光を支えるもの   作:黒の眷属

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前回からそうだけどちょくちょくオリジナルやら独自解釈も交えつつ


契約と先生と

~サイフォンSide~

 

 

ぐす……ひっく……

 

 

誰かが泣いている。

微かに意識はあるのだが身体は動かせない。夢なのだろうか……

 

 

ママ……■■■……■■■■……■■■……

 

声は女性……女の子のものの様だったが内容まではうまく聞き取ることができなかった。

慰めてやりたくとも身体は動かず、声も出せずただただ聞くことしかできなかった。

 

誰か……助けて……

 

俺が助けてやる!――そう言いたくとも口は動かず声を出すことは叶わなかった。

そして意識が徐々に覚醒していくのを感じた。

 

 

◆◆◆

 

 

「う、うーん……」

 

目を開くとそこは知らない天井だった。

そのまま身体を起こし辺りを見回すと見知らぬ女性と目が合った。

白い帽子が印象的な緑髪の美人だった。

 

 

「おはようございます」

 

「お、おはよう……?」

 

我ながら間の抜けた声だとは思うが理解が追い付いていなかった。

なんで寝ているところを見られてたんだろうかーとか、ここはいったいどこなんだーとか。

色々考えることは多そうだが寝起きということもあって全然頭が回っていなかった。

 

 

「お加減は如何ですか?」

 

「ん、ああ――大丈夫だ。ただ寝起きで頭が回ってないだけなんでな」

 

「そうですか。それなら良かったです」

 

「ああ」

 

「……」

 

「…………」

 

き、気まずい……

目の前の女性もどう接していいのか困っているらしく、何とも言えない表情をしている。

 

 

(そういえばあの猫どこに行ったんだ?)

 

キョロキョロと辺りを見回してみた。

部屋の中はかつていた世界の東方の町、クガネの宿を思わせる雰囲気の畳部屋だった。

個人的には馴染み深く安心感があった。

 

あちこち見てるのが不思議に思ったのか彼女が訝しげにこちらを見ていた。

 

 

「あーっと、すまない。つかぬことを聞くんだが」

 

「はぁ、なんでしょうか?」

 

「俺が倒れていた辺りに猫はいなかったか?」

 

「猫……ですか?」

 

目の前の女性はキョトンとしていた。

流石にいきなりすぎるか

 

 

「いや、そのー。俺を運び出してくれたのが貴女かは分からないんだが、もうしそうだったら見かけてないかなと」

 

「貴方を運んだのは私ですが見ていませんね。ちなみにその猫がどうかしたのですか?」

 

「何というか……傷ついていたんで治療したんだが、その最中に俺が倒れてしまって。その後どうなったか気になってるんだ」

 

「なるほど、そういうことでしたか」

 

すると何を思ったのか女性が(おもむろ)に立ち上がると

 

 

「それはこんな猫ではありませんでしたか?」

 

「!?」

 

人が……猫になった!?

目の前の女性がいきなり猫の姿に変わったのだ。

いや、元の世界でも蛙に変身する魔法なんかはあったが

 

こちらが唖然としていると彼女は元の人の姿に戻ると悪戯っぽく笑っていた。

 

 

「ごめんなさい、驚かせてしまって。その節はどうもありがとうございました」

 

「あ、ああ」

 

まだ若干先程の驚きが尾を引いているが気になったことを聞いてみた。

 

 

「お前さんはそんな魔法を使えるってことは魔女なのか?それにその耳……もしかしてミコッテ族かい?」

 

「みこってぞく……?」

 

先程は帽子で見えなかったが彼女は今帽子を外しており、その頭には猫の耳があった。

それに先程の姿を変える魔法。もしかしたら同郷の者かと思ったが

 

 

「あなたの言うみこってぞくというのが何かは存じませんが、私は魔女ではなく使い魔ですよ」

 

「使い魔だって!?」

 

こんなに普通の人間と変わりのない使い魔なんているのだろうか

会話するごとに驚くことが増え、頭を抱えていると

 

 

「私からも聞きたいことがあるのですが」

 

「ん、ああ。俺ばっかり聞くのもなんだしな。どうぞ」

 

「では。貴方は何故、時の庭園にいたのですか?」

 

「時の庭園……?」

 

聞いたことのない地名だった。

そもそも知らない世界なのだから当然と言えば当然なのだが。

 

 

「すまん、その時の庭園とやらに聞き覚えがないんだが……それは俺が気を失う前にいた場所のことかい?」

 

「ええ、そうです。私の主……いえ、前の主の住んでいた場所です」

 

「ふむ。悪いが俺も気が付いた時には既にあの場所にいたんだ。何故いたのかと問われても正直答えようがないな」

 

俺が肩を竦めながら言うと彼女はこちらをジッと見つめていた。

嘘ではないか見極めようとしているのだろう。

 

