この素晴らしい社畜に安寧を!   作:どこはかとなくやばい人

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お、お久しぶりです……


第39話

 水の都、アルカンレティア。効能豊富な温泉がメインとなる観光地であり、その質はベルゼルグはおろか、他国を探し回ったとてそうお目にはかかれない程。街中には一つ大きな聖堂が佇んでおり、それもまた、普段とは違う非日常を。"観光に来た"という意識を与えてくれる。

 

「きゃー! 暴漢よ! 誰か助けて!!」

「ぐへへ、諦めるんだなぁ。偶々ここに勇敢なアクシズ教徒が通りかかる可能性なんざ、万に一つも存在しねえ」

「な、なんてこと……! 今ここで、入信してくれる方が居るのならば、私も救われるというのに……!」

「なぁ、ナナミ。なんだあれ」

「アルカンレティア名物です。放っておきましょう」

 

 アルカンレティア名物、アクシズ教徒による勧誘漫才。今なら食べられる石鹸と飲める洗剤もついてくる。

 ベルセルグの国教はエリス教。それ故に大半の街では邪悪なるエリス教徒が幅を利かせており、哀れなるアクシズ教徒は隅の方にある小さな教会に押し込められ、信徒としての勧誘活動すらままならない、とは、アクセル在住金髪美少女天才シスター(自己申告)の言葉である。

 アルカンレティアは女神アクアのお膝元、アクシズ教の総本山。その他の地域とは宗教のパワーバランスが完全に逆転しており、こうしてアクシズ教が大々的に勧誘活動を行っているわけである。

 

「……ん? あれ、ナナミさんじゃないか」

「あら、ナナミさん? お久しぶりね!」

「…………………お久しぶりです、お二人とも」「え、知り合い?」

 

 七海は、アクセルの外で仕事をすることが多くある。王都周辺がメインであるが、当然、任務の関係でアルカンレティアの付近に出向くこともある。それ故に、ここの信者たちとはある種知り合いのような、腐れ縁のような。よくわからない関係にある。

 悪魔殺すべし、と殺意に溢れているかどうかはともかくとして。基本的に依頼に私情は挟まず、時に残虐とも言えるやり方を許容する七海の在り方は、アクシズ教徒にとっても共感を得られるらしく。偶に現れるレアキャラのような扱いを受けている。

 

「今日も任務で?」

「いえ、旅行です」

「そうなのね。となると、其方はパーティメンバーの方かしら?」

「あ、はい。俺はサトウカズマです。こっちがめぐみん、そっちがアクア、これダクネス。こっちの人はパーティメンバーじゃないんですけど……」

「アクセルで魔道具店を営んでいるウィズと言います、よろしくお願いしますね」

 

 ウィズが名乗るや否や。彼女の体にまとわりつき、何やら匂いを嗅ぎ出すアクシズ教徒の女性。性別が違えば完全に事案であるが、女性の見た目が無駄に整っていることもあり、百合の花を幻視できないこともない。

 

「うーん……? 何故かアンデットのような腐臭が……まぁ、気のせいかしらね」

 

 ウィズと、ついでに七海とカズマは冷や汗をかいた。アクシズ教徒は無駄に鋭いところがある。その嗅覚をもってすれば、人に扮した悪魔なりアンデットなりを見分けることなど造作もないのだ。ウィズはまだその傾向が弱いため一般教徒にはバレないが、仮にバニルがこの街を訪れれば四方八方から退魔魔法が飛んでくる。最高司祭まで加われば、もしかしたら手加減しているバニルの残機を一つ減らせるかもしれない。

 

「なぁ、ナナミ」

「なんですか」

「アルカンレティアって、もしかして割とアレなところだったりする?」

「アレなところですね」

「マジかぁ……」

 

 水の都、アルカンレティア。またの名をアクシズ教総本山、カルト宗教真っ青な地獄の街、アルカンレティア。

 観光街としては非常に高い評価を誇り、例えば旅館を経営する人間であったり、細々と活動しているエリス教徒であったりとまともな人間も存在はするのだが、大多数はアクシズ教徒、つまり狂人の類である。

 仮にこの街がアクシズ教徒に汚染されていなければ、観光街としてより人気を博していたことだろう。

 過去には某王女がこの街に行きたいと言い出した際、お付きの行き遅れと大貴族の娘が必死に止めたという出来事もあったりする。

 

「あ、そうだ。サトウさん、よろしければ此方の書類に署名をお願いできませんか? 天然温泉の保全活動に関する物なのですが、署名を必要としていまして……」

「それぐらいなら全然……ん?」

 

 元締めがコレなのだから。今まで聞いた噂も総合して、アクシズ教なんぞロクでもないと考えてはいたが。

 流石に邪教のガンギマリ一般モブとは違い、中には話が通じる人間もいるのだろう、と。アクシズ教徒への認識を一段階良い方向へ寄せていたカズマ。ゲームに出てくるカルト教団の中にたまにいる、"なんでお前こんな邪教信仰してんの?"となるタイプの人間も、まぁ一応いるのだろう、と。

 女性からペンを受け取りサインをしようとしたとき、ふと、書類の内容が目に入る。

 

「……入信書?」

「はい! アクシズ教徒の活動内容には天然温泉の保全活動が……って、あ!? 破り捨てた!?」

 

 無言で入信書を破り捨てたカズマは、呼び止める女性を無視してズンズンと突き進む。その心に、2度とアクシズ教徒を信じてなるものかと言う強い覚悟を宿して。




頑張って書きます
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