~サイフォンSide~
「ジュエルシードの性質……ですか?」
「ああそうだ」
俺とリニス、それになのはとユーノのいつもの面々はジュエルシードの反応を待っている間、食堂で話をしていた。
そこで俺は発掘した張本人であるユーノにジュエルシードのことを訪ねていた。
ユーノがこの
散らばったという割には海鳴市近辺にありすぎる気がしたのだ。
落ちてきた場所がたまたま海鳴市の真上で、そこから散らばったというなら分かるがそこまで都合がいいだろうか?と思い、そこで尋ねてみたのだ
「ジュエルシードは文献では使用者の願いを叶える宝石と言われています。そしてリンディさん達が言っていたように、次元干渉型のエネルギー結晶体で、魔力を込めるとそれを媒体に次元震を起こすこともある代物です」
「起こすこともあるってことは確実性のあることじゃないんだな?」
「ええ。前に一族の人に聞いた内容と僕の推論になるんだけど、多分ジュエルシードは込められた魔力を使って使用者の願いを叶えるんじゃないかと。そして、魔力を込める時にその許容量を超えると次元震が起きるんじゃないかなって」
「なるほどな」
その推測が正しいとなると、なのはとフェイトが2人の魔力を注いだだけで次元震なんていう災害が起きるあたり、ロストロギアなのも納得がいく。
「それとジュエルシードは数を集めて使うと効力も高くなるんじゃないかと思ってます。複数集まって暴走したら次元断層が発生するかもしれないって言ってたけど、正しく使うことができれば願いを叶える力も強くなるんじゃないかと僕は思ってます」
「そうか。ちなみにジュエルシードはなんか互いに引き寄せあう性質は合ったりするのか?」
「似たような性質はあると思います。ただ、ジュエルシードみたいなエネルギー結晶体は下手をするとその性質が悪さをして融合暴走してしまう危険性がありますね」
「わかった。ありがとなユーノ。流石にこの手の分野は詳しいな」
となると、封印されてないジュエルシードは一か所に集まりつつあるのかもしれないな。
そうなるとフェイト達と出会うのもそう遠くないのかもな。
俺達がアースラに来てからはや十日。俺達がジュエルシードを3つ集めたのに対し、フェイト達が集めたのは2つ。
上手いこと管理局の探知に引っかからないようにやってるようだ。
これで残りのジュエルシードは7つ。早いこと見つかるといいんだがな……
俺は今食堂で1人コーヒーを飲んでいた。アースラでの生活は特に不便はなく、自己紹介の時に感じた居心地の悪さも割と早くに消えた。
まあ俺が厨房に立つようになったのがきっかけだな。
ジュエルシードの反応を待ってる間に、久しぶりになのはに料理を教えていたのを見たリンディさんが俺の料理を食べてみたいと言ったんで振舞ったら、厨房に立ってみないかと言われたのだ。
まあ料理は好きだから承諾して、それから厨房の手伝いをしていたらいつの間にか艦の人との壁みたいなものは消えていた。
いわゆる胃袋を掴んだ的な?
こちらとしても、美味そうに飯を食ってくれるのは嬉しいからいいんだがね
他にはクロノとの仲は最初に比べればマシになった。意外にも向こうから戦闘の訓練に付き合ってくれ、と誘いを受けたんでそれから時間を見ては模擬戦なんかをやってる。
クロノはバインドを主体とした戦闘が上手かった。だがそれに頼りすぎるきらいがあり、俺みたいに力任せにバインドを引きちぎる様な、バインドが効果的ではない相手は不得手だったようだ。
そもそもそんな相手自体が珍しいというのもあるが。
今のところ黒星はないが、現役執務官だけあって毎度相手をするのは骨が折れた。
近いうちにカートリッジも使わされるだろう。
なのはともたまにクロノとの模擬戦に混ざったり今まで通り魔法を教えたりと、割と普段通りに過ごしていた。
(このまま何事もなく、残りを全部回収出来たらいいんだがなぁ)
そう思い、残っているコーヒーを啜ろうとしたら、突如として警報が鳴り響いた。
「エマージェンシー!捜査空域の海上にて、大型の魔力反応を感知!」
「おいおいマジかよ!」
俺はコーヒーを飲み干すと急いでブリッジに向かった。
途中でなのは達と合流し、ブリッジに向かうとそこには――
「「「フェイト!?(ちゃん!?)」」」
無理やりジュエルシードを7つ一気に発動させて、竜巻が出て荒れ狂う海上でジュエルシードを封印しようとしているフェイトの姿があった。
あんな無理やり発動させやがって!
