この素晴らしい社畜に安寧を!   作:どこはかとなくやばい人

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ミツルギ回。色々詰め込んだのでちょっと長いです


第9話

「出汁パックを鍋に入れてる感じだな、これ」

「女神の出し汁……なんかこう、いい感じの加護がありそうじゃない? 上手いこと売り出せないかしら」

「やめとけ、それで寄ってくるのは変態だけだ」

 

 ベルディア襲撃をなんとか乗り切ったカズマパーティだが、依然として低級モンスターが姿を現すことはない。

 ギルドとしても対応を協議中とのことで、掲示板に張り出されるのはそれなりの難易度を誇るクエストのみ。

 このブルータルアリゲーターが住み着いた湖の浄化、というクエストも本来ならカズマ達の手に余るものであるのだが、幸いこのパーティには歩く浄化装置ことアクアがいる。

 ギルドからレンタルした物凄く丈夫な檻にアクアを突っ込み、湖に浸けることで浄化を進める。とんでもない強硬策ではあるが、こうでもしなければ日々の食い扶持すら稼げない。無期限無利子無担保とは言え、これ以上、七海への借金を増やすわけにはいかないのだ。

 

「……私が付き添いをする意味はありましたか?」

「浄化が終わるまで数時間ぐらいか。その間、俺一人でこいつらの面倒を見ろと?」

「成る程。では、私はこれで失礼します」

「行かせるか!!」

 

 木に抱きつくコアラの如き姿勢で七海を引き止めるカズマ。実際七海からすれば、カズマの拘束如き鼻息で吹き飛ばせる程度には脆いものなのだが、ここではため息を吐くのみに止め、持ち込んだ椅子に座り、何をするでもなく目を瞑る。

 

「そういえば、なんだが。ナナミって、何を特典に選んだんだ? やっぱその鉈か?」

「ええ、確かにこの鉈を選びました」

「やっぱり伝説の武器だったりするんだろうなぁそれ。あーあ、俺も普通の特典選んでたら今頃は無双ハーレムライフだったのに」

「今でもハーレム同然でしょう」

「アイツらは女の皮を被ったナマモノだ」

 

 生産性のない会話が各所で繰り広げられる中、突如アクアが悲鳴を上げる。

 ブルータルアリゲーターは汚染水を好み、綺麗な水の川や湖に生息することはない、という非常に珍しい生態をしている。そんな彼らにとって、自動浄化装置であるアクアはまさに天敵そのもの。

 排除しようとアクアを守る檻に攻撃を仕掛けるも、檻はギリギリと音を立てるのみに収まり、外から見る限りは破損する様子は見受けられない。

 

「ちょ、カズマさんナナミさん!? なんかミシミシ言ってるんですけど!? めっちゃ壊れそうなんですけど!?」

「がんばれアクアー、コイツら倒したら汚染が進むから、俺らは手出しできないんだわ」

「そ、そんなこと言ってる場合じゃ……ひええええええ!?!? 今バキって言った!? ピュ、ピュリフィケーション、ピュリフィケーション!!」

 

 浄化魔法を必死に唱えるアクア。効果があるかどうかなどわからない。今の彼女にとって、1%でも早く終わる可能性があるのならば、それは全て有効策となり得るのだ。

 

「この馬鹿を止めるのを手伝ってください!! 私の筋力じゃ止められな…‥引き摺ってる引き摺ってる! ダクネスと違って私に傷ついて喜ぶ趣味はないんですよ!! ちょ、ほんとに早く助けて!!」

「今行くぞめぐみん!!」

「カズマが来たところで何になると言うのですか!? 貴方、私よりも筋力ステータス低いじゃないですか!」

「……止まりなさい」

「ぐうッ!? い、良いぞナナミ。悪くない一撃だ。だが、お前であればより高みを……」

 

 首筋に手刀を叩き込み、ダクネスを気絶させる七海。接敵している最中にパーティメンバーを気絶させるなど本来なら愚行も愚行だが、この場におけるダクネスはエネミー同然である。それを倒すことになんの躊躇がいるというのだろうか。

 その頃完全に放置されたアクアは、浄化魔法を唱えるのをやめ、檻の中央で縮こまってプルプル震えるフェーズに移行していた。かわいい。だがゲロカス借金魔神である。

 

 

 

 

