスリットのところにも視線を感じるようになってきたの。

 

 

 そんな慎重派のあの子が、あの迷宮に挑み続けることを決めたのは……あのロクサーヌが原因だったという。ルティナもその尻馬に乗ったらしい。抑えるべき第二の従者である鍛冶師のお婆さんドワーフも「ご主人様でしたら可能です」と後押ししたというのだから。

 

 

 つくづくあの子は従者に恵まれていないわね。

 

 

 つきあわされた奴隷の猫人族と竜人族がかわいそうだわ。ってルティナも奴隷だったわね。

 

 

 そして、これはようやく近頃旦那が教えてくれたのだけど、当代皇帝から師父(すひん)と慕われているという。

 

 

 ちょっとまって。お姉さんちょっと混乱しています。

 

 

 なんでも、帝国解放会に入会する時に同期になったらしく、順番的に一つ上になったのが始まりだそうだ。

 

 確かに、当代皇帝からハイヒールブーツを下賜されたという話は聞いていたけど、あれってストッキングを献上したからって聞いていたけど……そう、そういう関係があったから献上できたのね。

 

 

 でも、そういったこともあって、当代皇帝としては皇帝側に取り込みたいようで、現在エルフの庇護下にいると目されているあの子の立場が危うくなった、とのことだった。

 

 そこで、ルティナは大丈夫か? と聞かれたので、おばばから課題を与えられて勉強中ですが、芳しくありません、と答えざるをえなかった。

 

 旦那が言うには、このままでは夫人が皇帝の肝煎りで選ばれてしまうかもしれない、その前にルティナを立てたいが……最悪カシア、君がミチオ殿を誘導できるようになるしかない……かもしれん、とのことだった。

 

 

 旦那公認になるのはいいけどぉ、これまでも黙認されていたけどぉ、お姉さんちょっとそれってきびしいかなぁ、って思いました。エルフの利を守るためとはいえさぁ。

 

 ルティナの教育を第一に善処します、となったけどさぁ。

 

 

 

 そして、お茶会の回数が25回を超えるころには、あんなこと言ったけど、かなり親密にはなったのではないかしら?

 

 ソファーの席はピッタリとくっついているし、手や足の接触も普通になった。それに無意識なのか意識的なのか指先が私を撫でて…そう愛撫してくれるの。

 

 胸元に視線を感じることも多くなったし。

 

 今日は暖房が熱いわね、といって胸元を引っ張ったりすると、中を覗き込もうとするの。

 

 よしよし。順調に誘惑されているわね。

 

 

 近頃は、侍女A、B、Cが、ちょっと席を外しますね。って気を利かすようになって、二人きりの時間も持てるようになったわ。でもなかなか手を出してくれない。

 

 がばっ、とは来てくれないの。

 

 

 でも、楽しい時間はもっと増えたの。

 

 あの子の叙爵の準備が始まって、あの子や、あの子の従者たちに貴族の教育や、領城の再建とか、物資の手配、人材の紹介、斡旋、公募、色々な理由で会うことができるようになったの。

 

 

 

 

 でも、ぬるま湯に浸かっているような日々は、終わってしまった。

 

 いえ、実は始まる前から終わっていたのかもしれない。

 

 そう、あのロクサーヌも実は性奴隷だったこと。

 

 あのドワーフも実は17歳で、性奴隷だったこと。

 

 猫人族と竜人族とルティナは……まぁ最初から奴隷とわかっていたけど。

 

 それがわかってしまったとき。

 

 私の好きは、愛は、恋は、()()()()()()()しまった。

 

 

 

 

 それがわかったのは、そう、季節が春になったころ、

 

 あの子がカガ家を騎士爵を叙爵されたとき。

 

 

 エルフの庇護下にあることを明確に示すために、ハルツ公爵の帝都の邸宅を使って、あの子の叙爵祝いのパーティを盛大に開催したの。

 

 

 あれは、春の5日のことよ。今でも覚えているの。

 

 宴もたけなわとなって来た時に、酒に酔った彼を、旦那やエステル男爵にブルーノ伯爵とか、皇帝の名代としてきた近衛兵カルロスが囲んでいたわ。

 

 そして、騎士爵となるからには、嫁さんをもらって後継ぎを作らねばならない、と貴族の義務について旦那が説明している時に、ボソッと言ったのが始まりだった。

 

「俺はロクサーヌたちを奴隷から解放して結婚するんだ」

 

 

 饗応のために近くに居た私は聞き取れてしまった。

 

 はっ?

 

 エステル様たちはそうかそうかと受け流していたけど私には無理だった。

 

 皇帝の名代のカルロスが、なに人間の嫁を一人娶ればいいのだ、なんなら皇帝が紹介すると言っている……と言うのを遮って、

 

 

「嫁さんはロクサーヌたちだ!」

 

 他にはいらん!って付け加えたの。

 

 さすがの旦那も固まったみたい、エステル様も天を仰いでいた。

 

 皇帝の名代の前で、しかも人間の嫁さんを紹介すると言うのを遮るのも不敬だし、さらには断るようなことを言うなんて。

 

 そういえば、あの子はこれまで頑なに酒の類は飲んでこなかったけれど、酒に弱かったのね。

 

 

 私がこう鮮明に情景を説明できるのも実際はあとで侍女A、B、Cから客観的に聞いたから。

 

 

