花に嵐   作:上枝あかり

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高瀬舟 12

 お山を登れば、不浄王の大きさは嫌でもわかりました。もう建物一個分どころの騒ぎではありません。木々を飲み込みお寺を飲み込み、既に公園とかお城の域です。しかも、まだ成長しているようでカビのような菌塊はみるみる膨らんでいきます。

「うッぎゃあああ何やアレェエ! どーやってあんなデカイの倒すんや! この世の終わりか!」

 志摩さんが騒ぎます。走りながらそんだけ言えるて志摩さん元気やね。夏山など虫の巣窟ですのでそっちに意識が行かないのはいいことですが。一度立ち止まって坊も言います。

「あれが不浄王……。まるで要塞やな」

 王を名乗るのは伊達じゃありません。実際どう倒すんでしょう。和尚(おっさま)は知らないはずですが、森を燃やしていた奥村くんに頼ろうというのは確かに名案に見えます。山火事とか五山の送り火レベルで燃やすしかないんやなかろうか。見上げていた坊は振り返って私たちに言いました。

「よし、この辺から捜す。あんまり藪の奥まで入らんようにな」

 坊の指示に各々返事します。私はばらけようとした皆をちょっと呼び止めて鞄を開けました。

「あ、待って、旅館から面布(マスク)借りてきたんでそろそろどうぞ」

「借りてきた、てお前それ盗んできたの間違いやないんか……」

「必要物資やし後でちゃんと返すんで見逃して下さい……」

 鞄から出したのは旅館の方で用意していた魔除けの面布(マスク)です。坊が面布(マスク)を受け取りながら言います。無断借用、というのはまあ泥棒です。今日は犯罪に手を染めてばかりです。でも、要るものですので。全員に面布(マスク)を配りましたが、奥村くんは断りました。

「俺瘴気とか平気だから、それ勝呂の父ちゃんの分にしてくれ」

「おん、分かった」

 用意しているときには知らなかったので用意していなかったのですが、和尚(おっさま)が現在行方不明で探してくれと霧隠先生に頼まれたそうなのです。私も面布(マスク)をつけて、藪の中に入ります。前方はもちろん注意しますが、はぐれないよう後方の塾生の誰かの気配が途切れないことにも気を使いながら。

和尚(おっさま)ー?」

 蝮ねえさまが最後に見たという場所には居なかったそうですが、蝮ねえさまは和尚(おっさま)は戦っておられると言っていました。となると本来中心部にほど近い場所にいらっしゃるのではないでしょうか。ここまで大きくなったので和尚(おっさま)は引いてきたと仮定しても、どのルートを通ったかはわかりません。山狩りならもう少し人出が欲しいところですが、贅沢は言えません。地道に捜すより他はないでしょう。捜すと行っても人間一人ですので視野を広く持ちます。物音にも気を配っていると、神木さんの大声がしました。

「ちょっとあれ……和尚さんじゃない!?」

 慌てて藪を戻ります。神木さんの指差した先、そこには確かに和尚(おっさま)が、なんと目を閉じて倒れていました。

和尚(おとん)!」

 しかも喉元には少なくない出血のあと。煩い動悸を無視して駆け寄った坊と逆側に跪いてまずは脈を確認します。あります。しっかりしてます。次は呼吸。こっちもあります。それだけでちょっと泣きそうになりましたが、持ちこたえて次へ。やることがあると、少し感情が遠のきます。

「そ、そんな……」

「ぼ、僕霧隠先生に連絡します」

 なんだか出血が止まっているような気がする喉の傷を改めようと和尚(おっさま)の胸元に顔を寄せたら、唐突に赤い炎の塊が飛び出してきました。

「な……ッ」

 反射的に体を起こします。赤い炎は小さい鳥のような形を取り、そして喋りました。

「我は伽樓羅(カルラ)という名で明王陀羅尼の座主に仕えし者」

 自己紹介ありがたい。伽樓羅(カルラ)の相手は坊に任せて、気を取り直して和尚(おっさま)の喉の傷を診ます。鋭利な刃物で切られたような跡。魔障の痕跡はありません。普通に、刃物で刺されたような傷です。しかももう塞がっています。

