光を支えるもの   作:黒の眷属

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同じ魔法を使う者

~フェイトSide~

 

 

 

「はぁ……」

 

 

わたしはこの日、何度目になるか分からないため息をついた。

朝からずっとこの調子だったからアルフも心配していた。

ごめんねアルフ……

 

 

原因は昨日の出来事のせいだ。ジュエルシードの捜索に出て遭遇した現地の魔導士……いや騎士。

 

サイフォン。彼の存在がわたしの心をざわつかせる。

あの人が使った魔法はわたしと同じだ。リニスに教えてもらった魔法と……

 

そして分からないのは彼の行動だ。

 

 

「どうして……譲ってくれたんだろう」

 

あの人もわたしと同じジュエルシードの捜索者だった。サイフォンは強く、恐らくアルフと2人がかりでも勝てなかったと思う。

 

そんな彼がジュエルシードをわたしが封印したからといって譲ってくれた。その封印でさえも彼の助けなしではできなかったことなのに。

 

 

「はぁ……」

 

聞きたいことは山の様にある。魔法のことや、どうしてジュエルシードを譲ってくれたのかとか。

けど次にサイフォンと会う時は恐らくまた敵同士。互いにジュエルシードを集める以上、争うしかないからだ。

 

フェイトは悶々とした様子でベッドに横になり枕に顔をうずめていた。

だが……

 

 

――――ピンポーン

 

 

そのインターホンでわたしは飛び起きた。

この世界には誰も知り合いはいない。誰かが訪ねてくることなどありえない筈なのだ。

 

 

 

――――ピンポーン

 

 

再度鳴り響くインターホン。帰るまで待とうか?でも相手が昨日のような魔導士だったらその時間は致命的過ぎる。

 

 

「あたしが覗き穴から見てみるよ」

 

「お願い、アルフ」

 

そういってソロリソロリとドアに近付きアルフは相手を確認した。

すると尻尾がピーンと立ってすごい勢いで戻ってきた。

 

 

「アルフ?どうし――」

 

「フェイトまずいよ!!昨日の奴だ!!」

 

「えっ!?」

 

昨日の奴。つまりサイフォンがここに来たということだ。

どうしてここがばれたのだろう……。跡を付けられていないことは確認した筈なのに。

 

だがこれは逆に考えればチャンスだ。昨日聞けなかったことが聞ける。

知りたかったことが知れる。

それにあの人のことだ。補足された以上逃げても追いつかれるだろうし、力量差を考えれば抵抗しても無駄だろう。

 

 

「アルフ。出よう」

 

「フェイト!?でも……いいのかい?」

 

「大丈夫。もしあの人が本気でわたし達をどうにかする気なら、こんな風に来たりしないよ」

 

「それはそうだけど……」

 

「それにわたしもあの人に……サイフォンに聞きたいことがあるから」

 

「わかったよ……でもいざとなったらすぐ逃げるからね」

 

「ありがとう、アルフ」

 

 

そして彼を迎え入れるべくわたしは玄関に向かった。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

~サイフォンSide~

 

 

 

俺は今現在とある高級マンションの、フェイトがいると思われる部屋の前にいる。

何故そんなところにいるかというと、昨日フェイトの頭を撫でた際に追跡の魔法をかけておいたからだ。

 

そのお陰で拠点が分かったので、バッグに料理を持参してお邪魔しに来たのだ。

あの子が何を目的として、ジュエルシードを集めているのかを聞くために。

 

後は飯を食わせるためだ。ちゃんと食ってなさそうだったからな。

 

既にインターホンは2度鳴らしたが反応がない。まあ2回目の後にドタバタしてたから、何かしらアクションはありそうだが。

 

そう思い少しの間待っていると微かに扉が開いた。

 

 

「サイフォン……なの?」

 

「よお、フェイト。昨日ぶりだな」

 

「えっと……何しに来たの?」

 

「お前さんちゃんと飯を食ってないみたいだったからな。料理を作って持ってきてやったぞ」

 

「――はい?」

 

フェイトはドアの隙間越しに見える目をぱちくりとさせていた。

 

 

「ん?今日はなんか用事でもあったか?そんなら日を改めるが」

 

「うっ、ううん、大丈夫。あがって」

 

「おう。邪魔するぞー」

 

そしてフェイトの部屋に入っていくと、如何にも警戒しているといった感じのアルフがいた。

 

 

「よお、アルフ。昨日ぶり」

 

「あんたってホント何考えてるかわかんないね。警戒してるのが馬鹿らしくなってくるよ」

 

