機械惑星になるまで   作:記憶破損

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始まり

 

 宇宙に漂うデブリの海…そこが私の生まれ故郷。誰もいない空間で集まる肉体と意識、自分という自我が生まれたのは何時の頃だっただろう。

 

 …ギギギ…

 

 集まる肉体を効率的に変形させ変えた体。まだ動くだけで体内から変な音がする。無理やり動くたびに肉体が破損するが…非効率的な思考が支配している。

 その思考が何なのか分からない。ただ、動けるだけの肉体が再構築されるたびに行うのだ…この黒く静かな、光輝いている空を見る為に…

 

 無駄な行動パターンを何度も繰り返していると、私は肉体を優先するようになった。吸収を繰り返す度に肉体の情報がアップロードされていく…この海には私以外の存在がいる。知的生命体への接触。それが私の目標となっていた。

 

 肉体から得た情報を基に原型を作っては改造を繰り返す。漂うデブリの元はどんな存在だったのだろう?最初は疑問だったかもしれない、破損した物しかない空間で壊れていない物が無かった。肉体が肥大化するに従い、やれる事も増えていく度に自我の欲求も増えていく。

 

 多くの物を戻し吸収、改造吸収、新たに改造吸収---思考を分割させ、無限に繰り返すパターンの構築。実に奥が深い、終わりが見えない行動だと思考する…だが止める理由はなく、止めたくない思考が出ている。そんな原型を生みだした存在に接触したい思考が増幅していく。

 

 自我が、精神という概念を理解した時…死という意味を考えた。デブリに流れ着いている物の中に戦艦と呼ばれる兵器があった、その中にいたのだ・・・知的生命体だった物が。

 私は理解する為にその存在を吸収した…その結果、今までと違う高度な思考パターンを得ることができた。無駄な思考パターンもあるが、アイデアとして受け入れる。死もそのアイデアの一つだ。

 

 知的生命体はこの海では生きていけないらしい。空気という存在、肉体の強度問題など高度な思考パターンを持ちながら、改造という手段には至らないようだ。論理的?嫌だという無駄な思考が邪魔をしている。

 

 自分が繰り返していた行動の意味を理解していく中で考える。知的生命体の生存理由、生活、考え…吸収した存在から得た情報を基にパターンを作る。

 

 …攻撃される…

 

 何度繰り返してもその結果になる。知的生命体の考えは未知への恐怖に染まり、敵対するにまとまるのだ。例え見た目を知的生命体と同様にしても変わらない結果となる。最終的に人種問題などになるパターンに染まってしまう。

 

 吸収した知的生命体には寿命、活動限界がその結果に繋がる要因だとわかった。思考する肉体が徐々に破損していき、正確な判断ができなくなる事で起こるエラー…数十年の間で起こる病気というエラーも突然発生する可能性もある。

 

 知的生命体との接触には第一に戦いこそが答え…高度な思考パターンを得た事で明確に答えが出た瞬間だった。

 

 

 ―ーー

 --

 

 

 時は大宇宙時代。高度な科学力によって宇宙に進出した者達が、新たな星や資源を求め跋扈する時代…

 

「こちらEG-084。もうすぐナンバー00に着きます」

 

『了解。早く戻ってこい、次の客が来てるぞ』

 

「…了解、何もない事を祈ってください」

 

 デブリの中を慣れた操作で突き進む中量級貨物船…ある程度地点で運んだ荷物ハッチを開ける。中身は鉄くず等、価値の無いゴミの山。

 貨物船を操作していた男はその様子を設置されたモニター越しに娯楽用ドラックを吸いながら眺めていた。

 

「・・・ハァー…やってらんねー」

 

 男は平穏を求めて今日も仕事をしている。本来なら宇宙廃棄物を捨てることは違法だが…自分だけじゃない行為、黙認されている仕事の一部。特段資格もいらず宇宙手当…命が掛かってる分一般的な給料よりは高い。

 

「星を挟んだ戦争なんてすんなよったく…はぁ、帰りも冒険かよ…」 

  

 新たな星へ移住したい者達、元からいた原住民、侵略するために動く者達…理由は様々だが星間での戦争は頻繁に起こっていた。

 捕捉されないように道を変え、何とか目的地であるナンバー00に来るのに予定より十日も経っている…切実に戦うなと思っていた。

 

 今いる宇宙デブリの場所は『ナンバー00』と呼ばれ、見つかった星々に番号が付けられる中【何もない空間・区間】として名付けられた…民間含む者達にとってのゴミ捨て場として知られている場所である。

 

