~サイフォンSide~
はやて宅で夜天の書の管制人格と出会ってからは月日の流れが速く、いろいろなことがあった。
あの出会いの後、授業ではデバイス作成の事についても学びだした。
管制人格を救うため、封印が解けるまでにやれることをやっておかねば。
魔法の方も今ではかなりの種類使えるようになっており、魔法を使った模擬戦も行うようになってきた。
身体強化の魔法のお陰で、全盛期と動きも変わらなくなってきた気さえする。
そしてリニス曰く、魔力の集束のレベルが他の技能と比べると高いと言われた。
恐らく元の世界でリミットブレイク……ジョブの奥義を放つ際にエーテルを1か所に大量に纏めているので感覚的にやれているのだろう。
それでもこの世界の魔法を交えた戦闘ともなると、まだリニスに一日の長があり勝つことはできなかった。
先生なんですから簡単には負けられません!とのことだ
高町家の方はというと、士郎さんがもう動けるようになったそうで今はリハビリ中だった。
あれからお見舞いに行く機会があり、なのはと一緒に行ったのだが、穏やかで優しそうな人だった。
ただ、なのはを泣かせたら承知しないぞと笑顔で言ってる時は目が笑っていなかった。
子供(見た目だけ)相手に若干殺気が漏れてたぞ。俺じゃなかったら下手したら泣くぞ
その後なのはに、お父さん何言ってるの!サイフォン君がそんなことするわけないでしょ!――といいながらバシンと叩かれて痛がっていたが自業自得だろう。
翠屋の方にもよく顔を出しており、たまに店を手伝ったりしていた。
基本的には配膳だけで、あとはスイーツ以外のメニューのレシピ提供なんかをしていた。
スイーツ以外も美味しいと評判になり以前よりも少し客足が増えたようだ。
そんな中、桃子さんには高校生になったら是非バイトに来てほしいと言われてしまった。
まあ資金の調達も必要だからそれもありだな。
恭也とはたまに黒鐵の道場で顔を合わせることがあり、結局手合わせすることになった。
恭也はかなりの腕前で流石に身体強化がないと、良くて引き分けに持ち込めるくらいだった。
美由希も戦えるというのはこの時知ったが、こちらは今のところ勝ち越している状態だ。
なのはは以前教えると約束した料理の勉強を頑張っていた。
今では簡単な料理やお菓子なんかも作れるようになっていた。
このままいけば翠屋でも出せるものを作れるだろう。
高町家とはそんな感じで仲良くやっていた。
そんな中はやての方はというと。
以前約束した料理をごちそうする件で、ちょっと張り切って振舞ったのだが
「これは負けられへんわー。いつかぎゃふんと言わせたるから楽しみにしててや!」
と、なんだか火を付けてしまった。
今でも十分すぎるくらいに美味いんだからそのままでもいい気がするが
料理の件はさておき、夜天の書だがあれから特にあの夢を見ることはなかった。
どういう条件で語り掛けてくるのか分からないが無事だといいんだが。
そんなこんなで時間があっという間に過ぎ、今年がもう終わろうとしていた。
辺りには雪が降りしきっており、黒鐵の家にも炬燵が出ていた。
リニスはものの見事に炬燵の魔力に取りつかれていた。
家にいて暇な時間はずっと入ってるんじゃないかと思うほどだ。
まあ俺も炬燵は好きだから似たような感じになっているんだが。
だが今日は年末。渋々炬燵から抜け出し、今は夕餉の支度を手伝っているのだ。
年末だからということで多少豪華にするそうで、今日は年越しそばも食べるらしい。
そんな普段よりちょっと忙しさの中、時間はあっという間に過ぎていき、時計の針が12時を跨ごうとしていた。
「今年ももう終わりじゃのう」
「ええ、そうですね。今年はリニスちゃんやサイフォン君が来たり、いろいろありましたねぇ」
「今もそうですが、あの時は本当にありがとうございました」
「ええんじゃよ。儂らも本当の子供達ができたようで嬉しかったわい」
実際この2人には実の子に接するかのように、とても良くしてもらっていた。俺も……両親がいたらこんな感じだったのかと感じ入ることができた。
リニスも同じ気持ちなのか、時折嬉しそうにしていた。
そして時計の針が12時を指し年が明けた。
「「「「明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」」」」
皆で一斉に礼をし、新年の挨拶をした。
「いやはや、この時間まで起きるのは年寄りには堪えるのう」
「別に無理して起きてなくてもよかったんじゃ」
「いや、実はそうもいかんのじゃよ」
「父上?」
俺とリニスは状況が分からず少し困惑していた。
「ああ、すまんすまん。そう硬くならんどくれ」
「あなたがそんなに緊張した面持ちでいるからですよ」
「ふぉっふぉっふぉ。それもそうじゃな」
ぱしんと叩かれ笑っている
「実は2人に提案があるんじゃ」
「提案ですか?」
「そうじゃ。
「「えっ!?」」」
思ってもみない提案だった。
確かに今まで過ごす中で、初めて感じた家族の温かみはとても居心地のいいものだったが……
「その……本当にいいんですか?」
「うむ。一緒に過ごしてきた中でサイフォン君もリニスちゃんも、良い子だというのは分かっておるしな。それに何より子宝に恵まれなかった儂らじゃから、君達と過ごす日々がとても嬉しくてな……」
「それで貴方達さえ良ければ私達の子供として迎えたいのだけれど。どうかしら?」
2人の言っていることに嘘偽りはないだろう。本心からそう言ってくれていることが伝わってくる。
だが俺はそれを受け入れていいんだろうか。
この世界では俺は異物だ。それなのに……
『サイフォン』
『なんだ……?』
リニスはいつの間にかぎゅっと握りしめていたこちらの手に自身の手を重ねていた。
『貴方は貴方の望むがままにしてください。この方達は大丈夫です。きっと貴方を受け入れてくれる。私を信じてください』
『リニス……』
『それにこの世界の住人じゃないのは私も同じですから。あと、貴方はもっと人に甘えることを覚えた方がいいです。何でも1人で抱え込もうとするんですから』
『わかった――ありがとうな、リニス』
相棒の後押しを受けて俺は2人の目を見てしっかりと告げた。
「俺達でよければよろしくお願いします」
「ええ!改めてこれからよろしくね、サイフォン君、リニスちゃん!」
「うむ、これからよろしく頼むぞい!