それに封印までしようとして……あんなの幾らフェイトの魔力量でも無理がある……!!
「あの!わたし急いで現場に!」
「その必要はない」
「え……」
「放っておけばあの子も疲れ果てる。その時に保護すれば余計な抵抗も受けない。確保の準備を!」
「了解」
クロノは容赦のない一言でなのはの発言を切り捨てた。
それによって場は凍り付き誰もが動けないでいた……
ある一人の男を除いて
~フェイトSide~
「アルカス・クルタス・エイギアス……煌めきたる天神よ、今導きのもと降り来たれ。バルエル・ザルエル・プラウゼル」
言葉が紡がれる度に上空の魔法陣は広がり、辺りには雷が降り注ぐ。
フェイトはジュエルシードが複数沈んでいる海域の上にいた。
そして今まさにジュエルシードを一気に発動させるために、海に向かって魔力流を撃ち込もうとしていた。
「撃つは雷、響くは轟雷。アルカス・クルタス・エイギアス」
詠唱が終わると、わたしはジュエルシードがあると思われる海に向かって巨大な魔力流を撃ち込んだ。
「はああああああああああああ!!」
海にぶつけられた魔力は派手な爆発音を響かせてジュエルシードを全て発動させていた。
そして発動したジュエルシードの魔力は、荒れ狂う竜巻となってわたし達に襲い掛かってきた。
「いくよバルディッシュ、頑張ろう」
《Yes sir》
わたしはアルフに結界とサポートをお願いして、ジュエルシードを封印するために竜巻に向かって行った。
竜巻はまるで意志を持っているかのように襲い掛かってきた。竜巻はそれ自体が魔力の塊のようで、わたしの魔法を弾きバルディッシュの鎌も寄せ付けなかった。
わたしは次第にボロボロになっていった。
最初に放った巨大な魔力流のせいで、魔力はもう殆ど残ってなかったし、荒れ狂う魔力の竜巻に襲われて体力も限界に近かった。
そして集中力が欠いていたせいで、2つの竜巻が背後に迫っているのに気付くのが遅れた。
「しまっ――」
言葉を発するよりも早く、わたしは2本の竜巻によって海面目掛けて叩き落とされた。
そのまま海面に叩きつけられ、海中に沈められると思ったその時――
「無事か!フェイト!」
「えっ……?」
会いたかった人が……サイフォン君が落下していたわたしを抱きとめてくれた。
「サイフォン……?」
「こんなにボロボロになって、無茶しやがって……心配する方の身にもなってみろ」
「ほんとに……ほんとにサイフォンなの?」
信じられなかった。管理局と一緒にいて……わたし達の敵になってしまったと思っていたサイフォンが助けに来てくれた。
サイフォンはわたしを下ろすと頭を撫でてくれた。わたしはまたサイフォンに撫でてもらえたのが嬉しかった。もうそんなことは無いと思っていたから……
「ああ、本物だ。寧ろ偽物がいたらぶっ飛ばすから教えて欲しいもんだ」
「ふふっ……」
肩を竦めて軽口を叩くサイフォンを見てわたしは確信した。この人は本物だと
そして気付けばわたしはサイフォンに抱き着いていた。
「フェイト?」
「ありがとう……いつもわたしなんかを助けに来てくれて……」
「……。こら」
「え……?」
サイフォンはちょっとだけ怒ったような顔をしながら、わたしの頭に優しく手刀を落としていた。
「わたし
「で、でも――」
「それ以上は本気のチョップをお見舞いするからな。覚悟するといい」
「……わかった」
「それでいい」
「サイフォン君!フェイトちゃん!!」
声がする方を見ると、あの子がいた。いつもわたしに語り掛けてくれたあの子が……
あの子も……どうしてわたしに語り掛けてくるんだろう?
