光を支えるもの   作:黒の眷属

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限界突破

~サイフォンSide~

 

 

 

 

状況は最悪だった。

 

今リニスと俺は、黒ずくめ野郎の結界に閉じ込められている。

その状況の中、なのはとフェイト達がジュエルシードを巡って争い始めた。

 

黒ずくめが言うには、もうじきジュエルシードが暴走するだろうということ。

 

ブラフかもしれないが、あの2人の強大な魔力に中てられたジュエルシードが暴走する可能性は否めなかった。

 

そして俺達はなのは達の元に向かうべく結界の破壊を試みたのだが……

 

 

「ヒャハハハハハハハ!残念だったなぁ!その程度じゃあ壊れねえよ」

 

「くそっ!」

 

「そんな……」

 

 

リニスのブーストもかけ、前回結界を破壊した時以上の力を籠め、更には1段上の技を放ってなお結界は壊れなかった。

 

侍は俺が扱えるジョブの中でもかなり攻撃力の高いジョブだ。その一撃を超えるとなると

 

 

(リミットブレイクを使うしかない……か)

 

 

――リミットブレイク

 

それは俺の元居た世界にあった力――デュナミス。<想いが動かす力>と呼ばれたそれにより、自らの限界を超えた力を発揮すること。

だが、この世界にはエーテルと同様にデュナミスを感じることはできなかった。

 

そこで俺はデバイスをリニスに作ってもらった際に、疑似的にリミットブレイクを再現する機能を組み込んでもらった。

俺自身の想い――感情にリンクして、デバイスの出力を引き上げるものだ。

 

しかし、これには欠点も存在した。使用者とデバイスへの負担が凄まじいのだ。

文字通り限界を超えるのだからその負荷は計り知れない。

だからリニスにも、滅多なことが無ければ使わないよう釘を刺されている。

だが――

 

 

(今使わなければこの結界を壊すことはできない――それなら!)

 

俺はリミットブレイクを打つべく、カートリッジをリロードしてシュッツライゼンデに指示を出そうとしたところ、黒ずくめが再び映像を見せつけてきた。

 

 

「おーおー、見事に暴走してら。見えるかぁ?なあ」

 

「なにっ!?」

 

「フェイト!なのはさん!」

 

やつの言った通り暴走が始まっていた。2人の魔力が直接ジュエルシードに激突したせいだろう。大きく光を放って2人を吹き飛ばしていた。

 

もう時間がない。そう思いデバイスを構えようとしたが、()()()()()()()()()()

 

 

「あれを封印しようとするとは大したガキだなおい。――だが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

映し出された映像の中で、ジュエルシードを封印しようとしているフェイトの姿を捉えた。

そして奴の言葉の意味を理解した瞬間、俺の中の魔力とエーテルが爆発的に高まり、()()()()()()

 

 

 

「きさまあああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」

 

「ほぉ……」

 

「サ、サイフォン!?」

 

俺はリーパーにジョブチェンジし、自らの()()()を呼び出した。

 

それは漆黒の外套を着た、顔のない骸骨の様であった。

その手には鋭い爪が付いており、その姿はこの世の物とは思えなかった。

 

 

「アヴァタ―!ユニゾンイン!――レムールシュラウド!!!!」

 

《Enshroud》

 

サイフォンはアヴァターとユニゾン――融合することで、その姿を禍々しいものへと変えた。リーパー時の武器である鎌を持った姿は、正に死神そのものだった。

 

 

「こいつぁ期待できそうだ。じゃあ、精々頑張って壊してみせな」

 

「まちなさい!!」

 

リニスはすかさずバインドで捕縛しようとしたが、黒ずくめは一瞬でその姿を消していた。

 

 

「うああああああああああああああああああああ!!」

 

「サイフォン!大丈夫ですか!サイフォン!!」

 

俺は溢れ出る奴への怒りを力に変え、結界の終点と思われる場所へと飛び上がった。

 

 

「シュッツライゼンデ!リミットブレイク!!!」

 

《Explosion! Limit Break!》

 

シュッツライゼンデはカートリッジを6発全てロードし、明らかに許容量を超えた魔力を得た。

 

サイフォン自身の身体も過剰な力により負荷がかかり、デバイスからもミシミシと悲鳴のような音が聞こえている。

 

 

(身体が軋みを上げてる……シュッツライゼンデにも無理させちまってる。――だが、この一撃で吹き飛ばす!!)