 

「わかりました。ではもう1つ聞きたいことが」

 

「俺に答えられることならいくらでも」

 

「貴方は何故――私を助けてくれたのですか?」

 

何故……と言われてもなぁ

俺は頭をポリポリとかきながら彼女の様子を見たが、誤魔化しは許さないと言わんばかりにその表情は真剣だった。

別に誤魔化すようなことでもなし、そのまま伝えればいいかと思い告げた。

 

 

「目の前で失われようとしている命を見過ごせなかった。だから助けた。それだけさ」

 

彼女は一瞬目を見開くと、またすぐにこちらを見据えた。

 

 

「本当にそれだけですか?」

 

「ああ、それだけだ」

 

彼女の瞳から目をそらさないよう、こちらも相手を見据えた。

その紺色に輝く瞳からは意志の強さが感じ取れた。

 

お互い暫くの間見つめあっていると、彼女は軽くため息をつきその瞳を閉じた。

 

 

「わかりました。今はあなたのその言葉を信じましょう」

 

「そう言ってもらえるとこちらとしても助かるよ」

 

ホッとしたのも束の間。彼女は今度は睨むような視線で顔を近付けてきた。

 

 

「で・す・が!いくら私を助けようとしたとはいえ、自らの限界を超えて魔力を供給しようとしたのはいただけません!貴方が気を失っている間にリンカーコアを診させてもらいましたが、酷使したせいでかなり小さくなっていました。どうしてあんな無茶をしたのですか!!」

 

「ちょっ、ちょっと待ってくれ。落ち着いてくれ!」

 

彼女の顔を引き離し、宥める。

こちらを見つめる視線は心なしか先程よりも鋭くなっているように見えた。

 

 

「まず、無茶をしていたってことに関しては不可抗力なんだ」

 

「不可抗力?」

 

「ああ。お前さんを治すのに使った力だが、制御の仕方が分からないんだ」

 

「制御の仕方が分からない?貴方は()()()ではないんですか?」

 

「うん?いや、一応()()()ではあるぞ。」

 

()()()であるなら魔力の制御はできて当然の筈ですが……」

 

「魔力の制御?いや、それくらいはできるが」

 

彼女の言ってる魔力はエーテルのことだろうが……うん?何だか会話がかみ合っていない……?

それにさっき彼女が言っていたことも気になる

頭に疑問符を浮かべながら首をかしげている彼女に問うてみた

 

 

「なあ、ちょっと質問いいか」

 

「え、ええ。なんでしょうか」

 

「さっきお前さんの言っていたリンカーコアってのは何だい?」

 

それを聞いた瞬間、彼女は頭に片手を当て溜息をついた。

そして頭の悪い子を見るような目でこちらを見てきた。

失敬な

 

 

「リンカーコアは大気中にある魔力素を吸収し、体内に魔力を取り込むことのできる機関のことですよ。貴方は先程、自分で()()()だと言っていましたがそれなら知っていて当然のことですよ」

 

「????」

 

エーテルじゃなくて魔力素?()()()なら知っていて当然……?

そんな話聞いたことないが...

そこで思ったのがここが別世界だから前の世界の理とは異なっているんじゃないかということ

その結論に至ったところで彼女が声をかけてきた。

 

 

「貴方……えっと、今更ですが名前は?」

 

「サイフォンだ」

 

「私はリニスです。ではサイフォン、貴方はもしかして管理外世界...()()()()から来たのではありませんか?」

 

「!?」

 

俺は今日何度目かになる驚愕の表情を浮かべた。

こちらと同じ結論に至ったこともそうだが、別の世界のこと認知していたのだ。

 

 

「その表情を見るどうやら当たりの様ですね」

 

「ああ、そうだ。管理外ということは、管理されている世界と管理する者がいるということか?」

 

「ええ、そうです。時空管理局という数多の次元に存在する世界を管理・維持するための機関があります。リンカ―コアを知らないというのに()()()と言っていたので、管理外世界の住人ではないかと思ったのですよ」

 

 

「そういうことか」

 

とりあえずその件に関しては納得がいった。

 

この時サイフォンはアーテリスも管理外世界なんだろうかと考えていたが、彼は次元世界の更に1()()()()()()()()()()()()きているのだがリニスも含め、この時は誰も気付けなかった。

 

 

「ところでリニス」

 

「なんでしょうか?」

 

「お前さんはこれからどうするんだ?」

 

お互いの疑問はある程度解消できたとして今後の動きをどうするか。

個人的にリニスには聞きたいことが山ほどあるので、彼女の時間が許す限り色々教わりたいところだが

 

 

「どうするか……ですか。貴方次第のところはありますね」

 

「俺次第?そりゃいったどういう」

 

リニス自身のことなのになぜ俺が出てくるのだろうか?