フェイトの疑問が晴れるのはもう間もなくのことだった。
~サイフォンSide~
――――時は遡ること、サイフォンの出撃前
「放っておけばあの子も疲れ果てる。その時に保護すれば余計な抵抗も受けない。確保の準備を!」
「了解」
俺はその言葉を聞いた瞬間、即座にバリアジャケットと共に転移魔法を展開した。
それを見たクロノがこちらに鋭い視線を向けてきた。
「君は!!」
「あんな無理やり発動させたジュエルシードを放っといて、暴走でもしたらどうすんだ!下手したら融合して更に手に負えなくなるぞ!!」
「なんだって!?」
「詳しいことはリニスに聞け!俺はもう出るぞ!」
リニスはまだフェイトに会わせるわけにはいかない。もしそれでフェイトが、母親とリニスの間で板挟みになってしまって苦しむようになったら元も子もない。
「なのは!ユーノ!お前さんらはどうする!」
「わたしも連れてって!お願い!」
「僕も!」
「急げ!こっちにこい!」
俺は2人が近寄ったのを確認すると直ぐに転移魔法を発動させた。
現場の荒れ様は前回のジュエルシード暴走を思わせるかのようだった。辺りには雷が降り注ぎ、波は荒れ竜巻が視界を塞いでいた。
「俺はフェイトの救出に行く!なのはは俺の援護を頼む!ユーノは竜巻が邪魔しないようにバインドで捕縛してくれ!」
「「うん!(わかりました!)」」
俺は2人に指示を出すと高速移動魔法を使用し、フェイトのいると思われる方向に向かって行った。
途中竜巻が何度も襲ってきたが、なのはの援護もあり直ぐにフェイトを視界に収めることができた。だが――
「ちっ!あぶねえ!」
既にボロボロになっていたフェイトの後ろに2本の竜巻が迫っていた。
そしてフェイトが竜巻によって叩き落とされるのが見えた瞬間に、ブリッツアクションを使ってフェイトの真下に移動した。
「無事か!フェイト!」
「えっ……?」
俺はフェイトが落下しきる前にキャッチすると彼女の状態を確認した。
あちこちボロボロで、見た感じ魔力も殆ど残ってなさそうだった。
「サイフォン……?」
「こんなにボロボロになって、無茶しやがって……心配する方の身にもなってみろ」
「ほんとに……ほんとにサイフォンなの?」
まだ信じられない様子のフェイトを俺は下ろしてやって、安心させてやるためにその頭を撫でてやった。
「ああ、本物だ。寧ろ偽物がいたらぶっ飛ばすから教えて欲しいもんだ」
「ふふっ……」
俺は肩を竦めておどけてみせるが、フェイトが笑顔になったのを見て少しホッとした。
するとフェイトが急に抱き着いてきた。
「フェイト?」
「ありがとう……いつもわたし
「……。こら」
「え……?」
自分を卑下するような言い方を俺は聞き逃せなかった。故に俺はフェイトの頭にチョップをお見舞いしてやった。
「わたし
「で、でも――」
「それ以上は本気のチョップをお見舞いするからな。覚悟するといい」
「……わかった」
「それでいい」
俺はそれ以上は何も言わず、またフェイトの頭を撫でてやると
「サイフォン君!フェイトちゃん!!」
「なのはか!」
こっちに追いついてきたなのはが近寄ってきた。
そしてこちらを見るなり何とも言えない表情をしていた。
「えっと……何してるの?」
「ん?」
「え?」
状況的にはフェイトが俺に抱き着いてて、俺がその頭を撫でていた。
うーん、少なくともこの状況にそぐわないことだけは確かだな。
「まあこんな状況だったからな。安心させてたんだよ」
「あっ……」
「ふーん……」
俺は抱き着いていたフェイトの手をほどいてやり、頭をポンポンと叩いてやった
だからなのはさんや、ジト目で見ないでおくれ。
「それより、まずはこの状況を何とかするぞ。フェイト、魔力は持ちそうか?」
「ううん。もうすぐにでも切れちゃいそう……」
