光を支えるもの   作:黒の眷属

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新しい自分を始める為に

~サイフォンSide~

 

 

 

 

 

 

なのはとフェイトの戦いに決着がついた後、俺達を襲ったプレシアの攻撃。

その攻撃からフェイトを守ったのは、アースラで待機している筈のリニスだった。

 

俺はフェイトが無事なのを確認し、ジュエルシードの方を見るがその場には何も残っていなかった。

 

 

『クロノ!!』

 

『もう追跡してる!エイミィ!』

 

『魔力発射地点――特定完了!空間座標――確認!!識別名、時の庭園!』

 

あっちは大丈夫そうだな。後は……

 

俺はリニスとフェイトに視線を向けると、2人は互いに見つめあっていた。

 

 

「リニ……ス……?」

 

「はい……私ですよフェイト」

 

「ほんとに……ほんとにリニスなの?」

 

「ええ……。――大きくなりましたね、フェイト……」

 

「あ……ああ――リニス……リニスーー!!!!」

 

感情が抑えられなくなったのか、フェイトはリニスに抱き着くと大声で泣きだした。

 

無理もないだろう。消えてしまったと思っていた家族との再会なのだから。

泣きじゃくるフェイトをリニスは優しく受け止め慰めていた。

 

 

「フェイト!無事かい……って、リニス!?」

 

「アルフ、お久しぶりです」

 

「アンタ何で……」

 

「話したいのは山々ですが今はフェイトを休ませたいです。私達に付いてきてください。エイミィさん!」

 

『はいよ!皆アースラまで転送するよ!』

 

俺達はエイミィに転送してもらいアースラに移動した。

フェイトは管理局を妨害したり、アースラを攻撃したプレシアに与していたということで手錠がかけられた。

 

今は俺達の付き添いの元、艦の責任者であるリンディさんのいるブリッジに向かっていた。

 

フェイトはその手に先程までの戦いでボロボロになっていた、スタンバイモードのバルディッシュを持ち、ただ無言で付いてきていた。

 

その様子を気遣いながらブリッジに到着すると、そこには丁度プレシアの元へ辿り着いた武装局員の様子がモニターに映っていた。

 

 

『母親が逮捕される姿を見せるのは忍びないわ。彼女をどこか別の部屋へ連れて行ってあげてもらえるかしら』

 

『了解』

 

『わかりました』

 

只でさえ母親の為にと頑張っていた子だ。流石にそんなところは見せられないよな……

 

 

「フェイトちゃん、良かったらわたしの部屋……」

 

「えっ……」

 

なのはがフェイトを連れ出そうとした瞬間にそれは()()()()()()()

武装局員の入った部屋にあった生体ポッドらしき物に、フェイトと瓜二つの少女が入っていたのだ。

 

 

「私の()()()()に、触らないで!!!!」

 

「ぐああああ!?」

 

プレシアは部屋に入った局員に激昂すると、身体強化をしたのかその顔面を片手で鷲掴みにし、その後ろにいた局員に投げ飛ばした。

 

そのまま魔力を高めると部屋の外にいた局員ごと、まとめて雷で戦闘不能に追い込んでいた。

 

 

「いけない!局員達の送還を!」

 

「りょ、了解!」

 

突入した武装局員を全滅させるとは……流石は大魔導士か

ああなってはクロノと俺達だけで何とかしないといけないだろうな……

 

今後の展開を予測しながらも俺はフェイトのことが心配になり、視線を向けると彼女は呆然とした様子でモニターに釘付けになっていた。

 

 

「アリ……シア……」

 

「たった10個のジュエルシードでは、辿り着けるかどうか分からないけど――もういいわ。終わりにする……この子を亡くしてからの時間も……この子の()()()()()()()を娘扱いするのも」

 

「――っ!」

 

「あいつ……っ!」

 

俺は怒りで腸が煮えくり返りそうだった。フェイトが今までどんな思いでいたのか分からないのか!この子がどれだけつらい目に合おうが、母親の為だと言って頑張ってきたことが分からないのか!!