 

 

 

 

 

「食らいやがれええええええええええええええええええええ!!!」

 

 

 

《The End!》

 

 

 

 

デバイスへと集まった魔力とエーテルは、巨大な鎌の切っ先の様になっていた。

そしてサイフォンは本来なら3撃行う攻撃を1撃に集束させ結界へと叩きつけた。

すると――

 

 

 

 

――――パリーーーーン

 

 

 

先程までビクともしなかった結界は、ガラスの割れるような音と共にあっけなく砕け散った。

 

 

「はあっ……はあっ……はあっ……かはっ!!」

 

「サイフォン!大丈夫ですか!!無茶し過ぎです!」

 

身体へと掛かった負荷により、血を吐いてしまうがリニスが即座に治癒魔法をかけてくれた。

だが、今はそんな場合じゃない!

 

俺は即座に転移魔法を展開しフェイトの付近に転移しようとしたが

 

 

「何考えてるんです貴方は!死んでしまいますよ!!」

 

リニスが瞳に涙を浮かべながらこちらの服を掴んで止めようとしたが

 

――すまん

 

一言だけ残し、俺は彼女の手を振り払い転移した。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

転移した先には、今もなお封印を続けてるフェイトの姿があった。

既に奴が何かしかけたのか、辺りは酷い有様だった。

 

俺は身体への負担を少しでも減らすためにユニゾンを解いた。デバイスを見たが先程の負荷でひびが入っていたので、これでは直接封印しかないと結論を出してフェイトの元へ全力で向かった。

途中魔力の塊の光柱や、荒れ狂う魔力の嵐に呑まれながらも突き進んでいった。

 

 

「フェイトオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」

 

「えっ……?」

 

ジュエルシードは今にも彼女の手から零れ落ちようとしていた。

フェイトの側についた俺はその隙間に自分の手を捻じ込み、ジュエルシードを握りしめた。

 

暴走したジュエルシードは溢れる魔力を辺りにまき散らしていた。

俺は両手でジュエルシードを包み込むと、自らの魔力とエーテルを全開にし、封印を行おうとして足元にベルカ式の魔法陣を展開した。

 

だが――

 

 

「くそっ!――止まらねえ……!!」

 

僅かに魔力が足りなかった。先程の結界を破壊した際に大量に消費したのもあるが、もう既に身体が限界だった。

 

 

(何か――何か方法は無いのか!!)

 

焦る思考の中、考え付く案が全て駄目で諦めが頭の中をよぎったその時だった。

フェイトがこちらの手を包み込んだのだ。

 

 

「フェイト!?なにを!」

 

「わたしも――わたしも手伝う!!だから封印を!!」

 

フェイトも自身の魔法陣を展開し、封印魔法を行使した。

僅かに足りていなかった魔力が足りる――これならいける!

 

俺とフェイトは互いに魔力を込め、ジュエルシードの暴走を抑え込もうとした。

 

 

 

「止まりやがれええええええええ!!」

 

 

 

 

 

「止まれえええええええええええ!!」

 

 

 

 

 

 

 

――――キイーーーーーーン

 

 

 

 

 

 

耳鳴りのような音が鳴り響いたかと思うと、ジュエルシードの暴走は治まり封印が成功していた。

 

 

「はあっ……はあっ……無事かフェイト……はあっ」

 

「はあっ……はあっ……大丈夫。ありがとう、サイフォン……」

 

その様子は全く大丈夫そうには見えなかったが、最悪の事態は避けられたようだ。

そして俺はなのは達には見えないように、フェイトにジュエルシードを握らせた。

 

 

「これっ……でも!!」

 

「お前さんが……封印したもんだ……持って……け……」

 

「サイフォン!?――っ!」

 

封印が成功して気が抜けたのか、俺は地面に倒れこんだ。意識も朦朧としていた。

最後に見えたのは、俺を助け起こそうとしながらも自分も倒れてしまったフェイトと、そんな彼女に駆け付けたアルフの姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う、うーん。ここは……」

 

目を覚ますと知らないベッドの上だった。辺りを見回すと全身に筋肉痛を激しくしたような痛みが入ると共に、病院にいることが分かった。

 

あれからどれくらい時間が経ったんだ?

