~サイフォンSide~
俺とユーノは現在バスに揺られて、月村家へと向かっていた。
今日はすずかにお茶会に誘われているのだ。
本来ならリニスも誘われていたんだが、道場の方で指導者が欠席して人数が足りなくなり、急遽仕事に行くことになったのだ。
そんなわけで今日は2人で向かっていた。
ちなみにユーノには昨日リニスと話した内容を一部伝えてある。主に俺が魔法を殆ど使えず、支援に徹することだ。
後はそれをなのはに伝えるだけ……と思っていたら、バスが止まり目的の人物が乗ってきた。
「サイフォン君、ユーノ君おはよー」
「2人ともおはよう」
「なのは、恭也。おはようさん」
「おはようございます」
お茶会組のなのはとおうちデートしに行く恭也だ。
なのははというと朝早くで空いているのにわざわざ俺の隣に座ってきた。
恭也は流石にユーノの隣に座ってはいなかったが。
「あれ?リニスさんは?」
「あー、それなんだが。今日仕事が入ってこれなくなっちまったんだ」
「そうなんだ……残念だね」
「まあお茶会は今日だけって訳じゃないだろうし、また今度これるといいな」
そして程なくしてバスが発車した。
とりあえず俺は先に念話でなのはに要件を伝えることにした。
『なのは。ちょっといいか?』
『ふえっ?どうしたのサイフォン君』
『ユーノにはもう話してあるんだが、一昨日の夜ジュエルシード捜索に出たんだ。その時にジュエルシードが暴走しちまってな。その時に暴走を鎮めるのにリンカーコアに負担をかけちまったから、暫く殆どの魔法が使えなくなったんだ』
『ええええええええええええ!?大丈夫なのそれ!?』
念話で音量を気にしない分なのはの声がもの凄く頭の中で響き渡った。
『今の声量で大丈夫じゃなくなったかもしれん……』
『あっ、ごめんなさい……』
『冗談だ。まあ身体は大丈夫だから心配するな』
『う、うん』
『それとそのジュエルシードなんだが、俺達以外にも探してるやつがいてな。そいつらに取られちまったんだ』
『そんな……』
『だからそいつらに遭遇したら気を付けるんだぞ』
『うん、わかった。サイフォン君も魔法が使えないんなら気を付けてね』
なのはは心配そうにこちらを見上げていたので、安心させるべく頭を撫でてやった。
『大丈夫だ。魔法が使えなくても俺はある程度戦えるからな。それとユーノにも言ったんだが、その襲撃者達の前ではリニスの名前は出さないようにな』
『ふえっ?どうして?』
『俺が今、魔法が殆ど使えない以上はリニスが俺達の切り札になる。いざという時の為に相手に手の内を隠しておくんだ』
『そっか。うん、わかったよ』
『頼んだぞ』
これで打てる手は打った。あとは2人がうっかり喋らないように祈るばかりだ。
その後はバスに揺られながら、他愛もない話をしていると月村家付近のバス停に止まった。
そのまま4人で月村家の前まで歩いて行くと、月村家の豪邸が見えてきた。
ユーノなんかはその大きさに圧倒されていた。
「いつ見てもでけぇなー」
「ユーノ君は初めてだよね」
「う、うん。こんなにおっきいんだね」
「お前たち、置いてくぞー」
「「「はーい(うーい)」」」
――――ピンポーン
インターホンを鳴らして暫くすると、月村家のメイド長であるノエルさんが笑顔で出迎えてくれた。
「恭也様、なのはお嬢様、サイフォン様、ユーノ様。いらっしゃいませ」
「ああ。お招きに預かったよ」
「こんにちは~」
「ノエルさん。こんにちは」
「こ、こんにちは」
「どうぞ、こちらです」
俺達はノエルさんの案内で屋敷内を進んで行くと、やがてすずかとアリサ、忍さんがお茶をしてる部屋にだどり着いた。そこにはファリンも控えており、周りには猫が沢山いた。
そしてすずかがこちらに気付くと椅子から立ち上がっていた。
「あっ。なのはちゃん、恭也さん。サイフォンさんにユーノ君も!こんにちは!」
「すずかちゃん!こんにちは!」
「よっ」
「ど、どうも」
俺達が挨拶を交わしていると、恭也と忍さんも早くもイチャイチャしていた。
末永く爆発するといい。
「お茶をご用意致しましょう。何がよろしいですか?」
「任せるよ」
「なのはお嬢様達は?」