☆☆☆☆

 

 

 

 

「ドナドナドーナー……」

「おいアクア、頼むから機嫌直してくれよ。今日の飲み代飯代は俺が全部出してやるから、な?」

 

 完全にいじけた。ブルータルアリゲーターに捕食される恐怖から精神にダメージを負ったアクアは、任務が終わった後も檻から出る素振りを見せない。

 それ故ギルドに戻るまでアクアを檻に入れたまま引くことになるわけだが、そこは流石、この短期間で多数の評判を得ているカズマパーティ。今度は何をやらかしたのだ、と道ゆく冒険者たちの視線を独り占めである。

 

「……ナナミに向けられる視線と私たちに向けられる視線の種類が違う気がするのですが」

「自分で言うのもアレですが、日頃の行いの差でしょう」

 

 片や常識と実力を持ち合わせ、且つそれなりに人柄が良いことから新人ベテラン問わず冒険者からそれなりに慕われる七海。

 片やそれなりの実力は持ち合わせるものの、一般常識が全て、または局所的に欠如しているメンバーに、それなりの常識を持ち合わせるものの人間として大切な部分が若干欠けているカズマ。

 視線の種類が異なるのはさもありなんといったところだろう。

 

 尤も、アクアとて別段嫌われているかといえばそんなことはない。どちらかといえば手のかかる親戚の子供的なポジション。

 故にそれなりに心配の視線を向けられてはいるのだが、今の彼女にそんなものを感じ取る余裕は存在しない。

 が。流石に、大声で檻に手をかけ、語りかけてくる輩であればまた話は別。

 

「女神様!? 女神様じゃないですか!」

「なんだろうな、俺コイツのことを無性に殴りたくなってきたんだが」

「抑えてくださいサトウ君」

 

 二人の小柄な女を侍らせる、蒼い鎧と黒いマントを纏った騎士風の男。いかにも主人公です、と言いたげな風貌の爽やかイケメンは、檻に入れられたアクアを救出するべく格子を掴んで力を入れ、ゴリラ顔負けの力でグッと曲げる。

 

「こんなところで再び出会えるとは……! ところでアクア様、そちらの男たちは?」

「私のパーティメンバーよ」

「ッ!? アクア様はここで冒険者をされているのですか!?」

「そうだけど?」

 

 彼にとってはよほど衝撃の事実だったのだろう、オーバー気味なリアクションを取るイケメン。

 

「ところで、アンタ誰よ?」

「ええッ!? 覚えていないのですか!?」

「知らん人だったのかよ!? マジの不審者じゃねーか!」

 

 これにはカズマも驚きの声をあげる。現状、彼の中で目の前のイケメンの評価は、"やたら殴りたくなるムカつく顔をした不審者ゴリラ"である。

 

「僕ですよ! 貴方に魔剣グラムを託されてこの世界を訪れた、ミツルギキョウヤです!!」

「ミツルギ? …………あー、居たかもしれないわね、そんな人も。うん」

「思い出していただけましたか!」

「頭お花畑かよお前」

 

 明らかに思い出していない人の反応である。

 だが、これも仕方がないことではあるのだ。アクアとて百年単位で地球から転生者をこの世界に送り続けてきた身、カズマという特例を除き、ミツルギもその大勢のうちの一人でしかない。

 これを完全に暗記するには、完全記憶持ちでもない限り不可能に近いだろう。

 

「女神様。貴方から託された神命を遂行するべく、僕は魔剣を手に日々鍛錬を重ね、魔王討伐を目指しております。幾度危機が訪れようと、貴方が授けてくださった魔剣と、パーティメンバーが助けてくれました。…‥ほら、二人とも。自己紹介を」

「私はクレメア、職業は戦士よ! アンタがキョウヤの言ってたメガミサマって人? いくらアンタでも、キョウヤは渡さないからね!」

「や、やめろよクレメア! よりにもよって女神様の前で!」

「いいじゃん別に」

「むー……あっ! 私はフィオ、職業は盗賊! 貴方たちはなんて名前なの?」

 

 既に帰りたい気持ちが強くなっているカズマたちだが、ここで放置という選択肢をとればより面倒臭い方向にイベントが派生する可能性が高い。

 それを悟り、素直に自己紹介をする。

 

