この素晴らしい社畜に安寧を!   作:どこはかとなくやばい人

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2巻分おわり


第22話

「……あれがデストロイヤーか」

 

 誰とも知らず、冒険者の一人がそう呟き、息を呑む。黒光りするその装甲は数多の強力な攻撃を弾き、高速で駆動する脚は多くの都市を破壊した。

 人類史に刻まれる災厄。脅威度で言えば、以前襲来したベルディアのそれすら上回る、正しく移動要塞。それに今から、己が立ち向かおうというのだ。緊張するのも無理はない。

 

「見えてきたぞ!!!」

「よし、今だアクア!!!」

 

 斥候の一人がそう叫び離脱すると共に、アクアの周りに凄まじい魔力が渦巻く。

 王都で活動する一流パーティの面々ですら。地球から転生したチート転生者ですら、ここまでの魔力を操ることは叶わない。これぞ、神が成せる業。

 迸る魔力はやがて一つに収束し、アクアが持つ杖を中心にオーラのようなものを纏わせる。上空に複数の魔法陣が浮かび上がり、砲撃の準備が整った。

 そして、放たれるは必殺の一撃。この世に存在する全てのアークプリーストを凌駕する魔法。

 

「喰らいなさい!! "セイクリッド・ブレイクスペル"!!!」

 

 放たれた光線は一直線、デストロイヤーを向かって直進する。魔法障壁と衝突し、せめぎ合いが始まった。

 如何に女神といえど、デストロイヤーに施されたそれを簡単に破ることは叶わない。

 ここで失敗すれば、全てが水の泡。アクセルの冒険者が顛末を見守る中、アクアは力を振り絞る。

 

「うあああああああ!!!」

 

 半ばヤケクソ気味に込められた魔力は暴発とも言える威力を発揮し、デストロイヤーの魔力障壁を打ち破る!

 そうなれば、放たれるは二の矢。アクセルが誇る最大火力の二枚看板、バ火力を持つアークウィザード二人によって放たれる、規格外の一撃───!!

 

「……なあめぐみん、まさか緊張してるのか?」

「……」

「お前の爆裂魔法はあれも壊せないようなへなちょこなのか!? そうなりゃお前、いよいよ火力すら取り柄じゃなくなる完全な役立たずだぞ! アクセル一のアークウィザードの称号も返還だな!!」

「……なにを!? それは私にとって最も許されざる侮辱の言葉! ……いいでしょう、見せてあげますよ! 我が本物の爆裂魔法を!!」

 

 カズマの機転によりめぐみんの緊張も収まった。杖を構え、ウィズと同時に詠唱を開始する。

 

『『黒より黒く、闇より黒き漆黒に、我が深紅の混淆を望みたもう。覚醒のとき来たれり。無謬の境界に落ちし理。無行の歪みとなりて現出せよ! エクスプロージョン!!!!』』

 

「……倒、したのか?」

「ふはは、俺たちの備えは不要だったようだな」

「……これで終わるとは思えませんね」

 

 めぐみんとウィズが放ったエクスプロージョンは、確かにデストロイヤーを完膚なきまでに破壊した。

 装甲は鉄屑と化し、その脚は粉々に。最早二度と走行することは出来ないであろう。誰が見ても、この戦いはアクセルの勝利で終わった。そう考えるはず。しかし───!

 

「やったか……!!」

「俺、この戦いが終わったら結婚するんだ……」

「さあ、帰って乾杯よ!! 報酬はいくらになるのかしらね!!」

 

───何処ぞのバカが、フラグを立てたのだ!!!

 

『被害甚大につき、自爆装置を作動します。乗組員は、ただちに避難してください。乗組員は、ただちに避難してください』

「ま、マジかよおおおおお!?!?!?」

 

 カズマの叫びむなしく、自爆装置作動の準備が着々と進む。機動要塞デストロイヤー。かの要塞の自爆ともなれば、どのような規模となるのか、察するのは難くない。

 冒険者が散り散りに逃げ出す中、ダクネスは最後まで街と共にあろうと。もっと言うのならば、最期まで己の欲と共に在ろうとするべく、デストロイヤーに向けて突貫を仕掛ける。

 

「お、おい! ダクネスさんが突撃してるぞ!?」

「そうか、爆発前に破壊するつもりなんだ……!」

「この街を守るために……!」

 

 その時、アクセルの冒険者。主に男は思い出した!! この街に如何にお世話になったのか。何故レベル30を超えてなお、この初心者の街に留まって居るのかを!!

