俺はフォンテーヌ生まれ稲妻育ち 作:残雪侍
1.
「───おわああぁぁ!!ッ!?」
「ほう」
ギャリギャリと刀身から結晶が弾け飛び、絶叫をあげながら俺は鍾離さんから飛び退いた。ごろんごろんと転がりながら先程よりも大きく距離をとる。
今俺死んでなかった? 首ぽーんってなってたと思うんだけど!?
いや、何もしなければあれは間違いなく俺の末路だった。自分の未来を予測させるほどの殺気が、逆に俺の命を助けるとは皮肉なものである。
「今の動き、無意識のようだが……どうやったか思い出せるか」
「しら……っねぇよ」
死にかけた事を遅れて理解したのか、心臓が早鐘を打ち、急速に頭の奥が熱を持っていく。あの日と同じだ。俺が対処出来ない攻撃を無意識で回避する。無双の一太刀をやり過ごした時と同じ……って! 待て待て待て!?
「もう一度だ。『岩喰いの刑』」
俺の足元から石畳を突破って岩の槍が飛び出る。それは俺の腹を喰いちぎり、心臓を引っ掛けて絶命へと持っていく一撃。
「──ッ!」
後ろに飛びつつ精一杯に身を捩り、その未来を回避する。そして、空中で刀を思い切り振り上げて突き出された槍をかちあげた。容赦がねぇな!
「今のは半分意識的に動いたな」
「んなろ……ッ!」
着地と同時に俺は鍾離さんに突っ込んだ。刀と槍のリーチは当然だが槍の方が長い。間合いの外から遠心力を使った強烈な一撃が槍の利点なら、動きを小さく制限させれば、その利点は大きく潰せるはずだ。
数秒の間に数え切れないほどの猛攻を仕掛ける。火花のように飛び散る水飛沫。手加減無しの本気の太刀筋を、最小限の槍の操作だけで鍾離さんにいなされた。足を一歩後ろに下げることすら叶わないなんて、どこまで実力が離れてたらそんなことになるんだよッ!
「遅い」
俺の身体が斜めに両断された
「軽い」
俺の顎から上が弾け飛ぶ
「甘い!」
俺の半身がすり潰された
簡単に生命が消える未来を死にものぐるいで回避していく。段々と無意識での回避が効かなくなってきていた。集中が切れたのかと言われればそうでは無い。
振り下ろされた槍を刃を滑らせる事で躱し、左右から飛び出る岩の槍を石畳の微かな振動で察知し後ろへ跳ぶ。俺は段々と鍾離さんの必殺の攻撃に適応し始めていた。だが、それがなんだと言うのか。
息ひとつ乱さずに立つ鍾離さんと、肩で荒く息をする俺。まだ打ち合ってから数十秒と経っていないのにこれだ。間違いなく手加減されている。気まぐれがいつまで続くのか知らないが、このままではいつか俺は殺されるだろう。次の打ち合いか、その次か……。考えろ、この場を切り抜けるためにはどうすればいい?
