この素晴らしい社畜に安寧を!   作:どこはかとなくやばい人

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ですとろいやー!!


第21話

機動要塞デストロイヤー。かつて魔法技術大国ノイズの技術者によって対魔王軍決戦兵器として生み出され、そのまま暴走して国を滅ぼした超巨大ゴーレム。

 大国の技術、生産力の全てが注ぎ込まれたそれは、当然ながら装甲、速度、破壊力、諸々の面で規格外のものを誇る。

 近くに寄れば転生者すらミンチにされかねない攻撃力、加えて超強力な魔法結界が張られていることから、遠距離からの魔法攻撃も大抵のものが意味をなさない。

 正しく、災害。デストロイヤーが通った道にはアクシズ教徒を除き草一本すら残らず、下手に抵抗することを考えずに逃げて、過ぎ去ったのちに復興を考えるのが賢明である、とまで。

 

 本来であれば、初心者の街の戦力程度で対抗することは不可能。だが、この街には魔剣持ちのミツルギや七海、アクアといったイレギュラー。そしてこの街に何故か留まる高レベル冒険者の存在により、王都とまではいかなくともそこそこの戦力を誇る。

 そして、冒険者。特に男連中の士気が高いことには、理由がある。

 

「俺たちは、この街で散々世話になってきたんだ……!」

「ああ、駆け出しの頃から、何からナニまでな!」

「今更見捨てて逃げられるかよ……!」

 

 まぁ、アレである。この街がなくなること、それはすなわち、サキュバス店が失われることを意味する。

 あの店がなければ間違いなくここまでの人数は集まっていない。冒険者は基本命知らずではあるが、それと同時に誰よりも自己保身に長ける存在なのだ。

 

「皆さん……!」

 

 ギルド職員は、例の店の存在を知らない。であるからこそ、冒険者たちがアクセルを愛し、守り抜くことを誓う姿を見て感涙を流している。

 しかし、機動要塞デストロイヤー。単純な戦力で言えば王都に勝るとも劣らないノイズを滅ぼした力は伊達ではなく、そこらの木端冒険者がいくら集まろうと塵のように吹き飛ばされるのが関の山。

 対策を練らねば、待ち受けるのは滅びのみ。

 

「アクアなら、デストロイヤーの結界を破れるんじゃないか?」

「破れるんですか!? デストロイヤーの結界を!?」

「うええ!? や、やってみないとわからないわよ?」

「それでも! 可能性があるのならば、お願いします!」

「…………」

 

 アクアは考える。この場でデストロイヤーの結界を破れる可能性があるのは己のみ。ミツルギや七海等、物理攻撃に長ける人間はいるが、魔法、特に結界破りとなればめぐみんやウィズといったアークウィザードにも難しい。

 今現在、アクアは借金を背負っている。七海から借りたもの、ギルドへのツケ、その他色々なところで貯めてきたツケ。

 そもそも、アクセルがなくなれば商売どころではなくなるのだ。褒賞として金銭を受け取り、借金もなくなり、周りの冒険者からはチヤホヤ……。

 

「よっし、やってやろうじゃない! この水の女神、アクア様の力を見せてあげるわ!!」

「め、女神……?」

「を自称する可哀想な子なんです」

「そ、そうですか……」

 

 アクアの機嫌を損ねないよう、カズマは小声でルナに耳打ちした。

 いくら残念な子であるとは言え、頼らざるを得ない状況。一抹の不安を覚えながらも、ルナは話を進める。

 

「結界を破ったのち、デストロイヤーを破壊するためには……」

「……壊すだけならいるじゃねえか」

「ああ、いるな。頭のおかしいのが一人」

「頭のおかしい爆裂娘がいたな!」

「私のことですか、私のことを言ってるんですか、私のことを言ってるんですね!? いいでしょう、ならばここで私の頭が如何におかしいかをお披露目……ナナミ?」

 

 いつも通りの勢いでめぐみんがキレ散らかそうとしたところ、七海がめぐみんの肩に手を置く。

 折檻を喰らうのかと一瞬ビクッと震えるめぐみんだが、続く言葉に別の意味で震えることとなる。

 

「いいですか、めぐみんさん。今の貴女は、アクセルに残された最後の希望です」

「最後の希望……」

「ええ。貴女が居なければ、この街は滅ぶ。全ての軌跡は泡沫と化し、数多の人間が骸と化す」

「…………」

「めぐみんさん。貴女の爆裂魔法が、この街を救う最後の手段です」

「…………いいでしょう!! 爆裂魔法、その真髄を以てデストロイヤーを穿つ! とうとう我が威容を世界に知らしめる時が来た、ということですね!!」

 