「私はアクア、職業はアークプリーストよ」

「ダクネスと言う。クルセイダーを生業としている、よろしく頼む」

「七海建人と申します」

「我が名はめぐみん! アークウィザードにして」

「俺はサトウカズマ、冒険者だ」

 

 詠唱妨害に文句をつけるめぐみんを軽くあしらいながら自己紹介を済ませるカズマ。その足は既にギルドの方向へ向きかけている。

 

「女性のパーティメンバーが全員上級職だと? まさか君たち、彼女らの好意につけ込み、上位職に囲まれながら楽に甘い蜜を吸っている害悪寄生冒険者じゃないだろうな?」

 

 害悪寄生というが、そも当人たちが納得してパーティを組んでいる以上外部が口を出すことではない。

 実力差があろうとそれ以上に関係性が良いことからパーティを組んでいることがあれば、下級職であろうとそのポテンシャルの高さを見込み上級職パーティに加入しているケースもある。

 では何故、口を出すのか。基本的に答えは嫉妬である。

 その場合、口論に発展した末正論で説き伏せることも可能ではある。悪態はつくだろうが、引き下がらせることができるだろう。

 だが。この男、ミツルギはまた別種。本気でこの行為を悪だと捉えている男。そうであれば、また話は変わる。

 

「マジで頭おかしいのかよお前。つーか、このパーティのリーダーは俺だぞ?」

「……君が?」

 

 訝しむような視線を向けるミツルギに、心外とでも言いたげな様子を見せるカズマ。

 暫く街を留守にしていたミツルギは、カズマパーティの評判を知り得ない。それ故に起こる、悲しきすれ違いである。

 

「事実ですよ。先ほどもカズマの発案で湖の浄化クエストを終わらせたばかりです」

「あの高難易度クエストを? 失礼かもしれないが、一体どうやって?」

「私を檻に入れて、檻ごと湖に放り込んで浄化したのよ」

「サトウカズマ貴様ァァァァァァァァ!!!」

 

 ブチ切れるミツルギ。アクアが弁明をするも特に効果はない。

 残虐非道な真似をする男たちから離れ天界に戻るよう説得するミツルギだが、カズマに転生特典として選ばれた為魔王が討伐されるまで戻ることはできない、という事実。更に馬小屋で就寝を共にしているということを知りさらにブチ切れた。

 

「君のような鬼畜にアクア様を預けるわけにはいかない。どうせ、そこの男も碌な人間じゃないんだろう。女神様、魔王討伐が目的ならば僕たちと共に行きましょう。そこの二人もだ。僕は決してパーティメンバーに対し非道な扱いをするつもりはないよ」

 

 イケメンスマイルを携え勧誘するミツルギ。クレメアとフィオは新たな女が増えることに不満げな表情をしつつも、愛しのミツルギ様の発案ならば、と口を挟む様子はない。

 

「嫌なんですけど、あんな痛い人」

「爆裂魔法を撃ちましょう。きっと今ならば警察の方々も許してくれます」

「私がここまで殴りたいと思わせられるのも初めてだな」

「満場一致だな。そんじゃさよなら」

「ッ、洗脳でもしているのか? なんて卑劣な……! 君たち、僕と勝負しろ! 勝てば君たちのパーティメンバーをこちらにもらう。いいな?」

 

 ミツルギのことをドブカスを見るような視線で見つめる女性陣。頭を抱える七海。何やら準備を進めるカズマ。

 

「……はぁ。わかりました、私が受けましょう」

「ふん、君か。先からだんまりを決め込んでいたようだが、決して逃げられるとは思わないことだ」

「御託は結構。そちらからどうぞ」

 

 直後。踏み込みから大上段に振り下ろされるミツルギの拳。流石に剣を振ることは自重した。

 威力スピードこそ一級下位に匹敵するか否かのレベルではあるが、あまりにも粗雑が過ぎる。

 なまじグラムによる身体能力の補助で今までの敵を打ち倒してこれた分、ミツルギには技量が酷く不足している。言うなれば1級クラスの呪力量を持った呪術素人、とでも言うところだろうか。

 そして。自慢の身体能力ですら並ぶか上回るかの七海相手に、その攻撃が通用することはない。

 

「ガッ……!?」

 

