光を支えるもの   作:黒の眷属

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想いの伝え方

~サイフォンSide~

 

 

 

俺の名前がただのサイフォンから、黒鐵サイフォンになった日から約4ヶ月。

両親の勧めもあり中学校に通うことになった。

この世界の常識等を学ぶのにももってこいだったので、大助かりだった。

図書館で学ぶだけでは限界があったからな

 

 

そんな中、なのはの方も小学校に通うようになるらしい。

以前遊びに行った際に制服を見せてきたので褒めてやると、顔を赤くしてはにかんでいるのが印象的だった。

 

 

そしてお互いが学校に通うようになってから数日経ったある日、なのはからメールが来ていた。

 

入学祝にケータイを買ってもらったらしく、もう連絡先の交換は済んでいるのだ。

買ったその日にわざわざうちまで連絡先を聞きに来たのには流石に驚かされたが。

 

 

とりあえずメールを確認してみると今から電話してもいいかというものだった。

それに対しいいぞー、と返信をすると1分もしないうちに電話がかかってきた。

 

 

「もしもし、サイフォン君……?」

 

「どうしたなのは?いつもより元気がない気がするが」

 

「うん……なのはね、今日喧嘩しちゃったの」

 

「喧嘩だって?」

 

驚いた。彼女は喧嘩とは無縁の存在だと思っていたからだ。

俺とも主に俺が怒られたりすることはあったが、喧嘩することはなかった。

 

 

「うん……それで、どうしたらいいかサイフォン君に相談したいの」

 

「それで電話してきたのか」

 

「そうなの」

 

恭也や美由希なんかは喜んで相談にのりそうなものだが......

以前言った家族に迷惑かけたくなかったらっていうので、俺に相談したのかもしれない

 

 

「わかった。ならまず、どういったことで喧嘩になったのか教えてくれ」

 

「うん。えっとね、アリサちゃんって子がすずかちゃんって子の物をとってたの」

 

「ふむ。それで?」

 

「それでね、すずかちゃんが取り返そうとしても、アリサちゃんは返そうとしなかったの」

 

よくあるようないじめだな。どこの世界でもこういうことは変わらないんだろうか……

 

 

「それから?」

 

「それで……それを見かけたわたしがアリサちゃんの顔を叩いたの」

 

「いきなりか?」

 

「うん……それでこう言ったの。痛い?でも大事な物をとられちゃった人の心はもっともっと痛いんだよって。それでそこから大喧嘩になっちゃったんだ」

 

「最後はどうなったんだ?」

 

「物をとられていたすずかちゃんが大きな声でやめて!って言ったの。それでアリサちゃんはとった物を返したんだけど、そこで皆別れちゃったんだ」

 

なるほど。物をとったアリサって子も悪いが、いきなり暴力をふるってしまったなのはも軽率だったな……このぐらいの年の子なら仕方ない気もするがね。

すずかって子のお陰で仲裁できたのが幸いか

 

そこまで考えてなのはがどうしたいか聞いてみることにした。

 

 

「なあ、なのは」

 

「なあに?」

 

「お前さんは相談したいって言ってたが、お前さん自身はこれからどうしたいんだ?」

 

「なのは自身が……」

 

必死になって考えているのか、電話越しにうんうん唸っている声が聞こえる。

そして暫く待つと

 

 

「わたしね。あの2人と仲直りしたい。そしてできれば――3人で友達になりたい」

 

「そっか。そのためにはどうしたらいいと思う?」

 

「んーっと、ごめんなさいって謝る?」

 

「誰に……どうやって謝るんだい?」

 

「それは――アリサちゃんに。いきなり叩いちゃってごめんなさいって」

 

「そっか。でもそれだけでいいのか?3人で友達になりたいんだろう」

 

「うん。だからアリサちゃんにも、すずかちゃんに謝ってもらうの。大事なものとってごめんなさいって」

 

この子は聡い子だ。俺なんかに相談しなくたって冷静になれば周りをよく見ることができるし、何をすればいいかもちゃんと考えることができる。

 

 

「なんだ。相談したいって言ってたがちゃんとなのはのしたいことが分かってるじゃないか」

 

「あ……」

 

「仲直り――できそうか?」

 

「うん……うん!ありがとうサイフォン君!お陰でどうすればいいか分かったよ!」

 

「俺は別に何もしてないぞ」

 

実際俺は何もしていないんだ。この子が自分でちゃんと考えて結論を出しただけで。

 

 

「ううん、そんなことないの。サイフォン君がなのはのお話聞いてくれたから気付けたの」

 

「そ、そうか?」

 

「うん!そーなの!本当にありがとう!」

 

電話越しに彼女の嬉しそうな声が聞こえてくる。この子なら放っていても自分で気付きそうなもんだが……まあ本人がそう思っているならそれでいいか。

 

その後は世間話に花を咲かせ、暫くしてその場はお開きとなった。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

なのはの相談を受けてから数日たったある日の休日。

この日は訓練も休みだったので例のデバイスの基礎構造を練っていた。

元のデバイスが魔導書なので、同じように魔導書型のストレージデバイスがよさそうだ。

 

