「魔王軍幹部シルビア!!! 次は私が相手よ!!」
「……どうせ貴方もテレポートするんでしょう!? もう騙されないわよ卑怯者集団!!!」
「いいえ、私は逃げたりしないわ!! 正々堂々勝負よ、シルビア!!」
そんなことを言うゆんゆんの後ろから現れる一つの影。鉈を持った長身の男性が、彼女の横に立ち並ぶ。
そんな様子はまるで、おとぎ話に出てくる勇者パーティのようで。パーティのリーダーたる魔法使いと、そんな彼女を支える前衛職。対魔王軍幹部、ボス戦における一種の理想的なシチュエーションでもあり、観戦している──既にテレポートで逃げた後の──紅魔族たちのボルテージは爆上がり。スタンディングオベーションも辞さない勢いである。
一応今は、魔術師殺しとシルビアが合体したことにより、紅魔族では手も足も出ず。七海とゆんゆんのペアが負けた場合は下手をするとそのまま里壊滅なんてこともあり得るのだが、そこはさすが紅魔族。それはそれ、これはこれ。騒げる時に騒いどけの精神である。多分呪術師適性が非常に高い。
「……先ほどの彼女の言葉には、一つ誤りがあります」
「……へえ、言ってみなさい、その誤りとやらを」
「次に貴方の相手をするのは、彼女一人ではありません。私、ではなく、''私たち"です」
「ナナミさん……!」
「言ったはずです。今の貴女と私はパーティメンバー。どこの世界にも、後衛職一人で敵と戦わせることを良しとする前衛職は存在しません」
手に持つ武器を構え、ゆんゆんを守るかのように一歩前に立つ七海。対するシルビアも、魔術師殺しを要するとは言え腕の立つアークウィザードである紅魔族、それに加えて王都で活躍し、先には魔王軍幹部ベルディアを討ち取ったナナミの存在を見て、今度こそ本気で戦う気なのだ、と。息を一つ吐き、戦闘態勢を整える。
静寂に包まれる戦場。果たしてこの均衡を破るのはシルビアの攻撃か、七海の突貫か、はたまたゆんゆんの詠唱か。
先に手を出したほうが有利とも限らない。技を見てカウンターを仕掛けることぐらい、ここにいる全員が容易くやって見せることだろう。
シルビアとて歴戦の幹部、冷静に戦場見極め、最適解を探るべく思考を張り巡らせる。
「……ッ!!」
そんな中、ゆんゆんの口が動く。ただし、紡がれる言葉は決して魔法の詠唱文ではなく、前口上。
やはり紅魔族、戦いの前にこう言った形式を整えることを重視しているのだろうか、と。シルビアは別段それに手出しすることもない。今から命を賭けた戦いをする相手に対する、最低限の敬意である。
「シルビア!!! 貴方とは違って、私たちは一人じゃない!!! 仲間と一緒なら、どんな苦境だって乗り越えられる!!!」
「吠えたわねアークウィザード!! いくら強い言葉を使おうとも実力が伴わなければ何にもならないわよ!!」
「いいえ、今ここでそれを証明してみせる!!」
ゆんゆんが杖を振り翳し、魔力が辺りに充満する。戦闘の火蓋を切り落とすべく、ゆんゆんの口から詠唱が紡がれ──。
「『テレポート』!!!」
七海とゆんゆんは、その場から消えた。怒り狂うシルビアの様子を見て少しばかりの愉悦心を感じてしまうと同時に、あまりの居た堪れなさに心中謝罪の言葉を述べる七海であった。
これがやりたかったんですが、なんか書いてるうちにシルビアさんがアクセルに来てました。なんで?