迷子のネコ   作:龍崎悠司

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 とりあえず端らしき所まで着いた猫とスズメ

 柵を見つけたので次はどこへ行こうかと行き先を探していると柵の1つの脇に誰かがいるのを見つけました

 何の気なしに近づいてみます

 するとそこにいたのは震えて泣いていたウサギでした

「君はだあれ? どうして泣いているの?」

 猫は聞きます

「僕はウサギのピョン吉、いじめられて逃げてきたんだ……」

 ピョン吉と名乗るウサギは答えました

 君たちは? と聞き返すウサギに猫とスズメは答えます

「わたしはチュン子、スズメよ」

「おいらは猫だよ」

「えっと、名前は?」

 名前を名乗ってくれない猫にもう一度名を尋ねるウサギ

 しかし、悲しそうに目を伏せる猫

「こいつ、名前が分からないんですって」

「そうなんだ」

 スズメが答えた内容に納得するウサギ

「でもちょっと羨ましいな、僕も僕が誰だか分からなければこんな悩みしなくてよかったのかな」

 落ち込んだ様子で言うウサギに猫は返します

「そんなことはないよ」

 え、と聞き返したウサギに猫は続けます

「自分の名前もお父さんもお母さんも分からない、友達がいたかも、自分がなんでここに来たのかも、どこへ行こうとしていたかも分からない」

 一泊置いて猫は言います

「それはとっても寂しくて怖いんだよ」

 ウサギ以上に悲しそうな目で言う猫にウサギは頭を下げます

「ごめんなさい、君のことを何も考えないで」

 ウサギの謝罪に猫は許します

「いいよ、君も大変だったんだろう?」

 許してくれた猫に感謝しながら、ウサギは自分のことを話します

「僕のいる所ではかけっこがすごく人気でね」

 どうやらウサギは走るのが下手でいつも転んでしまい、それをバカにされるのだと言います

「僕だって楽しくかけっこしたいのに、バカにされるから嫌で逃げてきたんだ」

 君たちは何をしてるんだい? とウサギは聞き返します

 スズメは家出の話をして、猫が進むのに付き合ってると答えます

 猫はヒツジに聞いたけどよく分からないからとりあえず端まで歩いてきたと言います

 次はどこに行くの? と続けて聞くウサギ

「とりあえずこの柵を伝って歩いてみようと思う」

「なら僕も一緒に行きたい、まだ帰るのは嫌なんだ」

 猫もスズメもいいよ、と言って1匹と1羽は1匹と2羽になりました

「ここは結局どこなんだろう」

 ふと気になったウサギは疑問を口に出します

「あら、あなたここを目指してきたんじゃないの?」

 スズメの質問に首を振るウサギ

「とにかく嫌になって走って走って走ったらここに着いたんだ」

 途中何度も転けたけどね、と苦笑してウサギは答えます

「ここは美味しい草が食べられるところ、なんだって」

 猫が疑問に答えました

「あら? ここのことは知ってるの?」

 スズメが聞くと猫はそれに答えます

「君に会う前にヒツジ達に質問したら、そう言われたんだ」

 へぇ、と答えるスズメ

「でもここ、草はあるけど、他は何にもないわね」

 辺りを見回して言うスズメに猫とウサギは頷いて返します

「ウサギのあなたは草を食べるんじゃないの?」

 次の質問にもウサギは首を振ります

「草も食べられるけど、木の実の方が僕は好きだな」

 その答えに納得するスズメ

「そうね、木に成ってる実はとても美味しいのよね」

「僕も好きでよく食べるよ」

「あら、あなたは地面を走るウサギなのに木の上の方に成ってる実を食べれるの?」

 新たな疑問に今度は肯定の意を示します

「食べれるよ、ほら」

 そう言ってジャンプしたウサギはとてもとても高く跳び上がりました

「僕、かけっこは苦手だけどジャンプは得意なんだ」

 自慢げに言うウサギにスズメは言います

「ならそのジャンプを見せつけてやりなさいよ」

 しかし、その言葉には苦笑するウサギ

「あはは、残念ながら上に飛ぶのは得意だけど前に飛ぶのは苦手なんだ」

 上手く走れず、前に跳んでも着地が出来ずに転けるのだそうだ

 その答えにいやいやいや、と首を横に振る1匹と1羽

「それはとてもすごいよ」

「そうよ、もっと自信持ちなさい」

 1匹と1羽が真面目に言っていると分かると照れ臭そうにありがとう、と返すウサギ

 そうやって1匹と2羽は楽しく進みます

 

 一行が仲良くおしゃべりしながら進んでいると、突然小さい何者かが猫にぶつかってきました

「あいててて……」

「ごめんよ、大丈夫かい」

 その小さい相手に謝ると、相手はすぐさま立ち上がり言います

「おぅ、こっちこそ悪いね! 俺様急ぎの旅をしてたもんでな!」

 しかし言った相手は猫を見上げて驚きます

「って、ネコぉ!?」

「うん、おいらは猫だよ、名前は分からないけどね」

 自己紹介した猫は、君は? と聞きます

「お、俺様はネズミのネズ吾郎! ね、ネコって言やぁ、俺様たち、ネズミを喰い漁るとってもおっかねぇもんだ!」

 ひぇええ、と怯える様子を見せるも、一歩前へ出るネズミ

「けど俺様! 今は大事な冒険中なんでぃ! こんな所で喰われてたまるかってんだい!」

 猫に立ち向かおうとするネズミですが、ちょっと待ってよ、と猫はネズミを止めます

「待って、別においら君を食べる気はないよ」

「ほ、本当かい?」

 疑ってくるネズミに猫は頷いて返します

「うん、だっておいら、今お腹空いて無いんだ」

「それ、お腹空いたら食べるってことじゃねぇのかい?」

 まだ疑ってかかるネズミに猫は目線を合わせて言います

「じゃあ約束、おいらがお腹を空かせても君のことは絶対に食べない」

「本当かい?」

「本当だよ」

「本当の本当かい?」

「本当の本当さ」

「……よぉし、じゃあひとまず信じてやろうじゃねぇか!」

 ようやく信じてくれたネズミにありがとうと返す猫

 話がひと段落したことで、スズメはネズミに問います

「あなた、冒険って言ってたけど何か探してるの?」

 その質問に、よくぞ聞いてくれましたと気前よくネズミが語り始めました

「俺様はとんでもないお宝を見つけて、ネズミたちの王になるのさ!」

 王様? と聞くウサギに、おう! と元気よく答えます

「すんげぇお宝を持ち帰って自慢すりゃあ俺様はすっごく尊敬されらぁ! そうすりゃ俺様が王って寸法よ!」

 答えたネズミに苦笑しつつ、頑張ってね、と応援することにしたウサギでした

「あんた、それでどこに行こうとしてたの?」

 スズメがお宝なんて何もなさそうな牧場を見渡してネズミに聞きます

「おぅ! それがよ、なんでもこの先に物知りなウシがいるって聞いたもんでよ、いっちょそいつを尋ねてみようかって思ってな」

 三者三様にその話には興味が湧きました

「そのウシに仕事のコツとか聞いてみようかしら」

「かけっこで馬鹿にされない方法知ってるかな」

「おいら、おいらのことも知ってると良いな」

 それを聞いたネズミは皆んな色々あって大変なんだなぁ、と思いましたが口には出さず、

「知ってたらいいかもな」

 とだけ答えました

 2匹と2羽になった一行は進みます

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