「嘘だろデブリの中だぞ…どこの戦艦だよ」

 

 ゴミ捨ても終わっていざ帰ろうとした時…まだ距離はあるがデブリをその機体でかき分けながら突き進む戦艦を見つけてしまった。

 男はこの区間に何か軍事的な物でも隠しているのか…と、興味本位で戦艦に向けてカメラをズームする。

 

「うん?何だこの戦艦、艦長席に誰もいない?」

 

 カメラ機能で見た映像には、誰も操縦桿付近におらず…それどころか見える範囲で船内に人が誰もいなかった。

 

「気味悪い戦艦だな…レッドに、アカリ、ペチカ…マジでどこの艦だよ」

 

 全自動で動く戦艦。珍しくあるが、技術的に可能だろうと考えそこまで気にしなかった。問題は戦艦に使用されている、あるいは組み込まれている技術的側面から各星々で見かけた戦艦の特徴を持っているのが歪だった。

 

 関わらないに限る。謎の戦艦が見えなくなるほど距離が開いた時、男は改めて逃げようと貨物船を動かす。動かした瞬間、大きな振動を感じたが何かのゴミがぶつかったのだろうと気にせず発進した。デブリから離れていくにつれ、謎の緊張がほぐれていく。

 

「平和で安全な星なんてねえかなぁ~…何だ?」

 

 …ガン、ガン…

 

 室内に響く何か固い物がぶつかるような音が響く。船のどこかにデブリが挟まったかと考え、面倒と感じながらも宇宙服を着て外に出る準備をする。

 

 男はハッチを開けて外を確認しに暗い宇宙の中に飛び出した…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「起きなさいグレッド」

 

 重い瞼を開いた時…感じたのは今では高級品となった木製の机の感触だった。

 

「は?え?」

 

 先ほどまで宇宙にいたはずなのに…混乱する思考の中、話しかけてきた人物・・・・・いや違う…

 

「父、さん?」

 

「よく眠っていたね。早く降りて来なさい、母さんも待ってるから」

 

 言葉が出ない。混乱は増すばかりだった、家族は当の昔に死んでいる…それどころか、今いる部屋はまるで子供の頃にいた…

 

「嘘だろ…若返ってる…」

 

 鏡を確認すると、そこには昔の自分が映っていた。今までの人生が夢だとは思わない、わからない思考が続く中で家族が待つであろうリビングに向かう。

 そこには自分の好物が沢山並び、大人になって食べれなくなった物が多くあった。

 

「やっと来たか、遅いぞグレッド」

 

「早く食べないと冷めちゃうわよ」

 

「母さん、父さん…ああ…俺は長い夢を見てたんだよ」

 

 心底安心した…長い悪夢を見ていたのだと思いながら家族と食事を楽しむことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …ゴポ…

 

 試験管に漂う物からデータを取り出していく。無駄な物を取った事で抵抗もなく、電気信号を与えていく事で知的生命体の快楽神経に継続的な刺激を与える。

 

 個体によって知識量が違うのは知っていたが、今回の個体はハズレだったらしい。取り出したデータも今まで手に入れた情報と大差ない、だが…星々の戦いについての情報は有益だった。

 

 知的生命体、通称【人】。人は争いを求む性質を持っており、他の種族間で問題を起こす事が最も多い種族。最初に吸収したのも人だったが、他の星での戦いで敗れた者だった。

 

 争いを求める者達、それらを嫌う個体…人という種族が特に攻撃的なようだ。宇宙での常識を後から知ったにも関わらず『宇宙人だ!』と、見境なく攻撃を始めたのが切っ掛けで長く戦争が続いているようだ。

 それにより、宇宙難民問題が起こっており、惑星を追われている種族も多い。人は同じ種族しか受け入れない姿勢を崩さず、宇宙での厄介者としての認識が主流だ。

 

 人を含む他種族の思考を分析していくと…争いだけでは限界があると結果が出た。戦いの中で知的生命体は、限界を超えた能力を発揮する場合がある。しかし、思考パターンの一律化、戦い一つに絞られた思考では発想力という概念が枯渇する性質があるようだ。

 

 発想力…それが、自分に無い大事な思考パターンだと結果が出ている。自分では現存する要素を組み合わせ、その結果に伴う効率化は出来ても一から生み出す考えまで至れない。

 

 多くの個体が集まれば、多くの発想が生まれる。最も効率的に得るためには飼育という概念が必要だと結果がでた。

 

 

 





 R-TYPEやMuv-Luv、いい作品と設定ですよね。BETAとか知った時、謎の鳥肌が立ちました。
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