 私や旦那が貴族教育をしてきたときに、貴族の功罪の一つとして、義務として結婚があると説明して納得していたはずなのに…

 

 苦労人のゴスラーが、とっさに酒を飲ませて酔い潰して、どうやらかなり酔っているようです。酔っ払いの戯言ですので、と言って場を繋いだ。

 

 

 でも、それを聞いて目を輝かせる者、誹り蔑むような視線になる者、同類を見つけたように親しげな目になる者、さすが英雄そっちの方面でもと尊敬の念を持つ者、このハーレム野郎めと殺気立つブルーノ伯爵とか、様々な人が居た……らしい。

 

 

 そして、私のように立ったまま気絶した者も。

 

 

 ゴスラーの飲ませたドワーフ殺しで酔い潰されたあの子を前に、解放会の4人は途方に暮れたらしい。

 

 なぜゴスラーがドワーフ殺しを持っていたかと言うと、どうも酒に弱い傾向が旦那たちとの私的な飲み会でもみられたから、とのこと。

 

 後に『皇帝の懐刀』と呼ばれるミチオ・カガの4大しくじりと言われるようになる最初のしくじりだった。

 

 

 夜、目を覚ました時に、旦那たちと久しぶりにやけ酒を交わしたところからは覚えている。

 

 あの子はジョブが色魔だったことがあるに違いない、いや、今が色魔なのよ!と旦那とゴスラーとゴスラーの奥さんと盛大に盛り上がったわ。

 

 いえ、盛大に盛り下がったというべきかもしれない。

 

 ゴスラーが、どうにも公爵に対して劣等感というか、反抗期というか、対抗心というか複雑な感情を持っているようで、とこぼしている。とにかく公爵が教えると捻くれるんです。

 

 それに、まるで皇帝や国王がいない国に住んでいたように思うときがあります、なんというかよく言うと王侯貴族と自由民、臣民である庶民や家人の区別なく親しめるんですが、悪く言うと今日のように立場の差がわかっていないな、と思うときがあります、と。

 

 

 それは余も感じておったが、よもやここまで酷いとは思わなかったの、と旦那も肩を落とした。

 

 私も、ゴスラーの言う前半については実感していたけど、後半についてはそこまで思っていなかったわ。

 

 国が違うのだから、風習は違えど身分差については『わきまえている』と思っていたもの。もしかしてあの子は故郷をそれが原因で離れることになったのかもしれない。

 

 しかし、皇帝の前でなくてよかったよ、と言う旦那の言葉にはみなが同意した。そして、酒も私的な場所以外では避けるように采配する必要があるね、という意見にも。

 

 終わって分かれて一人ベッドに入ってから、私は……ショックで泣いた。

 

 

 

 ルティナがあの子の妻になってしまう。

 

 私が妻になれるはずがないことは立場的にも(種族的にも)わかっていたけど、

 

 棚ぼたでルティナが妻になるなんて。

 

 あんなアンセルムの恥が()()()()()()の妻になる。

 

 それに、あの従者失格だと思っていたロクサーヌも妻になる。

 

 あの言い方だと、正妻がロクサーヌみたいだし。

 

 たしかに、あの子は身分だけでなく異種族にも寛容だったわ。

 

 とはいえ、皇帝の紹介を遮ってまで言うこと? 

 

 あの子は男なんだからちょっと人間族の女に種を蒔くだけで済むことじゃない。

 

 私と会っている時に私をあんなに熱と欲に満ちた視線を送ってくるくせに、私とは遊びなの!!

 

 私も最初はただの火遊びであったはずなのに!!

 

 でも、好きなの! 愛してるの! 恋しちゃったの!

 

 あんなに一緒にいたのに…

 

 二人きりのお茶会だってあんなにいい雰囲気だったじゃない!

 

 でも、私は妻になれなくて、ルティナが妻になってしまう!

 

 私には手を出さないのに、ロクサーヌたちには最初から手を出している!

 

 それも奴隷から解放して?

 

 ということは全員奴隷なの?

 

 従者じゃなかったの?

 

 性奴隷を4人も抱えていたのに、ルティナまで求めたの!

 

 どうして私じゃ駄目だったの!!

 

 

 

 もう自分でも支離滅裂で何を言っているのかわからなくなっていると思うけど、ルティナが、ロクサーヌが羨ましくて仕方なかった。

 

 そして……つい、()()()()()()()()()()に目が止まってしまう。

 

 待機状態の『エルフの一撃』の起動を開始します Lv不足のため失敗しました 

 経験値をスキル『エルフの一撃』の起動のために一時的に集約 実行中  

 鑑定者ミチオ・カガへの対抗手段として『エルフの一撃』の早期使用を推奨します 

 

 これをあの子に使えば、私にも手を出してくれるのかしら?

 

 

 

 それから、旦那がなだめようとしたけど駄目だった。ゴスラーが忠告したけども駄目だった。

 

 逆に意固地になってしまったわ。

 

 

 





 ちょっとは先が見えてきたので続きを更新します。

 これは前回(チュート・リアル)の物語

 カシアは乙女心に従って少しずつ前に進み始めました。しかし…

 明らかになったミチオの真実は、ミチオに恋したカシアを打ちのめします。

 それでも、カシアの好きは、愛は、恋は…もう止まりません。


 当二次創作は“基本的に”スーパー・イージー・モードです、迷宮&今生は。

 なので「ついて行けない」「合わないな」と思われた方はブラウザバックをお願いします。

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