~サイフォンSide~
リニスと俺は家を出て暫く空を飛んで、念話と魔力の反応のあった場所に急いでいた。
だが、飛んでいる最中に違和感に気付いた。
「リニス」
「ええ。貴方も気付きましたか」
幾ら家から槇原病院まで距離があるとはいえ、全力で飛べばそう時間はかからないはずだ。
それなのに一向に辿り着かないうえに同じような景色がずっと続いていた。
「これは……幻術の類か?」
「恐らくは。ですがこんな魔法聞いたことがありません」
「リニスでも知らないか……厄介だな」
時間がないってのに……幸いあのフェレットもどきはデバイス持ち。暫くの間なら魔法で凌げるだろう。
だからといってあまり時間はかけていられないが――どうする?
打開策を練るために思考をフル回転させる。
何かないか……何か――
そこである可能性に思い至り、何もない空間に向かって砲撃魔法を放った。
「サンダースマッシャー!」
「なっ!?」
発射した黄色の閃光が何もない空間に阻まれたのだ。
恐らく
「どうやら閉じ込められてたみたいだな」
「ええ。ですがそんな兆候はどこにも見られなかったのに」
「余程腕の立つ相手なのかもな。正体が分かったんなら後は簡単だ。リニス!」
「了解です!」
俺はリニスに一声かけ、居合の構えを取った。それと同時にバリアジャケットを普段着の和服から戦闘用の赤い羽織と黒の袴に装いを変えた。
そしてデバイスにこれでもかというぐらいにエーテルと魔力を込めた。
すると身体からあふれる魔力とエーテルで足場にしていた魔法陣が凍り付いていた
「ブーストアップ・ストライクパワー!」
「シュッツライゼンデ!ロードカートリッジ!」
《Jawohl!》
リニスの攻撃強化の補助が入り、そこにカートリッジを3発追加。
――準備は整った!
「花と散れ!乱れ雪月花ぁ!!!」
――――バリイイイイン
莫大な魔力を纏わせた抜刀の
俺はまだ残っている魔力を、刀を一振りして霧散させ鞘に戻して辺りを見回した。
どうやらうまくいったらしい。
「お見事です。やはりとんでもない威力ですね」
「お前さんの強化あってのものだよ。まあ二の太刀を出す必要もなかったみたいだが」
――――パチパチパチ
するとこの場に似つかわしくない気怠そうな拍手の音が響いた。
「誰だ!」
リニスと共に警戒しつつ音の鳴る方に視線を向けると、全身黒づくめでフードを被った謎の人物がいた。
「いやあ見事見事。中々面白いもん見れたわ」
「なにもんだてめえ?」
声の様子からいって男だろうか?やつはやれやれといった風に肩を竦めていた
「別になんだっていいだろ?面白そうだったからちょっかい出しただけだ。もう用はねえよ」
「ふざけてるのか!」
「キャンキャン吠えるな鬱陶しい。それよりいいのか、あっちはほっといて」
男は表情は見えないがこちらを嘲るように何かの映像を見せつけた。
「なのは!?なんで……」
「おーおー、良い反応するじゃねえの。ついでだ、このバケモンにプレゼントでもくれておいてやるよ。精々足掻きな――あばよ」
「待ちやがれ!!」
言いたいことだけ言うと男はその場から完全に消え去った。
まずい……なのはが戦っているあの化け物にあいつが何かしようとするはずだ。
――急がねえと!
「悪いリニス、頼む!」
「任されました!ブーストアップ・アクセラレイション!」
使い魔だからというのもあるんだろうが、こういった場面で一言でこちらの言いたいことを理解し、助けてくれる存在はありがたかった
「先に行く!」
「ええ、お気をつけて!」
そして俺は全速力でなのはの元へと飛んで行った。
補助魔法のお陰もあり現場は直ぐに見えてきた。
だが状況はあまり良くなかった。
なのはが化け物の攻撃を防御魔法で受け止めているのだ。
だがあの様子ならこちらが着くまで持ちそうだ。そう思った瞬間
――――
つい先程聞いた声が聞こえたのだ。
その瞬間あの化け物の魔力が膨れ上がり、なのはが徐々に押され始めた。
あのままじゃ不味い!
