ありがとう糞珍歩犬。
フリーレンとハイターが放った攻撃魔法を、彼は回避せずに防御魔法で受け切った。
(ここで下手に加速すれば、周辺の人間達が衝撃波に巻き込まれる…!)
基本回避を前提に行動する彼は、防御魔法が得意ではないが辛うじて防ぐ事ができた。
攻撃魔法の発射直後、ヒンメルとアイゼンが左右から同時に斬り掛かる。
その斬撃を、鞘から抜き放った2本の直剣で受け止める。
「ぬぐぅッ……!!」
2人の強者の攻撃を同時に受けた彼の両腕は衝撃で悲鳴を上げる。
しかし、次の攻撃魔法が放たれる前に彼は2人を弾き飛ばし距離を取る。
(村の中では加速は使えない……なれば純粋な剣技で戦うしかない!)
そう考えたシュネルスはヒンメルへと飛び掛かり、直剣を振り上げる。
嘗ての師より授かりし技。
中でも原点にして頂点。
それを彼は放った。
「Secret sword aerial slash!! 」
「なっ!?」
突然繰り出された目にも止まらぬ速さの斬撃。
彼の師、「烈風のヘンナイ=ヌー」が最初に鍛えた技であり最も得意とする技。
あまりの速さにヒンメルですら対応が僅かに遅れ、額に浅いが切り傷を付けられた。
「ヒンメル!!」
背後から斬りかかって来たアイゼンの戦斧をジャンプで躱し、懐に潜り込むと次の技を放つ。
「Gatotsu ZERO style!!」
2本の直剣をアイゼンに向け、思い切り突き上げた。
間一髪で戦斧を盾にするがあまりの衝撃に僅かによろめいた。
しかしその隙をついて致命の一撃を与えるようなことはせず、そのまま距離を取る。
「この魔族……妙な剣術を使う!気を付けろ!」
「この位置だと村を巻き込む。私達は掩護できないよ」
警戒しつつジリジリと再び距離を詰めるヒンメルとアイゼン。
後方ではフリーレンとハイターが攻撃魔法を放つ準備をしている。
対するシュネルスは、一息つくと直剣を鞘に収め臨戦態勢の彼らを手で制した。
「何のつもりだ……!」
「武器を収められよ。俺に交戦の意思無し」
無抵抗をアピールするシュネルスだったが、4人が警戒を解く様子は無い。
「人の言葉を話す猛獣の言葉を信じると思う?」
フリーレンは冷たい視線をこちらへ送りながら、杖を向けている。
「確かに、我々を評価する上でその言葉は正しい。だが、猛獣とて真実は語る……それが今この時だ」
「悪いが……過去に僕達は魔族の言葉を信じて痛い目を見てるんでね…!」
そう言って斬り掛かろうと足を踏み出すヒンメル。
しかしその足は唐突に止まる。
周囲にいた村人達がヒンメル達の前に立ち塞がったのだ。
「もうやめてやれよ!相手は無抵抗だ!」
「勇者様とてウチの恩人斬り殺すのは見過ごせねえ!!」
「この方は確かに魔族ですが、この村を救ってくれたんです!」
「村に張られた結界を見ただろ!?アレはシュネルス様が15年前に張ってくれたんだ!」
「お願いです!このお方ばかりは見逃してやって下さい……!」
老若男女、この村に住む全員がそこに集結していた。
この光景には流石のヒンメルもたじろぐ。
「ど、どういう事だ……!?」
「精神魔法を使用した形跡は無い……つまり彼らは心からあの魔族を信頼している」
「……これはどうやら、複雑な事情がありそうですね」
勇者と速駆の戦いは、ハイターの仲裁によって一先ず幕を閉じた。
本日のシュネルス最高速度:80km/h