 

 

「聞いていて?貴方のことよ、フェイト」

 

「フェイトちゃん……」

 

「折角アリシアの記憶をあげたのに――そっくりなのは見た目だけ。役立たずでちっとも使えない、私のお人形」

 

俺達だけでなく、ブリッジで聞いていた面々は皆一様に顔を歪め、不快感を露わにしていた。

そんな中エイミィが奴の過去について話し出した。

 

 

「最初の事故――民間エネルギー企業で起きた、新型魔導炉の実験で……プレシアはね……実の娘、アリシア・テスタロッサを亡くしてるの……。安全管理不良で起きた、魔導炉の暴走事故で……。アリシアは……それに巻き込まれて……」

 

リニスにはフェイトの身の上と、アリシアが亡くなったことしか聞いてなかったが事故で亡くなっていたのか……

 

 

「その後プレシアが行っていた研究は、使い魔を超えた人造生命の生成……そして死者蘇生の技術……」

 

「記憶転写型特殊クローン技術――プロジェクトF(フェイト)

 

「そうよ……その通り。でも――失ったものの代わりにはならなかった。作り物の命は所詮作り物。アリシアはもっと優しく笑ってくれたわ。我儘も言ったけど、私の言うことをよく聞いてくれた。アリシアは――いつでも私に優しかった」

 

プレシアの言葉はその1つ1つがフェイトの心を抉っていくものだった。

そして――

 

「フェイト――貴方は私の娘じゃない。ただの失敗作。だからもう貴方はいらないわ……何処へなりとも消えなさい!!」

 

「――っ!」

 

「良いこと教えてあげるわフェイト。貴方を作り出してからずっとね……私は貴方が――()()()()()()()()!!」

 

「あっ……」

 

「フェイトちゃん!!」

 

最後の一言が致命的だった。その言葉を聞いた瞬間フェイトが握っていたバルディッシュが落ちて欠けてしまい、フェイト自身も崩れ落ちてしまった。

 

――もう我慢の限界だ。俺はフェイトが倒れないように身体を支えると、プレシアに言葉を投げかけようとしたが、俺より早く言葉に出した人物がいた

 

 

「プレシア!!貴方はどうしてまだ分からないんですか!!」

 

「――っ!貴方……まだ生きていたの」

 

「失った命は帰らないと……失ってしまった時は戻せないと……前にも言ったではありませんか!!」

 

「私には()()()()()()がある!あそこに行けば、()()()あの子を取り戻す方法があるのよ!!」

 

「そんな確証もない方法で今ある絆を――フェイトとの家族の絆を手放すようなことをしないでください!」

 

「そんなものあるわけないじゃないの!!私にあるのはアリシアとの絆だけよ!!!!」

 

アルハザード。恐らくプレシアの目的はジュエルシードの力を使ってそこへ行くことだろう。ジュエルシードが全て揃って入れば直接生き返らせようとでもしたのだろうか?そもそも、全部揃ったところで完全に生き返らせることは出来るんだろうか?

 

俺はそれだけでは無理だと思っていた。何かしらの問題が発生するだろうと。

理が違うとはいえ、前の世界でも神の力を借りて死者を蘇らせようとした者達はいた。だが、それは不完全なもので終わっていた。それと同じことが発生するんじゃないかと踏んでいる。

 

それだけに俺がこの後やろうとしていることは、かなり博打を打つようなものなんだが……

 

俺が考えに耽っている間にも事態は進んでおり、時の庭園から多数の魔力反応が感知されていた。

 

 

「魔力反応いずれもAクラス!」

 

「総数60……80!?――まだ増えます!!」

 

「プレシア・テスタロッサ!いったい何をするつもり!」

 

「私達は旅立つの……永遠の都……アルハザードへ!」

 

やはりそうだったか。だがそこにはいったい何があるんだ?奴の目的からすると死者を蘇らせる方法あたりだろうが

 

モニターではプレシアがジュエルシード10個全てを発動させて、アルハザードへの道を開こうとしていた。

 

 

「私達はこの(ジュエルシード)で旅立って、取り戻すのよ――全てを!!!!」

 

「次元震です!ジュエルシード10個発動!更に強くなります!」

 

「振動防御を!」

 

「波動係数拡大!このままだと次元断層が!!」

 

