「サトウカズマ! サトウカズマはいるかああああ!!!」
今日も今日とて、カズマの屋敷の扉は凄まじい勢いで開かれる。そろそろ労災を訴えてもいい頃であろう。
それはともかく、扉の先にいたのは行き遅れ腐女子検察官セナ。手に紙を持ち、何やら怒っている様子。
「なんだよ、最近は俺たち何もやってないぞ?」
「爆裂魔法での騒音被害、酔っ払っての器物損壊、女冒険者へのセクハラ被害。何かありますか?」
「まことに申し訳ございませんでした」
七海レベルとまではいかないが、それなりに洗練された土下座。これぞ謝り慣れている人間の姿というところか。
そもそも、恒常的に問題を起こすパーティ。度合いに差はあるが、問題は起こしていないの一点張りで言い合いに勝つのは不可能である。
チンピラのダスト、爆裂魔のめぐみん、酔っぱらいのアクア、変態のダクネス。そしてそれらを纏め上げる魔王。この魔王の呼び名には、カスマ、クズマ、ホモマ、ロリマと言ったように諸説がある。
これら纏めて、誰が言ったかアクセル魔王軍。実力はさておき、破壊力に関しては本家のそれに勝るとも劣らない。
「コホン、今回はその件で訪れたわけではありません。貴方方が以前潜入していた、キールのダンジョン。そこより未知のモンスターが湧き出している事が発覚しました」
「……まさかとは思うが、それだけで俺たちを疑ってるのか?」
「いえ、流石にそういうわけでは」
理路整然とした様子で述べるセナだが、実際その理論は割と穴ボコだらけ。少なくとも盗賊の侵入であれば公記録に残らないのは当たり前であるし、外部からモンスターが侵入した可能性もある。自然発生的に強力なモンスターが生まれた可能性も否定はできない。ともかく、カズマたちのせいにするには証拠が足りなさすぎるのだ。
入りが入りであった為あれだが、セナの本来の目的は、カズマパーティへの協力要請。
しかし、カズマは当然のようにそれを拒絶。誰が無償でお前の依頼を受けてやるか、と。当たり前である。冤罪で断頭台まで送られそうになったにも関わらず、下手人と言っていい人間にわざわざ親切をしてやる理由はどこにもない。
「あれ、カズマ。どこに行くんです?」
「寝るんだよ、最近色々ありすぎて疲れてるんだ俺は」
「まぁ構いませんが、爆裂散歩までには起きてくださいね?」
「パス。ナナミに付き合ってもらえ」
「お断りします……アクアさん? どちらに?」
いつも通り漫才をしていた三人と、空気と化した金髪一人。それを他所目に扉を開けて出て行こうとするのは、アクセル魔王軍が一人、酒呑ゲロカス女神ことアクア。
酒を飲みに行くのなら金は持っているのだろうか、と。七海は日頃の行いから、釘刺し程度のつもりであったのだが。
「あ、あ、あのね、そう! 水の女神として、民が困っているのであれば見過ごすわけにはいかないもの!」
「はいダウト。……なぁアクア、この前、キールを浄化する時、すっげえ魔法陣張ってただろ?」
魔法陣。その言葉を聞いた瞬間にアクアは全力で顔を背け、残りの面々は頭を抱えた。
要するに、屋敷マッチポンプ事件の焼き直しである。
「そ、その、カズマさん?」
「……」
「ごめんね?」
「だめ」
「にぎゃあああああああああああ!?!?」
カズマパーティ、休日出勤決定。
☆♪☆♪
「な、ナナミさん!? どうしてここに!?」
「おいアクア、あの検察官俺らのことガン無視してるぞ」
「露骨よね、そんなんだから行き遅れ」
「なにはともあれ!! 豊富な討伐実績を誇る皆様のご協力を得られるのであれば、それ以上に頼もしいことはありません」
謎のモンスターは、どうやら複数体存在する様子。キールのダンジョン入り口より、まるで軍隊のように行進して次々と湧き出てくるのは、奇妙な仮面をつけた人形。
アクアがやたら嫌悪感を示すが、近づいて足元に抱きついてきたそれに少し気を許しそうになっている。
「ッ、アクアさん、それを振り払ってください!」
「え、何を」
爆発した。そう、爆発したのだ。
人形は突如発光を始め、アホヅラを晒していたアクアを嘲笑うかのように自爆。ギャグ補正かそれとも耐久のおかげか、黒焦げになる程度で済んだが、どうやら受けた精神的ダメージはそれなりに大きい様子。
セイクリッド・ハイネス・ヒールを自身にかけて怪我を治したのち、メソメソと泣き始めてしまった。
「あー……どうするよ、これ」
カズマが対策会議を始めようとした瞬間、ダクネスの足元に例の人形が抱きついた。咄嗟にカズマと七海が警告を飛ばすが、それも虚しく、人形は自爆。巻き込まれたダクネスは、それ相応のダメージを───。
「ふむ、これぐらいなら行けるな」
「はあ!?」
そう、彼女はダクネス。アダマンタイトをも超える耐久を持つ、割とマジで硬さだけなら人類随一の女。
ベルディアが振り回す大剣ですら、彼女に決定打を与えることは叶わなかったのだ。アクアですら仕留めきれない程度の爆発が通じるはずもない。
「ええ……」
「セナさん、あれはそういう生き物です。酷ですが、慣れてください」
困惑していたセナだが、隣に来た七海の存在にすぐにっこり笑顔になった。ちょろい。
基本的に厳格ではあるが、それ故労働環境の整備等、部下として、セナは理想的な上司でもある。その上司が結婚できる、最後のチャンスが訪れたのだ。応援しないわけがない。
気を遣って兵士たちがカズマとの交渉を進め、結果的に、ダクネスを先頭としてカズマと、腕に覚えのある兵士数名が同行することに決定。
めぐみんとアクアは万が一の時に備え待機、七海は予備戦力という名の待機。セナは婚活に全力を注ぐ。
兵士たちのサムズアップを受け、セナは顔を真っ赤にしながらも、確かに力強く頷いてみせた。
ちなみにその後、とある出来事が起こるまで。進展は一切なかったことを、ここに記す。
後一話で三巻分が終わる 明日出します