 

 

「私は先程、主の使い魔だと言いましたね」

 

「ああ、言ったな」

 

「その私の使い魔としての契約ですが既に破棄されているのです」

 

「なに?ならどうして……」

 

どうして姿を保っているのか……聞こうとして、リニスがここに来るまでどういった状態だったか思い出した

 

 

「もしかして、あの時は契約破棄されて消えそうになっていたのか」

 

「そうです。結果として貴方が魔力を供給したお陰で存在を保てているのですが、その際に貴方との間に仮契約が結ばれたようです」

 

「あー、確かに。リンカ―コア?からお前さんに魔力が流れて行ってるのを感じるような感じ無いような」

 

「実際に流れているんです。何ですかその適当な感じは」

 

リニスは呆れたような表情で微かに笑っていた。

まるで手のかかる弟を見てる姉の様だ。

いや本来の年齢的には俺の方が上なんだろうが

 

 

「そんなわけで貴方がどうするか次第です。私としては本来の役割を終えた以上、このまま契約を破棄して消えても」

 

「駄目だ」

 

その先を言わせるわけにはいかなかった。

 

 

「折角拾った命なのになぜ自ら捨てようとするんだ。役割云々じゃない、お前さん自身にやりたいことは無いのか?」

 

「それ……は……」

 

「言い淀むってことは何かあるんだろ?ならその為に生きればいいじゃないか」

 

「ですが私が残るということは貴方と契約するということ。自分で言うのもなんですが、私は高性能な使い魔です。維持するだけでも大変なのですよ」

 

リニスは俺に負担をかけたくないのか不安げにこちらを見ている。

そんな顔をされたら尚更引けなかった。

 

 

「お前さん1人背負っていくのぐらいどうってこたあないさ。それにお前さんだけが得するわけじゃない。俺からもお願いがあるんだ」

 

「お願い……ですか?」

 

「ああ、そうだ。俺にこの世界のことを教えてくれないか?さっきのリンカーコアのことといい、俺はこの世界のことを何も知らないんだ。だからそのことを教えてくれる先生がいてくれると助かるんだが、どうだろうか?」

 

これならお互い対等だろう。リニスは存在を維持でき、俺はこの世界での情報を得られる

Win-Winだ

しばし悩んだのち、リニスは改めてこちらの目を真っ直ぐに見た

 

 

「分かりました。その申し出受けさせていただきます」

 

「ありがとう。こちらとしても助かるよ」

 

「では早速使い魔契約を行いましょうか」

 

すると彼女を中心に◎の内に2つの正方形が重なっている黄色の魔法陣が展開された。

 

 

「えっと、具体的にはどうすればいいんだ?」

 

「先ず使い魔となる私に出す命令を決めてください。通常はその命令が遂行された場合に使い魔の契約を解除します」

 

「そうか……」

 

となると先生になってくれーだと、教えることが無くなった際には消えてしまう可能性がありそうだ。

ならばいっそのこと第2の人生(猫生?)を歩んでもらった方がいいか

 

 

「汝、使い魔リニスよ。契約者サイフォンの名において命ずる。新たな主の元、新たな生を全うせよ。如何なることがあっても生きることを諦めず、己が成すべきことを成し遂げよ」

 

彼女は驚いた表情を浮かべながらこちらを見ていたが、やがて微笑むとこちらに跪いた

 

 

「我、使い魔リニス。たとえ我が心折れ挫けようとも、契約者サイフォンの望みに従い生き抜き、御身の力とならんことをここに誓おう」

 

その言葉を皮切りに、魔法陣から一際大きな光が出た。

そして使い魔契約は完了したのか、彼女との間には目に見えぬ確かな繋がりを感じることができた。

 

 

「これで使い魔契約は完了です」

 

「そうか。でも俺の力に~なんて入れなくてもよかったんだぞ」

 

「貴方の方こそただ生きてるだけでいい~、なんて無欲にも程がありますよ」

 

「さっきも言ったが俺にも色々教えてもらう得はあるからな。無欲じゃないさ」

 

「そういうことにしておきましょうか」

 

お互い顔を見合わせて笑いあった。

まだ知り合って間もないが主従の仲は良好そうだ。

 

 

「改めてよろしくな、リニス先生」

 

「こちらこそよろしくお願いしますサイフォン。私は以前の主の下ではその娘の家庭教師をしていましたからね。厳しくいきますよ!」

 

「おぉ、そいつぁ怖い。お手柔らかに頼むよ」

 

「善処しておきましょうか」

 

そういうリニスの顔は全くその気がなさそうで笑顔のままだった。

俺はやれやれと肩を竦めるが、不思議とこの少女に教わるのが楽しみだった

 

こうして俺には新たに使い魔兼、家庭教師ができたのだった

 




次回は老夫婦の出番。原作本編開始まではオリジナルが続きまする
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