 鳩尾に拳を一撃。変態金髪ラッキーマンに仲間の数と配置を聞くときに振るわれたそれと酷似した一撃に、鎧越しながらもミツルギはノックアウト。白目を剥いてその場に崩れ落ちる。

 奇しくもミツルギが金髪であることから、余計にその状況に酷似している。が、ラッキーマンは腹パンされた後も運良く意識を繋ぐことに成功している。

 今ここに、ミツルギ<ラッキーマンという完璧な不等式が爆誕した。

 

「キョ、キョウヤ!?」

「それでは、私たちはこれにて失礼します。後ほど檻を破壊した分の請求が行くと思いますので、お支払いをお忘れなく」

 

 クレメアとフィオにそう告げ、さっさとその場を去る七海。それに追従するようにアクアたちも歩き出す。カズマはその後ろでミツルギの懐をあさっていた。

 

 

 

 

☆☆☆☆

 

 

 

 

「ミツルギ君」

「……貴方は」

 

 魔剣をカズマに売っぱらわれ、途方に暮れるミツルギ。取り巻き二人が現在進行形で闇市を探し回っているが、いまだグラムの消息は掴めていない。力がなくとも、見た目は豪華でコレクターには一定の需要がありそうな造形をしているのだ。もう既にどこかの家に買われたのだろうか、と。悲観が止まることはない。

 

「まず、此方を。恐らく貴方の魔剣だと思いますが、贋作の可能性もありますので確認をお願いします」

「ッ!? こ、これは、確かにグラムだ……」

「決闘勝利の報酬に魔剣の所有権譲渡が含まれていない以上、サトウ君の行為は窃盗そのもの。納得はできないかもしれませんが、どうかこれでお目溢しいただければ」

「も、勿論です! というか、謝らないといけないのは僕の方です。事情を知らず無礼を働いて、こんな謝罪で許していただけるとは思いませんが、どうか……!」

 

 地面に擦り付ける勢いで頭を下げるミツルギ。補足しておくが、別に彼とて根が悪党なわけではない。むしろ、性根自体はカズマと比べて至って善良。ミツルギは女子からパンツを奪ったりしないし、ましてやそのパンツを利用して財布を強請ることなんて死んでもしない。

 自身の頭に血が上り過ぎていた。当人が納得している、というよりカズマたちといることを選んだのであれば、それ以上の勧誘はただの嫌がらせにしかなり得ない。一晩経ってそれを理解したが故の、この謝罪である。

 

「はい。こちらとしても、貴方とこれ以上事を構えるつもりはありませんから。和解できるのならそれが一番でしょう」

「ありがとうございます!! ……その、失礼なことを聞きますが。ナナミさんの職業を教えて貰えないでしょうか? 少なくとも上級職、それもかなりのレベルだと思うんですが……」

「呪術師です。レベルに関してはそれなりですが、地球にいた頃から戦闘を生業としていたので」

 

 七海の格好は未だに白スーツ。一瞬ヤのつく職業では、と思ったミツルギだが、その律儀さや言葉の丁寧さを踏まえるに、どちらかと言えば自衛隊のような部隊。もしや国外の軍隊にでも所属し、高官を務めていたのではないだろうか、と。そう推察するミツルギ。

 前世から呪術師で、特殊な能力を使ってバケモノと戦ってました、なんて当てようがないので、彼の考察もあながち的外れとは言い難いものである。

 

「……その、ナナミさんから見て、僕はどうなんでしょうか」

「どう、とは」

「強さ的な意味合いです」

「ふむ……」

 

 思考する七海。正確な評価を告げるのなら"たまたま力を持った一般人"とでもなるのだろうが、果たしてそれをそのまま伝えて良いものかどうか、と。

 が、それも一瞬。呪術師と同じくして、冒険者もまた命を張る職業。一瞬の油断、少しの慢心が命取りに繋がりかねない。

 そのままの評価をミツルギに告げる。

 

「あはは……やっぱり、そうですか」

「ええ。単に力を振りかざす輩であればそう後れは取らないでしょうが」

「技術を持っている、僕と同等以上の身体能力を持つ相手には厳しい……ってことですね」

「はい」

 

 まさしく、七海がそれに該当するだろう。

 魔剣持ちミツルギと七海に、フィジカルの差はそこまで無い。勝敗を分けたのは、圧倒的なまでの技術の差。仮にミツルギが魔剣を持ち出してこようと、七海が敗北を喫することは万に一つもなかっただろう。