そう思い部屋にある日付の見れる時計を見ると、既に3日が経過していた。

 

身体に痛みは残るが記憶もハッキリしており、リンカ―コアを確認しても多少収縮してるくらいだった。

 

俺は目を覚ましたことを伝えるため、ナースコールを押そうとすると誰かが入室してきた。

 

するとそこにいたのはリニスだった。

リニスはお見舞いで持ってきたであろう果物のカゴを落とし、呆然とした様子でこちらを見ていた。

 

 

「サイフォン……?」

 

「よ、よお。おはようさん」

 

俺はどこか決まりが悪く、いつものような挨拶をした。

リニスは俺の方に駆け足で来ると身体を思いっきり抱きしめてきた。

 

 

「ああ、マスター!!よくぞご無事で!!!」

 

「いっででででででで!?リニス!いてえ!いてえから!!」

 

加減無しで思いっきりハグされたので、全身が悲鳴を上げていた。

俺は彼女を引き剥がそうとしたが

 

 

「良かった……本当に……本当に良かった」

 

涙を流し言葉を紡ぐ彼女様子を見て、その気が失せてしまった。それだけ心配させてしまったのだろう。

 

 

「悪かったな、心配かけて」

 

「本当です……私が止めても勝手に行ってしまうし、現場に着いたらボロボロの状態で倒れていて……私がどれだけ心配したと思ってるんですか!!」

 

「……すまん」

 

俺はそのままの態勢で、彼女が泣き止むまでその背中を撫でていた。

 

 

「落ち着いたか?」

 

「ええ。お見苦しいところをお見せしました」

 

リニスが落ち着いたところを見計らって、俺は現状を確認することにした。

 

まず俺は山に登っている最中に崖から転落してしまい、入院したことになっている。

本当のことは言えないからな。仕方ないだろう。

傷の方はリニスがお見舞いがてら少しずつ、治癒魔法をかけてくれていたらしい。

それでも目を覚ますのに3日もかかったあたり、酷かったのだろう。

 

父上、母上だけでなく、すずかやアリサ、高町家やはやても相当心配していたそうな。何だか申し訳ないな……

 

 

次にデバイス。シュッツライゼンデもかなり負担をかけてしまっていたからな。リニスによれば、もう4日もすれば修理と補強が終わるそうだ。

リミットブレイクに少しでも耐えられるようにするための補強だそうだ。

 

そして最後に、フェイトとなのは達のことだ。

 

フェイトはなのは達が見た限りだと、俺が倒れた後にフェイト自身も倒れ、アルフに抱えられながらその場を去ったそうな。

当然ながらジュエルシードは無かったらしい。

 

 

なのはの方はレイジングハートにひびが入っていたため、同じくリニスに修理してもらっていた。自己修復機能もあったので意外と早くに済んだらしい。

 

ユーノと一緒にあの後もジュエルシード捜索を続けてるらしいが、今のところ新しいものは見つかってないそうだ。

リニスは俺の様子を見る為に捜索を休んでいた。

 

 

とりあえず大まかな現状は把握できた。あとは

 

 

「いつ退院するかだな」

 

「外傷はもう殆ど残ってませんからね。貴方の場合は内部ダメージの方が酷かったですから」

 

「そうか。今も酷い筋肉痛みたいな感じがするからなぁ。もう2、3日程安静にしてから退院するか」

 

「そうしましょうか」

 

俺達はその後、今後の動きについて打ち合わせを行っていった。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

~フェイトSide~

 

 

 

 

「お土産って……お菓子ぃ?そういうの……あの人は喜ぶかな?」

 

「分からないけど……こういうのは気持ちだから」

 

わたしの手には母さんへのお土産が握られていた。

 

前回のジュエルシードの暴走から数日。バルディッシュの自動修復も完了し、怪我の癒えたわたしは、途中経過の報告も兼ねて母さんの元へ向かおうとしていた。

 

 

ジュエルシードを3()()()集めたから誉めてくれるといいな……

 

でもあの人は……サイフォンは大丈夫かな……?