「シュッツライゼンデ!カートリッジと加速!」
《Jawohl! Sehr Schnell》
シールドが壊れそうだ――頼む!間に合え……!
「うおおおおおおおおおおおおらああああああ!」
間一髪のところで俺は化け物に対し、抜刀による斬撃を浴びせ吹き飛ばした。
「え……うそ……」
「無事か!なのは!」
なのはの方に振り向き無事を確認する。
良かった、怪我はないようだ。
なのははの無事を確認し安心したが、今はあの化け物だ。
仕留める気で放った一撃だったが、まだ生きているようで魔力の反応を感じる。
タフな奴め
そのまま追撃に入ろうとするとなのはに服の裾を掴まれた。
「どうした、なのは?」
「えっと――あの……。ほんとに……サイフォン君?」
「あ、ああ。ほんとだ。俺だぞ、なのは」
するとなのはは無言で背後から抱き着いてきた。
「ど、どうしたんだ急に?まさか――どこか怪我でもしたか!?」
「ううん。怪我は大丈夫だよ。さっきは助けてくれてありがとう……ただ」
「ただ――なんだ?」
「サイフォン君が助けに来てくれて、嬉しかったから」
そう言うなのはは心底嬉しそうな顔でこちらを見上げていた。
「そうか……。よし!なのは、お前さんは離れててくれ。俺があれを仕留める」
「待って!」
「ぐえっ。何すんだ急に……」
今度こそ追撃をかけようと姿勢を低くし飛び出そうとしたところ、襟を掴まれつんのめってしまった
「あのね、サイフォン君。わたしにもあれを何とかするお手伝いをさせて!」
「だがなぁ……」
「お願い!」
あまりこの子を危険な目に合わせてくはないんだが……
「いいんじゃありませんか」
「んあ?リニスか」
「リニスさん!?」
「こんばんは、なのはさん」
うちの使い魔はなのはにニッコリと笑みを向けていた。
いや、そうじゃなくてだな
「いいんじゃないかって、どういうつもりだリニス」
「そう睨まないでください。あれの相手なら私達どちらか1人でも事足りるんです。それならなのはさんをフォローしてあげればいいじゃないですか」
「そうは言うがなぁ」
「女の子の頼みぐらい聞いてあげたらどうです?可愛い子には旅をさせよともいうじゃありませんか」
「サイフォン君……」
リニスのそれは何か違うような気がするが……
ため息をつきつつなのはに視線を向けると、うるうるとした目でこちらを上目遣いで見ていた。
仕方ない……お手伝いのフォローとか、なんだかよく分からんことになってるが……やってやるか
「わかった。――ただし、危険だと思ったらすぐにやめさせるからな」
「うん!サイフォン君、ありがとう!」
「それと、そこの!」
「はっ、はい!」
事態を見守っていたフェレットもどきに声をかけ、結界を張る
「あぶねえからそこから出るなよー」
「あ、ありがとうございます」
そして化け物の方を見るとガシャーンという音と共にこちらに敵意をむき出しにしていた。
恐らくこっちに来る前にリニスが結界でも張っていたのだろう。
「ふむ、あれを壊しますか。パワーだけはありそうですね」
「まあそれだけなら怖くもなんともないさ。なのは、大丈夫か?」
「うん!サイフォン君がいるから全然怖くないよ!」
「そうか」
実際なのはの方を見ても怯えた様子は感じられなかった。
これなら大丈夫そうだな
「俺がフロントアタッカーを務める。なのははセンターガード、あいつを仕留めるんだ。リニスはなのはのサポートを頼む」
「「わかりました(うん!)」」
「そんじゃ、いくぞ!」
号令を皮切りに俺はナイトにジョブチェンジし白銀の鎧とマントを身に纏った。
そして盾を構えたまま化け物目掛けて体当たりをかました
――グオオオオオオオオオ
「ハッ、力比べかよ!そう簡単に勝てると思うなよ!!」
身体強化の魔法を発動させ、普段の何倍もの力を発揮させた。
そして盾を腹と思われる個所に潜り込ませ上にかち上げた。
相手は今無防備になっている
「今だ!」
