この素晴らしい社畜に安寧を!   作:どこはかとなくやばい人

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メリクリ!クリぼっちですが、私は今日も元気です!


第5話

七海は、アクセルでも有数の実力を持つ冒険者である。キャリアが短いことを差し引いても、マンティコアの討伐や初心者殺しの討伐など、新米には任せられないクエストが指名依頼として飛び込んでくることが多々ある。

 それ故、カズマたちと組んでクエストに赴く回数はそう多くない。

 

 ゴブリン狩りの際、カズマやアクアは諸々難があるものの、めぐみんにとっては相性のいい相手だ、ということを見抜いていた七海。厄介払いを済ませて自分はさっさとフェードアウトを計画していた頃に、冒険者総出でかかる稼ぎどきだと言うクエストが発令される。

 

「キャベツの討伐…………?」

「サトウ君。ここは異世界です」

「あ、ああ、成程。俺らが知ってる例の野菜と同じ名前、違う見た目のモンスターが……」

「いえ、見た目は完全に同じですね」

「そうだよな畜生! 何が悲しくて異世界転生してまでキャベツ狩りしなきゃなんねえんだよ!」

「決して油断はしないように。昨年、このクエストでダスト君が全治一月の怪我を負ったと聞いています」

「キャベツ強ッ!?」

 

 キャベツは空を飛び、玉ねぎは都市一つを容易く滅ぼし、サンマは畑から取れる。この世界では常識である。

 ちなみに、この世界のキャベツは生命力に溢れる分、その味もかなりの物。食せばステータスに好影響を及ぼすと言うおまけ効果もある。意味がわからない。

 それ故に買取価格も高価であり、単価でジャイアントトードのそれを超える程。まさに一攫千金のチャンスであり、冒険者たちは各々やる気を漲らせている。

 

「……それで。此方の方は?」

「ああ、貴方がカズマの言っていたナナミか。私の名はダクネス、クルセイダーを生業としている。実は先日から、このパーティへの加入を希望しているのだが……」

「お断りします」

「……これはまた、なんと言うか」

 

 特級クズ二人とは別ベクトルの厄介な人物であることを即座に悟った七海は、カズマが吐くため息から大方の事情を察する。

 類は友を呼ぶ。変態と変態は共鳴する。そして、めぐみんとアクアは間違いなくある種の変態である。つまり、そう言うことだ。

 カズマも色んな意味で変態であるが、彼の場合はベクトルが違う。前者は周囲から冷たい視線、ないし生暖かい視線を向けられるのみに留まるが、後者はワンチャン檻にぶちこまれかねない。

 

「んっ……なるほど。これもまた良いものだな」

「?」

 

 七海は、人格破綻者の集まりである呪術界に身を置いていた。それ即ち、多少の変態の相手ならばお手の物、と言うこと。

 ならば、非常に。非常に億劫ではあるが、ここは年長者であり、尚且つこの手の人物に慣れている自分が対応するべきであろう、と。そう考え、ダクネスと名乗る女性に視線を向ける。

 

「強面男性特有の冷たい視線……カズマでは決して味わえないこの快感! なんとしてでもこのパーティに加入しなければ!」

「サトウ君」

「ん?」

「後は任せます」

「死なば諸共」

 

 引き攣った顔でサムズアップしてくるカズマに対し、七海はこの世界に来てから何度目かもわからない、深い深いため息を吐いた。

 

 

 

 

☆☆☆☆

 

 

 

 

「流石カズマ、華麗なるキャベツ泥棒と言った所でしょうか。まさかナナミの換金額を上回るとは……」

「その称号で俺を呼ぶのはやめろ。いやマジで」

「良いではないですか華麗なるキャベツ泥棒。名付け主からはかなりのセンスを感じますよ」

「お前がセンスを感じてるってことはダサいってことなんだよ厨二ロリ!!」

「誰がロリですか卑劣なるパンツハンター!!」

「すんません。本当に謝るんで、その称号だけは……」

「しゅわしゅわおかわりー! ほら、ナナミも飲みなさい!」

「ナ、ナナミ。今度、私と共に訓練をしないか。私の鎧にお前の鉈をこう、思いっきりだな……」

 

 カオス。まさにその一言に尽きる。

 カズマが"スティール"なる技能を盗賊であるクリスから教わったということ。そのスキルを使用してクリスから下着を剥ぎ取ったということ。それを対価に財布の中身を奪い取り、その金を使いギルドで豪遊したということ。

 地球基準で言うならば立派な犯罪であるが、七海がこれに苦言を呈すことはない。

 

 なにせこのサトウカズマという男、三馬鹿基準でまともというだけであり、世間一般から見れば十分な異常者である。暖簾に腕押し、恐らく効果のないであろう説教をわざわざする程、七海は情熱的ではない。

 

「……サトウ君、少しいいですか」

「お? どーした七海」

 

 キャベツで入った泡銭を一気に溶かす冒険者たちからは少し離れ、ギルドの外にカズマを誘導する七海。

 

「ダクネスさんについて……逃げようとしないでください。私とて出来るのならばこんな問題に目を向けたくなどありません」

「だよなぁ……。にしてもどーするよ、アレ」

「性格がアレだとしても、戦力面で目を瞑れるならばまだ良いのですが」

「あー無理」

 

 振られる大剣は空気を裂き、地面を割る。これは比喩でもなんでもない。ダクネスの剣は真ん前の敵にすら掠ることなく、その勢いのままに地面に激突するのだ。

 まともに攻撃が当たらない前衛職などただの肉壁にしかなり得ない。彼女ほどの耐久であればそれはそれで一定数需要がありそうなのが厄介な所である。

 

 ともあれ。ダクネスの能力は、彼女のとんでもない気質を補うに不足するものである、というのがカズマと七海の共通認識である。

 

「それでは」

「お断りさせていただく方針ってことで……」

 

 早々に意見を一致させた二人は、ダクネスへの解雇通知───正確に言えば試用にすら至っていない───を言い渡すべく、再び席へと戻る、のだが。

 

 ここで一つ、七海は重大なガバを犯している。アクアの知能が彼の想像の数倍は低かったこと、めぐみんの性格が想像の1.2倍ぐらいアレだったこと。そして何より、類は友を呼ぶという諺の強さを見誤ったこと。

 これらの要素が重なり合い、地獄のような状況が作り出される。

 

「……ナナミ」

「……サトウ君」

 

 わちゃわちゃと楽しそうに話す三馬鹿。傍目から見てもその仲の良さは正しく長い付き合いの友人のようであり、とてもほぼ初対面同然、パーティすら成立していない間柄とは思えないほど。

 そんな様子を見て顔を曇らせる七海とカズマは、二人揃って一言。

 

「「終わった……」」




明日は友達とヤケ酒します
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