「あたしも、お任せします」
「俺は紅茶で」
「僕もお任せでお願いします」
「かしこまりました。ファリン」
「はいっ、了解ですお姉さま」
そしてノエルさんとファリンは一礼して退室すると、いつのまにか恭也達もいなくなっていた。
俺達が席に着くと、アリサは恭也達が去った方向を見て呟いた。
「相変わらず、すずかのお姉ちゃんとなのはのお兄ちゃんはラブラブだよね~」
「あはは~、うん!お姉ちゃん、高校の頃に恭也さんと知り合ってからずっと幸せそうだよ」
「うちのお兄ちゃんは昔と比べて優しくなったよ。よく笑うようになったかも」
「「へ~」」
俺とアリサは興味深げに声をあげていた。
あの恭也がねぇ。高校の頃っていうと、大体俺がこの世界に来たくらいか。
あいつ色恋沙汰については何も話さなかったからなぁ
「サイフォンさんはそういったことないんですか?」
「んぁ?俺?」
「そういえばサイフォン君のそういった話聞いたことないかも」
「どうなのよー。教えなさいよ!」
何だって俺に飛び火してんだ?恨むぞ恭也……
同時刻、忍の部屋で恭也は盛大にくしゃみをしていたとかなんとか
「残念ながらご期待には添えんな。浮いた話なんざこれっぽっちもねえよ」
「そうなんですね……よかった」
「最後が聞き取れなかったが、なんか言ったか?すずか」
「いえいえ!なんでもないです!」
「そうか?」
「まあでもなんか納得よね。あんたって偏屈な感じだし」
「いつも素直になれないお嬢様に比べれば遥かに良物件だと思うがね」
アリサは物凄い表情でこっちを向いてきたので顔をそらした。
「それはいったいどこの誰のことなのかしらね?」
「そう言うってことは、誰のことかちゃんと気付いてるんじゃないか。えらいぞ~」
「全っ然嬉しくないわよ!というか誰が素直になれないってのよ!」
「ア、アリサちゃん落ち着いて!」
「サイフォン君もあんまりアリサちゃんをからかわないの!」
「へいへい」
「あ、あははは~」
「は~い、お待たせしました!いちごミルクティーと、紅茶と、クリームチーズクッキーでーす!」
すずかとなのはがアリサを宥めていると、ファリンがお茶を持ってきたのだが――
「ああっ、アイン駄目だよ!」
「うわっとっとっとっと!?」
「ファリンさん!?」
すずかの買ってる子猫たちがじゃれあって、ファリンの足元で追いかけっこを始めたのだ。その結果ファリンは子猫たちを踏まないように、くるくるとその場で回ってしまい
「め、目が~……」
「ちっ!」
「ファリン危ない!」
目を回したファリンが運んできたお茶を持ったまま、倒れようとしていた。
俺は彼女が態勢を崩す前に急いで彼女の元へ行き、片腕でお茶とお菓子の乗ったトレイを支え、もう片方の腕でファリンの身体を支えた。
一先ずお茶もファリンも無事で何とかなったか……
そして目を回していたファリンは正気に戻り、状況を確認すると泣きそうな顔になって
「ハッ!――はわあああああああ!?サイフォンさんごめんなさあああああああああい!!!」
「うるさっ!?ファリン俺は大丈夫だから落ち着け!」
俺は泣きそうになっていたファリンを宥めていたが、他の皆はその様子を見て苦笑していた。
ファリンはほんとになのは達よりも年上なのか、甚だ疑問だった。
ちなみにこの時のファリンの悲鳴は、恭也達のいる部屋まで響いたとかなんとか。
その後、俺達は中庭に席を移してファリンの持ってきたクッキーとお茶を味わっていた。
たまにはこうやって外でお茶をするのも悪くないな。
「しっかし、すずかんちは相変わらず猫天国よね~」
「うんうん!子猫たち、可愛いよね~」
「うん!」
女性陣は猫トークに花を咲かせていたので、俺はその様子を紅茶を見ながら眺めていた。
そこでふと思ったのが
「ユーノ。お前さん猫が苦手なのか?」
「えっと……ちょっとだけ」
今も子猫に群がられているユーノの表情はちょっと引きつっていた。
変身魔法でフェレットに変身してたし、過去に何かあったのかもしれないなこりゃ。
そして各々が猫と戯れたり、会話を楽しんだりと、お茶会を楽しんでる時に
(この反応!?こんなところでか!!)
