俺はフォンテーヌ生まれ稲妻育ち   作:残雪侍

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旅道の章・第三幕

 

 

 

 1.スメール ヴィマラ村

 

 

「ということで〜、スメールシティに行こう!」

「…………はぇ」

 

 時刻は早朝……という程でもない時間。俺はまだ寝ぼけ眼のフリーナを起こした。おはよう!

 

「おはようルド……なんだか変な事を言わなかった?」

「スメールシティに行こう!」

「聞き間違いじゃなかったか……」

 

 こら! 二度寝しようとするんじゃない。気を使って日の出と共に起こさないでいてやったんだぞ!

 むーむーと抗議の声をだすフリーナと布団を取り合う。何が嫌なんだ!

 

「僕のことなら心配いらない! 昨日は取り乱しちゃってごめん。でも、僕に気遣いは不要だ。このまま真っ直ぐ璃月まで行こう?」

 

 はーん、なるほどな。昨日の雨宿りでトラウマが出たことを気にして、予定が崩れないようにしたいんだな。自分が足を引っ張っていると思っているのだろう

 

「それなんだけどな」

 

 俺は旅のルート変更を提案した。というか多分そうせざるを得ないのだ。

 前に俺が通った層岩巨淵……スメール璃月間の直通ルートだが、どうやら二年前の事故によって封鎖されてしまったらしい。直接の問題はある旅人によって解決されたが、依然として璃月の千岩軍が封鎖しているようなのだ。

 

「……君の通った旅道を通りたいと言ったのは僕だけど、すごい所を通ろうとしてたんだね」

「あの頃はちゃんと道として機能してたんだよ」

 

 つまり、ここから下流にくだってオルモス港、そこから璃月行きの船に乗ればぐるっと周って璃月港に到着できる。移動時間は少し伸びるが険しい道はもう終わりってワケ

 

「だったらこの際スメールシティを観光してのんびり璃月入りしちまおうぜ! 旅の醍醐味は寄り道にありだ!」

 

 朝になると主の身の回りの世話をするために自動で出てくるサロンメンバー達が俺をわっと盛り上げた。皆ありがとう! 彼等も主人のことを心配していたのだ。どうやら多数決は俺の勝ちのようだな?

 しかしフリーナの表情は釈然としない。その顔は「それなら直接オルモス港に行けば……」とか考えてるな

 

「それに、俺が気を使ったのは早い時間に起こさないでやったことだけだ。そもそも異国の文化に触れて来いって言われてるのに道なりにあるスメールを楽しまないのはヌヴィレット様の意向に沿わないだろ?」

「うぐ、それは……」

 

 もう一押しってところか。俺はテイワット観光ガイドをぺぺぺっと捲ってスメールの頁……特にスメール限定スイーツの一覧を読み上げる

 

「スメールと言えばパティサラプリンだよな、クリーミーな舌触りで口に入れた瞬間とろけてスメールローズとパティサラの香りがいっぱいに広がるんだぜ」

「……くぅ」

「かの草神も好きなナツメヤシキャンディはいくつか買って道中のおやつにしてもいいし、出来たてのパグラヴァは生地がサクサクでそりゃもう──」

「ああぁわかった! わかったよ!! 行こうルド、スメールの文化をこれでもかってくらい楽しんでやろうじゃないか!」

 

 ガバッと起き上がったフリーナが着替えるから外に出ろと部屋から俺を追い出す。やけくそ気味だがフリーナの好奇心を刺激することができたようだ。顔から楽しみオーラが滲み出ていたからな。

 

 そういうわけで舟を借りてこないとだ。俺は一緒に追い出されたジェントルマン・アッシャーと顔を見合わせた。こういう時の彼は一流の目利きを発揮するから一緒に選んでくれると助かるぜ

 

 ──なに、 舟に水元素でスクリューを作れって? ほう……おもしれーこと考えるじゃねぇの

 

 

「んで、親愛なる友ジェントルマン・アッシャーと一緒に選び、俺がちょちょいと改造を施したフリーナ様専用舟がこちらになります!」

「君だけならともかくジェントルマン・アッシャーも居てこんな事になるなんて……」

 

 身嗜みを整えたフリーナと合流する頃には、俺たちは舟を借りて何時でも出発できる準備を終えていた。ぺちんと拳と触手を突き合わせるのを見てフリーナががくりと肩を落とす

 

「……それで、どのあたりが特別なんだい?」

 

 よく聞いてくれた! 俺はフリーナにこの舟の素晴らしさを説いた。後部に取り付けた水元素スクリューが独特の推力を生み出し、通常の倍の速度で移動可能! もちろん舟体へのダメージを考慮してジェントルマン・アッシャーには舟全体にコーティングを施して貰っている。これぞ友情パワーだな

 

「はぁ……ここは元素力を扱うのが上手いと褒めるべきなのかな。いつ練習したんだい?」

「昔から遊べるものと言えば神の目だったからな。ブランクはお前が振り回してくれたおかげで治った。ありがとな」

「うっ、反応に困る……まぁ、いいや」

 

 ぴょんとフリーナが舟に飛び乗り、腰掛ける。なんだねその挑発的な表情は?