「───弱い」
「っ!」
ぽつりと鍾離さんが呟く。
「その弱さでどうやってアレを倒すつもりだ。今の俺に苦戦するような体たらくで奴に挑めば、その首十秒と繋がらないだろう」
「……」
「大口を叩いたな。あの翁を止めるなどと、そうやって周りの人間をいたずらに傷つけるだけなら、俺はここでお前を止めなければならない」
まさに正論……その通りだ。俺は行秋くんを止められなかった。結果的に彼を救ったのは鍾離さんだ。
『剣鬼』となって雷電将軍に斬られた時から、俺は何一つ進歩していない。ニィロウを弄んだ師匠に決着をつける等と言っておきながら、行秋くんを巻き込み稲妻にたどり着く前に死にかけているのが現状だ。
俺は、弱い。心も身体も何もかも。
…………それでも。
俺は薄暗闇の中で煌々とこちらを見つめる琥珀の瞳を真っ直ぐ見据えた。大きく息を吸って、吐く。
「……それでも、俺が必ず師匠を止める」
「俺の人生全てを使って、刺し違えても刃を届かせる。それでいいだろ」
「何を言っている。いいわけがないだろう」
「あれっ!?」
なんなんだろう。俺の覚悟を無駄にしないで欲しいのだが? 鍾離さんに溜息をつかれた。
「自分の命を懸ける事と投げ捨てることは違う。お前の捨て身はただの自殺と自覚しろ」
「……そう言われても、こういう戦い方しかしてこなかったもんでね」
俺は軽口を言いつつ息を整えた。ゆらゆらと刀を構える。観察はだいたい終わった。
今の鍾離さんは俺の事を脅威とみなしていない。なら、その隙に俺の全てを叩き込む。出し惜しみは……無しで行こう。
「…………いいだろう。自分の実力を把握する事も必要だ」
「───そうか、よッ!」
俺は足元を爆発させて一息に飛び込んだ。鍾離さんは動かない。この移動方法では方向転換ができないことが分かっているからだろう。
目の前に岩の槍が飛び出す。このまま行けば俺の串刺しの完成だ。
「ぐ……ッぅぅ!」
槍が当たる直前、石畳から水が噴き出す。それは瓦礫と一緒に俺の身体を真横に突き飛ばした。鍾離さんのやり方をトレースしたはいいがこれは要改善だな。左腕が折れたぞ。
俺は刀を床に突き刺し、慣性を殺しながら円を描くように鍾離さんに接近する。石畳を水圧で跳ね上げて放ってみたが、あっさり槍で弾かれてしまった。少しは虚をつかれたような顔をして欲しいものだ。真顔で見てきやがって。
だが、これで間合いに入れる。
狙うは一瞬。これが失敗したら後がない……必ず決めろ!
「──おぉらぁァァッ!!」
地面から飛び出す槍のバリケードを身体中浅く傷付けながら走り抜け、俺は弓のように身体を大きくしならせ突きを放った。
「そこがお前の限界と知れ」
「ぐっ……ぁ!?」
当たれば致命傷になること必至のそれは腕を組んだままの鍾離さんに当たる直前で止まった。腕から生えた岩の槍が俺の身体を縫い止めている。
「……終わりだ」
勢いを無くした俺の身体を四方八方から槍が貫く。トドメとばかりに鍾離さんが手に持った槍で心臓を穿った。
絶命、死亡……俺は死んだ。だらんと力が抜け、ただの肉の塊となったそれから、おびただしい量の
「……っ!」
「──とったッ!」
俺は鍾離さんの背後に回った。石畳を跳ね上げたのは、元素爆発での入れ替わりを気づかせない為の視線誘導。分身の着色は昨日の泥人形ドッキリの副産物だ。
分身から噴き出した水で小刀を作成。岩の槍が飛び出る前に床に刺し込みその場の元素を支配する。鍾離さんの槍は俺の分身ががっちり掴んで離さない。これで守りの手は全て潰した!
「─────ッ!!!」
言葉は必要ない。俺は治した両手でしっかりと刀を握って、限界まで密度を高めた刀身を無防備な鍾離さんの首目掛けて振り下ろした。
これで、決着……の、はずだ。そうでなければおかしい。
刀を振り切れない。岩盤を切りつけたような感触に手が痺れていく。
「…………なんで」
「おかしなことを聞く。行秋殿を止め、お前を守ったのが誰かもう忘れたのか?」
刀がそれ以上進まない。俺の決死の一撃は鍾離さんを囲む薄いバリアに阻まれていた。
忘れていた? 何故、こんな大事な事を。
反省も後悔ももう遅い。横腹に凄まじい衝撃を受けて俺の身体が折れ曲がって吹き飛ぶ。
受け身も取れずに転がり壁に激突したところで、鍾離さんに蹴り飛ばされたのだと気づいて、俺はズルズルと座り込んだ。
2.
