この素晴らしい社畜に安寧を!   作:どこはかとなくやばい人

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章替わり長期休載の実績があるから、一話投下しておこう


「この素晴らしい社畜に悪感情を!」
第23話


「サトウカズマ!! 貴様には国家転覆罪の容疑がかかっている!! 自分と一緒に来てもらおうか!!」

「はああああああああああああ!?!?!?」

 

 デストロイヤー討伐後、ギルドに王都から派遣された騎士が訪れる。ベルディア討伐に、デストロイヤー破壊。人類史に刻まれる偉業を連続で成したパーティである自分達に、直接報酬渡すために来たのだろうか、と、ウキウキで屋敷を出たことは遠い昔の出来事。

 

 突き付けられたのはエリスがパンパンに詰まった袋ではなく、なにやら小難しい言葉が所狭しと並んだ令状。国家転覆の疑いをかけられていると言うのだから、カズマとしてもたまったものではない。

 

 令状を突きつけた検察官、セナに曰く。カズマの指示で転送されたコロナタイトは、大領主であるアルダープの屋敷に出現。そのまま大爆発を起こし、辺り一体を吹き飛ばした。

 幸いにして死人は出なかったが、もしや意図的に───と言う疑いにより、テロリスト、ないし魔王軍の手先とでも思われているのが現状である。

 

「待ってください! デストロイヤーとの戦いにおいて、カズマの機転がなければより被害は広がっていたはずです!」

「ああ。検察官殿、これは何かの間違いだ。この男はセクハラモラハラと小悪党のようなことはするが、国家転覆など大それた犯罪をやらかす度胸など持ち合わせてはいない。薄着の私を見て襲いかかるでもなく、ただ野獣のような視線を浴びせるのみに留まっているのだからな」

 

 しれっとカズマの尊厳が破壊されたが、このダクネスの庇い方により、周囲の冒険者からもカズマコールが発生。それとなーく受付嬢の面々もセナを睨みつけ、局面は検察不利に見える。見えたはずなのだが。

 

「国家転覆罪は、主犯以外の者にも適用される可能性がある。この者と共に牢獄に入りたいのであれば、止めはしないが」

 

 一瞬にしてコールは収まった。ついでにめぐみんとアクアはカズマの側から離れていった。

 さもありなん。国家転覆罪といえば、立証されてしまえば死刑はほぼ不可避とまでされる重罪。カズマと運命を共にしようなどと言う気概を持つものは、この場に存在しない。

 

「サトウくんが明確な悪意を以て指示を行った証拠は?」

「まだ見つかっていないが、それは今後、この男への取り調べで判明するだろう」

「デストロイヤーが自爆寸前であったこと、他に選択の余地がなかった可能性を考慮すれば、彼を悪と言い切ることは出来ないはずですが」

「……何が言いたい?」

「事が性急に進みすぎでは。先の物言いからしてサトウくんを投獄するつもりのようですが、些か証拠が不足しているように見えたもので」

 

 七海はこの世界の法体制を詳しくは知らない。日本のように推定無罪の原則が適用されているのか、威圧的な尋問が禁止されているのか、拷問による証言の引き出しが禁止されているのかどうか。

 とにかく、カズマをここで大人しく連れて行かせた場合、手遅れになる可能性がある。

 大人としてカズマを守らなければならない、と言う気持ち。あのパーティの処理を己一人で行いたくないという気持ち。その二つが相まって、七海は弁論での説得を試みる。

 

「……成る程。では、こうしましょう。アクセルの詰め所にて、簡易的な尋問を行います。その場にてサトウカズマの潔白が証明されれば、今回の件は私たちの方で処理することとします」

「貴女方が不正を働かない、と言う証拠は?」

「私とて、法の執行者として働く身。神エリスに誓って、そのような不正は働きません」

「……わかりました」

「ならば、騎士たちよ! そこの男を詰め所まで連行しろ!」

 

 カズマの表情は晴れやかだった。そりゃそうである。デストロイヤー討伐のために、アクセルの街を壊滅させないために、あのランダムテレポートは間違いなく不可欠な手段であった。そこを責められてたまるものか、と。

 なんなら、今、彼は胸中でどうやって慰謝料をむしり取ってやろうかとでも考えている頃だろう。

 カズマを見送ったセナは、七海に向き直る。

 

「ナナミさん、貴方にも簡潔な事情聴取をお願いしたいのですが……」

「構いませんが、場所はどこで?」

「そう、ですね。すみません、このギルドに空き部屋……でなくともいいのですが、ともかく、人の目を遮れる場所はありますか?」

「は、はい! こちらです!」

 

 曰く。七海に対する令状は出ておらず、法的にも、個人の感情としても連行することは出来ない。

 ただし、実質的にカズマパーティの保護者的位置にある事。カズマに対する庇い立てがあったことから、名目上の取調べだけは行う必要があった、とのこと。

 

「それでは、簡潔に。此方の魔道具は、嘘をつくと音が鳴る、という仕様のものです。ないとは思いますが、嘘を吐こうとは思わないように」

「はい」

「よろしい。それでは、貴方は魔王軍の手先ではありませんね?」

「ええ。私は正真正銘アクセル所属の冒険者であり、魔王軍の手先ではありません」

「……鳴りませんね」

 

 魔道具の動向を確認したセナは手元の紙にサラサラと文字を書き、懐にしまう。

 聴取はこれで終わりだと、七海はそう考えていたのだが。

 

「それでは、次に。貴方には現在、伴侶、もしくは結婚を考えている女性はいますか?」

「…………居ませんね」

「貴方は、妻が自分より稼いでいることを許容できますか?」

「……? まぁ、はい」

「伴侶の性格は、ゆるっとしている方が好ましいですか?」

「……………………どちらかといえば、しっかりしている方が好ましいですが」

「なるほど……」

 

 先のものとは異なる、明らかに私物と見えるピンク色のメモ帳に何やらサラサラと書き込んでいくセナ。果たしてこの一連の質問群に何の意味があるのか、と疑問に思う七海だが、下手に質問して面倒なことになるのを避けるため追及はしない。

 

「ナナミさんは、結婚願望を持ち合わせていますか?」

「……………………まぁ、ないとは言い切れませんが」

「なるほど…………」

 

 狙えるぞこれは、と。セナは内心舞い上がる。

 堅い性格が幸いしてか、それとも検察という立場が邪魔をしてか。見た目が比較的整っている割に、セナは今まで一度も彼氏ができたことがない。つまり、行き遅れ。

 この人物を逃したならば、おそらく今後自分の人生において春は訪れない。冷たい氷河期が延々続くのみ。薄々それを察するセナは、さらに追い打ちをかけようと試みるのだが。

 

「セナ検察官!! 取り急いでご報告が!!」

 

 駆け込んできた騎士から告げられたのは、サトウカズマに魔王軍内通者の疑いあり、と言う衝撃の内容。

 七海は何をやらかしたのだと頭を抱え、セナは自らが行き遅れる確率を無意識に引き上げた目の前の騎士に対し、理不尽な睨みを効かせた。




次回投稿は多分来週の土曜か金曜です。感想ください!
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