この素晴らしい社畜に安寧を!   作:どこはかとなくやばい人

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年内最後の更新です


第44話

「オーク?」

 

 オーク。地球における一般的な認識としては、女性騎士を襲う悪役。典型的なモンスター。そういった本におけるそういう役割を担う。まぁ、どちらかと言えば、女性に対し下卑た視線を向ける、卑劣な行為をするモンスター、というイメージが強いだろうか。

 しかし。異世界におけるオークは真逆。奴らはメスしか存在せず、外部から捉えたオスと交尾を行うことにより繁殖をする生物なのである。

 

 これが仮に見た目が美少女化していたりすれば、或いはご褒美とも呼べるものなのかもしれないが。見た目は獣のままなので救いようがない。可愛いけど性格カスな安楽少女、ブスだけど実はそんなに性格が悪くないオーク。果たして、どっちがマシなのだろうか。

 

「ま、まぁ、いざとなったら私の後ろに隠れてください! 魔法で一網打尽です!」

「それは頼もしい」

 

 実際。この世界のモンスターの膂力は侮れるものではなく、マンティコアやグリフォンといった上位種のソレは前世の呪霊と比べてもそれなりの位置にある。下手に近接戦を挑んで返り討ちにされる可能性があるのなら、ゆんゆんに丸投げする方が合理的である。

 女に任せるのがどうだ、とか、女の背に隠れるのは、とか、そんなプライドはすでに捨てている。そもそも呪術界にメスの特級ゴリラが存在する以上、性別でどうこう言うのはナンセンスなのだ。

 

「……ん?」

「……え?」

 

 前方から、なにやら悲鳴を上げながら凄まじい勢いで走ってくる集団が。顔を真っ青にした茶髪の少年、紅い目を光らせて魔法を発動しようとするも少年に頭を引っ叩かれて連行される少女、顔を赤らめて走る変態、麗しい水の女神(笑)。そう、カズマパーティである。

 

 めぐみんは、故郷に妹を残してきている。やはりそこは姉としての心配がある。爆裂魔法しか脳がないあなたが帰ってなにができるんですか、と言う疑問は捨て置き、帰郷を決意したのである。

 彼女の預かり知らぬところで齢数歳にして上級悪魔を使役する約束を交わしている化け物を魔王軍如きがどうこうできるとは思えないのだが、それはそれだろう。

 

「な、ナナミさん! 私の後ろに! "ボトムレス・スワンプ"!」

 

 ゆんゆんが叫ぶと同時に、オークと七海たちを分断するかのように泥沼が出現する。ボトムレス・スワンプは直接の攻撃力こそ持たないものの、広範囲に渡り相手の行動を阻害できる有用な上級魔法。数で押してくるタイプのオークに対し、その効果はテキメンと言っていい。

 ただし。ゆんゆんは失念していた。この場には、七海と自分、オークたち。そして、もう一つの勢力が存在することを。

 

「ぎゃああああああああああああ!!!」

「あ、あああああああ!!! ごめんなさいいいいいいいいい!!!」

 

 哀れカズマパーティは泥沼に足を取られ、動きを止められている。単純な身体能力、というか膂力ではオークに分があるのか、完全に動きを止めたカズマたちに対し、彼女らはじわじわと距離を詰めている。

 近接攻撃の手段しか持たない七海では、この状況を打開することはできない。動転するゆんゆんに一つ謝りながら頭を叩き、正気を取り戻させる。

 

「は、はい!!! えっと、えっとお……!! カ、"カースド・クリスタルプリズン"!!」

 

 強烈な魔力の本流は氷の牢獄へとその姿を変え、オークをまとめて閉じ込める。百に届く数を撃ち漏らすことなく仕留めて見せた、と言えば、その凄まじさが理解できるだろうか。

 改めて。これが、普通のアークウィザードの凄まじさ。明らかなオーバーパワーでドッカンドッカン地形を破壊して、日夜警察の世話になるだけの職業ではないことを理解する。

 

「……あの」

「あ、ナナミさん!! 早くめぐみんたちを助けに……」

 

 ゆんゆんの目の前に映るのは、それはもう見事なまでの、三匹の人間と一匹の女神の氷像であった。

 

「め、めぐみーーーーーーーーーん!?!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「馬鹿なんですか?」

「わ、私はバカなんかじゃ……!」

「いいえ、貴女はまごうことなき馬鹿です! 阿呆です! 間抜けです!! 何をどう間違えたら上級魔法で人間を丸ごと氷漬けにしようなんて発想に至るんですか、下手をしたら大量殺人ですよ!?」

「で、でも! あのまま放ってたらめぐみんたちが……」

「良いんですよどうせ被害を受けるのはカズマだけなんですから!! 学校で習ったでしょう、オークは女性冒険者に対して必要以上に危害を加えないんです!」

「おいコラ」

 

 しれっと生贄に捧げかけられていた事実を暴露され、ツッコミを入れるカズマ。童貞守って十数年、異世界ハーレム夢見て数ヶ月。自身のハジメテは美少女に捧げると決めている。あのような怪物相手に散らしてなるものか、と。意気揚々と語るカズマに一同がゴミを見る視線を向けたところで。

 お互いの目的が紅魔の里ということを知ると、自然と合流して共に向かおう、という流れになった。七海はちょっと嫌そうな顔をした。

 

「うおォア!? テメェら人の心とかねえのかよ!?!?」

 

 時には、カズマと共に残り4人から向けられる視線を無視して口汚く叫ぶ安楽少女を瞬殺したり。

 

「なんっでこんな原っぱにドラゴンが居るんだよ!?!?!?」

 

 実は結構危険なモンスターであるドラゴンゾンビを撃退してアクアのレベルが爆上がりしたり。

 色々ありながら、紅魔の里まであと少し、という場所まで到着する。

 

「この辺りには爆殺魔人もぐにんにんが現れるのです。カズマ、ナナミ、警戒はしておいた方がいいですよ」

「なんだそのアホみたいな名前のモンスターは」

「爆殺魔人もぐにんにんは爆殺魔人もぐにんにんです。美少女や美女ばかり仲間にしている男性冒険者を見ると襲い掛かる習性を持つ、危険極まりないモンスターですよ」

「それなら心配要らねえな。俺らが仲間にしてるのは美少女を皮を被ったナマモノだ」

 

 カズマとめぐみんが取っ組み合いの喧嘩を始めた頃。七海は懐から徐に投擲用の武器を取り出し、狙いを定めて力の限りぶん投げる。

 すわ乱心したか、と。まさかとうとう日頃から与えられているストレスが臨界点を突破したのではないか、と。割とやらかし事項に自覚があるめぐみんカズマダクネス、昨日を思い出して悶えるゆんゆん、能天気に"ナナミも苦労してるのねー"と宣うアクア。

 

「……そこに隠れていることは分かっています」

「……ふっ。流石はここまで無傷で辿り着いた冒険者、というわけか」

 

 木陰から現れたのは、独特なマントを身につけた青年。彼は七海にひとしきり賛辞を送り、さらに遠くの方を指差した。

 

「ついでだ。あいつらを片付けるのを手伝ってくれないか?」

「……構いませんが、貴方は」

「ふっ……。我が名はぶっころりー! 紅魔族唯一の靴屋のせがれ! アークウィザードにして、上級魔法を操る者!」

 

 そう、堂々と名乗りをあげた。

 ちなみに、飛んできた投擲物にビビったのか股間の部分にシミができ、足を子鹿のようにプルプルと震えさせている。ダサい。




来年の目標は一ヶ月以上投稿期間を空けないことです。先に謝っておきます。多分無理ですごめんなさい。
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