「別に俺は事を構えに来たわけじゃないからなぁ。警戒したって無駄だぞ」

 

カッカッカと笑っていると、呆れたのかアルフは肩を竦めていた。

リビングに案内されたのでリュックを下ろし、腰かける。

 

 

「お前さんらもう飯は食ったのか?」

 

「まだだけど……本当に持ってきたの?」

 

「なんだ嘘だと思ったのか?マジだよ」

 

「フェイト。いったい何の話だい?」

 

「うん。サイフォンがわたしにご飯を食べさせるために料理を作ってきたんだって」

 

それを聞いたアルフはポカーンと口を開けて固まっていた。

その様子にフェイトはオロオロとしていた。

 

ほんと、昨日会った2人とは思えないな。

 

 

「まあ温めるだけだからな。レンジと食器借りるぞー」

 

そういってキッチンに行き、てきぱきと食事の準備を進めていく。

すると我に返ったアルフがこちらに来た。

 

 

「いやいやいや。あんたも何普通に準備してんのさ!?」

 

「あ?いやだって飯食べさせるっていっただろ。お前さんもフェイトが食べないから心配してたろうに」

 

「そりゃそうなんだけど!敵かもしれないやつの食事なんて食べさせられるわけないじゃないか!」

 

「大丈夫だって。俺の分もあるんだから。俺が先に食えば毒見にもなるだろ」

 

「そういう問題じゃ……ああもうわかったよ!好きにしてくれよもう!」

 

「端からそのつもりさ」

 

そう言ってアルフをキッチンから追い出し、準備を進める。

今日持ってきたのはカレーだ。タッパーに詰めて人数分のご飯と一緒に持参した。

 

レンジで温めたカレーをごはんの上にかけ、おぼんに乗せて2人の元に移動した。

 

 

「お待たせさん。サイフォン特製カレーだ。味は保証するぞ」

 

「良い匂い……」

 

「まあ見た目はよさそうだけどね」

 

「あんまり辛くないように仕上げたから、辛いのが苦手でも大丈夫な筈だ。そんじゃ、いただきます」

 

「「いただきます(い、いただきます)」」

 

フェイトとアルフは恐る恐るといった感じでスプーンを口に運んでいくと

 

 

「おいしい……!」

 

「こりゃ美味いねえ!こんなに美味しいの初めてだよ!」

 

「口にあったようで何よりだよ」

 

アルフは余程美味しいのかガツガツ食べており、フェイトの方も控えめながらパクパクと口に運んでいる。

そうして幾らもしないうちに、2人はあっという間にカレーを平らげてしまった。

 

 

「おかわりもあるぞ?」

 

「えっと……その……少しだけお願いします」

 

「あたしも……お願いするよ」

 

「おう。任せろ」

 

多めに持ってきて正解だったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

――――数十分後

 

 

「ごちそうさまでした」

 

「ごちそうさま!いやー、美味かったよ!」

 

「お粗末様でした。そんだけうまそうに食ってくれりゃ、作ったもんとしても嬉しい限りだな」

 

 

後片付けも終わり、今はゆっくりとしていた。

カレーはまだ残っていたので、冷凍庫に入れてやると2人とも少し目が輝いていた。

 

 

「さて。腹も膨れたことだし、本題に移ろうか」

 

「「――っ!」」

 

こちらの空気を察し、2人とも居住まいを正していた。

そこまで構えなくてもいいんだがな……

 

 

「フェイト。お前さんは俺に聞きたいことがあるといったな?」

 

「はい……」

 

「俺の方もお前さんに聞きたいことがある。だから取引といこうじゃないか」

 

「取引?」

 

「そうだ。至ってシンプルだぞ。俺はお前さんの知りたいことを話して、お前さんは俺の知りたいことを話す。それだけだ」

 

フェイトは暫し考え込むとこちらを見て頷いた。

 

 

「わかった。それでいい」

 

「オーケー。なら俺から質問させてもらうぞ。お前さんは何でジュエルシードを集めてるんだ?」

 

「それは……」

 

今日一番の目的だ。フェイトが何故ジュエルシードを集めているのかを聞き出すこと。

そうすればこの子を助けることも出来るかもしれない。

 

 

「母さんが……母さんが欲しがっているから」

 

「母親が?」

 

彼女の目はどこか怯えているようにも見えた。

 

 

「無理やりやらされてるのか?」

 

「違うよ。わたしが母さんの力になりたいからやってるんだよ」

 

「そうか……。ちなみに理由は聞いているのか?」

 

「ううん、聞いてない。ただ母さんの研究に必要だからって」

 

ロストロギアの研究。その為にわざわざこんな年端もいかない子を、別世界におくりこむのか?

