光を支えるもの   作:黒の眷属

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白の奇跡

~サイフォンSide~

 

 

現在俺は近接戦闘の訓練のため朝早くに黒鐵家の庭でリニスと対峙していた。

リニスの手には木刀が。俺の手には木製の小太刀が2本、逆手で握られていた。

今のジョブは忍者だ。

 

互いに礼をし距離を離すとリニスは正眼の構えを取り、俺は腰を落とし左腕を上げて前に出し、手を顔の前に持ってくると右手を左肘のやや下にして刃が交差するように構えた。

 

互いに牽制するように暫し睨み合っていたが、俺は先に仕掛けることにした。縮地で一気に距離を詰め、左手の小太刀を左袈裟に振りぬいた。

リニスには容易く受け止められるが想定内だ。

そのまま刃を滑らせその場で身体を回転させると、そのままの勢いで今度は右手の小太刀を左逆袈裟に振った。

 

だがリニスはそれも受け止めると、鍔迫り合う形でこちらの身体を押し込んできた。

俺は今も鍔迫り合ってる右手をそのままに今度は前蹴りを放った。

 

その動きは読まれており、リニスはバックステップして距離を離してきた。

仕切り直しとなり互いに相手の隙を窺っていた。

 

 

「今のを防がれるとはな」

 

「先生として、そう何度も同じ手はくいませんよ」

 

リニスは近接戦闘訓練の初日の方では、縮地による急速接近に対応できずペースを崩して敗北していたのだが、早くも対応してきたらしい。

 

 

そして今度はリニスの方から仕掛けてきた。

彼女は高速で接近すると、こちらの構えた刃の隙間を縫うように突きを放ってきた。

 

俺はそれに対し左手の小太刀を使い横からパリィ……攻撃を弾いた。

そのまま体制を崩したリニスに回し蹴りをおみまいした。

 

攻撃は左腕によって防がれたが、回転の勢いを利用してもう一撃蹴りを放った。

それにより、リニスはザーッという地滑り音と共に後ろへと後退させられていた。

 

 

俺はその隙に追撃をしようと縮地を使ったが

 

「その瞬間を待ってましたよ!」

 

「なっ!?」

 

彼女はこちらが縮地を使う前にいつの間にか体勢を立て直し、こちらの移動先に対して踏み込んでいたのだ。

そして彼女の木刀が俺の身体に当てられ勝負が決した。

 

 

「「ありがとうございました」」

 

「まさか負けるとはな」

 

「当然です。これでも貴方の家庭教師なんですから。そう何度も負けるわけにはいきません」

 

リニスはふふんと自慢げに胸を張っていた。

 

「ですが、貴方が本来の身体であればこうはいかなかったでしょうね」

 

「そうでもないさ。今のは縮地に頼り切っていた隙を突かれたんだからな。まぎれもなくお前さんの実力さ」

 

「まあそういうことにしておきましょうか」

 

これでも素直に褒めてるんだがなぁ……本人がいいならそれでいいか

そして汗を流すために屋敷に戻る道中

 

 

「そういえば。今日はなのはさんのところに行くんでしたか?」

 

「ああ。なのはの親父さんのお見舞いにな。よかったら一緒に行かないかと誘われているんだ」

 

「なるほど。そうだったのですね……」

 

なのはの親父さん……士郎さんのことについてはリニスには話していたが、思うところがあるのか少し表情が暗くなっていた。

 

 

「早く良くなるといいですね」

 

「そうだな……」

 

だがサイフォンは今日のお見舞いで、あること実行しようとしていた。

あの子の……なのはを一人ぼっちにしない為に自分にできることを。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

――チリンチリン

 

「いらっしゃいませ……あらサイフォン君。よく来てくれたわね」

 

「桃子さんおはようございます」

 

翠屋につくと桃子さんが出迎えてくれた。

 

そのままカウンターに座りコーヒーを注文した。

翠屋の特製ブレンドはお気に入りなのだ。

 

スイーツもだがこんなに美味いのに何故客が少ないんだろうか。

出来たばかりでまだ店が軌道に乗っていないと聞いたが、宣伝の問題か客に見る目が無いのか……

 

そんなことを考えながらボーっとしてると恭也がコーヒーを持ってきてくれた

 

 

「よう。元気か恭也」

 

「元気も何もつい最近も会っただろうが」

 

「それもそうか」

 

苦笑しながらコーヒーを受け取り一口飲む。

うん、やはり美味い

 

 

