惑星ガンジャは湿度が以上に高い星だ。宇宙では手に入りずらい貴重な植物が豊富に存在している。何より、娯楽商品に関しては宇宙を股にかける売り上げを叩きだしているのは宇宙民では有名な事だ。
「ブッフゥ…つまり、惑星一つが当然消えたと?」
「そうなんすよ、俺達も意味がわからなくて」
「おい、もう少し」
「いいえ、構いませんよ。お互い助け合いが必要な世ですからな、ブッフゥ」
ガンジャの原住民は植物の肉体を持つ種族だ。人型の木…それに顔が付いたような容姿をしている。普段から葉巻のような物を吸っているが、それは彼らにとっての栄養源を気体状にして吸収しているだけらしい。
「まあ、運び屋は需要がありますからな。お二人は前から贔屓して頂いた方々、こちらとしても喜んで受け入れさせて頂きたい」
二人が礼を伝えてきたのを笑顔で受け止め、出ていく背中を確認すると…浮かべていた笑顔を止め、他の者達に指示を飛ばす。
「ブッフゥ…さあて、面倒な事をしてくれた輩を探しますよ」
「同士ハッパ、惑星ピオーネの場所に心当たりが?」
「お馬鹿ですねぇ、惑星一つを目立たず無くす方法なんてワープぐらいしかないでしょう」
「ですが同士、そんな大掛かりな事をする設備をあの惑星で揃えられるでしょうか?引火させない為、ジェネレーターもフィールドで覆うなどエネルギーを割かれ、とても足りないかと」
「機材を分割で飛ばして、現地で組み立て…予算を考えなければいくらでも考えられますよ。問題はそんな大掛かりな誘拐をしてどうするかでしょう?」
ワープを行うには大出力ジェネレーターが必要になる。一般的な貨物船や戦艦などにも搭載されているが、星をワープさせる規模となると…相応のエネルギー出力が必要になる。
現実的に可能ではある。実際にブラックホールが発生した際、星間で協定を作った後に惑星ワープの事例が実際に存在しているのだ。ただ、その行為を行うのにその惑星の電力4割相当を必要としたらしい。
「まあいいでしょう。ワープを行えば必ず歪みが出ますからねぇ、ナンバー794に観測ドローンを飛ばしなさい。他の星の者達も時期に似たような答えに辿り着くでしょう」
二本目の葉巻を吸い出し、ハッパは今回の犯人について考察した。
惑星ピオーネはエネルギー資源の星として有名である。それ故に影響力があり、その星間での戦闘を躊躇してしまう程である。こんな大それた事をしたとなれば各星々から共通の敵として攻められても文句を言えない。
今回の出来事でエネルギー不足になる星々が発生するだろう、それに伴う治安の悪化は避けれず、漁夫の利を狙う連中も出てくる…益々世が混沌に向かうのを後押しするだけだ。
(それが目的でしょうかねぇ…商売敵にならない輩なら歓迎ですが、儲けを度外視する輩なら面倒ですねぇ)
ハッパは吸った煙で輪っかの形を作りながら、その時まで待つことにした。
惑星ガンジャは自然を大事にしている。自分たちの生命に直結する為でもあるが、市場を作る上でも自然が豊富とは強みの一つになるのだ。
科学技術の発展に伴い、自然を度外視した星々は多い。そういった星々に植物を売るのも商売になっているのだから、ガンジャの住民にとって笑いが出るほど上手くいっていた。
「ハァァァ!クッキィィィ!この濃厚な味、匂い!感じる高揚感最高ォォォ!!」
「それは良かったですぅ、新商品のコブラもどうぞ」
「あ~…相方が戻ってこれなくなるんで、ケースでください。ほら、行くぞ!迷惑だろが」
「ポポポ、また来てくださいねぇ」
「ま、待て!あ、あれも」
「バカ、痙攣が出てるだろうが」
急遽転職を余儀なくされた二人。そんな彼らはガンジャマーケット広場に来ていた。ここでは普通の市場で手に入る品から、曰く付きの品まで揃う特殊なマーケットシステムがあり、余計な詮索はせず買うか売るか、そのどちらか以外はご法度である。
煩い相方を掴みながら自分も練り歩いていると…面倒な輩を見つけてしまった。
ヤーコン海賊団かよ…
ヤーコン海賊団。植物系宇宙人達で結成された海賊団であり、拉致や窃盗の常習犯が集まる。特徴として、各隊員のどこかに細長い白い棒状のエンブレムを刺繍している。