そのまま容量はどうするー、だの魔力負荷軽減のためにはー、なんて悩んでいるといきなり電話が鳴った。

画面を見るとなのはから電話らしい。急にどうしたんだろうか

 

 

「サイフォン君おはよー」

 

「おう、おはよう。何かあったのか?」

 

「うん!あのね、今から翠屋に来れる?」

 

「ん?まあ今日はリニスとの訓練も休みだし構わんが」

 

何か嬉しいことでもあったのか、なのはの声はやけに上機嫌だった。

ちなみにうちにも何度か遊びに来ることがあり、なのはとリニスも仲良くなっていた。

リニスなんかはまるで妹ができたみたいに喜んでいた。

 

 

「よかった!それじゃ今からこっちに来てー!」

 

「了解。それじゃまた後でなー」

 

「うん!ばいばーい」

 

電話を切り徐に立ち上がる。

デバイスの設計も難航していたし、息抜きには丁度いいだろう

 

そう思い翠屋へと足を運んだ。

 

 

 

――チリンチリン

 

 

翠屋の扉を開けるといつものように鈴が鳴る。

中の様子を見ると最初のころに来た時と比べ客足も増えているようだ。

 

「あら、サイフォン君。いらっしゃい」

 

「桃子さんおはようございます。恭也もおはよう」

 

「おはよう」

 

2人にあいさつし、カウンターに座ろうとすると桃子さんに手で制された

 

 

「サイフォン君はあっち」

 

「うん?」

 

「なのはー!サイフォン君が来たわよー!」

 

桃子さんが喫茶店の一角に声をかけたのでその方向を見ると、なのはと知らない女の子が2人座っていた。

 

 

「あ、サイフォン君こっちこっちー」

 

なのはが元気よくこっちに手をブンブンと振っていた。

席に向かっていくと、一緒に座っていた2人が興味深そうにこちらを見ていた。

そのままなのはの隣に座るとジーっと6つの瞳がこちらに向く。

 

 

「なのはさんや。そろそろ説明が欲しいんだが」

 

「あ、ごめんね。あのね、この前相談した2人と友達になれたの!」

 

「へー、この2人がね」

 

「うん!2人とも、この人が前に話したわたしの初めてのお友達のサイフォン君!」

 

「あなたが……わたし、月村すずかっていいます。よろしくお願いします」

 

「アリサ・バニングスよ。よろしく」

 

対照的な2人だなぁというのが第一印象だった。

すずかは紫色の髪をしたおっとりとしていてお淑やかそうな子だった。

対するアリサは茶色がかった金髪をしており、すずかと比べ活発そうな印象だった。

 

 

「黒鐵サイフォンだ。なのはのお友達第1号らしい。よろしく頼む」

 

「むー。何だかすごいテキトーに言われてる感じがする」

 

「そんなことないぞ。なのはは俺にとっても友達第1号だからな」

 

「そ、そっか。えへへ……」

 

なのはは照れたように頭をかいていた。

その様子を見てすずかとアリサは笑っていた。

 

 

「ほんとに仲がいいんだね」

 

「最初見た時はこんな冴えない人がなのはの言ってた人か怪しかったけど、ほんとみたいね」

 

「そりゃご期待に添えたようでなによりで」

 

俺は肩を竦めおどけて言う。

なのはが拗ねないでねと肩をポンポン叩いてくるが、拗ねてるつもりはないんだがなぁ

 

その後は皆で翠屋の甘味に舌鼓を打ちつつ会話を楽しんだ。

すずかやアリサとは俺も友達になることになり、互いに連絡先を交換しあった。

 

(よく考えると俺はこの世界だと同学年の友人が少なくないか……?)

 

高町家しかいない気がする。というかいない

 

サイフォンは大人びた雰囲気を纏ってるせいか、人があまり近寄ってこないのだ。

本人が1人でいるのを好んでることもあって、それも拍車をかけていた。

 

(まあ今のところそれで困ることも無し。今の交友関係で満足してるしそれでいいさ)

 

余計な考えを捨て、会話に集中することにした。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「そんじゃ、またなー」

 

「うん。ばいばーい」

 

あの後も皆で会話を続けたり、厨房を借りて3人にスイーツを振舞ったりと穏やかな時間を過ごした。

そして時間も夕方になり、今はなのはを家まで送った帰りだ。

すずかとアリサは迎えが来るので大丈夫だそうだ。2人ともお嬢様だったらしい。

 

 

ゆったりとした足取りで帰路につき、今後の事を考える。

夜天の書とはやてのことだ。

 

3年……いやそれよりも短いかもしれないと管制人格は言っていた。

管制人格との邂逅からもう半年は経っている。猶予はもう2年ぐらいと見た方がいいだろう

 

それまでにどうにかして例のデバイスを完成させ、彼女たちを救い出さねば。

どうにかできる保証はない。それでもやれるだけのことはやっておきたい。

 

 

「まあそれまでに何事もなければいいんだがね」

 

 

そう呟く彼は、この時知る由も無かった

 

夜天の書の管制人格が指した年に起こるもう1つの大きな事件に彼が巻き込まれることを

 

 






ちょっと雑な終わりになった感が否めないけどこれにてプロローグ編完結です。

ここからは無印本編にはいります。
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