「───エクスプロージョン!!!!」
凄まじい轟音とともに、爆炎が廃城を襲う。
これだけの威力の攻撃を浴びせられてなお崩壊しない廃城だ、恐らく使用されていた当時はかなり重要な拠点であったのだろう、と。満足そうにぶっ倒れる眼帯女を尻目に、そんなどうでも良い思考に耽る。
「はふう……満足です」
「では帰りましょう」
「全く。ナナミには、爆裂の余韻を楽しむ心というものが欠けていますね。このままだと余裕ある大人にはなれませんよ?」
「大人であるための絶対条件にそれが存在するのなら、私は一生定義上の大人になれなくて結構です」
「ぐう……。いつか必ずナナミを唸らせる爆裂魔法を撃って見せます! 首を洗って待っていてください!!」
「耳元で叫ばないでください」
「ごめんなさい」
今日も今日とて爆裂散歩。カエルに撃ち込むのは物足りない、とめぐみんが我儘を言い出したこと。アクセル近郊での爆裂に住民及び守衛から苦情が入ったと、カズマパーティの保護者たる七海にクレームが入ったこと。
それらの事情を加味し、人里から少し離れた、現在は誰も利用していない古城に爆裂魔法を毎日撃ち込んでいる。
「そういえば、ナナミ。近頃は指名任務とやらでギルドにいないことが多いようですが、その内容はなんなのでしょうか?」
「それを話す前に。これを聞いたのち、絶対に一人でその対象に爆裂魔法を撃ちに行かない、と言うことを誓ってください」
「別に良いですよ、それぐらい。私も別に死にたいわけではありませんし」
「……まぁ良いでしょう。近頃、カエルやゴブリンと言った低級モンスターが姿を隠し始めた、と言う話はご存知でしょうか」
ギルド職員、ルナに曰く。
近頃、魔王軍の幹部級と見られるモンスターがアクセル近郊に陣地を構え、何やら偵察に来ているらしい。
そのオーラにでも気圧されたのか、低級モンスターたちは軒並みその姿を隠し始めた。初心者及び才能のない冒険者にクエストを斡旋することが多いアクセルにとって、これは割と致命的な出来事である。
本来ならば魔剣の勇者等と言う輩に討伐任務を出すところなのだが、生憎と現在は不在であるらしい。
そこに、ステータスならばその勇者に匹敵、一部は超える七海にお鉢が回ってきた。
しかし、ギルドとて有望な新人を雑に扱うわけにはいかない。故に偵察任務、クエストの内容はあくまで原因探究のみに留まり、本格的な討伐は王都から派遣される騎士団、もしくは七海や勇者含む有力冒険者での討伐団を組織して行われる、とのこと。
「……その、ナナミ。私は今、非常に。ひじょーーに嫌なことが思いついたのですが」
「はい」
「その魔王軍幹部の拠点……あの廃城だったりしません?」
「……………………」
余計な労働を嫌う七海はギルドに指定された箇所以外の偵察を行うことはなく、且つギルドも事前に情報を仕入れ、ある程度当たりを付けての依頼と考えていた為、その他の可能性を考えることはなかった。
が。偵察先に居住、ないし使用していた痕跡が見当たらなかった以上、他の可能性を考えて然るべきであることは火を見るより明らか。
「……あり得ますね」
「ええ、では……」
「爆裂魔法を撃つ場所を考え直す「明日からもあの城に爆裂魔法を撃ち続けましょう!!」……」
魔王軍幹部の討伐。それはエンシェントドラゴンやリッチーと言った超級モンスターの討伐と並ぶ栄誉であり、王都で活躍する冒険者たちが求めてやまない称号。
それを得られるチャンスが目の前にあると知って、自称最強のアークウィザードたる爆裂バカが踏みとどまるだろうか。無論、そんなわけはない。
「構いませんが、私はもう送迎はしませんよ」
「魔王軍幹部のことは隠してカズマに頼みます」
「…………」
結局七海が明日以降も送迎を行うことになったのは、もはや言うまでもないだろう。
☆☆☆☆
「あ、ナナミさん! 奇遇ですね!」
「……ルナさんですか。こんにちは」
「はい、こんにちは!」