母親を喜ばせるためにジュエルシードを集めてる。それだけ聞けば聞こえはいいが、どこか引っかかる。これはきな臭いな……

 

 

「――分かった。俺としてはおふくろさんの理由の方が知りたかったんだが、聞かされてないんじゃしょうがないな」

 

「じゃあ……わたしも聞いても?」

 

「いいぞ。なんだ?」

 

フェイトは緊張した面持ちでこちらの顔を見ていた。

 

 

「昨日は何でジュエルシードを譲ってくれたの?」

 

「何だそんなことか。昨日も言ったとおり、お前さんが封印したから譲った。それだけさ」

 

「本当にそれだけ?」

 

「変なこと気にする奴だな。強いて言えば俺には他にも仲間がいるからな。俺がやらなくてもそのうちそいつらが取り返すだろうと思ってるだけさ」

 

「仲間って……あんたまさか管理局の人間なんじゃ!?」

 

「残念ながら俺も、俺の仲間も管理局の人間じゃねえよ。知り合いもいないしな」

 

「そうなのかい……ちょっと安心したよ」

 

リニスに聞いた感じ、管理局とか如何にもお堅そうなイメージがあるしな。

叶うことなら今後も関わりたくないもんだ。

 

 

「それじゃあ後1つだけ」

 

「お前さん欲張りだなぁ。いいだろう、特別サービスだ」

 

「ありがとう……。じゃあ昨日も聞いたけど――貴方の魔法は()()()教わったの?」

 

やはりその質問か。だがこの子は恐らくもう当たりを付けている予感がしていた。

あれだけあからさまだったからな。

 

 

「どうしても知りたいか?」

 

「――はい」

 

その瞳には強い意志が宿って見えた。だがここで馬鹿正直に本当のことを話すわけにはいかない。なので少し真実をぼかすことにした。

 

 

「はぁ――仕方ない。俺の魔法はな、消えかけの猫に教わったんだよ」

 

「「!?」」

 

「おかしな話だろ?猫に教わるなんて。数年前に消えかけの猫を見つけてな。それを助けようとしたんだが、全くうまくいかなかった。そしたら助けようとした礼代わりなのかは知らんが、そこで魔法の知識やらを植え付けられたんだよ。今になって思えばあれも魔法だったのかもな」

 

「そんなことが……」

 

「……」

 

2人は一様に暗い雰囲気になっていた。

だが真実を話すわけにはいかないので俺は素知らぬふりをする。

 

 

「何だ?お前さんら急に暗くなって。俺の魔法のルーツはそんなに変だったか?」

 

「変と言えば……変なんだけど……」

 

「あたしらにも、色々あるんだよ」

 

「そうか。ならこれで話は終わりだな。聞きたいことも聞けたし俺は帰るぞ」

 

そう言って席を立ち、帰ろうとする。

 

 

「待って!!」

 

「ん?どしたフェイト」

 

フェイトが服の裾を掴んで呼び止めた。

彼女は不安そうな目でこちらを見上げていた。

 

 

「また会う時は敵同士……なんだよね」

 

「そうだなぁ。俺とお前さんはジュエルシードを集める者同士だからな」

 

「そう……だよね……」

 

フェイトは酷く落ち込んでおり、悲しそうな表情をしていた。

正直俺としてはこの姉弟子ともいえる少女と、敵対する気はあまりなかった。

 

だが、だからと言ってなのは達を裏切るわけにもいかない。

故に俺はずるいとは思うが、リニスをダシにして中立の立場でいることにした。

 

 

「なんだけどな」

 

「うん……?」

 

「何故かは分らんが、お前さんとは敵対したくないんだ。まあ単に俺がお前さんを気に入ったってのもあるが、俺の中の魔法の記憶が敵対したくないと囁いている気がするんだ」

 

「それは……」

 

「だからな、フェイト。俺は立場上、完全にお前さん達の味方になることはできないが、お前さん達を傷つけたりはしない。言わば中立の立場になろうと思う」

 

「でも……良いの?仲間の人達は……」

 

「気にすんな。どっちにしろ俺は昨日の戦いで、化け物のでかい一撃を防いだ影響もあってか、リンカ―コアに負担をかけすぎちまってな。暫くは殆どの魔法が使えないんだ。だから補助に徹する形になるだろな」