動け……動け、動け。頭で念じても指一つ動かない。視界の半分が血で塗りつぶされ、ぼやけた視界で刀を探す。ちゃんと握っていたらしい。指の感覚が無いから分からなかったな。
「正直、これを使うつもりは無かった」
遠くから鍾離さんの声がする。そりゃ、こんなカチカチシールドがあったら挑む側はやってられんだろう。
「言葉を訂正しよう。お前は、危険だ」
「…………そんな感じの事、前にも言われたな」
危うい程の透明な目ってな。とうとう目以外も危険視されちまった。
骨は何本か折れている。額から出血、左目が塞がった。両手共に痺れ、これはだいぶ回復した。まだ、やれる。
俺は壁に背中を擦り付けながら、何とか立ち上がった。
「何故そこまでする。そのまま座っていればいい。すぐ終わる」
「…………俺は、死ねない。稲妻にたどり着くまで、師匠を止めるまで」
「違うだろう」
「お前が死ねない理由は、一緒にいる彼女の為では無いのか」
はたと、気づいた。
どろどろに煮詰まった思考が解けた。師匠を止めることが俺の全てか? 違う……俺は、まずあいつを、フリーナを守ることが。
「今更気付いた所で、もうお前は手遅れだ。その状態で稲妻に行けば──」
「……すまないが。その命、とらせて貰う」
鍾離さんが飛び込んだ。最初に俺の首が飛んだ時と同じ未来が見える。
俺は刀を下ろした。どうやらまた間違えたらしい。
守るもの、優先順位を間違えた。熱くなって視野の狭くなった思考回路はさながら『剣鬼』の再来だっただろう。
この槍は罰だ。つくづく俺は他国の神に迷惑をかけるみたいだな。
もう俺に回避するだけの気力はない。稲妻のようには、いかない。迫り来る死を前に目を閉じた。鍾離さんはいい人なので、苦痛は無いだろう。
フリーナ、ごめんな。俺はここまでだ。最後に一言くらい声が聞きたかったな。
轟音がした。金属がたわむような、硬いもの同士が当たったようなそんな音が。当然俺の首はそんなに硬くない。
目を開けると、驚いた表情の鍾離さんと俺の間に水色のカニさんがいた。そいつは刃物のように鋭利なハサミで槍を挟んで火花を散らしている。
「シュヴァルマラン夫人、ジェントルマン・アッシャーっ!」
鍾離さんが槍を手放し飛び退いた場所を水鉄砲が穿つ。石畳が砕ける水鉄砲ってなんだよ。
飛び退いた先では帽子を被った蛸紳士が鍾離さんと格闘している。触手を丸めた右ストレートを防御した鍾離さんが三歩後ろに下がった。
「…………これは、少し驚いた」
「やあ、僕のルドに随分と手荒い稽古をしてくれたようだね」
片目分の視界に、ぼやけて色あせた世界に一際鮮やかな青が映った。
俺でさえ足がすくむ神気をうけて尚、自信満々といった俺の友人は、互い違いの目を優しく細めて俺の方を向いた。
「……フリー、ナ」
「おはよう、ルド。胡桃に頼まれてるからあとは任せて休んでて……って言えたら良いんだけど」
槍を手放したクラバレッタさんが一回り縮んだ。シュヴァルマラン夫人は泡をぷかぷかさせ始め、ジェントルマン・アッシャーは……特に変わらねぇな。んで、何コレ……?
「朝起きたら僕の神の目が光っててね、何だか胸騒ぎもするし皆を呼んだらパワーアップしていたのさ! 時間制限つきだったみたいだけど」
「……ど、どうしよう。今から謝ったら許して貰えるかなぁ……っ!」
さっきまでの自信はどこに行ったのか、ぷるぷる震え出したフリーナはそれでも満身創痍の俺を庇おうと前に出る。
鍾離さんは動かない。腕を組んでじっとこちらを観察している。その姿に先程までの殺気を感じない。なんだこの違和感は……。
「……これは、遠い昔の契約だ」
「旧友の亡骸を取り戻し、仇をとるつもりなら、この先やってくる弟子を試せと」
…………何故今その話? 意図は読めないが違和感の正体には気が付いた。
元素エネルギーが鍾離さんに集まっている。この起こりは元素爆発のそれだ。
「善性には試練を、悪性には粛清を。それが俺と奴の契約だ」
「…………俺は? 善性か悪性、どっちだ」
「それを今から試す」
「───おいおいおい」
道場の天井が裂けた。
黄昏時のような黄金色の空に、個人を消し飛ばすには充分すぎる質量の隕石が降ってくるのが見える。これが自称一般人の元素爆発なわけがないだろう。誰も突っ込まないのか?