「ブーストアップ・バレットパワー!なのはさん!」
「はっはい!レイジングハート!お願い!」
《Mode Change. Cannon Mode》
恐らくインテリジェントデバイスなんだろう。なのはの求めに応じデバイスが形態変化していた。
なのははデバイスを構え引き金に指を添え、魔力を溜め――
《いまです》
「――っ!」
――――ドオオオオオン
物凄い轟音と共に桜色の砲撃が発射された。
なのははあまりの威力の反動に、後ろに下がっていた
そしてその砲撃は一撃で化け物を仕留め切り封印までするほどだった。
「なのは、大丈夫か?」
「うん、ありがとうサイフォン君……」
なのはの腕は反動を受けきれず震えていたので助け起こしてやった。
ロストロギアと思われる宝石もリニスの方で回収していた。
後は――
(どこにも気配を感じられない……か)
化け物に対して強化を施した黒服。どこかで見ているのかとも思ったが、何の気配も感じられなかった。
一先ずは一件落着……か
「皆さんお疲れ様です」
「おーう。お疲れさん」
「お疲れ様でした」
全員集まったところでフェレットもどきの方を見る。
緊張しているのかビクビクしていた。
「あの……助けていただき、本当にありがとうございました!」
「別にいいさ。そんであのロストロギアらしき物体はなんなんだ?」
「あれは――」
「待ってください、サイフォン。もう夜も遅いですしなのはさんを家まで送らないと」
「それもそうか。なら明日、放課後にうちに集まろう。なのはもそれでいいか?」
「うん、わかったの」
話は纏まったところで
「フェレットもどきのお前さんは何て名前なんだ?名前が分からんと不便だ」
「名乗りもせずすみません。ユーノです。ユーノ・スクライア」
「んじゃユーノ。お前さんとっとと変身を解いたらどうだ?夕方に治癒魔法をかけてやったんだ。今の魔力でも戻れるだろ」
「あれは貴方のお陰だったんですね。ありがとうございます。それじゃあ」
すると目の前のフェレットが人の姿へと変わり、金髪の少年の姿になった。
その様子を見てユーノを指さしながらがくがく震えているのが約1名。
「えええええええええええええ!?」
「うお!うるっっっさっ」
「ユーノ君ってユーノ君って――えっと……その……なに!?」
「こいつは変身魔法を使ってフェレットになってたんだよ。魔力の消費を抑えつつ、怪我の治りをはやくするためだろうが」
「そのとおりです。驚かせちゃってごめんね」
ユーノはバツが悪そうにして謝っていたがここらでもう1つ爆弾をねじ込むか
「ちなみにリニスも変身できるぞ」
「うそっ!?」
「本当ですよ」
ほら――というとリニスは猫の姿になった。
「私は猫の使い魔なので、どちらかというとこっちが本当の姿ですかね」
「…………」
「あーらら。機能停止してら」
「もう。貴方が余計なこと言うからですよ」
人間姿に戻ったリニスに頭を小突かれてしまった。
お前さんだってノリノリで変身したくせに
パンパンと手を叩きなのはを正気に戻す。
「そんなわけで、ユーノもちゃんとした人間だ。詳しいことは後で聞くとして今はそれだけ覚えときな」
「う、うん。わかったの」
「そんじゃなのはの家に行きますか。ああ、ユーノ。人型になってもらっといてわるいが、また変身してくれるか?なのはの家族に事情を説明しないといけないからな」
「なるほど。わかりました」
そして再びフェレット姿になったユーノを肩に乗せ、一行はなのはの家に向かって行った。
「夜遅くに出てごめんなさい!」
家に戻ると恭也が門の前で待ち伏せしていた。
そのためなのはが開口一番に謝ったのだ。
すると恭也がこちらに視線で促してくる。何をやってたんだと
なのはに直接聞けばいいだろうに
「俺とリニスが夜の散歩中に見かけて拾ったんだよ。夕方に見つけたフェレットが心配で心配でしょうがなかったらしい」
「そうなんですか?」