 

「せっかく速い舟を作ったんだ。スメールシティまでの道のりは君が素晴らしいものにしてくれるんだよね」

「任せろ任せろ。嫌な気持ちなんて吹っ飛ばす最高の体験をくれてやるよ」

 

 見送りに来てくれた村長とここまで一緒に来てくれた駄獣くんに別れを告げて、水元素を操作しスクリューを回す。しっかり捕まってろよ!

 

 

 2.スメール 河川上

 

 

 ざばざばと水飛沫をあげ、爆進する小舟が一艘。水辺の鳥は慌てて逃げ出し、陸の方で獲物を待ち構えていた盗賊団(エルマイト旅団)が波を浴びてひっくり返る。

 

「ひゅー! まさにスピードスターだぜ!」

「ルド! 前見て前! こんなぐねぐねした川でそんなにスピード出したらっ!」

 

 任せろフリーナ! 俺は前方の岸に水元素の波を作った。舟に取り付けたスクリューはその勢いをさらに増して波に乗り上げ、空高く跳び上がる。

 

「わぁ……飛んでる……」

「はははッ! 見てみろ、どいつもこいつもあんなに口開けてびっくりしてるぞ」

 

 空飛ぶ舟なんて見たことなかろうて! さて、跳んだはいいが着地はどうするか気になるところだろう。既に舟は最高到達点をこえて自由落下を始めていた

 

「ジェントルマン・アッシャー! 頼んだ!」

「僕のサロンメンバーなのに!?」

 

 俺の呼び声に飛び出した友人が力を使う。船底から水面にかけてレールが組み上がり、速度を落とすことなく急降下する。許可が降りたらアトラクションに出来そうだな。フォンテーヌに帰ったらやってみないか?

 

「ひぇええ!!」

「まだまだここからだぞ! 楽しくなってきたなフリーナ!」

 

 俺のエンジンは完全に温まったところだ、今なら限界を超えた速度も叩き出せそうだぜ!

 腹に回されたフリーナの腕がきつく閉まる。あれ、やりすぎたかな?

 

「……あはっ、ははは!」

「フリーナさん!?」

「もっと、もっと速くだルド! 君の力とサロン・ソリティアはこんなもんじゃないってこと、見せてやろうじゃないか!」

「──! あぁ、あぁ! そうだな!」

 

 速度狂ってやつなのかな? いや、興奮しているだけか……それなら、今はお望み通り最高速度で進むべきだろう。

 唸れスクリュー! さらに水飛沫が激しくなり、景色が後ろに流れていく。最後の直線だ! 遠目からでも巨大だった大木が近付いたことでさらに巨大に見えてくる。あれこそがこの船旅のゴール、スメールシティだ。

 

「ルド! もう到着するみたいだ! そろそろブレーキを──」

「……? ブレーキ?」

「へ?」

 

 俺はジェントルマン・アッシャーと顔を見合わせた。あぁ、そういやそこまで考えてなかったな。

 

「ば、ばかルドー!!」

「うおぉ、止まれええぇぇ!!」

 

 すぐさま刀を抜いて水元素の刃を形成、ジェントルマン・アッシャーも手伝って錨の形になったそれを水底に突き刺した。

 錨が砂を掴んで舟を急停止させる。小さな舟なので勢いはすぐに止まるが、慣性はどうしようもない。船着き場に叩きつけるように停まった舟の上から俺たちは投げ出された

 

 

 3. スメール スメールシティ

 

 

 護衛なめんなッ! 俺は空中で刀を納めてフリーナを抱き抱えて着地した。勢いを殺しながら広場の中央までガリガリと滑ってやっと止まる。うへー……いまので靴底がかなり削れたぞ

 

「…………ふう」

「ふう、じゃないよばか! 皆見てるから……と、とりあえずおろして」

 

 腕の中でモゾモゾ暴れだしたフリーナをおろす。ふるふると水を払うのを見てると何だか猫みたいだな。俺はマジックポケットからタオルを取り出してフリーナに渡してやった

 髪に着いた水滴を拭き取り、帽子をぽんと叩いて定位置に戻したフリーナは周囲をきょろきょろと見渡している。皆見てるし落ち着かないのだろうか?

 

「さてフリーナ。ここまでの船旅の感想は?」

「……次出発する時は停止する事も考えてね。でも、すごく楽しかった!」

「へへ、ようこそスメールシティへ!」

 

 満面の笑みで礼を言ってくれるフリーナにこちらも嬉しくなる。友人が元気になってくれてよかった。急に肩を組んできたあんたもそう思うだろ? スメール人ってフレンドリーな人が多いんだな

 

「あぁ、そうだな。ようこそスメールシティへ……とりあえず危険運転及び少女誘拐未遂の話を聞きたいんでレグザー庁までご同行願おうか、ご友人?」

 

 おぉ、あんたは見たことがあるな。その緑のバンダナ……確かエルマイト旅団の『三十人団』だろ? 主に都市の治安維持担当の。待て、少女誘拐未遂?

 

「あ、あの? 何か誤解があるみたいなんだが……おいおい。引っ張るなって! ふ、フリーナさん!? ちょっとこのお兄さんと話してくるから、こいつを持って冒険者協会で待っててくれ!」

「る、ルドー!」

 

 俺は緑のバンダナを巻いたムキムキお兄さんに肩を組まれたまま連行された。フリーナには俺が昨夜書いた手紙を持って冒険者協会に行くように言ったので、誤解を解いたらすぐに合流できるはずだ。

 …………これ、一泊二日で出発できるかなぁ。

 

 

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