 

と言いつ殆どの魔法が使えないのは嘘だ。確かに強力な一撃だったが、あれで魔法が使えなくなるほどやわではない。

 

 

「そんな!?わたし達を庇ったせいで……。大丈夫?どこも痛くないの?」

 

「あんたそんな状態だったのかい!?何だかすまないね……」

 

フェイトは慌てた様子でこちらの身体をペタペタと触り心配していた。

アルフもバツが悪そうにしていた。

わざわざ心配をかけさせてしまい、少し罪悪感を感じる。

 

 

「落ち着けフェイト、大丈夫だ。暫くリンカ―コアを休ませてれば大丈夫だ。そのうち治るさ。アルフも気にすんな」

 

「う、うん……」

 

「あんたがそういうなら……まあ」

 

俺はひとしきりフェイトの頭を撫でると今度こそ帰るために玄関に向かって行った。

これ以上ここにいると、本当にこちら側に付いてしまいそうだ。

 

 

「それじゃあな。ちゃんと飯食えよー」

 

「うん、ありがとう……ばいばい、サイフォン」

 

「カレー美味しかったよ。ありがとなー」

 

そして玄関から見送る2人に手を振りその場を後にした。

 

 

フェイトの家を出てからの帰りの道中。俺は今後の方策を練っていた。

一先ずフェイトのことについてだが、リニスには話そうと思ってる。

もし何かの拍子で3人が遭遇してしまうと、非常にややこしいことになってしまうからだ。

 

少なくともそれは避けたい。そして事情を話したうえで、リニスには俺と同様に中立の立場になってもらう。

結果として当面の間、ジュエルシード捜索はなのはとユーノだけになってしまうが、支援はするつもりだ。

 

そして最終的にどうするか。恐らく、フェイトの母親は何らかのアクションを起こすと踏んでいる。わざわざ別世界にまで娘を……使い魔付きとはいえ、1人で送り込んでいるのだ。

 

それ程ジュエルシードに執着しているんだ。全部集まりそうになった段階……あるいは双方の集めたジュエルシードが一か所に集まる時に、それを掠め取るぐらいのことはしてきそうだ。

 

その瞬間を補足する。そうすれば相手の拠点を割り出すことが出来そうだ。

 

後は今考えた通りに事がうまく運べばいいが……

 

 

「そう上手くはいかないよなぁ……」

 

そう思いつつ、まずはリニスをどう説得するか考えつつ帰路についた。

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

~フェイトSide~

 

 

 

「行っちゃったね……」

 

「ああ。ホントに変な奴だったねぇ」

 

「でも……嫌な感じはしなかったよ。ご飯も美味しかったし」

 

「そうだけどさ……」

 

 

わたしは今、この場を去った彼のことを考えていた。

彼が魔法を教わった魔法……そしてそれを教えた(継承させた?)猫のことを。

 

本当のことかは分からない。でももしそうだとしたら……

 

 

「リニス……なのかな」

 

「フェイト……」

 

リニスはわたしの魔法の師匠で家庭教師だった。アルフも同じ様に一緒に学んでいた。

その彼女はいつからだろう……わたしの杖を完成させた辺りから姿を見なくなり、母さんに聞いたら使い魔としての契約を終えて消えたと言っていた。

 

わたしは悲しくてその日はずっと泣いていた。

でもいつまでも泣いているわけにはいかなかった。母さんの願いを叶えるためにも。

 

なのに昨日――あの人と出会ってしまった。わたしと同じ魔法を……リニスに教わった魔法を使うあの人に。

 

あの人は消えかけの猫と言っていたので、恐らく契約が切れて消えそうなリニスに出会ったのだろう。

何故この世界にいたのかは分からないけど、ここであの人に出会い魔法を授けた。

 

わたしは、わたしと同じ魔法を使い、わたしに優しくしてくれたあの人と――サイフォンとは戦いたくなかった。

 

サイフォンもわたしとは戦いたくないと言い、中立の立場でいてくれると言った。

普通なら信じられないことだけど、不思議とサイフォンの言うことは信じられた。

 

わたしはサイフォンと敵同士にならなくて、すごく嬉しかった。

 

 

(敵同士じゃないなら……中立だったなら、また……会いに行ってもいいよね?)

 

 

フェイトは彼が頭を撫でてくれた感触を思い出しつつ、物思いに耽っていた。

 

 

 







フェイト回は長くなりがち。お次はリニス回。

その後はジュエルシード事件が本格的に進みだすかも?
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