光を支えるもの   作:黒の眷属

33 / 47
向き合う貴方に

~フェイトSide~

 

 

 

 

あの子達と別れた後、私はリニスの案内で母さんの元に向かっていた。道中に聞いた話では、リニスはサイフォンの使い魔になっていたらしい。だからある程度どこにいるか分かるそうだ。

 

途中いくつか穴の開いている箇所があり、サイフォンの反応もその先にあるらしかったのでわたし達は目的の場所まで駆け抜けていった。

 

そして目的地が近くなってきた辺りで

 

 

――――ドゴオオオオオオオオオオン!!

 

 

「今のは!?」

 

「急ぎましょう!」

 

「ああ!」

 

一際大きな音が直ぐ近くで鳴り響いた。わたし達は急いでその場に向かうとそこにはボロボロの母さんとサイフォンに、頭から血を流していた管理局の執務官がいた。

 

皆がわたし達に目を向ける中、わたしは母さんと互いに目を合わせた。そして少しの間見つめ合うと母さんは突然咳き込み、血を吐き出していた。

 

 

「母さん!!」

 

「何を……しに来たの……!」

 

母さんは杖を支えにしてわたしを睨むように見てきた。その視線にわたしは身が竦んでしまう思いだった……。でもわたしにはどうしても伝えたいことがあったから、その視線に耐えて真っ直ぐに見つめ返した。

 

 

「消えなさい……もう貴方に用はないわ……!」

 

 

「――あなたに……言いたいことがあってきました。」

 

 

皆が見守る中、わたしは母さんに想いの丈をぶつけた。

 

 

「わたしは――アリシア・テスタロッサじゃありません。貴方の作った、ただの人形なのかもしれません。だけどわたしは――フェイト・テスタロッサは、貴方に生み出してもらって、貴方に育ててもらった娘です!生み出してもらってから今までずっと思ってきた、母さんに笑って欲しい、幸せになって欲しいって気持ちは――本物です」

 

「――っ!だから何?いまさら貴方を娘と思えと言うの?」

 

母さんは嘲るようにわたしを見ていたけど、わたしは自分の想いを真っ直ぐに伝えた。

 

 

「貴方が――――それを望むなら。それを望むなら、わたしは世界中の誰からも、どんな出来事からも――貴方を守る。わたしが――貴方の娘だからじゃない。貴方が――わたしの母さんだから……!」

 

わたしは母さんに向かって手を差し出した。

だけど母さんは顔を伏せて、わたしの手には目もくれなかった。

 

 

「――ふっ。くだらないわ……」

 

「――っ!」

 

悲しくないと言えば嘘になる。拒絶される可能性があることも考えてはいた。――でも、実際に言葉に出されるとやっぱり辛いものがある……

 

母さんは俯いたまま杖の石突で地面を打ち鳴らすと、魔法陣を展開した。

するとジュエルシードが再発動して、止まっていた揺れがまた始まった。

 

 

『これ以上は庭園がもう持たないよ!クロノ君達も脱出して!もう時間が無いよ!!』

 

「了解した!皆脱出するぞ、急ぐんだ!!フェイト・テスタロッサ!――フェイト!!」

 

 

庭園の崩壊が始まっていく中、わたしは動けないでいた。このまま母さん達を置き去りになんてしたくなかったから……

 

 

「私は行くわ……アリシアと一緒に……」

 

「母さん……」

 

「言ったでしょう……私は貴方が大嫌いだって……」

 

その言葉と共に母さんのいた足場が崩れだした。

 

 

「母さん!!アリシア!!」

 

「フェイト危ない!」

 

わたしは飛び出して母さんを助けようとしたけど、サイフォンがわたしの身体を掴んで止めた。さっきまで私のいた場所には崩壊の影響で瓦礫が落ちてきていた。

そして母さん達はジュエルシードと一緒に虚数空間へと落ち始めていた。

 

 

「あ、ありがとうサイフォン」

 

「いいんだ。フェイト、時間が無いから単刀直入に聞くぞ。お前はどうしたい?」

 

突然のことで一瞬何を言われているか分からなかったけど、彼の視線の先を見てわたしは彼が何を言いたいのか理解できた。サイフォンはわたしが塞いでいた時に言ってくれた。

 

 

