この素晴らしい社畜に安寧を!   作:どこはかとなくやばい人

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えげつない勢いで書き溜めが生産されてる


第16話

「ダンジョン?」

「そう! お宝眠る秘境の地、ロマンに溢れた謎空間! ナナミさんも興味あるでしょ!?」

 

 盗賊という職は、敵やお宝への感知、スティールやバインドといった拘束・妨害技に長ける職。別に戦闘をこなせないという訳ではないが、それでも正面からとなれば他の職と比べ一歩劣るのが事実。

 特に、バインドが通用しないような相手。図体の大きな敵と相対した場合、ほぼ無力となる。

 

「私を誘う理由は?」

「えーっと、そのー……今回のダンジョンは割と強めの敵が出るらしいところで、私一人だと心許ないから着いてきてもらえないかなーって」

「……まぁ、構いませんよ」

「いいの!?」

 

 こんな簡単に承諾をもらえると思っていなかったクリスは、思わず声を張り上げた。

 七海曰く、カズマらが初心者向けダンジョン、キースのダンジョンに出向いている間自身は手持ち無沙汰になるため、クリスの提案はちょうど良い暇つぶしなるであろう、とのこと。

 

「ちなみに、サトウくんたちの方に着いていかなかった理由は?」

「自信満々に"元々私一人で余裕なんだから、ナナミはゆっくり休んでてちょうだい!"と、アクアさんに言われたから───クリスさん? なぜそんなに笑っているのですか?」

「い、いやっ、ごめ、ごめんっ。ナナミさんの声で先輩の喋り方をされるとっ……!」

「先輩……?」

 

 アクアは、あれでも一応歴とした女神である。それを先輩と呼ぶのであれば、少なくともクリスは天界の関係者。なんなら、女神という線まで追おうと思えば追えるのだが。

 明らかな厄介ごとであるのは目に見えている。焦って必死に誤魔化すクリスを制止し、本題に入るよう促す。

 

「あ、ごめんね。とは言っても、大体はさっき話した通りなんだけど……。ナナミさんって、今までダンジョンに潜ったことある?」

「ありませんね」

「それなら、私が前に出たほうがいいかな。盗賊のスキルに"敵感知"があるから、反応があったら都度ナナミさんに処理してもらう形になるね」

「了解しました」

「よし! それじゃ、お宝探し、いってみよー!!」

 

 テンションを上げ、ノリノリで拳を突き上げたクリスに対する七海のアンサーは沈黙。

 結果として、一人テンションを上げた女が急に大声を上げた、という構図が完成する。

 クリスはみるみるうちに顔を赤らめ、七海の腕を掴んでその場から去ろうとした───したのだが。

 筋力値に劣るクリスが七海の腕を引ける訳もなく。これまた奇妙な光景が完成するのみ。結果として、クリスは少しだけ泣いた。

 

 

 

 

☆♪☆♪

 

 

 

 

「ダンジョンにはね、罠が仕掛けられてることがあるの」

 

 "罠解除"のスキルを発動しながら、クリスは七海にそう語る。如何に高い戦闘力、優れた勘を持つ七海であろうと、この点はクリスに敵わない。

 某白髪目隠しであれば罠を全て無視して、なんなら全て起動させた上で宝を入手し悠々帰宅するのだろうが、生憎と七海は人外ではないのだ。

 

「カズマくんみたいに感知スキルを持った冒険者か、盗賊。ダンジョンアタックをするのなら、このどちらかは欲しいかな」

「魔道具等で誤魔化せないのですか?」

「う〜ん、できないこともないけど……。スキル内蔵系の道具は結構値が張ることがほとんどだからね。買えるレベルのパーティなら、外部からスキル持ちを雇ったほうが安いかな」

 

 ダンジョン内。薄明かりに照らされた道を進んでいる最中、クリスは仕掛けられた罠を次々と解除していく。

 即死トラップこそ滅多に見当たらないものの、厄介な物では踏んだ瞬間ダンジョンが出入り不可になるものや、死にはしなくてもダンジョンアタック続行不可能なほどの怪我を負わされるものまで、多種多様なトラップが取り揃えられている。

 

「あ」

 

 カチッ、と。なにかスイッチを押した、ないし踏んだ時に鳴る特有の音が、静かなダンジョン内に響き渡る。

 ゴゴゴ、と音を立て開く壁の先には、丸い形状をした、今にも"転がります"と言いたげな大岩。クリスは七海の方を振り返り、一言。

 

「……てへっ?」

「言ってる場合ですか!!」

 

 クリスと七海は一目散に逃げ出した。別に七海の力であれば大岩を砕くこともできるのだろうが、謎パワーで物理衝撃に対する保護がかかっている可能性も否定できない。

 幸いにして、二人の俊敏値は高い。転がる大岩に追いつかれることもなく、無事曲がり角に辿り着き、難を逃れることに成功した。

 

「……あれ? この近くにお宝部屋がある!」

「怪我の功名、と言うわけですか」

「ふふーん、見た、ナナミさん? これがダンジョン探索のエキスパートたる私の……あ、ごめんなさい。謝るからそんな目で見ないでください」

 

 調子に乗り出したクリスを冷たい視線で見つめた七海。流石に思うところがあったのか、クリスのテンションは急下降し、即座に謝罪にまで追い込まれた。恐るべし七海。

 

「それにしても、この先は行き止まりのように思えますが」

「待ってて。こう言う時は大体この辺に……あ、あった!!」

 

 よくある隠し部屋に繋がるスイッチ。壁の色と同化しているため見つけづらくはあったが、そこは流石クリス。一目で見抜き、そのスイッチを押した。

 重い音を立てて扉が開き、隠し部屋への道が開かれる。

 

「ナ、ナナミさーん!?!?」

「……厄日だ」

 

 ただし、開かれたのは下への道。七海が落ちた後再び扉は重い音を立てて閉まり、二人は完全に分断される形となってしまったのだが。

 




なお一話は物凄く短い模様。ごめんね。
明日も投稿します
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