光を支えるもの   作:黒の眷属

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使い魔の葛藤

~サイフォンSide~

 

 

 

 

「……」

 

「……あのーリニスさん……?」

 

「何でしょうか?」

 

「なんでそんなに不機嫌そうなんでしょうか……?」

 

「自分の胸に手を当てて考えてみたらいいんじゃないですか?」

 

おかしい。どうしてこうなった???

 

俺は今部屋に呼んだリニスと対峙しているが、目の前のこの使い魔は今、非常に不機嫌そうにジト目でこちらを見ている。

 

時は遡ること数十分前。

フェイトの家から帰る道中、リニスにフェイトのことを家で伝える為に事前に念話で少し会話をしていたのだ。

 

 

『リニス』

 

『おや、サイフォン。用事はもう済んだのですか?』

 

『ああ、今から帰るところだ。それでなんだが、帰ったら俺の部屋に来てくれないか?()()()()があるんだ』

 

『ええっ!?』

 

『……?どうしたんだ、急に大声出して』

 

『い、いえ。貴方から誘ってくるなんて珍しいと思いまして』

 

『そういえばそうか?でも、()()()()()()()()()()()()()()ことがあるんだ』

 

『そ、そんなにですか』

 

『ああ、そうだ。()()()()()()()()()()()()()()()な話だ』

 

『――わかりました……では部屋で待っていますね』

 

『ああ。よろしく頼む』

 

そして念話を切り、家に帰って部屋に行くとそこにはどこかそわそわした様子ののリニスがいた。

 

 

「ただいま。悪いな、待たせちまって」

 

「い、いえ。大丈夫ですよ。――それで、大事な話というのはいったい?」

 

「ああ。そのことなんだが……お前さん、なんか顔が赤くないか?」

 

「そ、そんなことないですよ」

 

「そうか?でも、熱でもあるんじゃないか?どれ」

 

そういって互いのおでこを触る。

やっぱり少し熱いか?

 

 

「だ、だだ大丈夫ですから。本題に入りましょう。わたし達の今後に関わるのでしょう?」

 

「ん?ああ、そうだな。すごく大事な話だ実はな」

 

「……(ごくり)」

 

「昨日俺が隣町に行った時のことなんだが――」

 

「…………はい?」

 

俺が話し出そうとした瞬間リニスはポカーンと間の抜けた表情をしていた。

どうかしたのだろうか?

 

 

「リニス?どうしたんだいったい」

 

「――はぁ……そうでしたね。貴方はそういう人でした」

 

「り、リニスさん?」

 

「いえ、ある筈のない期待をして、生娘の様に恥ずかしがっていた私が悪いんです」

 

どうやら知らぬ間にリニスの地雷を踏みぬいたらしい。戦闘時の勘の良さも、こういった場面ではものの役に立たなかった。

 

 

「なんか……すまん」

 

「それは理由が分かっていないのに謝っている人のそれですよ」

 

「ぐっ……」

 

図星だった。俺には何故リニスが不機嫌なのか分からないでいた。

 

 

 

そして場面は冒頭に戻る――

 

 

 

結局俺がリニスの地雷を踏んだ、ということぐらいしか分からなかった。

何が原因で爆発したのかも分からんが……

 

 

「降参だ……悪い、俺には分からんが気分を悪くさせたようですまなかった……」

 

「はぁ――貴方の誠意に免じて今はそれで勘弁しましょう。それと、以前から言ってるように、貴方はもっと女心を理解するように努めなさい。いいですね?」

 

「いや、そんなことを言われてもだな――」

 

「い・い・で・す・ね?」

 

「――はい……」

 

取り敢えず俺は女心関連でまた怒られたらしい。「女心」とはいったい……うごごご

かつて被検世界で戦った被検体の様になっていると、リニスに頭を小突かれ現実に戻された。

 

 

「それで。貴方の伝えたいという大事なことは何なのですか?」

 

「あ、ああ。昨日隣町にジュエルシード捜索に出たのは知ってるだろ?」

 

「ええ。やけに疲れていましたが、何かあったのですか?」

 

先程とは打って変わり、こちらを心配そうに見つめるリニス。

なんだかんだ言って優しいのだ、この使い魔は。

 

 

「実は俺達以外の捜索者と戦闘になった」

 