「『天星』。この一撃をもって契約を完了させるとしよう」
「……んだよそりゃ、反則なんてもんじゃねえぞ」
俺はフリーナの前に出た。逃がそうにも範囲が広すぎる。
今までの捨て身ではこいつを守りきれない。持ちこたえて時間を稼ごうにも一秒ともたないだろう。
「大丈夫だよ、ルド。君は悪い人なんかじゃない」
「フリーナ?」
後ろから声がした。いつものお調子乗りで、よく分からん自信たっぷりの声だ。
「僕もヌヴィレットもよく知ってる。君の凄いところ、僕が信じる君の姿」
「君は、誰かを守るために剣をとる時が一番輝くのさ!」
「───……ははっ! だったらいいとこ見せないとなぁ!!」
俺はフリーナを抱き寄せて、いつもより力を込めた刀を隕石に向けた。腕の中でうるさいフリーナの声も聞こえないくらいに集中する。
いつもは微かに揺らぐ水の刀身。限界まで密度を高めようと、折れた刀の代わりにはならない。水の形は自由だが、力によって簡単に形を変えてしまうのもまた水の特性だ。
だが、これはただの水じゃない。イメージするのは月の姿を反射する湖面。刀の揺らぎが消えた。鎺から伸びる鋼の刀身、水で補った切っ先までを一本と認識する。
「特等席でよく見てろ。お前の信じた俺が最高に輝く所を───ッ!」
心が決まれば、自然と活路も見えてくる。眼前に迫る隕石の一点、そこに小さな綻びを見た。
俺はその綻び目掛けて青白く光を放つ刀を振り下ろした。
「──見事」
「認めよう。お前はあの翁を倒すに相応しい力を持っていると」
閃光、轟音。チカチカと瞬く視界と耳鳴りの中、鍾離さんの賞賛の声を聞いた。ということは生きている、ということだ。
右手を見ると、俺の刀は石化していた。刀身の全てを灰色の岩が覆い隠し、鞘のようになっている。水を纏ったり岩がくっついたり、踏んだり蹴ったりだな。
びき、と岩の隙間から光が漏れる。罅があちこちに走り、漏れ出す光はどんどん大きくなっていった。石化が解ける。卵から新しい命が誕生するように、それは姿を見せた。
「それは”心刀”。主と認めた者の心によって形を変える……旧友の刀だ」
「銘は自分で決めるといい。再びお前が心折れない限り、何度でもその刀は輝きを取り戻すだろう」
古ぼけ、半ばから折れていた俺の相棒は、青白い輝きを放つ刀に変わっていた。今まで以上に元素力を通しやすく感じる。俺だけの刀……。
「───あ、フリーナ! 大丈夫か? 怪我とかしてないよな……っ?」
刀に気を取られている場合じゃなかった。俺は腕の中を確認した。散々恥ずかしいこと言っといて擦り傷の一つでもさせていたら大変だ。
「…………はゎ」
フリーナは真っ赤になって固まっていた。ぐるぐるした目は焦点があっていない……隕石眩しかったもんな。無事なようで何よりだ。
「そこまでそこまでっ! 往生堂を壊すつもり!?」
重い扉が開かれ、慌てた胡桃が飛び込んできた。
流石の鍾離さんも雇い主には弱いらしい。バツが悪そうに説教を受けるのを見て俺も力が抜けた。未だに固まったままのフリーナと一緒に座り込む。
…………これもう璃月編終了でいいだろ。
3. 璃月 璃月港 往生堂前
まだまだ続くよ璃月編。俺が死にかけようと刀がグレードアップしようと関係ないのだ。あの後鍾離さんに師匠の事や刀の事を詳しく聞こうとしたが、めちゃくちゃになった道場の掃除を胡桃から命じられたようで聞けなかった。偉大な神の背中が小さく見えるくらいに怒られてたからな。