 

「ッ、ゴーレムか!?」

 

 内部に乗り込んだ冒険者が遭遇したのは、防衛のため機体内部を徘徊するゴーレム。当然その装甲も相当に硬く、剣や弓は弾かれ、魔法も耐性のようなものが施されているのか通じない。

 

「はぁッ!!」

 

 そこで役に立つのが例の後詰め三銃士である。魔剣持ちのミツルギに、特別指定モンスターの冬将軍。それに匹敵する火力を持つ七海。このゴーレムにまともなダメージを通せるのは現状この三人のみ。

 周りの被害を考えなければウィズでもどうにかはできるが、それをした場合、周囲全員が凍死する。そうなっては何の意味もない。

 

「サトウくん」

「ナナミ……!」

「ここは私たちに任せて、貴方方は前に。おそらく、動力源はこの先です」

「…………」

「どうしました」

「いやあ、このセリフ、本当に現実で使えるんだなぁって……」

「どうでもいいだろうそんなことは!! ここは僕たちが預かる! 先に行け、サトウカズマ!!」

「お前に言われると腹立つな、カタラギ」

「ミツルギだ!!!」

 

 叫びながらもゴーレムの処理を続けられているのは、流石チート転生者と言ったところか。

 

「全く、サトウカズマはこれだから……!」

「肝の据わっておる小僧だ! 七海、今世の貴様の弟子は中々大物の素質がありそうだな!」

「彼は私の弟子ではありません」

「そうですよフユさん! 七海さんの弟子は僕です!」

「貴方も違います」

 ゴーレムをちぎっては投げ、ちぎっては投げ。やがて打ち止めとなったのか、流れが止まる。

 デストロイヤーのことだ。気を抜いた瞬間に大群が現れる、なんてこともあり得ないわけではない。納刀をせず、気も抜かず。臨戦体制を整える三人の耳に聞こえたのは、消え入るようなアナウンス。

 

『自爆、き……』

 

 動力源であるコロナタイトをウィズがランダムテレポートで飛ばすことにより、デストロイヤーはいよいよその機能を停止させる。

 そうなれば、いよいよ中に残る意味もない。

 デストロイヤーの外に出た三人を迎えるのは、冒険者たちの手荒い歓迎。

 

 アクアがいなければ、魔法障壁を破ることは出来なかった。ウィズとめぐみんがいなければ、デストロイヤーの装甲を破ることは出来なかった。カズマがいなければ、果たしてタイミングが合っていたかどうか。めぐみんを制御できたかわからなかった。三人がいなければ、ゴーレムを突破できず街が爆破されていた。有象無象の冒険者だってきっと、各々活躍をしていたはず。ダクネスはずっと仁王立ちしていた。

 

 皆の活躍があり、この街は守り抜かれた。迎えるのはハッピーエンド。の、はずなのだが。

 

 デストロイヤーの脅威は終わらない。内部に溜まった熱が暴走を始めているのだ。

 コロナタイトによってもたらされる熱量に比類するものはこの世に存在せず、ウィズ曰く、このまま放置すれば街が火の海になるとのこと。

 

 刀でデストロイヤーを破壊するのは不可能。ウィズも魔力不足で爆裂魔法は撃てない。アクアの魔力をウィズに移植しようにも、神聖なソレをリッチーの身体に流し込んだ場合、彼女の身体が果たして持つのかどうか。

 まさに、絶体絶命。冒険者たちが絶望しそうになったその時、姿を現したのは、一人の筋骨隆々な大男と、背負われた一人の少女。

 

「真打ち、登場」

 

 アクセルを訪れた命知らずを歓迎することに定評のあるガタイのいい漢、ポチョムキン4世(機織職人)に背負われためぐみんは、グッとサムズアップをしてみせる。

 カズマによるドレインタッチでアクアとめぐみん間で魔力の譲渡が行われ、再び爆裂魔法を放つことができる状態に。

 今度は、完膚なきまでに。塵一つすら残さずデストロイヤーをこの世から消し去るべく、めぐみんが放つのはフル詠唱の一撃。

 

「『黒より黒く闇より暗き漆黒に我が深紅の混淆を望みたもう。覚醒のとき来たれり。無謬の境界に落ちし理。無行の歪みとなりて現出せよ!踊れ踊れ踊れ、我が力の奔流に望むは崩壊なり。並ぶ者なき崩壊なり。万象等く灰塵に帰し、深淵より来たれ!これが人類最大の威力の攻撃手段、これこそが究極の攻撃魔法』!! 刮目せよ!! これこそが人類が到達せし火力の頂点、比類無き破壊の化身!!」

 

 

───エクスプロージョン!!

 

 

 爆音と共に放たれた魔法はデストロイヤーを捉え、今度こそ、本当に、破壊に成功する。

 長かった戦いはいよいよ終わりを迎えた。カズマたちは。冒険者たちは。アクセルは。デストロイヤーの危機を退けて見せたのだ! ダクネスは仁王立ちをしていた!

 

 

 




3巻分はすでに書き始めてるので、そのうち投下します
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