「何ですって!?怪我はないのですか?」

 

「大丈夫だ。かすり傷程度だよ。ただ、ジュエルシードは()()()()()()

 

「渡した……?それはいったいどういう」

 

ここからの内容が重要だ。

 

 

「リニス。俺が戦った捜索者の名前なんだがな。()()()()()()()()()()()という、()()()()()()()使()()()()だったんだ」

 

「噓――そんな……ことが……」

 

「そして()()()という名の使い魔を連れていた」

 

「あ――ああ……!」

 

リニスの反応を見るに、もう間違いないだろう。あの2人はリニスの前の教え子たちだ。

 

俺は彼女と出会ってからそれなりに長く過ごしているが、互いの過去に関しては干渉しないようにしていた。

どれだけ親しい間柄であっても、触れられたくない過去はあるだろうからな。

だから俺はフェイト達のことを知らなかったし、リニスは俺が過去に1度()()()()()()()ことも知らない。

 

それからどれくらいそうしていただろうか。リニスは頭を抱え顔を伏せていたが、次第に顔を上げ、こちらを向いた。

 

 

「あの2人の様子は……どうでしたか?」

 

「元気そうだったぞ。2人とも、魔導士と使い魔としていい腕をしていた」

 

「そうですか……それは良かったです」

 

リニスは安心したのか安堵の表情を浮かべていた。

その様子にこちらもホッとした。

 

 

「貴方は……あの子たちと戦ったのですか?」

 

「まあな……。あいつらもジュエルシードを集めてるらしくてな。それで奪い合いになったんだ」

 

「そうでしたか……でもジュエルシードを渡したというのは?」

 

「それなんだが、戦闘中にジュエルシードが暴走してな。一時休戦して共闘したんだ。それでフェイトが封印したんでくれてやったんだ」

 

「くれてやったって……ほんとにもう、貴方という人は」

 

言葉とは裏腹にリニスは笑顔だった。

この笑顔が見れたんなら、くれてやった甲斐があるというものだ。

 

 

「事情は分かりました。ですが貴方のことだから、それだけではないのですよね?確か、今後を決めると」

 

「ああ。実は今日、フェイト達が拠点としている場所に行ってきた」

 

「あの子達がいるのですか!?いったいどこに!!」

 

「落ち着けリニス!本来消えた筈のお前さんが出て行ってどうする?」

 

「それは……」

 

普段の彼女からは想像もできないくらい動揺していた。こうなることが大体予想できたたからな。何も言わず1人で会いに行って正解だった。

 

 

「なあ、リニス。お前さんはあの子達に会ったとして、どうするつもりなんだ?」

 

「それは……」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

「――っ!!」

 

我ながら嫌な聞き方だと思う。リニスは歯を食いしばりながら表情を歪めている。

その握り拳には力を籠めすぎたせいか血が滲んでいた。

 

 

「私……は……」

 

「……」

 

リニスはその言葉の続きを発することができなかった。その間も手からは血が流れ出ていた。

俺はそんな彼女の手を引き寄せ、両手で包み込んだ。

 

 

「サイフォン?」

 

「お前さんは優しいな。あの子達のことも大事な筈なのに、俺たちのことも気にかけてくれる。だから苦しんでる――そうだろ?」

 

「はい……」

 

「ほんと、俺なんかにゃ勿体ない使い魔だよ。――なあリニス、俺から提案があるんだ」

 

「提案……?」

 

見方によってはどっちつかずに見えるかもしれないが、俺が考える中での最良の策。

 

 

「リニス。俺達はなのはとフェイト。どっちの味方にもなるが、かといってどっちの敵にもならない。中立の立場になるんだ」

 

「中立……ですか?」

 

「ああ、そうだ。今まで通りなのは達は支援する。だが、フェイト達には危害を加えないんだ。そのための方便もある」

 

「ですが……貴方はそれでいいんですか?私の為になのはさん達を裏切るような真似を……」

 

「言ったろう?中立だって。別になのは達を裏切るわけじゃない。例え誰が何と言おうとも俺自身がなのは達の味方だと思ってる。だから大丈夫だ」

 

リニスを安心させるように言い、今も包み込んでる彼女の手に治癒魔法をかけ、その血を止めた。

 

 