 ミッションコンプリート。七海はルナにアイコンタクトを送り、ルナもそれに応えて頷いた。

 アイコンタクトで意思疎通するとかすっごい夫婦っぽい、気心も知れてきたことだし、これはいよいよ告白チャンスではないのか。

 

 打ち崩されたデストロイヤー、死力を尽くし息も絶え絶えな冒険者たち。

 夕陽が上り、日が暮れようとしている頃。地面に倒れ伏す者、立ち上がり肩を組んで叫ぶ者、生存した感涙に打ち震える者。多種多様な反応を見せる中で、デストロイヤーの残骸に背を預け、空を見上げる七海。そして、そこに近づくルナ。

 

『ナナミさん……!』

『ルナさん』

『ごめんなさい、私、何もできなくて……!!』

『……構いませんよ』

『え?』

 

 ふっ、と。普段は見せない優しい笑みを浮かべた七海は、ゴーグルを外してルナの方を向く。

 

『貴女が生きている。その事実のみで、戦った甲斐があったというものです』

『……ナナミさん』

『?』

『私は、ナナミさんのことが……!』

「……ナさん! ルナさん!」

 

 勿論そんなことはない。全てが妄想である。

 夢から引き戻されたルナは顔を引き攣らせ、自身の肩を揺さぶってきた受付嬢を逆恨みからひと睨みし、咳払いを挟む。

 

「コホン……。めぐみんさんの爆裂魔法一つでデストロイヤーを破壊できるとするのならば……」

「ちょ、ちょっと待って欲しい! わ、私の爆裂魔法でデストロイヤーにダメージを与えることはできるが、流石に完全に破壊までは……」

「な、なら、私も撃ちましょうか?」

「……ウィズ?」

 

 この街に滞在するアークウィザードは、めぐみんとウィズの二人。そして、その二人に共通する点としては。

 

「ウィズさんも爆裂魔法が使えるんですか!?」

「ええ、一応は。尤も、めぐみんさんのように使い熟せる訳ではないと思いますが……」

 

 謙遜である。リッチーとして規格外の魔力量、操作精度を誇るウィズが放つ爆裂魔法はめぐみんの放つそれを凌駕する。

 というよりも、ウィズに匹敵しかねない爆裂魔法を、人の身で放っているめぐみんが色々とおかしいのだ。何故齢15にしてリッチーに比類する威力・精度の魔法を放てるのだろうか。

 

「万が一撃ち漏らした場合は……」

「足を切り落とすぐらいなら、僕でもできると思う。勿論師匠も、ですよね?」

「師匠ではありません。……一撃与えた後即刻離脱するのであれば可能ではありますが、爆裂魔法の攻撃範囲を考えると現実的ではない。後詰めの保険程度に考えておくべきでしょうね」

「成る程……。流石師匠は考えが深い! 勉強になります!」

「…………」

 

 物凄く嫌そうな顔をする七海だが、瞳を輝かせるミツルギがこの呼び方を止めることはない。フィオとクレメアは七海のことを恋敵か何かだと認識しており、こちらからの助力もなかなか、望めそうにない。

 

「ふむ、七海よ。年下の者に好かれるのは、今に始まったことでないだろう?」

「……誰ですか、貴方は」

「む、記憶が戻っておらんのか。まぁ、生まれ変わったお前と新たに友誼を結ぶ、というのもまた一興か。なあに、俺たちの仲だ。直に親友と呼べる間柄になるさ」

「…………怖いのですが」

 

 名前すら知らない男に声をかけられる七海。そりゃ怖い。

 一方的に七海のことを認知している男───冬将軍は、ルナの方を向き直り、言葉を発する。

 

「後詰めであれば、俺も戦力になるだろう。ステータスはそちらの知っている通りだ」

「きょ、協力してくださるのですか……?」

「当たり前だ。下々の者を守るのは上に立つ者の役目! だろう、七海?」

「知りませんよ……」

「あ、ありがとうございます! フユさんが協力してくださるのでしたら……!」

 

 ギルド側は、特別指定モンスター・冬将軍の冒険者登録を認めた上で、その名前が公にならぬよう、彼にフユと名乗るよう要請。それを快諾したことにより、現状となっている。

 本来であれば認めたくなどなかったが、そうでもしなければ最悪の場合アクセルが滅ぶのだ。王都のギルドと示し合わせこの対応を取ったのも致し方ない。

 結果として、冬将軍はその戦闘力を以て塩漬けクエストをある程度片付け、かつ高難度のクエストを積極的にこなしてくれているのだから、僥倖と言えるのではないだろうか。

 

「……よし! それでは、皆さん! 緊急クエスト発令です! アクセルの街を、守り抜きましょう!!!!」




今回と次回で2巻分は終わりです
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