「程々にしてくださいよあなた」
場は和やかな雰囲気に包まれていた。
これが家族の温かみというものなんだろうか。
かつて孤独だった時の自分が味わうことのなかったものだ
そのまま少しの間、家族皆で団欒してから部屋へと戻っていった。
「それで、なんでお前さんまでこっちに来たんだ」
部屋へ戻るとリニスがそのまま着いてきたのだ。
手には何やらリボンが結ばれた小さな箱を持っている。
「本当はもう少し後に渡すつもりだったんですが、今日は貴方とも家族になれためでたい日ですからね。その記念にこちらをお渡しします」
差し出された箱を手に取ると中からカランカランと音がした。
「開けていいのか?」
「勿論です!」
やけに上機嫌なリニスを尻目に箱を開けると、そこにはネックレスの紐がついている翠色の小さな丸い宝石のようなものが入っていた。
「これは……もしかしてデバイスか?」
「ええ、そうです。本当は貴方の誕生日に渡そうと思ったのですが、今日というめでたい日に渡そうと思い持ってきたのです」
「そうだったのか……ありがとな、リニス。その……なんだ。素直に嬉しいぞ」
頬を人差し指で頬をかきながら視線を逸らす。
誕生日プレゼントを渡されるのがこうも照れくさいとは思わなかった。
「その顔が見れただけでも満足です。ではデバイスの性能を説明しましょうか」
「ああ、頼む」
「この子はかなり特殊なアームドデバイスです。貴方のエーテルの流れを感じ取り形状を変えます。つまり、貴方のジョブに合わせて武器が適したものになります。それとバリアジャケットも貴方の元の装備と同じになるよう調整しました」
「それって……作るの大変だったんじゃないのか?」
この世界で2人しか使えない力を組み込んだうえに、それを読み取って形状を変えるだなんて
「それはもーーお、大変でしたよ!日々使える素材を調べ、貴方との戦闘訓練で戦い方と装備を観察してデータを取り、デバイスとして形作るのですからとてもとても……」
「それは……なんだかすまん……」
「いいんですよ。主の――教え子の力になれたんですから。ああ、それとカートリッジシステムもありますからちゃんと自分で弾丸に魔力を込めておいてください」
リニスから空の弾丸を受け取りふと気になったことを聞いた。
「このデバイスには何か名前はあるのか?」
「いえ。折角ですし貴方に着けてもらおうと思って、付けていませんよ」
「なるほど。ちなみに宝石のように見えるが、何かモチーフはあるのか?」
「ええ、ありますよ。サーペンティンという宝石です。魔除けや厄除け、旅の守護といった意味があります」
旅の守護か。確かヴェーネスの加護は旅人のための護りだったな。
それなら……
「シュッツ。シュッツライゼンデだ」
「それはどういった意味なんですか?」
「旅人を護るものだ。俺は前の世界でリニスの言った宝石の言葉と、似たような加護を受けているからな」
「そうでしたか。その話はまた今度詳しく聞かせてもらうとして、良いと思いますよ」
「おう。ありがとな」
礼を言いシュッツライゼンデを取り出して早速起動しようとしたが
「これってどうやって使うんだ?」
「ああ……そういえば貴方は簡易デバイスしか使ったことがありませんでしたね。デバイスの名前を言いセットアップと声をかければ大丈夫ですよ。名前の登録は今してしまいますね」
そういうとリニスはシュッツライゼンデにアクセスし、何やらいじっている。
「これでよし。さあどうぞ」
「お、おう。それじゃ――シュッツライゼンデ!セットアップ!」
《
起動の掛け声とともにシュッツライゼンデが光り輝くと、俺の身体も光だす。
だが暫くして光が消えても
その代わり手元にいつもと様子がちょっと違う愛刀があった。
「成功の様ですね」
「見た目は変わった気がしないがもうバリアジャケットなのか。それに星切に似た刀があるな」
「それがそのデバイスを使った時の貴方の武器ですよ。ちゃんとカートリッジシステムもついているでしょう」
「本当だ。峰になんかついてるな」
「試しに他のジョブにもなってみてください」
「わかった」
それから何度かジョブチェンジしてみると武器の形状がジョブに合わせてどんどん変わっていった。
カートリッジシステムも漏れなく全部に付いていた。
「魔力の通りも簡易デバイスとは比べ物にならないな」
「それは当然です。私の自信作ですから」
「本当にありがとう、リニス」
「ええ。貴方がそれで存分に戦ってくれると私も嬉しいです」
ここまでしてくれたんだ。彼女の期待には応えないとな
「これからよろしく頼むぞ、シュッツライゼンデ」
《
その後も新たな相棒について、細かい部分をリニスに聞いたり、今後のカリキュラムについて話しているといつの間にか2人そろって寝落ちしていた。
そんな様子を起きてきた両親が笑顔で見つめていたのだった。
デバイスのセリフは基本は日本語で簡単な部分だけ英語とかドイツ語にしようかと。
次回はなのはの友達回。時間も結構進みます
それが終わったら今度こそ原作開始かな