「たく…プティベールの奴、ゴミ捨てにどんだけ時間かけてやがる!もう四日だぞ、四日!」
「仕方ないよ~、最近ゴミ収集してたEGの連中が失踪しちゃったし~」
「どうせパブにでも行ってやがるぞ絶対!」
当たり散らしながら奥の方へ向かって行く連中を静かに見守る。
「それにしても~最近さあ、失踪が多い気がしない~?」
「よくある事だろうが。事故か、同僚か、はたまた運が悪く察に…いや、あいつらに捕まったらどいつも終わりだ」
「う~ん?気になるな~」
…奥の方に消えていく連中を確認してから動き出す。相方も流石に大人しくしていたので助かった。ああいった輩に関わるとロクな事がない。
「失踪ねぇ…俺らも母星が失踪中だ。捜索願でも提出してみるか?」
「その前に俺らが失踪することになるぞ」
宇宙の治安を守る存在がいる。その者達は悪を絶対許さない…極端すぎる正義を掲げる集団、通称ルリム。嘘を嫌い、決まり事を守り、正直に生きる、この三つを基本として宇宙条約の基盤を作った種族でもある。
悪い事をするとルリムが現れる…幼い者達が怖がる代名詞となるほど過激な処置を行う事で有名だ。特に酷かった事件は、惑星ごと零下爆弾で氷漬けにしてしまった事だろうか。まあ、後ろめたい事に心当たりがあるなら関わらないに限る相手である。
「でも奴らも動くんじゃないのか?今回の事件は規模が大きすぎるだろ」
ルリムが動く条件。それは単純だ、この宇宙にとって害になるかならないか、その影響力が大きければ審判者として動く。
それ故に戦争を起こす連中は理由付けを必ず行っている。民の為、奪われた土地、食糧難…何かしら動く理由を作る為、それに伴う商売を生業とする連中もいるぐらいだ。
「できれば奴らより、民間で見つけてくれれば幸い何だが…」
ナンバー794…エネルギー吸収率70%…化合物が多く、エネルギー変換効率に著しく障害が発生…
ナンバー00。デブリの海の奥の奥…光も届かぬ場所に明るい光源が発生している。その光は星の輝き、命の光が徐々に小さくなっていく。
…知的生命体は有機生命体の割合が多すぎる…
機械の肉体を持つ存在は悩みを持っていた。他の生命体を生かす為には現環境では非効率だった。己がコントロールする無人兵器群で交流していたが、数が増えれば手狭になる。
彼らを活かすポッドの生産、生存継続する電力等のエネルギー問題…脳波から構築する彼らの世界。それらを賄う己のスペック限界。
…飼育する庭を作るべき…
肉体の肥大化が止まらない。今では下手な戦艦より大きくなった肉体だが、まだまだ足りていない。
ナンバー794、惑星ピオーネに狙いを定めたのはエネルギー及び資源確保の為だ。端末を惑星中心まで突き刺し、自分をワープさせエネルギーを直接吸収した…流石に惑星レベルの物をワープさせるにはスペックが足りなかった。
段階的にエネルギーを吸収、戻って充電の繰り返し…約半日繰り返すことで質量がワープできるレベルになってやっと手に入れることができたのだ。
今行っている作業は惑星そのものはエネルギーとして吸収、資源は別枠として保存している。資源は知的生命体が欲する物であり、エサになる為だ。
現に今現在も探し回っており、その都度こちらから交流している。知的生命体の反応が速く、それだけの価値があったという訳だ。
『こんなところにステーションがあるなんて…誰が作ったんだ』
『酸素も十分、見ろよ!資源がこんなにある!これだけあれば』
『無人ドローンが作業しているのか』
『パパ!おっきい乗り物がある!』
『戦艦!?』
反応は上々のようだ。宇宙難民はこの時代いくらでもいる存在。替えが聞く者達で試すのが一番効率がいい。
知的生命体を集めるに当たり、モデルケースを作成した。規模としては約八万㎡ほどだが、拡張もできるようにしている。それは難民たちに任せるとする。
この者達がどのような発想を広げるか、自らの思考パターン以上の物を開発してくれるかは不明だが…言葉にするなら自分はとてもワクワクしている。