「なのははまだ来てないのか?」

 

「あれは朝が弱いからな……お前だってわかってるだろうに」

 

「一縷の望みにかけてみたんだよ。まあ案の定、駄目そうなんだが」

 

なのはと遊ぶ約束をして迎えに行っても、寝たままの時がたまにあったりするのだ。

その度に起こしてやるのだが、嬉しそうな顔を見ると怒る気にはなれなかった。

 

コーヒーを飲みながら、客が来るまで暇そうにしていた恭也とだべっているとドアの鈴が来店を知らせた

 

「いらっしゃ……なのは、やっときたのか。もうお前のお客さんが来てるぞ」

 

「お兄ちゃんおはよう。サイフォン君もおはよう!」

 

「おーう、おはようさん」

 

なのははそのまま俺の隣にちょこんと座ると大きな欠伸をしていた。

 

「眠そうだな」

 

「ふあ――そうなの……朝はやっぱり眠いの……」

 

「眠気覚ましにコーヒーでも飲むか?」

 

そう言って飲んでいたコーヒーを見せる。

 

 

「むー!なのはが飲めないの知ってるでしょ!意地悪ー!」

 

「悪かったって。そうむくれなさんな」

 

なのははほっぺを膨らませてこちらをジト目で見ている。

まるでリスかハムスターみたいだ。

 

 

「あら、なのは。ちゃんと起きれたのね、おはよう」

 

「お母さんおはよー」

 

「朝ごはんはまだかしら?」

 

「うん。こっちで食べちゃおうかなって」

 

なのはは朝飯はまだなのか。それなら――

 

 

「桃子さん。厨房って借りられますか?関係者じゃないと駄目なら構いませんが」

 

「サイフォン君?」

 

「あら。もしかしてサイフォン君が作ってくれるの?」

 

「まあ折角の機会なんで。駄目だったら全然大丈夫です」

 

「お客さんも少ないし、構わないわよー。私もサイフォン君の作る料理、気になるからね!」

 

「ありがとうございます」

 

俺は腕を捲って気合を入れていると、横からなのはがキラキラした目でこっちを見ていた。

 

 

「サイフォン君、お料理できるの?」

 

「おう。今まで言ってなかったけど、家でも作ったりしてるんだぞ」

 

「へえー!すごいすごい!」

 

今では黒鐵家でも台所に立つことが多いのだ。

(あきら)殿には絶賛され、(みぞれ)殿にも今度教えてね、なんて言われたがあの人には直ぐに超えられそうだ。

 

リニスも料理はできるんだが、こちらは逆に俺が先生になることになった。

彼女も上達が早いので直ぐ同じ領域に立たれそうだ。

 

 

「それじゃあエプロン借りますね」

 

「はーい。材料は自由に使って構わないからね。分からないことがあったら、私か恭也に聞いてちょうだい」

 

「わかりました」

 

そして厨房に行き調理師にジョブチェンジ。装備の方は変身魔法でエプロン姿と変わらないようにした。

 

材料を確認するとオムレツが作れそうだった。流石に元の世界の様にドードーの卵ではないが、味はそこまで変わらないだろう。

実際、この世界にはアーテリスと似た材料が多く、名称が違うだけで味が殆ど変わらない物もあったからだ。

 

材料を用意し、早速調理を始めていると恭也が様子を見にやってきた。

こちらの手際を見て感心しているようだった。

 

 

「お前ほんとに料理ができたんだな。なのはの前だから見栄を張っているだけかと思ったよ」

 

「失礼だな。家でも料理してるって言っただろ」

 

「なのはに出すものなんだ。毒見ならするぞ」

 

「結構だ」

 

そんな軽口を叩きながらも手は止めずに下準備をした卵を焼いていく。

黒鐵の家で料理していた甲斐もあって、料理の腕に関しては依然と遜色ないレベルにまで戻っていた。

 

焼きあがった卵にケチャップをかけパセリを乗せて完成だ。

すると恭也が覗き込んでいた。

 

 

「見た目は綺麗だな」

 

「味も保証するがな。お前さんにはやらんぞ」

 

「悪かったって。冷める前に持っていこう」

 

「へいへい」

 

厨房から出ると待ちきれないのか、なのはがこちらを見ると近寄ってきた。

 

 

「良いにおい~。何作ったの?」

 

「オムレツだ。席に持ってくから冷めないうちに食べるといい」

 

「うん!」

 

そのままテテテとカウンターに向かっていくなのはに付いていき、オムレツをなのはの前に置いた。

 

