光を支えるもの   作:黒の眷属

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今回からなのは世界へ


新たな世界と新たな出会い

 

 

「う、うーん……ここはいったい……」

 

目を覚ました第一声は実に平凡なものだった。

謎の空間で謎の人物...セフィリアスと話していたことは微かに覚えていたがそれよりも

 

「俺は……生きてる……のか……」

 

確かにあの時、俺はウルカに自らの命を渡して息絶えたはずだが今はこうして生きている。

セフィリアスとの邂逅の時点でも意識がある時点でおかしかったが、事情を知っていそうな当の本人はどこにも見当たらなかった。

 

「世界を見守り導く……だったか?なんだってそんな大層なことを任されたんだか」

 

全くもって柄でもない。もっと勇者然とした奴や英雄にでもやらせればいいものを

 

「あー、でもあれだな。あいつにだけはさせられないな」

 

ふと思い浮かぶのは英雄と呼ばれた彼女のこと。

ただでさえ背負いたくもない重荷を背負っているというのにこれ以上面倒ごとを増やすわけにはいかない。

 

「とはいえ、もう会えるかもわからないんだがな」

 

俺は肩を竦め改めて()()()()()()()()()()()を見回した。

どうやら廊下のど真ん中で倒れていたらしく長い道が続いていた。

 

(壁の材質的にベストウェイ・バローにも似た雰囲気がするが……)

 

かつていた世界の月の住人達の基地。

地上にいた我々よりも遥かに高度な文明を築いていた彼らの住居に似たものを感じた。

 

もう少し近付いて見ようと立ち上がった瞬間に()()()()()()()()()

 

(()()()()()……?)

 

その後、付近の壁に近付き反射して写る自分の姿を見て絶句した。

 

「なっ……なっ……」

 

なんじゃこりゃああああああああああ!?

咄嗟に口を塞ぎ叫ばないようにしたが内心は驚愕していた。

 

そう、()()()()()()()()のだ。

 

(見た感じ十代前半位だろうか?どうりで視線が低く感じるわけだ……

しかしなんだってこんな……)

 

その時ふとここに来る前のことを思い出した。

 

《まあ別の世界に行ったら君の姿形は世界の強制力によって変わるかもしれないが、私があげた力は影響を受けないから安心したまえ》

 

 

あいつかあああああああああ!

 

姿形が変わると言っていた意味が漸く理解できた。

サイフォンはミコッテ族という人が猫のような耳と尻尾を持った種族だったが、よく見たらその特徴もなくなっておりヒューラン、いわゆる普通の人になっていた。

 

他には多少短くなって見えるが侍のジョブ時の愛刀が腰にあり、格好は普段着ている緑の甚平と袴姿であった。

そこで疑問に思ったのが、元の世界では28歳だった成人男性が10代前半になって()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことだ。

 

そしてこの刀。()()()()()()()()多少小さくなってはいるが、間違いなくかつていた世界で振るっていた<星切【記】>だ。

刀身を抜いて溢れ出る光を見ても間違いない。

 

(この刀があるということは今のジョブは侍なのか?そもそもソウルクリスタルが手元に無い今、ジョブチェンジはできるのか……?)

 

周りからエーテルの流れを感じ取ることはできなかったが、エーテルに似た何かを感じとった。

自分自身からも体内エーテルの他に何か別の力を感じる。

セフィリアスの言っていた力だろうか?

 

それと同時に自身の内にある物の存在を感じ取った。

 

「これは……ソウルクリスタルか……?」

 

リーパー、戦士、竜騎士...他にもかつていた世界で戦っていたジョブのソウルクリスタルが身体の中にあるのを確かに感じる。

そこで試しに竜騎士のソウルクリスタルを頭の中でイメージし、エーテルを注ぎ込むように念じると

 

「ジョブチェンジ……できてるな」

 

先程までの和装とうって変わり、そこには竜の頭を模した兜を被った全身鎧姿の自分がいた。

その手には愛槍<ロンゴミアント・コンダクト>が淡い光を放っていた。

 

「サイズは……ぴったりだな」

 

侍の時と同様に大きすぎず、小さすぎず丁度いいサイズに収まっていた。

ジョブチェンジできることも含め何故かは今は考えないでおこう

どうせ分からないだろうし、それこそセフィ何某(なにがし)の仕業かもしれないしな

 

軽く槍を振り回したり、侍にチェンジしなおして刀を振るったりしてみたが身体能力が軒並み下がっていることが判明した

それでも同世代の子供よりは遥かに動けそうではあるが、全盛期と比べてしまうと違和感が凄かった

 

「ひとまず先に進んで誰かいないか探してみようか」

 

ここが安全な場所かはまだ分からないのだ

十分に警戒しつつ先へ進んで行った。

 

 

元の場所から十数分程歩くと庭のような場所に出た。

広い場所の様で、かつてはここでお茶会でもしていたのだろうか椅子とテーブルがそのまま放置されていた。

庭自体の様子もあまり管理されているようには見受けられなかった。

 

そのまま庭の中程まで行くと妙な気配を感じた。

 

(これはエーテル……とはまた違うな)

 

辺りを見回すと庭の一角、草の陰から光の粒子が立ち昇っているのが見えた。

刀を抜き、警戒しながら近付き覗き込んでみるとそこには今にも消え入りそうな()がいた。

 

(見た目は猫そのものだがエーテルに似た光が立ち昇っているあたり、この子は魔法生物みたいなものなんだろうか?)