 

思うのはジュエルシードを2つも譲り、ピンチの時にいつも守ってくれたあの人のこと。

ジュエルシードが暴走した時も、傷つくのも顧みないでわたしの元に駆け付けてくれた。

そんな彼は暴走したジュエルシードを封印するために倒れてしまった。

あれからどうなってしまったのか、それだけが気がかりだった。

 

 

「フェイト、あいつならきっと大丈夫だよ!あんだけ強かったんだ、休んだらまた元気になってるよ!」

 

「うん……そうだね。そうだといいな……」

 

アルフには精神リンクで感情が伝わっちゃうもんね……あんまり心配かけないようにしないと。

 

そしてわたしは次元転移を行うために魔法陣を展開した。

 

 

「次元転移……目標地点……時の庭園」

 

 

 

わたしとアルフは時の庭園に着くと一旦分かれて、わたしは母さんの部屋へと行った。

 

 

「母さん、ただいま帰りました」

 

「おかえりなさいフェイト。ジュエルシードを集めてきたと聞いたけど?」

 

「はい。これです」

 

フェイトは集めてきたジュエルシード3つを母親、プレシア・テスタロッサへと渡していた。

 

 

「確かにジュエルシード……間違いないわ」

 

「はい……母さん……」

 

「よく頑張ったわって……褒めてあげたいところだけど……!」

 

語気を強め、プレシアは立ち上がるとフェイトに詰め寄った。

その様子にフェイトの表情には戸惑いと恐怖の色が浮かんでいた。

 

ちゃんと集めてきたのにどうしてと。

 

 

「私は貴方に――なんて伝えた?」

 

「あ……あの……」

 

「21個のジュエルシード――全部を集めてくるようにって言ったわよね?」

 

「……っ!」

 

ああ……これはわたしが悪いんだ……母さんの期待に応えられなかったわたしが……

 

 

「あれは母さんの研究にどうしても必要な物なの!なのにこんなに時間をかけて()()()3()()

――ん?それは?」

 

プレシアはフェイトの手にあったケーキの入った箱に気付いた。

それはフェイトが大好きな母親の為に買ったものだった。

 

 

「あの……母さんに」

 

「――っ!!」

 

「きゃああ!?」

 

プレシアは表情を強張らせ、フェイトの手にあったケーキを叩き落とした。

 

そんな……どうして……?

 

 

「そんなことをやってる暇があったら、言われたことをおやりなさい!!」

 

「ごめんなさい……」

 

「残念だわフェイト――私は貴方を叱らないといけないわ」

 

「……はい……っ!」

 

プレシアは自身のデバイスを鞭に変形させフェイトを睨みつけた。

フェイトは目をつむりこの後来る痛みに我慢するしかなかった。

 

そして部屋の中では何度も鞭が振るわれる音と、フェイトの悲鳴が響き渡った。

 

 

「なんで……なんでだよ!ちゃんと言われたものを持ってきたじゃないかよ!」

 

部屋の前ではアルフがその仕打ちに対して声を漏らしていたが、その声は誰にも届くことはなかった。

 

 

何度も……何度も鞭が叩かれる音が響き、やがてそれが止むとわたしは地面にたおれていた。

 

 

「はあ……はあ……はあ……はあ……」

 

「ジュエルシードは――母さんの夢を叶えるためにどうしても必要なの」

 

「はい……」

 

「母さんの期待を裏切らないでちょうだい」

 

「はい……母さん……」

 

プレシアは倒れたフェイトには目もくれずに、部屋を去っていった。

プレシアの姿が去り、体を起こしたフェイトの瞳には崩れ落ちたケーキが悲し気に映っていた。

 

 

 

 










プレシアパートは何度見てもつらい。フェイトを幸せにし隊
そして出番あるかもとかぬかした時空管理局。ありませんでした(おい

次回は確実に出番あります。執務官相手にどう出るのか
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