「それにな、リニス。別に何もお前さんのためだけってわけじゃない」

 

「それはどういう……?」

 

「単純な話さ。俺自身があの2人を気に入ってる。だからあいつらのことも何とかしてやりたいって思ってるだけさ」

 

リニスはきょとんとした表情を浮かべていたが、やがてその表情には笑顔が戻ってきていた。

 

 

「貴方という人は……本当に……」

 

「漸く笑ったか。しけた面はお前さんにゃ似合わんよ――そんで?お前さんはどうする。俺の中立の立場になるって提案には乗るか?」

 

「ええ。私も――貴方の提案に乗り、中立の立場となりましょう」

 

「よし、決まりだな」

 

これで今後の大まかな方針は固まった。もう1つ気になることはあるが、それは後にしよう。

俺はリニスの手を包み込んでいた自分の手を元の位置に戻す。

リニスが名残惜しそうに見ていたが、まだ痛かったんだろうか?

 

そんなことを思っているとリニスの方から切り出してきた。

 

「コホン。それで中立の立場になるのはいいとして、なのはさん達にはなんとお話しするんですか?」

 

「それだが、明日なのは達と一緒にすずかの家のお茶会に招待されてるだろ?バスで一緒に行くからその時にでも話そうと思ってな。内容だが昨日暴走したジュエルシードとの戦闘で傷を受けて、暫く殆どの魔法が使えないってことにする。で、その時に他の捜索者にも襲われてたんで、リニスには俺の護衛兼アシストをしてもらうって感じだ」

 

「なるほど。それでフェイト達とは直接戦わず支援に徹するということですね」

 

「そういうことだ。フェイト達にも似た感じの内容を伝えて、俺が暫く戦闘できないのは伝わってるから変に思われたりはしないだろう。あとはリニス、お前さんのことだが――」

 

「あの子達の前には姿を見せない方がいい……ですよね」

 

「そうだ。話がややこしくなりそうなんでな。フェイト達もお前さんはもう消えてしまってると思ってるからな。なのは達にもそれとなく名前を出さないよう伝えておく」

 

あとはなのは達がうっかりリニスの名前を出さないことを祈るばかりだな

 

 

「大体こんなもんか。最後に1つ確認したいことがあるんだ」

 

「何でしょうか?」

 

「フェイト達の目的についてだ。あの子達はジュエルシードを集めてる。その理由を今日聞いてきたんだが……」

 

「何だったんですか?」

 

()()()()()()()()()だと言っていた」

 

「何ですって!?――プレシア……貴方という人はまだ……」

 

プレシア。恐らくそれがフェイトの母親の名前なのだろう。

そしてリニスの元の主。リニスの口ぶりからすると、以前から何かの研究を続けているみたいだが

 

 

「リニス。プレシアというのは」

 

「はい。プレシア・テスタロッサ――私の以前の主人(マスター)であり、フェイトの母親でもある大魔導士です」

 

「大魔導士ときたか。なるほど、お前さんが高性能な使い魔なわけが分かった気がするよ」

 

使い魔の性能は主の実力に左右される。そう考えるとリニス程の高性能な使い魔であれば、それを作ったプレシアの魔導士としての実力はかなりの物だろう。

 

 

「なあリニス。お前さんはプレシアの目的を知っているのか?」

 

「はい。知っています。ですが……」

 

彼女はそれを言っていいのか迷っているようだった。

ならそれを無理に聞き出すこともなかろう

 

 

「言いづらいんなら別に今じゃなくてもいいさ」

 

「よいのですか?」

 

「聞けるに越したことはないが、お前さんに無理させてまで聞こうとは思わんよ。だから、お前さんが言えるようになったら教えてくれ」

 

「すみません。ありがとうございます……」

 

「気にしなさんな」

 

これで基本方針は固まった。プレシアの目的もリニスが知ってるから、彼女の方から話してくれるのを待とう。

後はあの子達がぶつかり合う時に大怪我しなけりゃいいんだが……

 

明日はお茶会だし、のんびりできるかねぇ

 

 

サイフォンは淡い期待を抱いていたが、そのお茶会がまた波乱を呼ぶことをこの時は知る由も無かった。

 

 






次回はお茶会。ということは猫の回。ついにあの2人が邂逅

今更だけど本作は原作と劇場版が混ざっております
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