事態は悪化の一途を辿っていた。俺は直ぐにプレシアの元へ行こうとしたが、フェイトを見て一度その考えを捨てた。先ずはこの子を安全な場所で休ませねば

 

 

「俺はフェイトを医務室に連れていく。その後に直ぐにあいつ――プレシアの元へ向かう!」

 

「わたしも行くよ!」

 

「僕も!」

 

「アタシは……」

 

「お前さんはフェイトに付いてやれ」

 

「わかったよ」

 

「リニスお前さんは……」

 

「私も行って貴方達のフォローをします」

 

「……わかった。行くぞ!」

 

俺はフェイトを抱きかかえるとブリッジを後にし、医務室に向かった。

すると医務室に向かう道中、クロノに出会った。

 

 

「クロノ!」

 

「君達か!僕は現地に向かって元凶を叩く!君達はどうする?」

 

「アルフを除いた俺達も向かう。ただ俺は先にフェイトを医務室に連れていくから先にお前さんらで行ってくれ」

 

「わかった。行こう!なのは、ユーノ、リニス」

 

「「「うん!(はい!)」」」

 

俺達はそこで別れ、俺とアルフは医務室に急いでフェイトを連れて行った。

医務室に到着すると、直ぐに手錠を外してフェイトをベッドに寝かせてやった。

 

フェイトの表情は先程のプレシアの言葉があまりにもショックだったせいか、感情が感じられなかった。俺はそんな彼女の頭を優しく撫でてやった

 

 

「フェイト。俺の言葉が聞こえているかは分からない。でも、これだけは言わせてくれ。フェイトはこれまで自分を殺し、抑え続け、十分苦しんできた。――だから、これからはフェイトがやりたいと思った事をやっていい、我儘を言っていいんだ。そのやりたいことがもしお前さん1人じゃ難しいってんなら俺が手助けして、お前さんのやりたいことを叶えてやる。だからその時は安心して俺に言え――な?」

 

「……」

 

「アルフ、俺はなのは達の援護に行く。フェイトのこと、頼んだぞ」

 

「ああ、わかったよ」

 

伝えたいことは伝えた。後はこの事態を収拾して、()()()の望みを叶える!

 

俺は決意を新たにし、医務室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

「状況はどうなってる?」

 

「サイフォン君!」

 

俺はエイミィに時の庭園の入り口に転移してもらい、高速移動魔法を使いなのは達に合流した。そういえばここに来る道中床の穴から見えた謎の空間があったがあれはなんだったんだろうか?とんでもなく嫌な予感がしたが……

 

 

「あの、フェイトちゃんは?」

 

「俺が出てくる時はまだあのままだったよ。大丈夫――あの子は強い子だ。直ぐに立ち直って元気な姿をみせるさ」

 

「うん……」

 

なのはは安心できないのか暗い表情を浮かべていた。心配そうな彼女を安心させるため頭を軽く撫でやり、状況確認の為にリニスに声をかけた。

 

 

「リニス」

 

「はい。今はクロノ執務官がプレシアの元へ向かい、私達は最上階にある駆動炉の封印に向かっています」

 

「なるほど。だがリニス、お前さんはこっちでよかったのか?」

 

「貴方なら私になのはさん達を任せようとすると思ってましたから」

 

「そうか……ありがとな」

 

相変わらず、我が使い魔は頼もしいことで。

 

 

「それじゃあ俺は直ぐにプレシアの元へ向かう。お前さんらも気を付けろよ」

 

「わかりました。それと道中にもあった黒い空間には気を付けてください。あれは虚数空間といい、あらゆる魔法が一切発動しなくなる空間です。飛行魔法も消えてしまうので、あそこに落ちたらそのまま上がってこれなくなりますよ」

 

「わかった。十分に気を付けよう」

 

さっき感じた予感はそのせいか。あらゆる魔法が発動しないと言ってたが、もしかして()()を分解しているのか?だとしたら――

 

(いや、今は時間が惜しい。プレシアがいるであろうでかい魔力反応がある場所に()()()()突っ切る!)