 

「……力を求めるのも悪くはありません。が、そう先を急ぐこともない」

「……え?」

「身体の動かし方に剣の技術、まだまだ伸び代を残した状態でここまでの力を有しているのは、間違いなく誇るべき点です。驕るのは論外ですが、悲観することもないでしょう」

 

 呪術師換算でいえば、ミツルギ程度の年で伸び代を残し、なおかつ総合的に見て準一級レベルの実力を保有しているなど、逸材も逸材。

 本人の気質もあり、成熟し切る頃には七海と同等の力を有していても何らおかしくは無い。流石に特級連中と比べるのは酷な話になるが。

 

 自身の限界を"定めてしまった"七海とは違い、彼はどこまでも遙か頂を目指す向上心がある。で、あるのなら。現状の実力のみで彼の評価を確定させてしまうのは、あまりに早計。

 

「なんと言うか、先生みたいですね。ナナミさんは」

「私は教職ではありません。……ミツルギ君。異世界ではどうか知りませんが、地球換算で貴方はまだ子供。本来であれば、大人の庇護を受けるべきです。が、この世界の現状がそうはさせてくれない」

 

 この世界で生まれ育った者にとって、大人の庇護は恐らく幼少期のみに得られるもの。15程度の年を迎えれば、親元から離れ、冒険者として食っていくなり、何か事業を起こすなりして、大勢の人間が自立する。親元に残るのは、クソニートか家業を継ぐ予定の子供がほとんど。

 そんな世界なのだから、恐らく自らの"子供"と言う存在の枠組みを見直すべきなのだろう、と、七海は以前からそう思考はしていた。

 

 が。カズマやダスト、今のミツルギ等この世界の人間、転生者たちと交流して得た結論は、"彼らは依然子供のままである"というもの。自力で稼ぐ能力が備わっているだけであり、精神構造自体は日本の高校生、中学生となんら遜色ないものである、と。

 

「なにか困ったことがあるのならば、大人に頼ることができる。そのことは、決して忘れないように。無論、私でも、他の人間でも構いません」

「……本当に教職じゃなかったんですよね?」

「違います」

「そ、そうですか。……で、では。早速一つお願いが……」

 

 コホン、と。ミツルギは一つ咳払いをして、改めるように願いを口にする。

 

「僕に戦い方を教えてください!」

「無理です」

「ええ!?」

 

 ノータイムで断る七海。そのスピードは禪院のドブカスですら遠く及ばないほど。

 何も七海は、意地悪で断っているわけではない。ミツルギの大剣を使用した戦い方と、七海の鉈を使用した戦い方ではあまりに差異があり過ぎる。ならば、自分よりも適した師が存在するだろう、と。

 そう説明すれば、ギャグ漫画よろしく口を大きく開いたアホヅラを晒していたミツルギも納得したのか、画風が戻り元のイケメンフェイスに回復した。

 

「習うより慣れろ、とは良く言いますが。君の場合、新たに型を探すよりも、より鍛錬を積み、今の戦い方を昇華させた方が早いでしょうね」

「成る程……」

「模擬戦程度なら私でも付き合えます。尤も、同一人物とばかり戦闘していては変な癖が付きますので、それは推奨しませんが」

 

 あまりに親身。初見印象がドブカスレベルの自分に対して、こうも真剣になってくれるものか、と。ミツルギの中では、この数分で七海の好感度がぐんぐん上昇している。

 本人は教職でないと言っていたが、で、あるのならば、部外者でありながら自分にアドバイスを送り、尚且つその実力は折り紙つき。まさに、その在り方は───。

 

「師匠」

「はい?」

「師匠と呼ばせてください、七海さん!!」

「やめてください」

 

 結局七海が粘り勝ち、ミツルギの七海に対する呼び方は"七海さん"で固まった。ミツルギは最後まで不満げな様子を隠そうともしていなかったが。

 そして、その後。彼のパーティが泊まっている宿にて、フィオとクレメアは知ることになる。自らの道を阻む、真なる強敵が誰であるのかを。

 




真面目に期末勉強しないとまずい時期が近付いてきたので、2月中旬ぐらいまではペースが死にます。週1維持したいですが多分無理なので、二週間に一話出たら良い方だと思っておいてください。
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