「覆面盗賊団! 僕が相手だ!」
魔剣の勇者とも呼ばれる凄腕の冒険者、ミツルギキョウヤ。腕利きが集まる王城の兵士を悉く突破してきた盗賊団が相手とて、彼であれば負けることはないだろう。
貴族達の中には安心感からか笑みを見せる者もおり、その警戒心は確実に緩み始めていた。
その空気を鋭敏に察知し、ミツルギは鋭く指示を飛ばす。
「フィオ、クレメア! 皆を守るんだ!」
「で、でも、キョウヤ! 私たちも一緒に───」
「ダメだ! リスクが高すぎる!」
曰く。今まで彼らにやられた兵士たちは命までは取られていないが、いざとなった時どんな手段に出るかはわからない。自分やフィオ、クレメアには自衛手段があるが、貴族の方々は碌な抵抗手段を持っていない。
故に、相手にするのは一人に絞り、残りは防御を固めるべきである、と。
そう言われてしまえば返す言葉を持たず、ミツルギに思い思いの言葉を託して後ろに下がる。
「───さて、待たせたね。僕が相手をしよう」
「…………」
(おいどうすんだお頭! やべえの出てきたぞ!)
(ホラ助手くん! お得意の搦手でなんとか───)
(無理だよ! 俺とこいつ、ナナミの訓練で何回か戦ってるから、盗賊スキルは大体バレてる!)
(ああもう全くなんでこう面倒ごとを次々に生み出すのかなぁ君たちは!?)
対する覆面盗賊団───カズマとクリスが内心焦り散らかす中、それを見据えるミツルギは冷静で。
まずは男の方───カズマに剣を抜くことなく突進し、体を壁に押さえつける。
「グッ……」
「…………」
ミツルギとて、抵抗がないわけではない。皆の期待を裏切ることにもなるし、フィオたちに託した言葉もこの瞬間に虚飾に塗れたものになる。
だが。どうにも彼には、目の前の男が取る行動がただの蛮行だとは思えなかった。
彼であれば正面突破なぞせずもっと知恵を使うだろうし、そもそもこんな大立ち回りをするわけがない。
それがこのような行動に及んでいるのだから、きっと、そこには相応の理由がある。
「後で訳は聞かせてもらうぞ、サトウカズマ」
「……ッ、ミツルギッ!?」
バインドを使え、と。そう囁いて、その通りカズマがバインドと呟いて。本来ならばいくらでも対抗手段はあるし、経験もあるが、なんの抵抗をすることもなく飛んできた縄に素直に拘束される。
「ッ、しまった!!」
「ウソ、キョウヤがやられた!?」
「動かないならキミたちに手荒い真似はしないよ」
「ッ、アンタね……!」
「ダメ!! 悔しいのはわかる。悔しいのはわかる、けどッ……!」
ミツルギすら無力化してしまう相手に、彼女らが何をできるわけでもなく。ここで出来る最善の選択は、せめてこの場の人間の命を助けるために、盗賊たちを見過ごすことのみ。
「行くよ、助手くん」
「うっす、お頭!」
そんな彼らの背を見送るミツルギの瞳は、どこか満足げな色を浮かべていたのだが。
後日訳を聞きにカズマ邸に訪れた際、これで対戦カウントは俺の勝ち星先行だな、と。そうマウントを取られ、あの場でとっ捕まえてやればよかった、と少しばかりの後悔をするミツルギであった。
原作との変更点は
・ミツルギがちょっと悪い子になった
・ミツルギとカズマがちょっと仲良くなった
・ミツルギが原作より強化された(搦手に強くなった)
ことぐらいですかね。
これで6巻分終わりです。7巻分投稿まで時間開くと思いますが、気長にお待ちいただけると幸いです。