大魔族「師匠は変な犬」   作:COTOKITI JP

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寄り道

 

王都と聖都、どちらへ行ってみようかと考えていたシュネルスだったが、道中である人物と会った。

 

ソニックブームを轟かせながら高速移動していると、横から何かが飛来してきた。

 

それが攻撃だと分かるとシュネルスは即座に軌道を変え飛来物を回避する。

 

飛んで来ていたのは魔法で構築された剣だった。

 

超音速で駆ける彼には当たりようもない攻撃だが、彼はこの攻撃魔法に見覚えがあり発射された位置にいる人物の元へと向かった。

 

「真っ先に勇者に討たれたかと思っていたが、生きていたのか……ソリテール」

 

「本当に、全く当たる気配がしないわ。殺す気で撃ったのだけれど……裏切りの魔族、シュネルス」

 

魔族らしからぬ柔和な笑みを浮かべながらソリテールはシュネルスに歩み寄る。

 

彼女の素性を知る彼は念の為警戒するが、この場に於いては互いに交戦する意思は無かった。

 

 

 

「84年振りに…お話でも、しましょう?」

 

「お前との対話はいつも流血を伴う。このまま行かせて欲しいのだが…」

 

「でも逃げたら追ってくるって、分かってるでしょ?」

 

「ああ、嫌という程経験した」

 

出来るだけ距離を置き、互いに木の根に腰を下ろして話し始める。

 

シュネルスは彼女と親しいと言える程ではないが親交がある。

 

もっとも、シュネルスからすれば関わりたくない変な知人程度の認識だが。

 

しかしソリテールの方は寧ろ、シュネルスに執着している節があった。

 

魔王軍に名を連ねていた頃も、このようにソリテールが突然攻撃魔法を不意打ちで撃って来ては命を懸けた追いかけっこが始まるという光景を他の幹部達も見てきた。

 

その理由は彼女の単なる好奇心である。

「ねえ、まだ私には何も話してくれないの?貴方の人生を…私は全て話したんだから」

 

彼の今までの人生に関することは魔王と一部の七崩賢のメンバーや大魔族を除いて全員知らない。

 

突然ポッと現れて名を挙げた魔族だったのだ。

 

故に年齢も知られていない。

 

 

ソリテールはそんな昔からこの得体の知れない魔族が気になって仕方がなかった。

 

「……」

 

「話さないと付き纏うわよ」

 

 

「……分かった、一つだけ話してやる」

 

重たい腰を上げるかのように、彼は静かに口を開く。

 

そこから語られたのは、彼の力の起源。

「俺が剣を使って戦うのは知っているな」

 

「ええ、2本の直剣を逆手持ちで左手を奥に伸ばし、右手を前に引っ込める不思議な構えよね」

 

「その構えは、嘗て俺に剣術を教えた我が師の物だ」

 

シュネルスに師がいた事を初めて知った彼女は驚きの表情を浮かべる。

 

「その師は、多分人間だ。奇妙な白い犬の面を付けていて、素顔を見た事は一度も無い」

 

「多分人間って?」

 

「斬っても斬っても死なぬのだ。首を切り飛ばしても瞬きする間に生え変わり、縦や横に両断しても直ぐに繋がるかまた半身が生え変わる……一度肉塊混じりの血溜まりになるまで細切れにしてやった事があるがそれでも直ぐに人の形に戻った」

 

「……それ絶対人間じゃないと思うのだけど」

 

「あとたまに間抜けな音を立てながら死んだり、霊体化したり、後は未知の言語で「糞珍歩」と書かれた墓石に変身した事もある」

 

「加えて変な魔法も持っていたな……確か「地面を転がっている間だけ全ての攻撃が当たらなくなる魔法(ローリング)」などと言うのを戦う時いつも使っていた」

 

彼は続けて、その師とのエピソードを語る。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

《遙か大昔》

 

 

 

山奥の稽古場で、剣を構える男が2人。

 

一人は幼き頃のシュネルス。

 

もう一人は彼の師。

 

 

既に数え切れない程師に戦いを挑んだシュネルスだったが、それでも彼には勝てなかった。

 

「馬鹿な……今のは明らかに腹を割いた筈……刀身がぬるりとすり抜けたように見えたぞ」

 

 

二刀流の直剣を構え、困惑するシュネルス。

 

対する師はいつもの白い犬の面の上に更に奇っ怪な橙色の渦巻き模様の面を被せていた。

 

 

「だったらさっきのオレのセリフは聞いてる筈だろ。このウンチハマダラには一切の攻撃は通用しないと」

 

「なれば、当たるまで斬るッ!!」

 

得意げに語る師に、彼は全力で斬りかかった。

 

しかし、彼のローリングやジャンプによって殆どが躱される。

 

しかも、彼はそれを抜きにしてもあまりに動きが速く目で追うのがやっとだった。

 

正に突風の如し俊敏さである。

 

 

 

 

そんな彼と特訓を続けて12年後、シュネルスはようやく師に一太刀浴びせる事に成功したのだ。

 

「フゥンッ!!!」

 

 

「ウンチッ!!」

 

奇っ怪な断末魔を上げながら胸から血を流し倒れる師。

 

誰から見ても致命傷だった。

 

彼は遂に師を自らの剣で倒した。

 

「ぶりぶりと……糞が……出る……」

 

訳の分からない言葉を残して、彼は息絶えた。

 

 

「…終わったか」

 

「という事で再戦行くぞ」

 

「……は?」

 

突然死んだ筈の師が何事も無かったかのように立ち上がり、普段は無表情のシュネルスでさえ開いた口を塞ぐ事は出来なかった。

 

この日から、戦い方を心得たシュネルスは師を倒す回数がどんどん増えて行った。

 

「チンポッ!!」

 

「ウンコッ!!」

 

「死んだんじゃないか?」

 

「このゲームはクリアできません」

 

「あれおかしいなオレの身体が細切れになっていくけどまさか死んだわけじゃないよな」

 

師が様々な断末魔を上げながら斬り倒される度に、彼の剣術は洗練されていった。

 

しかし彼はどんなに不死身でも人間である以上、老いからは逃れられなかった。

 

そうだ、彼の師は直ぐに老衰で亡くなった。

 

彼の持つ技の全てを弟子であるシュネルスに託して。

 

 

 




本日のシュネルス最高速度:0km/h(休息中)
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