「カルラ……!? お……和尚(おとん)の使い魔なんか!?」

「……だったが、その“秘密”が漏れた今、契約は解消された。今は勝呂達磨との()()()()()を履行中だ」

 傷が塞がっていて魔障もないなら、今私にできることはありません。ひとまず皆に傷の具合を報告します。

「……とりあえず、脈も息もありますし、喉の傷は塞がっとります。でも意識はないし血は足らんやろうし油断はできひん。ここで処置できるもんでもないので、早う普通の病院でええから運んだほうがええと思います」

 瘴気対策として、奥村くんの譲ってくれた面布(マスク)をお顔に着けた時、和尚(おっさま)が咳き込み意識を取り戻しました。

「う……私は……」

和尚(おとん)!」

「竜士……! 子供らも。みんな何でこないなとこに……」

「助けに来たんや」

「何ちゅう無茶を……ぐ」

 和尚(おっさま)が身体を起こそうとするので、それを支えて近くの木にもたれかかさせます。とりあえず、意識がはっきり戻って良かった。でも顔色が悪くきっと血が足りていないので、本来なら頭を低く、つまり寝たままでいてほしかったのですが。伽樓羅(カルラ)和尚(おっさま)に言います。

「傷は癒やしたが動くのはまだ無理だ、達磨」

 傷を塞いでくれたのは伽樓羅(カルラ)だったようです。それにしてもあの傷、不浄王によるものとは思えません。となると思い当たるのはもう一人、藤堂三郎太。伽樓羅(カルラ)和尚(おっさま)の顔の前でふよふよとほんの少しの羽ばたきのみで浮かびます。

伽樓羅(カルラ)か? ……えらいちっこくなってまあ……。私もお前も死んだか思たわ」

「我は不死鳥の名も戴く者。幾度も再生する。それにお前とはまだ“劫波炎(ゴウハエン)”の契約が残っているからな。死なせはせぬよ」

 伽樓羅(カルラ)がやけに小さいと思ったらやっぱり縮んでいたようです。傷を塞いだのは不死鳥の力でしょうか。焼いて塞いだような痕ではありませんでした。和尚(おっさま)は私達の方を見て、一点で視線を止めます。

「燐くん……! 手紙を……読んできてくれたんか」

 奥村くんは頷きます。そこに、坊が言いました。

「俺も読んだ。ここにおる全員、大体の事情は理解してここまで来たんや」

「な!?」

「秘密は残らず話してもらう」

 和尚(おっさま)と坊が見つめ合います。やがて、和尚(おっさま)は根負けしたように目を閉じました。

「……判った。不浄王の倒し方を話そう。座主のみに伝わる『真・不浄王之理』によれば、不浄王はどんどん巨大になる。……やがて一城ほどの大きさになり、ほどなく中央に巨大な胞子嚢がつくられる」

「胞子嚢てあれですか? あの一番上の丸こいの!」

 志摩さんが指差した先には、確かにコゴミか何かのように丸まった部位がありました。他の野放図な成長に対し、あそこだけ形がきれいな気がします。

「恐らくそうや。その胞子嚢が熟し破裂すると、濃い毒素の胞子……“瘴気”を撒き散らす。150年前4万人を殺したのも胞子嚢の破裂によるものやった。現代の京都では被害は4万人どころでは収まらないやろう。それだけは阻止せんと……!」

「それじゃ胞子嚢が破裂する前に倒さなあかんのか」

 猶予がいくらあるかは知りませんが、急ぎ仕事になりそうです。しかし和尚(おっさま)は言います。

「それが事はそう単純やない。不浄王の唯一の急所とおぼしき“心臓”が、胞子嚢の中に在るのや。150年前不浄王と戦った不角は未知の魔物に苦戦した挙句、その心臓を二つに分け封印するしかなかった」