突如としてこの近辺。すずかの屋敷の雑木が生えている方に魔力の反応が見られたのだ。
『サイフォンさん!なのは!』
『分かってる!』
『これ……直ぐ近くだね』
『サイフォンさん。どうします?』
『そうだな……』
今この場にはすずかとアリサもいる。自然な形で席を離れなければ。
その為には……1つ試してみるとするか。
俺は2人に作戦の概要を説明し実行に移した。
「あっネコちゃん!」
「ん?どうしたのよなのは?」
「うん、ネコちゃんがあっちの林の方に行っちゃって」
「ほんとだ」
「わたしちょっと心配だから見てくるね」
「僕もいくよ!」
そう言ってなのはとユーノは席を立って行った。
その場に残ったのは俺とすずかとアリサの3人だ。
「すずかんちだから大丈夫だと思うのに。2人とも心配性ね」
「それがあいつらの良いところでもあるだろ?」
「ふふっ。そうですね」
作戦は一先ずうまくいった。これで2人がうまいこと回収できればいいんだが……
(フェイトは来るんだろうか……?)
頭をよぎったのは黒衣の少女……フェイトのことだ。あの2人が出会えば必然的に戦うことになるだろう。
(どっちも怪我しないといいんだがねぇ)
サイフォンの不安をよそに、戦いは刻一刻と始まろうとしていた。
~なのはSide~
わたしとユーノ君は今、サイフォン君の作った
本命は魔力反応のあった場所。
サイフォン君の作戦でわたし達2人は魔力反応のあった方へ向かい、ジュエルシードを回収する。
その間にサイフォン君には、すずかちゃんとアリサちゃんの相手をしてもらい、苦戦して時間がかかるようなら迎えに来てもらうことになっている。
(サイフォン君は今魔法が殆ど使えないし、わたし達で何とかしなきゃ!)
2人で付近を捜索していると近くから一際大きな反応があった。
ジュエルシードが発動したのかもしれない!
「ユーノ君!」
「分かった!封時結界!」
そしてユーノ君が結界を張り終わるころには、ジュエルシードの異相対らしきものが姿を現していた。
「なにあれ!?縞々のネコ……!?」
「多分、ジュエルシードを猫が発動させちゃったんだ!」
ライオンよりもずっとずっと大きい……それに、すごく強そう――っ!
わたしとユーノ君はすぐに戦闘態勢に入った。
「ユーノ君!フォローをお願い!」
「わかった!任せてなのは!」
ユーノ君は結界魔導士だから今回はわたしが前に出ないと!
「レイジングハート!セェーーットアーーップ!!」
《Stand by Ready. Set Up》
わたしはバリアジャケットを身に纏いレイジングハートをカノンモードに切り替えた。
すると、異相対もわたし達を見つけて飛びかかってきた。
でも――
「ラウンドガーダー!!」
――――グアアア!?
ユーノ君の結界が攻撃を阻んでくれた。その間に……!