まさに水を得た魚のよう、とでも言うべきか。生き別れた兄弟、あるいは幼少期に別れた幼馴染と再会したときのように顔を綻ばせたルナは、とててっと七海の元まで早足で駆ける。
「お食事ですか? ナナミさんはいつもギルドで食事をされていると思うのですが、珍しいですね」
「ええ、まぁ……。偶には私も、ゆっくりと食事を、と思いまして」
「ああ……」
駄女神に厨二ロリ、ドM令嬢。七海がギルドで食事をしていると、何故か必ず彼女らのうち一人がテーブルまでやってきて戯言を紡ぎ始める。
全員見目だけは良いものだから周りからは羨望なり嫉妬なりの視線を向けられることがあるが、七海からすればむしろ金を払ってでも引き取ってもらいたいほど。
幸いにして今日はカズマらもクエストを受けずに休息を取る日なようで、七海が彼らの面倒を見る必要もない。
故に、偶には、と街中にある料理店までわざわざ足を運んだわけだ。
「ああ、それじゃあ……」
お誘いするのも悪いか。一瞬そんな考えが脳裏をよぎるが、それを遮るのは心の中の悪魔。
そんな感じで譲り続けた結果今があるんじゃないか。そろそろ本気で行き遅れになる。七海を狙っている受付嬢は他にもいる。自分はあのパーティのメンバーと比べたら常識はある方だから、七海も疲れることはないだろう、と。
しかし、そこでルナの心に住む天使が囁いた。ただ一言、『行け、攻めろ』と。
「その、宜しければご一緒させていただけませんか?」
「………‥別に構いませんが、貴女の興味を惹くような話はできませんよ」
「いえ、ご一緒させていただけるだけで十分ですので!!」
よっしゃあ!!!!
ルナの脳内に勝ち確BGMが響き渡る。実際の所は未だスタートラインに立ったのみ、最低限拒絶はされていない、という状況でしかないのだが。そんなことは今の彼女には関係ない。
苦節十数年、諦めず磨き続けてきた外見が遂に日の目を見るのだ、と。ようやく身体目当て以外の、きちんとした礼節を持つ男性と付き合える可能性が出てきたのだ、と。まさに有頂天である。
「私はこのシュウマイを。ルナさんはどうなさいますか」
「えーっと、そうですね……では、私はこっちのキャベツの炒め物をいただきます」
「ご注文承りました。少々お待ちくださいませ」
お洒落なカフェ風の外装をした店でキャベツの炒め物が提供されるのは中々奇異に映るが、この世界のキャベツは高級品。フカヒレやキャビアといった、なんとなく響きが高そうな食材と同じ認識のされ方をしている。
ルナが必死に話題を振り、七海がそれを返す、と言う光景が数分続いたのち、二人の料理が運ばれる。
フレンチ風の皿に丁寧に盛り付けられるシュウマイとキャベツを見てとんでもない違和感を覚える七海だが、気にせず食べようとするルナの様子を見てその違和感をグッと飲み込んだ。この程度の違和感、野生の蛸が森で取れることを思えばなんてことはない。
「そ、その。ナナミさんは、どういった女性がタイプ、なんでしょうか?」
えらく直接的な質問。実質的に告白とほぼ同義とも取れるが、そこは流石恋愛遍歴0の女、ルナ。この時点で七海は色々と悟っているが、どうせそのうち忘れるだろうと特に何も考えずに言葉を発する。
「……強いて言うのならば、常識があり、且つ料理が上手な人……でしょうか」
「な、なるほど。……料理、練習しないと」
その後も取り留めのない会話が続いて、食事の終了という形で二人の逢瀬は終わりを告げた。ルナとしては想い人と食事が出来て、且つ好みのタイプまで知れた、まさに大勝利の時間と言っていい。
頑張れルナ、負けるなルナ。そのうち国家所属の検察とか言う肩書だけは手強いライバルが現れるぞ。
書き溜めの際にポカやらかしました。アンケ置いとくので答えていただけるとありがたいです。
時系列を入れ替えた場合順番として、原作と異なり
ベルディア襲来→ブルータルアリゲーター・ミツルギ回→ウィズ
になります。
アンケート結果を受け、ウィズ回を先に制作することに決めました。