「それが不浄王の右目と左目……ってワケね」

 神木さんの言葉を、和尚(おっさま)は否定しません。子猫さんがまとめます。

「つ、つまり……胞子嚢を一旦破裂させんと、“心臓”が打てんいうことですか!?」

「そうや」

「やっかいやな……」

 結界など駆使するにしても、結局心臓を打つ人は濃い瘴気の中に入ることになります。奥村くんは平気とのことですが、本来厄介どころの騒ぎではありません。

「私は十五年前、この伽樓羅(カルラ)と“劫波炎(ゴウハエン)”を借りる契約をした。劫波炎(ゴウハエン)は人の生きた年月を焔に変える術。一生の終わりに放出し一切を焼きつくす大火焔……。私はそれを切り札に不浄王を倒そうと考えとった。しかし十五年ほど蓄えた焔を、不浄王の足を止めるのに使ってしもた。残る焔はあと僅か……」

 伽樓羅(カルラ)和尚(おっさま)の手の上に止まります。炎が燃えているように見えますが、和尚(おっさま)が火傷したり熱がったりする素振りはありません。奥村くんの青い炎といい、悪魔の炎は、物質界(アッシャー)の炎とは性質が違うのでしょうか。

「私はこの残りの劫波炎(ゴウハエン)で、胞子嚢が破裂しても瘴気が外へ漏れんよう結界を張る。燐くん、君には、その降魔剣で不浄王の心臓を焚滅して欲しい」

 和尚(おっさま)は、奥村くんをまっすぐに見て言いました。奥村くんは、気まずそうに下を向きます。

「……すんません、俺……」

「……いや、当然や。命に関わる事やさかいな……」

「え? いや……俺、今剣抜けなくて……」

「え?」

 和尚(おっさま)も、今まで黙っていた私達も全員声が重なりました。……なんて?

「さっきから抜こうとしてんだけどやっぱダメだ」

 奥村くんは刀に手をかけて力を入れているように見えますが、刀はびくともしません。……ヴァチカンに処刑されるところだったわけですし、そういう封印をされてしまっているのでしょうか。

「はぁ!? 何でや!?」

「俺もわかんねーけどどうも精神(メンタル)的な問題らしくて」

「そんな事あるんか!?」

 坊がツッコみます。封印されてないのは結構ですが……。幼稚園とか行きたくなくてお腹痛くなるのと、似たタイプのやつでしょうか。

「俺だって悩むんだよ! ……だから今は力になれない。勝呂の父ちゃんゴメン!」

「そうか……。それはそれで心配やな」

 奥村くんを心配すると、和尚(おっさま)は身体を起こそうとしました。その身体を支えますが、動きからして立つのは無茶に見えます。

「しかし! そうとなれば……とにかく私一人で結界だけでも……!」

「無理だ達磨。お前は血を失い過ぎた」

 伽樓羅(カルラ)和尚(おっさま)の耳元で言います。しかし和尚(おっさま)は立ち上がろうとして。

「なんの……。う……」

和尚(おっさま)!」

 崩れ落ちました。支えていた腕に力を入れて、楽そうな体勢に持っていきます。

「傷は癒やしたがお前は失血死寸前だった。その身体で“結界呪”など唱えようものなら間違いなく死ぬぞ」

「しばらく()()()ええ……! 私の命より大事なことや……!」

 伽樓羅(カルラ)の言葉に和尚(おっさま)は言います。青い顔で冷や汗を流して、それでも前を睨むように見据えて。自分の無力を噛み締めます。結界が得意と言っても、和尚(おっさま)の言うような大掛かりなものは、きっと今の私では張れません。後ろ盾となる悪魔がおらず、事前の準備もないからです。坊も似た気持ちだったのか、まず子猫さんに声をかけました。