 

「あら、美味しそうね~」

 

「うん!サイフォン君、もう食べてもいい?」

 

「別にいいんだが。なのは。ナイフでちょっとだけ力を入れて卵を切ってみな」

 

「え。う、うん」

 

するとなのはが恐る恐るナイフを動かすと、中からトロトロの卵があふれてきた。

 

 

「わあ~!!」

 

「綺麗にできてるわね~」

 

「やるじゃないか」

 

「まあな」

 

なのはは瞳を輝かせながら一口食べると

 

 

「美味しい!すっごくすっごく美味しいの!」

 

「良かったわね、なのは」

 

「お母さんも食べてみて!」

 

「あら。じゃあ折角だしいただこうかしら」

 

そういって桃子さんも一口。

ちょっと緊張するなと思っていたら、なのはも緊張しているのか真剣に見ていた。

お前さんは緊張しなくてもいいだろうに

 

 

「うん、とっても美味しいわね。これならうちのメニューにも入れたいくらいだわ」

 

「でしょでしょー!お兄ちゃんもはい!」

 

「えっ、いや。俺は……」

 

恭也が気まずそうにこちらを見ていたが、さっきのことは大して気にしてもいないので頷いてやった。

 

 

「わかった。じゃあいただくよ」

 

「ドキドキ……!」

 

「これは美味いな。悔しいが俺よりも上手だよ」

 

「良かったねサイフォン君!」

 

「そいつぁどーも」

 

ぶっきらぼうに言ったがやはり認められると嬉しいものだ。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「オムレツ美味しかった~」

 

「そりゃ何よりだ」

 

士郎さんの病院へ向かうまでの道中。なのはずっとご機嫌だった。

今もスキップしながら少し先を進んでいる

 

 

「でももっと早くにサイフォン君が料理上手だって知りたかったなー。そうすればもっと作ってもらえてたのに」

 

「そういうなのはは料理はしないのか?」

 

「にゃはは……なのはは食べる専門だから」

 

「覚えておいて損はないと思うがな。今度教えてやろうか?」

 

「ほんとに!?」

 

少し離れていたなのはがもの凄い勢いで近付いてきた。

 

 

「あ、ああ。時間が合えばな。後はなのはにやる気があるなら――」

 

「やる!今度教えて!」

 

「わ、わかった」

 

「やった!絶対だよ!約束だからね!!」

 

そこまでやる気があるとは思わなかったが、先ほど言ったように覚えておいて損はないんだ。

きちんと教えてやらないとな。

 

先程よりも上機嫌にくるくる回りながら先を行くなのはを、転ばないように見ながら士郎さんのいる病院に向かっていった。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「ここが士郎さんのいる病院か」

 

「うん、そうなの。受付済ませてこよっか」

 

「わかった」

 

病院は結構大きく、士郎さんは怪我が重い人が入る病室にいるようだった。

やはりやるなら早いほうがいいな……

 

 

「悪い、なのは。ちょっとお手洗いに行ってくるから少し待っててくれ」

 

「うん、わかった」

 

「すぐ戻る」

 

そういってトイレの個室に入り()()()()にジョブチェンジして先程までと同じ格好になるように変身魔法をかけた。

 

 

「待たせたな。それじゃあ行こうか」

 

「うん!病室はこっちの方だよ」

 

なのはの案内で進むこと数分。

高町士郎と名前のある部屋の前についた。

 

なのはがノックすると中から「はーい」、と女性の声が聞こえてきた。

 

「お姉ちゃん来たよー」

 

「失礼します」

 

「なのはいらっしゃい。それと……そっちの人は?」

 

「こっちはサイフォン君だよ」

 

「あー、最近家でなのはがよく話してる人ね」

 

「お、お姉ちゃん!」

 

なのはが顔を赤くして抗議している。別に気にしなくてもいいだろうに

 

 

「ごめんごめん。私は高町美由希。なのはのお姉さんだよ。よろしくね、サイフォン君」

 

「黒鐵家で世話になっているサイフォンだ。こちらこそよろしく」

 

実は美由希とは初対面なのだ。士郎の看病に出ずっぱりだったせいか今まで会うことが無かったのだ。

 

 

「同い年くらいかな。私は13歳」

 

「俺は12歳だ」

 

「ってことは小学生か私と同じ中学1年?」

 

「いや、ちょっと家の事情で学校には通っていないんだ。1月24日生まれで早生まれだから学年は同じだな」

 