「ええ。なにやら檻から抜け出していたみたいで、それをなのはさんが助けていたみたいです」
「おい、俺に聞いといてなんでリニスにまで聞くんだ」
「お前はなのはのことになると甘いからな。念のためだ」
「おいおい、お前さんにだけは言われたくねえぞ」
お互い視線を合わせ火花を散らしながらじゃれあっていると、なのはとリニスが苦笑していた。
これは言われなくてもわかるぞ。どっちもどっちとか思ってるな
『正解です』
『わざわざ念話で言わんでもいい!』
「事情については分かった。ただしなのは、次からはちゃんと相談してから行くんだぞ」
「うん。ごめんなさい、お兄ちゃん」
「それで?そのフェレットはどうするんだ?」
「ああ。一旦はうちで預かる。お前さんちは飲食業やってるだろ?服に動物の毛がついてたとかだと困るだろ」
「それは助かるんだが……なのははそれでいいのか?」
「うん。サイフォン君のおうちならなのはも安心だから」
「だそうだ」
ここに来る前に打ち合わせていた通りに、話が進んでいるしもう大丈夫だろう。
「っし。それなら俺らもお暇するぞ」
「ああ。わざわざ送ってもらってすまないな」
「気にしなさんな。んじゃ2人ともおやすみー」
「おやすみなさい」
「サイフォン君、リニスさん。またねー」
「おやすみ」
そして3人で高町家を後にした。
俺達はいったん家に帰り、俺の部屋に集まっていた。
ちなみにユーノは人型に戻ってもらい、両親には俺達の前いた場所の友人で宿を求めてると伝えた。
2人ともユーノが滞在することに快く賛成してくれた。ありがたいことだ
「とりあえず話したいことは山ほどあるんだがもう遅いし寝るぞ」
「えっ!?あの……僕が言うのもなんですけど、今すぐ聞かなくていいんでしょうか?」
「ただでさえ明日は学校なんだ。ここ最近は寝不足が続いてるし、さっさと寝てえんだよ」
「まあ私も明日は道場に行かないといけませんし。話すのはなのはさんもいる放課後にしましょう」
「わかり……ました」
ユーノはまだ若干納得してなさそうだった。仕方ない
「ユーノ、悪いが俺達にも日常ってものがある。それに念話を使えばーなんて野暮なことは言うなよ。俺達はお前さんと面と向かって話したいんだ」
「面と向かって……顔を合わせてですか?」
「そうだ。念話じゃ声色で多少感情が分かるくらいだが、表情までは分からねえからな。面と向かって話さねえと分からねえこともある。だから今は我慢しときな」
「こんなこと言ってますけど、単に寝不足の中でマルチタスクをこなしたくないだけですよ」
「そういうネタ晴らしはやめてくれんかねリニスさんや
「すみません、つい」
ついじゃねえんだ、ついじゃ
リニスの言葉に不貞腐れた俺を見てユーノはクスクスと笑っていた
「わかりました。それじゃあお三方の帰りをここで待っていますね」
「おう。そうしな。分からんことがあったらリニスに念話を飛ばしてくれ」
「はいっ」
こうして慌ただしい2日間が終わった。
だがこれはまだ事件の始まりでしかなかった
~???Side~
「あれをあっさり殺るか。流石に力をいれなさすぎたか。でもま、あんまり派手にやりすぎるとばれちまうしなぁ」
謎の空間でサイフォンとリニスを邪魔した黒ずくめが、歩きながら独り言ちていた。
「にしてもあの野郎……もしかしてあいつが力を受け取ってんのか?そうでもなきゃ俺の幻術結界が簡単に破れるとも思えねえしな……」
謎の人物は立ち止まると――クククと笑い出した。
「いいじゃねえの!!あのオモチャはそれなりに面白そうだ。精々楽しませてもらうさ!!」
――――ヒャハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!
狂気的な笑い声をあげながら彼は虚空を見つめた。
「いずれお前も引きずり出してやるよ……なあ――
次回はユーノの事情説明回と出来れば水着回を入れたみ
侍とナイトは90AF装備