「子猫丸、霧隠先生にまだ連絡つかへんか?」

「それがさっきからノイズ音しかせんくて……。瘴気が濃すぎるんかもしれません」

「――和尚(おとん)、俺らに出来ることはないんか?」

 坊の言葉に、和尚(おっさま)は答えません。しかし伽樓羅(カルラ)が言いました。

「おや? そういえばお前は達磨の息子か。なら丁度いい。血が繋がっている者へなら劫波炎(ゴウハエン)を移すことが出来る」

「あかん!!」

 伽樓羅(カルラ)の言葉に和尚(おっさま)は大声を上げました。無茶です。身体を支える腕に力を込めます。

「それだけはあかん……! まだ子供や! 竜士は絶対に巻き込ませへん! こんな柵は当代で断つて、私はこの命を懸けて誓うたんや!! それだけは……」

「今まで……そうやって一人で背負うて来たんか……」

 荒い息の和尚(おっさま)に、坊は悲しそうな、怒っているような顔で言いました。たぶん、どっちもでしょう。

「は……なに……私が好きでやってきたことや」

「そうはさせん……! 俺も背負う!! その様で文句は言わさへんぞ……!!」

「達磨……、息子のほうが賢明だ」

 和尚(おっさま)は坊と伽樓羅(カルラ)の言葉を受け、苦しそうに坊の顔を見ると、うつむきました。

「……ああゆう子やから……、関わらせたなかったんやけどなあ……」

 その言葉を了承とし、伽樓羅(カルラ)は言いました。

「では劫波炎(ゴウハエン)の継承を行う。ここに所有者勝呂達磨の血の者であるという、血の証を示せ」

 坊は親指の皮を歯で噛み切って血を出して、伽樓羅(カルラ)の方へ見せました。

「確かにお前は勝呂達磨の血の者……」

 途端、坊の手に、体に、赤い炎がまとわりつきます。とても眩しくて、夜の山に慣れた目には痛いくらいです。

「勝呂竜士。これでお前が劫波炎(ゴウハエン)の所有者となった」

「赤い炎……!」

 誰とは言わず、その感想が漏れました。ちらちら纏った赤い炎は消えて、代わりに伽樓羅(カルラ)が坊の頭の上に乗ります。

「竜士。お前に本来座主だけが受け継ぐ、最も強力な結界呪を伝える。おいで」

 和尚(おっさま)はゆっくり立ち上がり、坊にそう言って私達から少し離れたところへ行きました。それを見送って、考えます。

 和尚(おっさま)を見つけたときからずっとずっと、動悸が収まらなくて、頭の中が形作る前の不安で占拠されて目の前で起こることを見るだけになっています。いえ、きっと、重傷の蝮ねえさまを見たときからそうでしょう。体に染み付いたような行動しか出来ていません。不安の名前は、きっと“死”。蝮ねえさまの、和尚(おっさま)の、京都中の知り合いのそれ。

 坊はこの後、結界を張りに行くでしょう。その結界がどういう性質のものかはわかりませんが、霧隠先生が近付くなと言った不浄王に近付くことも十二分に考えられます。むしろ、そんな予感すらします。それはつまり、坊の死が予想の中に来るわけで。

 本当は、誰にも危ないことなんてしてほしくありません。でも坊は、誰かがするのなら自分がするでしょう。劫波炎(ゴウハエン)の継承権が自分のみになかったとしても、きっと。でも、止めても無駄です。そういう人です。行くに決まってます。なら、私は。私は、何のために東京の塾にまで行ったかって。

和尚(おとん)!」

 坊の声。気を使って視線を逸していたそちらを見れば倒れる和尚(おっさま)。全員で駆け寄ります。しゃがんでひとまず脈を。さっきより速く弱くなっています。しえみちゃんが、何か水筒を出しました。坊は言いました。

