この素晴らしい社畜に安寧を!   作:どこはかとなくやばい人

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見事に忘れてた


第68話

「アルダープが」

「捕まったァ!?!?」

 

 ダクネス救出に向け、カズマが諸々の策で金を工面した矢先。屋敷に飛び込んできたのはなんと、領主アルダープ逮捕の報。

 曰く、アルダープは自身の屋敷に子飼いとして悪魔を使役しており、かの悪魔の力を用いて数々の不正を隠蔽。今回に至ってはダスティネス家の当主を呪い殺そうとしていたことが発覚。

 すぐさまお縄となり、当然ダクネスとの結婚も破談し、即離婚。借金はアレクセイ家を継いだバルターの意向により帳消しに。

 

 護送の最中、"何故か"アルダープは姿を消してしまったようだが、一先ず、カズマパーティの諸々は思わぬ形で解決したことになる。

 

「お疲れ様です、ナナミ」

「何のことでしょうか」

「……ま、そういうでしょうね、ナナミは。慰労の言葉は私が偶々日頃の感謝を伝えたかった、ということですよ」

「ならば、素直に受け取っておきましょう」

 

 バニルの言葉を受けた七海は、自身が使い得るすべての伝手を用いて全力でアルダープを潰しにかかった。

 貴族としての立場からは、より上の家であるクレア、シンフォニア家の力を借りた。犯罪を追求する社会的正義の立場からは、国家所属の検察官であるセナの力を借りた。対大悪魔との交渉要員として、バニルの力を借りた。

 バニルへの貸しは後日、ウィズの仕入れに自身の代わりに同行することで精算することを確約してもらっている。クレアはレインのこともあり貸し借りなく承諾、セナはどさくさに紛れてデートの約束を取り付けることに成功していた。

 

「……迷惑をかけたな、ナナミ」

「いつものことです」

「ふ、そうか。だが、今回ばかりは私だけでなく、父も。アルダープの悪政に苦しめられていた民も、お前に救われた。だからこそ、お礼の言葉を受け取ってほしい。……本当に、ありがとう」

「……ええ」

 

 深夜。帰還を果たしたダクネスを祝って飲めや騒げやの大騒ぎをしたカズマパーティ一行は、大半がリビングでそのまま酔い潰れて眠っている。唯一酒を飲ませてもらえなかっためぐみんも、時間が時間ということもあり自室に戻っている頃。

 ダクネスと七海は、いつかの日のようにベランダで会話をしていた。

 

「サトウ君にもお礼を言っておいた方がいいでしょう。彼も、なんだかんだ貴方を助けるために色々と奔走していたようなので」

「……ああ。あの金額を見てしまうと、な」

「20億エリスでしたか。良くぞここまで集めたものです」

 

 ダクネスを助けるために諸々の知的財産権をまとめて売却し、得た額はなんと20億エリス。それで散財するでもなく、今後の資金に充てて冒険者稼業を引退しようとするでもなく、ダクネスを助けようとした。

 口ではなんだかんだ言いつつも、やはりカズマもこの空間を気に入っている、という証拠だ。

 

「あの日、お前たちと一緒にお父様に会いに行った時にも言ったことだが。私はこのパーティのことを、第二の家族のように思っている」

「……随分と問題児揃いの家庭ですね」

「アクアやめぐみん、カズマ、私がバカをやって、ナナミが呆れながらもそれを諌める。そんなパーティとしての在り方が、どうにも暖かくて仕方ない」

「少しはバカをやる頻度を減らして欲しいのですが」

「だから、正直怖かったんだ。この場を離れるのが。この暖かさを失ってしまうのが」

 

 七海の抗議を右から左に受け流し、ダクネスは言葉を紡ぐ。ありがとう、と、本日既に何度目かも分からないお礼の言葉を呟いたところで。

 だが、と。言葉を続けた。

 

「自分の恋愛はしばらく懲り懲りだな」

「自分の?」

「カズマとめぐみんもそうだが、ナナミも中々に罪深い男だからな。このパーティにいれば、自らせずとも恋模様には事欠かないだろう?」

「……………………」

「まあ、そう焦らずともいつか答えを出せばそれでいいさ」

「……流石はバツイチ、私よりも恋愛経験では遥か先を行くようですね」

「ぐッ……」

 

 そう。結婚式こそ行われていないものの、公的な手続きのもと一度ダクネスとアルダープは夫婦になっている。

 いくらアルダープの帰責事由で婚姻が破談になったとはいえ、ダクネスの経歴には立派なバツが刻まれてしまったのである。

 未だキスすらしたことがない純情バツイチドM令嬢ララティーナ。一部界隈からは凄まじい人気を誇りそうな属性を備えた彼女は、七海から放たれた鋭い反撃に苦い顔をした。

 

 後日。

 

「……あれ、おーいアクア、そこに置いてた20億エリスどこやった?」

「ひゅーひゅー」

「なんだ、ギャンブルで溶かしちまったのか? 別に数億エリスぐらいで怒りゃしねえから、残りの分出してくれ」

「……ないわ」

「は?」

「ないわ、全部スったから」

「…………」

 

 しばらくの間、アクセルの商店街では、泣きながら大量のコロッケを売り捌く自称女神の姿を見ることができたという。




次回アルダープを処してる様子投稿したら7巻分終わりです。
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