「そっかぁ。家の事情は分からないけど、いつか一緒に学校に通えるといいね」

 

「そうだな」

 

 

誕生日と暦については図書館で調べたが、アーテリスと違い1月当たりの日数は違っているようだ。

幸い俺の生まれは影響なさそうだったので地球で該当する月を誕生日にしたのだ。

 

 

「お姉ちゃん。お父さんの具合はどう?」

 

「うん、最初のころに比べれば大分良くなってきてるんだけど……まだ目を覚まさないんだ」

 

「そっか……」

 

以前なのはから聞いた話では仕事の際に事故に巻き込まれた結果、大怪我を負ったそうだ。

今も身体に包帯が巻かれている状態だ。当初はもっと酷かったのだろう。

 

恐らくまだ意識を取り戻し、起き上がるだけの生命力が足りていないんだろう。

それを補うことができればあるいは……

 

なのはは士郎のすぐ横の椅子に腰かけ、その隣の椅子をポンポンと叩いたので俺もそこに腰かけた。

 

 

「2人は今日はお見舞いに?」

 

「うん。お父さんにも、なのはのお友達を会わせたかったから」

 

「そっか」

 

「お父さん。なのはにね、初めてのお友達ができたんだよ。料理も上手でね、すっごく優しいの。お父さんにも会わせたくて一緒にお見舞いに来たんだ」

 

士郎さんの手を握り語り掛けるなのはの表情は悲しげだった。

なのはがこっちを見るので俺も挨拶することにした。

 

 

「士郎さん。初めまして、サイフォンっていいます。なのはの友達で今日は一緒にお見舞いに来ました。――なのははいい子です。1人だった時も皆に迷惑かけないよう必死に頑張ってました。だから早く元気になって、この子をめいいっぱい褒めてやってください。そして眠っていた分、この子と沢山の時間を過ごしてあげてください」

 

「サイフォン君……」

 

「良いお友達ができてよかったね、なのは」

 

そして俺は士郎さんの()()()()()語り掛けた。

 

 

「貴方ならきっと大丈夫だ。きっと家族の元に帰ってこれる」

 

そう言いその手を離した。

やれることはやった。後は結果を待つのみだ。

 

 

「もういいの?」

 

「ああ。悪いな、わざわざお邪魔しちゃって」

 

「ううん、そんなことないの。きっとお父さんも喜んでると思うの」

 

なのはの表情も先程よりは良くなっているようだった。

 

 

「そうだといいな」

 

「それじゃあお姉ちゃん。私達はもう行くね」

 

「そっか。またね2人とも」

 

「お邪魔しました」

 

「お父さん、お姉ちゃん。またねー」

 

俺となのはは立ち上がると病室を後にした。

 

 

 

◆◆◆

 

 

~第三者視点~

 

 

2人が去って暫くした後、美由希は2人が来る前と同様に士郎の横に座っていた。

 

 

「サイフォン君、いい子だったねお父さん。なのはもあんなに懐いてたし。寧ろお父さんにとっては気がかりかもね」

 

くすくすと笑い、改めてお見舞いに来た少年のことを思い出していた。

 

 

「でも不思議だなぁ。同学年なのに何だか年上みたいな雰囲気がするんだよねー。変なの」

 

そう思いながら士郎の手を握ると()()が起きた。

握っていた士郎の手が微かに動いたのだ。

 

 

「お父さん!?」

 

急なことに驚いてしまい大声を出してしまったが、声量を下げ何度か呼びかけ続けてみた。

すると士郎の目が薄っすらと開いたのだ

 

 

「美由希……か……?」

 

「お父さん!――わたし先生を呼んでくるから待ってて!」

 

美由希は急いで病室を後にし、先生を呼びに行った。

1人残された士郎は身体の内側に、なにか温かいものを感じていた。

 

そして眠っている間、誰かに呼びかけられていたような気がしていた。

 

 

(誰かはわからないがそのお陰で俺は戻ってこれたんだろうか……)

 

まだはっきりしない意識の中、焦りながら戻ってくる美由希の声を聞きながらその誰かに感謝の念を送った

 

ありがとう、と

 

 

 






士郎に何をしたのかは次に入れるかも?

次回ははやて回をやって、もう1つ節目の回をいれたらいよいよ本編に入れるやも

主人公の誕生日出しましたが、この時空のなのはの誕生日は2月27日です。
つまり原作開始時は8歳になるけど仕方ないネ
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