「鶯花、杜山さん、それに神木。ここに残って和尚(おとん)を頼めるか?」

「う、うん!」

「……判った」

「……」

 返事をしたしえみちゃんと神木さんに対し、私は返事ができませんでした。それを追求せず、坊は立ち上がって言います。

「志摩、子猫丸。二人は霧隠先生や明陀の皆に、さっきの話を伝えに行ってくれ」

「坊は?」

 聞き返した子猫さんに、坊は言います。

「俺は結界を張りに行く。この結界は触地印を中心に広がる。なるべく胞子嚢の近くで展開させな」

 ……嫌な勘ばっかり当たるものです。

「!? あ、あんな所に行かはるゆうんですか!? 無茶です!」

「坊! 今まで親がメンドいから黙って従っとったけど、今回のは話が違うし一言ゆわせてもらうわ」

 子猫さんが叫んで止めたのに対し、志摩さんはいつもの愛想もなしに冷たく見えるほど冷静に言います。

「アンタほんまに死ぬで?」

 でも、止めても行く人だって、二人だって知ってるやろに。和尚(おっさま)を見ていた顔を上げて、口を開こうとした時。

「大丈夫だ。勝呂は俺が守る!」

 奥村くんがしれっと言いました。

「あ゛あ゛!?」

「いいだろ!? 剣は抜けねーけど炎少しは使えるし! 何より俺強ーからさ! 俺にまかせてくれるか? 子猫丸」

「えー? 俺は?」

 自分に聞かれないことを笑ってない目で訊く志摩さんの横で、子猫さんは眉毛を八の字にして奥村くんを見て、それから何かを我慢する顔でこくんと頷きました。まだ、奥村くんの安全性は保証されていません。信じるために、自分の疑心を振り払うように子猫さんは走り出します。

「!? ……ちょ、子猫さん!? だー、もう皆して後で後悔しても知らへんからな!!」

 それを追って志摩さんも走り出します。後悔なんて、する状況ならもう死んでるでしょう。坊は和尚(おっさま)の脇に座った私たちの方を向きます。

「……三人とも、和尚(おとん)頼むわ」

「いや、あては着いてかせてもらいます」

 私は立ち上がって、坊の方をまっすぐ向いて言いました。

「鶯花!? 阿呆、危ないやろ!」

「せやけどあての今の荷物じゃ和尚(おっさま)に何も出来んし、それに坊、結界張るんは体力仕事です。今着いてかんかったらあて、何のために()預かっとるんかわからん。蝮ねえさまからも頼まれとるんや、やめろ言うても着いていきますからね」

 私が、何のために体を鍛えて勉強してきたのか。坊が命の危機に飛び込む時に、その危険を減らすためなのに。奥村くんを信用してないわけやないけど、坊を守るのが明陀なのです。それに、預かっている軍荼利(クンダリ)さんはそういうサポートに向いています。知らない坊ではないはずです。坊は葛藤するように黙ってから、眉を顰めて舌打ちしました。

「……ああもう、一理あるんがタチが悪い。……頼む」

 タチが悪くてごめんなさい。でも、きっとお邪魔になりませんから。お役に立ちますから。その為に……いや、でも、本当は、違います。ここは、正直に認めましょう。ただ、坊に置いていかれたくあらへん。坊は和尚(おっさま)に背を向けて言います。

「……俺達も行くぞ」

「おお!」

「はい!」

「気ぃつけて……」

 後ろから、か細い和尚(おっさま)の声。あの、読経の時の張りは見る影もありません。思わず涙をのんで振り返れば息を荒くした和尚(おっさま)

「ほんま堪忍や。……竜士、ふがいない親父を……許したってや」

 坊は和尚(おっさま)の方を振り向かないまま言います。

「俺は……和尚(おとん)の詠む経が好きやった。せやから、絶対に死ぬな」

 その後はもう、ただ走ります。目的地の胞子嚢は高く遠く、しかし確かに見えていました。




 魔除けの面布は原作でちらっと虎子さんが言ってたやつです。八百造さんが瘴気対策を忘れるなって言ってるので本隊もしてておかしくないと思うのですが、面布じゃ顔隠れちゃうから漫画として致命的でそれ故してないのかなと思ってます。今回は小説なので遠慮なくつけてもらいました。
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