「シュー―ート!!」
わたしは砲撃を発射したけど、相手は元がネコだから動きが早くてよけられちゃった
「動きが速い……あの速さを何とかしないと」
「ユーノ君。あれの動きって止められる?」
「追い込んでくれたらいけるよ!」
「わかった!私に任せて!」
作戦は決まり、わたしは空中に飛び上がると複数のスフィアを展開した。
《Divine Shooter》
「ディバインシューター!シュー―ート!!」
複数のスフィアは異相対を追尾し、迫っていった。
だが異相対は木々を蹴り、俊敏な動きでスフィアの攻撃を避けていた。
(やっぱり動きが速い……それなら!)
わたしは追尾させていたスフィアのうち、1個を待機させて残りのスフィアの操作に集中した。
途中ユーノ君目掛けて異相対が攻撃したりしてたけど、流石ユーノ君。全部防いでいた。
わたしはその隙を狙ってスフィアを動かすけど、避けられてしまう。でもその位置は狙い通り!
「そこ!!」
――――グオオオオオオオ!?
今まで待機させていたスフィアを、さっきの攻撃を避けた場所にいた異相対に当てたのだ。
「ユーノ君!」
「了解!チェーンバインド!!」
――――ガアアアアアアアアア!?
異相対はなのはの攻撃を受け、ひるんだところをユーノの鎖状のバインドで縛られていた。
これならいける……!
「レイジングハート!」
《All right. Divine Buster》
「ディバイーーーン!バスター――――!!」
わたしは得意の砲撃魔法を撃ち込んだ。
桜色の魔力光は異相対を飲み込み、派手な爆発を起こした。
バインドで動けなかった異相対には直撃してたみたいだけど……
「やった……かな?」
「どうか――なのは!まだだ!!」
「ふえっ!?」
ディバインバスターの衝撃で発生した砂埃が消えると、そこには翼を生やした異相対がいた。
「は、羽が生えてるーーー!?」
「いけない!」
異相対はバインドを振りほどくと空に逃げ出した。
あんなのが町の外に行ったりしたら大変!!
わたしとユーノ君は急いで追いかけようとすると、異相対の目の前に
「はあ!!」
――――グギャ!?
現れた人は手に持ったデバイスの様な物で、異相対の羽を切り落していた。
(女の子……?)
なのはと同じくらいの年齢で、金髪ツインテールの黒衣の少女が現れたのだ。
わたしはユーノ君と一緒に呆然とそれを見ていたけど、あの子の切った羽が地面に落ちた途端動き出しているのに気付いた。
「危ない!」
「――っ!」
動き出した翼は小さな生き物に分裂し、あの子に襲い掛かっていた。でもわたしが声をかけるよりも早くにあの子は反応してた。
黒衣の少女は雷を帯びたバリアを展開しており、それに触れた羽だった生物は霧散していた。
「なのは!こっちは抑えてあるから今のうちに!」
「ユーノ君!わかった!」
声のする方を向くといつの間にか、ユーノ君が地面に落ちた異相対をバインドで固定していた。
「ジュエルシード!封印!」
《sealing》
わたしはそのまま固定されている異相対を封印しようとすると、異相対の上半身が分離して逃げ出した。
「えっ、えええええええ!?」
「しまった!」
わたし達は慌てて追いかけようとしたけど、それより早くにさっきの女の子が近付いていた。
《Scythe form》
「ジュエルシード――封印!!」
――――グガアアアアアアアアアアアアアア!?
さっきの子はデバイスを鎌みたいにして、異相対を一撃で倒していた。
凄い威力……
黒衣の少女は異相対の消滅を確認すると、なのは達の方に視線を向けていた。
「あ、あの!」
「…………」
そしてなのはが声をかけると同時に少女は自身の周りにスフィアを展開した。
「――っ!」
「なのは、気を付けて!」
それを見てなのはとユーノは構えを取った。
ここにまた、新たな戦いが始まろうとしていた。
いよいよこの2人の激突。
ユーノもいるけど、結果は如何に