 

前いた世界にもカーバンクルというエーテルで生み出された使い魔がいたのでその(たぐい)だと思ったのだ。

ただ1つ分かっていることは、このままだと目の前の猫が消えてしまうということだ。

 

(ただ通りすがっただけだし助けてやる義理はないんだが……)

 

そう思いながらも自然と手は動き、目の前の猫に対してエーテルを分け与えていた。

 

(昔の俺じゃ考えられんな、こんなこと。彼女のお人好しが移ったのかもしれないな)

 

クククと自嘲気味に笑っていたがそこで違和感に気付いた。

 

(おかしい。エーテルの供給に対して猫から立ち昇る光が止まらない)

 

既にカーバンクル位の使い魔の身体を保てるぐらいのエーテルを注ぎ込んでいるのに、猫の身体からは弱まりつつあるとはいえ光の粒子が出続けていた。

 

(注いだエーテルが漏れ出ているのか?だとしたらこのままだと状況は変わらないままか。供給可能な体内エーテルも尽きつつある……どうする……?)

 

頭を悩ませている中でふとここに来るまでの自分の行動の中から気付いたことがあった。

先程まで能力の確認をしている中で感じた自身の内にあるエーテルとは別の力。

 

(もしセフィリアスの言った通り姿形が世界によって変えられたのなら、すくなくともその世界に適したものになっている筈。他に手はなさそうだ……ならば!)

 

世界に適したものになっているのなら何故ジョブチェンジができるのか、何故エーテルを扱えるのか等気になる点はいくつかあるが、今はともかくこの子を助けることを優先した。

 

そしてエーテルを与えている手にもう1つの力を込めてみた。

上手く扱えるか不安ではあったが、猫の方を見ると立ち昇る光の勢いが徐々に弱まりつつあった。

 

(何とか上手くいったようだな。とはいえ……これどうやって止めるんだ……?)

 

サイフォンの手からは蛇口を捻ったかのようにエーテルと共に謎の力が猫に注がれ続けていた。

力の供給を止めようにも扱いがいまいち分からず、なすがままになっていた。

よく見たら猫の方も過剰供給なのかぷるぷると震えだしている。

 

(あー……これは……力の出し過ぎで意識が……飛……)

 

――バタッ

 

サイフォンは立っていられなくなりその場に倒れこんだ。

倒れた影響で力の供給自体は止まったが指一本動かせず、そのまま意識を手放した。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

~???Side~

 

 

「そうね、終わりね。杖を完成させたらさっさと消えなさい。あなたほどの高性能な使い魔、維持するのも楽じゃないのよ」

 

それは彼女、リニスと呼ばれる人型の使い魔が主人に言われた最後の命令。

リニスは大魔導士<プレシア・テスタロッサ>の使い魔だった。

 

そんな彼女が生み出された際に出された最初の命令。

それは主の娘<フェイト・テスタロッサ>、の世話と教育……一流の魔導士として育て上げることだった。

 

母性の強い山猫が素体の彼女は溢れんばかりの愛情でフェイトの成長を見守り慈しんできた。

時に厳しく、時にやさしく。

自らの教えられることを全て教え、わずか1年と7ヶ月で一流の魔導士と言えるぐらいに育て上げた。

 

そしてその教育の最後の大仕事である彼女の杖の作成……インテリジェントデバイスの()()()()()()()

 

杖の完成が意味するのは自らの終わりだ。

完成の報告に行った時にも主は――そう、とだけいうと見向きもせず研究を続けていた。

彼女はあの日から研究に囚われているのだろう。

娘である筈のフェイトにも目もくれずに。

 

部屋を出る前にフェイトのことをちゃんと見てあげるよう進言してみたが言葉は届かなかった。

 

リニスはそのまま部屋を出ると庭へと向かっていった。

かつて教え子達が遊んだり授業を受けた場所へ。

 

(フェイトとアルフは今頃眠っているでしょう。消える様を見せるのは忍びないですからね……)

 

庭にたどり着くとリニスの身体からは()()()()()()()()()

恐らくプレシアが使い魔の契約を破棄したのだろう。

 

そのまま庭の一角まで辿り着くと身体に力が入らず倒れこんでしまった。

 

(終わりというのは案外あっけないものですね。プレシアに生み出されてからの日々は長いようで短かったように感じます)

 

