この素晴らしい社畜に安寧を!   作:どこはかとなくやばい人

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これ含めて3話で6巻分おわりです。一個ネタを思いついてどうしても書きたかったので令嬢様の逆襲は次回に持ち越し


第59話

「ナナミさん!! 飲みましょ!!」

 

 どーん、と。王都の店で買ったらしいそこそこお高めなシュワシュワの瓶を置き、ご丁寧にグラスを二つ用意して自身が座る対面を勧めるアクア。

 一度断って寝ようとした七海ではあったが、瞬間アクアの目が潤み出したことから多少面倒に思いながらも対面に座り。まあ美味い酒が飲めるなら悪くはない、と。自分を納得させ、シュワシュワを注ぐ。

 

「ふふーん、どうよ!」

「悔しいですが、美味しいですね」

「そうでしょそうでしょ! 安物と違って雑味がないの! これはきっと血統書付きのネロイドを使っているに違いないわ!」

「そのうち絶滅しますよ」

 

 地球の価値観に基けば血統書付きの怪生物を片っ端から捕まえて材料にしていれば、そのうち死滅しそうなものだが。どうやらこの世界では少し違うらしく、血統書付きのネロイドは低確率で自然発生的に増殖するらしい。血統書とは一体。

 とは言え、普段飲んでいるそれより美味いことには違いなく。早くも一杯目を飲み終わり、ニヤニヤするアクアを尻目に二杯目を注ぐ。

 

「……何か買って欲しいものでもあるのですか?」

「そうそう! 最近ちょっと欲しいボードゲームが───って違う!」

 

 ガー、と。女神というよりはそれに敵対する大怪獣のような鳴き声をあげて騒ぐアクアに思わず耳を塞ぐ。

 アクアがこうして機嫌を取ってくるときは、決まって何かお願い事がセットでついてくるもの。今回の例に漏れずその類かと思えば、確かにこのシュワシュワを買う分の金があればボードゲームぐらいなら買えたはず。

 となると、これを買ったから金が尽き、仕方なく七海に分ける代わりに対価としてボードゲームを得ようとしたのか。

 

「ほら、ナナミさん、これ美味しいでしょ? 私が買ってきたのよ?」

「……え、ええ」

「むぐぐぐぐぐぐ………………」

 

 頬を膨らませて不満そうにこちらを睨むアクアに対して、どんな言葉をかけるべきか思考を巡らせてみるが。

 ありきたりな言葉が一つ思い浮かび、まさかこれが彼女の求める言葉ではあるまいが。手詰まりの状況から少しでもヒントを得る為、口に出してみる。

 

「ありがとうございます」

「ふふーん、どういたしまして!! ほらほらナナミ、グラスが空になってるわよ!」

 

 途端上機嫌になり、七海のグラスに更なるシュワシュワを注ぐアクア。

 思わぬ展開に固まり、普段は絶対見せないようなアホヅラを晒す七海。

 それをきっちり魔道具で収めるめぐみん。

 

 三者三様、そんなカオスなカズマ邸リビングを目に、家主は一言。

 

「娘かよ」

 

 親に褒められたいがために自発的に行動を取り、今か今かとその瞬間を待ち望む小学校低学年ぐらいの子供、アクア。そしてその親である七海。

 どこからどう見てもその光景にしか見えないが、その子供、親の数億倍は生きてるんだよなぁと。

 見かけ美少女中身ババアとはずいぶん業が深いものだ、と、一人頷くカズマであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「そ、そのー、ナナミさん……? ごめんね?」

 

 数日後。またいつものようにやらかしたアクアが七海に謝罪するいつもの光景がギルドにて繰り広げられ、きっと石畳の上で正座させられ説教が始まるのだろう、と。

 野次馬根性で何人かの冒険者がアクアを嘲笑うべくシュワシュワを注文し始めた、次の瞬間。

 

「……まあ、仕方ありません」

「ふぇ?」

「誰しも間違いはあるもの。同じミスをしないように気をつけてください」

 

 アクアの頭をポン、と一つ軽く叩き。受付嬢の元に向かって何やら話を済ませた後、慰謝料だか補填料だかはわからないがいくばくかの金銭を差し出した後、アクアの元に向かい、再び声をかける。

 

「行きますよ。そろそろお昼時です」

「え?」

「……流石に、今からギルドで食べるのも居た堪れない。私が気に入っているレストランがあります。そちらに向かいましょう」

「え、でも私、お金ない……」

「奢りますよ、それぐらいは」

 

 ほら、と。自発的に正座していたアクアに手を差し伸べて立ち上がらせ、スカートに付着した砂埃を軽く払うよう指示し。

 一連の行為を終えたアクアを見て、すぐに身を翻しギルドから出る。

 そんな七海を、アクアは慌てたようにちょこちょこ追いかけ、最終的に彼らの背が視界から消える頃には、二人は横並びの状態にあった。

 

「……なあ」

「なんだよダスト」

「マジでアクアってナナミの旦那の隠し子なんじゃねえの……?」

「はあ? んなわけ……ない……」

 

 否定するキースの声もどこか弱々しく。以降数日の間、七海本人が強く否定するまでの間、"アクアはナナミの隠し子である"という噂が市井を飛び交っていた。

 尚、その噂を否定する七海を横で見ていたアクアの顔は、随分と不満そうなそれであったという。




7巻は読み直してから構想練るのでまた空きそう
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