往生堂の外に出ると、璃月港には小雨が降っていた。
「この雨、すぐ止むかと思ってたのにずっと降ってるね。凧作り教室は大丈夫かな」
「山の上でやるんだし大丈夫だろ。通り雨にしちゃ変な雨だけどな」
「……あの、ルドさん」
おずおずと話しかけてきたのは行秋くんだ。もとより小さな身体をさらに縮めて申し訳なさそうにしている。彼は運び出されたあとすぐに目を覚ましたらしいが、稽古中の殆どが記憶にないらしい。
「大体は胡桃から聞きました。力を求めた結果妖魔に魅入られるなんて……不甲斐ない」
「……『古華派』の再興にあの流派は要らないよ」
俺は行秋くんの肩に手を置いた。才能溢れる彼はあと数年もしたら璃月を代表する剣士になるだろう。そんな人が使う流派だ、門下生の心配はあってないようなものである。この迷惑な流派に道を迷わされる必要は全くない。
俺の励ましが効いたのか、行秋くんは笑顔を取り戻した。うーん……このビジュアルを全面的に押し出してみても再興に貢献できると思うんだけど。
行秋くんはもう大丈夫だろう。弱きを助け強きをくじく……俺が目指す精神を最初から持っている彼は誰よりも強くなれるはずだ。もう師匠の呪縛に囚われることもないだろう。
俺たちは行秋くんと別れ、雨の降る璃月港を歩く。小雨だと思ってたのにだんだん強くなってきたな……。マジックポケットから傘を取り出すと、フリーナが何も言わずに入ってきた。もう一本あるんだけど……。まあいいか。
「フリーナ、さっきは助かった。ありがとう」
「…………ふんっ、君は僕が居ないとダメダメだってよく分かったろ」
「ああ、俺にはお前が必要だ。これからもよろしくな」
そう素直に言葉を伝えると、フリーナは黙ってしまった。雨が当たるのかぐいぐいとこちらに身体を押し付けてくる。
「そうだ、謎強化されてたサロンメンバーにあの後不調は無いか?」
「ん……ああ、大丈夫だよルド。彼等に力を貸した人については予想が着いているからね」
色々ありすぎて流していたが、元素スキルが秘境でもないのに強化されたのは気になるからな。まさかとは思うが師匠の魔の手が迫っていないとも限らない。
俺の心配をよそにフリーナはサロンメンバーを呼び出した。朝のじゃんけんをした時と全く変わった様子のないクラバレッタさんに、相変わらず可愛いシュヴァルマラン夫人。確かに俺の心配は杞憂なようだ。ジェントルマン・アッシャーも特にお変わりないようで……彼だけお変わりないのっておかしくないか?
俺の記憶が確かなら、この蛸紳士は俺でさえ動かせなかった鍾離さんを肉弾戦にて後退させている。彼にそこまでの膂力はなかったと思うのだが。
俺の疑惑の視線に気付いたのか、ジェントルマン・アッシャーがちょいちょいと触手を曲げた。手招きと……耳を貸せってことか? お前喋られないだろう。
俺は顔を近付けた。
「あと、三回」
「──ヌヴィレァ゜ッー!! ッ!?」
「ルド!?」
俺は飛び上がって地面に叩きつけられた。見られていたのだ。ずっと! そういうことだったのだ。人間本当にびっくりすると体が硬直するらしい。
雨が止み、俺を覗き込むフリーナと太陽を見ながら、俺は気絶した。
シリアス終了〜。