リニスはこれまでの日々を思い返していた。

フェイトはとても素直でいい子だった。教えたことを直ぐものにしていたし、幼いながらも使い魔の契約もできていた。

 

その使い魔のアルフもやんちゃなところはあるがいい子で、フェイトにもとても懐いていた。

2人とも教えたことをきちんと守り、吸収し健やかに育っていた。

そんな2人の成長をこれからも見守っていたかったが

 

(それも叶わぬ夢なのですね……)

 

頬に一筋の涙が流れるのを感じるが後悔はない―—ないのだが

 

「せめてあの2人が親子として……幸せな日々を送る姿が見たかったですね……」

 

つぶやく言葉は誰に聞かれるでもなくリニスの意識はそこで途絶えた

 

 

 

◆◆◆

 

 

それからどれほど時がたったのだろうか。

リニスは温かな光を感じ意識を取り戻した。

 

魔力とは別の力を感じる。どうやら何者かがこちらに対し何らかの干渉を行っているらしい。

少しずつ意識が戻っていくのを感じるが魔力ではないからか上手く取り込めていない。

 

すると突然大量の魔力が送り込まれてくると同時に急激に意識が覚醒してくる。

 

(な、なんなんですかいったい!)

 

目を開くとそこにはこちらに魔力を送り込んでいる少年がいた。

どうにも困っているらしく何とも言えない表情をしている。

 

(時の庭園に何故子供が?それよりも……うぷ……)

 

既に身体を構築できる以上の魔力を注ぎ込まれており限界に近かった。

満腹の状態で更に無理やり食べ物を詰め込まれているようなものだった。

 

「いい加減にしなさーい!!」

 

私が起き上がり叫ぶのと同時に件の少年はバタッと倒れていた。

 

「えっ!?あの、大丈夫ですか……?」

 

少年を抱き起そうとしてふと自分が猫の姿になっていることに気が付いた。

恐らく魔力が無くなっていく過程で人の姿を維持できなくなっていたのだろう。

 

変身魔法を使い人型になり彼の様子を確認してみた。

多分魔力を使い過ぎて気絶してしまったのだろう。

 

(ゆっくり休めばじきに回復するでしょうが……このままではまずいですね……)

 

ここは仮にも大魔導士の拠点。先程の魔力を感知して()()()()()()()来る可能性がある。

 

リニスは少年を抱きかかえると急いで転移魔法を発動させた。

 

(どこか……安全な近くの世界へ……!)

 

危険な賭けではあったが、リニスは少年と共に近くの世界にランダムに転移した。

 

 

◆◆◆

 

「――っと。ここはどこでしょうか?」

 

 

転移後、辺りを見回すとどうやら雑木林の中にいるようだった。

時間は夜であり身を隠すにはもってこいだったが、腕の中の顔色の悪い少年を見てその考えを捨てた。

 

(早くこの子を安全な場所で休ませないと……どこかに人がいないか探しましょうか)

 

そういうとリニスは探知魔法を展開し、辺りに人がいないか探してみた。

すると近くに夫婦と見られる2人の老人を発見した。

 

よく見ると少年と似た格好をしていたので、妻と思われる女性と似た格好に魔法で服装を変え少年を抱えたまま近付き声をかけた。

 

「突然すみません!この子を休ませるためにどこか休める場所を教えていただけないでしょうか!」

 

いきなり子供を抱えた女性が飛び出してきたからか、向こうは驚きながら構えをとっていた。

その構えから武芸を嗜んでいるように見えた。

 

2人は構えながらも先程の言葉とこちらの様子を見て、意を汲んでくれたのか構えを解いた。

 

「お嬢さん、こんなところでいったいどうしたんじゃ」

 

「この子がここへ来る途中倒れてしまって。私はこの辺りの地理には疎いのでどこか休むことができる場所を教えていただけませんか?」

 

「あなた。ここからなら近いですしうちに来てもらったらどうかしら」

 

「そうじゃな……あい分かった。わしらの家でよければ案内しよう」

 

「ありがとうございます!助かりました……。事情についてはこの子を休ませてからお話しさせてください」

 

「うむうむ。お嬢さんもよく見ると疲れがたまっているようじゃし、無理はせんでええからの」

 

ホッホッホと快活そうに笑う彼は正に好々爺という感じだった。

 

(ひとまず安全の確保はできそうですね。残るはこの子が何者なのか……ですね)

 

何故あの場に居合わせたのか。何故命を救ってくれたのか。

聞きたいことが沢山あるが不思議と嫌な予感はしなかった。

この少年からはあの一瞬の出来事とは言え悪意の様な物は感じず、ただただこちらの身を案じている様子が見て取れたからだ。

 

(なんていうのは楽観的過ぎますかね)

 

そう思いながらもリニスの口元は緩んでいた

 

 






主人公の格好はFF14の装備でいうと侍は<東方旅装>と<豪雪之筒袴>を合わせて緑にしたもの。
竜騎士は<ドラケン>一式

装備系は見た目の表現が難しいですね
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