 

俺はなのは達と別れるとガンブレイカーにジョブチェンジし、一際大きい魔力のある方角に進んで行った。

 

そして進行方向上に壁が出てくると――

 

 

「シュッツライゼンデ!ロードカートリッジ!」

 

《Jawohl!》

 

それを()()()()突き進んだ。ガンブレードとカートリッジシステムはかなり親和性があり使い勝手が良かった。元々ソイルという魔力の弾丸を剣に込め、攻撃の瞬間にトリガーを引き炸裂させることで威力を上げたりしているからだ。

 

俺は壁や床などお構いなしに破壊していき、プレシアの元へ突き進んでいった。カートリッジをガンガン使うので勿体ないが、まだ残弾に余裕はあるし問題ないだろう。

 

どれだけ壁やら床を壊したか分からないが、俺はやがて広い空間に出ることに成功した。

そこには――

 

 

「漸く見つけたぜ、プレシア・テスタロッサ!!」

 

「貴方は……」

 

大魔導士プレシア・テスタロッサと、生体ポッドに入っている彼女の娘――アリシア・テスタロッサがいた。

 

今こそ――約束を果たす!!

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

~フェイトSide~

 

 

 

 

 

 

 

「あの子達が心配だから、アタシもちょっと手伝ってくるね」

 

今もベッドに横たわるわたしの頭をアルフが優しく撫でていた。

 

 

「すぐ帰ってくるからね」

 

そう言うとアルフは出ていき、部屋にはわたし1人になった。

わたしはさっき母さんに言われたことを思い返し、そして思った。

 

 

(母さんは……わたしのことなんか……一度も見てくれなかった……。母さんが会いたかったのは……アリシアで。わたしは只の……失敗作……。わたし……生まれてきちゃ……いけなかったのかな……?)

 

わたしはふと横と見ると、モニターにアルフとリニスと一緒に白い子達が映ってるのが見えた。

 

 

(アルフ……リニス……それに、この子……。何て名前だったっけ?)

 

やっと身体に力が入るようになり、わたしは身体を起こし食い入るように映像を見ていた。そして思い起こされるのは白い子との戦いの記憶。

 

 

(ちゃんと……教えてくれたのに……。何度もぶつかって……わたし……酷いことしたのに……。話しかけてくれて……わたしの名前を……呼んでくれた)

 

そう……何度も……何度も……!

 

いつの間にかわたしの目には涙が浮かんでいた。

 

 

(それに……いつもわたしを守ってくれたサイフォン。迷惑ばかりかけるわたしを助けてくれて……優しくしてくれた……。さっきだって……わたしに声をかけてくれた……また、助けてくれるって……)

 

涙が頬を伝い止め処なく溢れてきた。それと同時に机に置いてあったバルディッシュが光ったような気がした。

 

わたしはバルディッシュに呼ばれていると思い、立ち上がると机に近付いてバルディッシュを手に取った。

 

 

「バルディッシュ……。わたしの――わたし達の全ては、まだ始まってもいない?」

 

そう問いかけるとバルディッシュはボロボロの状態だというのに、スタンバイモードを解除して身体を軋ませながらも変形していた。

 

 

《Get set!》

 

「――っ!」

 

わたしを安心させるために無理をしているのが直ぐに分かった。でもきっと……バルディッシュもわたしと同じ気持ちなんだ……

 

 

「そうだよね……バルディッシュも――ずっとわたしの側にいてくれたんだもんね……。お前も……このまま終わるのなんて……嫌だよね……」

 

《Yes sir!》

 

迷いは晴れた。後は前へと進むだけ!

わたしはバルディッシュを構えて集中した。

 

 

「上手くできるか分からないけど――一緒に頑張ろう……!」

 

《Recovery Complete!》

 

バルディッシュに魔力を通して傷を完全に修復させたわたしは、バリアジャケットを展開した。

 

 

「わたし達の全ては……まだ始まってもいない……!――だから、ほんとの自分を始める為に。今までの自分を……終わらせよう」

 

 

そしてわたしはあの子達の元へと転移した。わたしの名前を呼び続けてくれたあの子の元へ

 

 

 










フェイトが立ち直ってからのシーンは劇場版も原作もどっちも大好きなんですよね。挿入歌も含めて

次回は戦闘だけで終わるかもしれないなぁ
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