「だったらわたしが!」
《Divide Energy》
なのははフェイトに自身の魔力を渡していた。俺が渡してもよかったんだが、ここはなのはに任せるか
《Charge in》
《Charge in Completed》
「2人できっちり半分こ!」
「ありが……とう」
俺はその様子を微笑ましく思いながら、次の手を打つことにした。
『ユーノ!そっちの方はどうだ!』
『サイフォンさん達の様子を見ていた、フェイトの使い魔が協力してくれてます!』
『わかった!そのまま出来れば竜巻をひとまとめにしてくれ!俺達が一気に封印する!』
『ちょっと厳しそうだけど……何とかやってみます!』
『頼んだ!』
あっちは2人を信じよう。次はこっちだ
「2人とも。今、ユーノとアルフが竜巻を止めてる。その隙に俺達で一気に封印するぞ!」
「「うん!(わかった)」」
そして俺達は空高く飛び上がり、それぞれの位置についた。
《Cannon mode》
《Grave Form. Set up》
「ディバインバスターフルパワー。一発で封印!行けるよねレイジングハート!」
《Of course. master》
「バルディッシュ……お願い!」
《Yes sir》
「行くぞ、相棒……!」
《Jawohl!》
俺は魔力の扱いに長けた黒魔道士にジョブチェンジし、竜巻を拘束してる2人に攻撃前に避けるように伝えた。準備は整った!
俺はなのはに視線で促し自らも魔力を高めていった。
「せーのっ!!!!」
「サンダーーーーーーーー!」
「ディバイーーーーーーン!」
「クリムゾ――――――ン!」
3人の魔力が一気に高まり、そして解き放たれた――
「レーーーーーーーーーイジ!!!!」
「バスタァーーーーーーーー!!!!」
「フレアァーーーーーーーー!!!!」
3つの巨大な魔力はユーノ達によってまとめられた竜巻に直撃し、派手な光を伴う爆発を巻き起こした。
その攻撃によってジュエルシードは全て封印されていた。
残りのジュエルシード7つは今、なのはとフェイトの間に浮かび上がっていた。
それを挟んで互いに見つめあっていたが、先に沈黙を破ったのはなのはだった。
「フェイトちゃんに言いたいこと……やっとまとまったんだ」
――フェイトと友達になりたいとなのは言っていた
「わたしはフェイトちゃんといろんなことを話し合って、伝え合いたい」
――その思いはきっとあの子に届く
「友達に――なりたいんだ」
「――っ!」
なのはがフェイトに言葉を向けてから、どれくらい時が経っただろうか。
俺は2人の様子を見守っていたが、突然脳内で警鐘が鳴り響いた。
突如として空が光り出したかと思うと巨大な魔力反応と共に紫色の雷が降ってきた。
「――母さん!?」
「なっ!シュッツライゼンデ!」
《Manaward》
その言葉を聞いた瞬間俺はフェイトを庇うようにして立ち、即座にバリアを展開した。すると先程よりも大きな雷が、バリアごと俺達を押し潰そうと襲い掛かってきた。バリアの展開自体は間に合った。だが――
「ぐっ――おおおおおおおおおおお!!」
「サイフォン!?」
黒魔道士なのが問題だった。ナイトの様に防御に秀でているジョブではない状態で、この大きさの魔力を防ぎきるのは無理だった。
だから俺は――フェイトを
「えっ……?」
「ぐああああああああああああああああああああ!?」
「サイフォン君!!!」
バリアが限界に達し、俺は雷の直撃を受けるとそのまま海の中へと落下していった。
俺が意識を手放す直前に見たのは、こちらを助けに来るなのはの姿と、呆然とした表情のフェイトの姿だった。
ジュエルシードが今回で両陣営に全て渡りましたね。
次回は多分あの2人の対決に入るとこくらいまでな気がするなと