『これからはフェイトがやりたいと思った事をやっていい、我儘を言っていいんだ。そのやりたいことがもしお前さん1人じゃ難しいってんなら俺が手助けして、お前さんのやりたいことを叶えてやる。だからその時は安心して俺に言え』

 

わたしの願い……わたしは――――わたしは!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「わたしは母さんとアリシアを助けたい!助けて、サイフォン!!!!」

 

 

 

 

 

「任せろ!!!!」

 

 

 

 

 

サイフォンは力強く頷くとリニス達の方を向き

 

 

「リニス!!俺達の()()――頼んだぞ」

 

「貴方まさか!!」

 

 

一言残すと、サイフォンは母さん達が落ちていった()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「サイフォーーーーーーーーーン!!!!」

 

リニスはサイフォンの名を叫ぶと、彼の飛び込んだ縁の前で膝から崩れ落ちていた。

虚数空間はあらゆる魔法が消されてしまう。そこに飛び込めば飛行魔法も使えず、そのままどこまでも落ちて行ってしまう。

わたしはそんな場所へ彼を行かせてしまった罪悪感で胸がいっぱいだった……

 

でも――それでもサイフォンならきっと、わたし達の元に必ず帰って来てくれる筈。わたしはそんな予感がしていた。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

~サイフォンSide~

 

 

 

 

 

白魔道士にジョブチェンジして虚数空間に飛び込んだ俺は、プレシアとアリシアに向かって真っすぐに向かっていた。虚数空間では想定通り()()()使()()()()()は使えず、リニスの言ったとおりだった。

 

2人との距離はもうすぐだった。俺は()()()使()()準備のため、集中しているとプレシアの声が聞こえてきた。

 

 

 

 

 

「いつもそう……いつも私は……気付くのが遅すぎる……」

 

 

 

 

「何に気付いたのかは知らねえが!!それを話すまでに勝手にくたばってくれるなよ!!」

 

 

俺は()()()()()()()()()()()()使()()2人に追いつくとプレシアを左脇に抱え、アリシアの入ったポッドを()()()()()()()()()使()()()右手で引っ張り上げた。そして近場に()()()()()()()()()()()その上に固定した。

 

 

「貴方――どうしてここに!?それにどうやって虚数空間内で魔法を!?」

 

「さてな、企業秘密だよ。ジュエルシードも……全部あるな、よし!」

 

これで条件は全て揃った。後は俺と……ジュエルシードの力次第だな。

 

 

「今からやることは、他の奴らには黙っててもらうぞ」

 

「いったい何をする気だというの?」

 

「時間が無い、説明する暇も惜しいから邪魔すんなよ。俺が手を離せばお前さんは虚数空間に真っ逆さまだってこと忘れるな」

 

「――分かったわ」

 

ジュエルシードには、プレシアが発動させた分の魔力がまだ十分に宿ってる。どうやら中に宿っている魔力は分解されていないようだ。流石ロストロギアというべきか

 

俺はアリシアに対して、元の世界の最期に使った禁術を発動をするため集中した。だが今回は自らの命を全て差し出すようなものではない。自身の生命力をただ大量に渡すだけのものだ。

 

だが、アリシアの命はとうに失われている。だから――

 

 

 

「ジュエルシードよ!!目の前の器に、再び命と魂を宿す力を我に授けたまえ!!!」

 

「――なっ!?」

 

ジュエルシード10個が強い輝きを放つと、俺の杖に何か別の力が宿っていくのを感じる。

それと同時に俺は禁術を発動させて、彼女の名を呼んだ

 

 

 

「アリシア!!今だああああああ!!!!」

 

 

術が発動されたことで、俺の身体から生命力がみるみる減っていくのを感じた。

先程の戦闘の件もあってかなりふらふらだ。でもここから2人を連れ出すためにも倒れていられない……正念場だ!

 

 

そして術の行使が終わると同時に、ジュエルシードは輝きを失い砕け散っていた。すると生体ポッドの中にいた少女――アリシアの目が開いた。それと同時に彼女は息苦しそうにしていた。

中の液体のせいか!

 

俺は直ぐにポッドのガラスを叩き割り、アリシアを右手に抱きかかえてやった。

 

 

「サイフォンありがとう!!ほんとに上手くいったね!!」

 

「俺も驚きだがな……かなりの大博打だったが、戻ってこれて良かったよ」

 

「うん!!」

 

「アリシア……本当に……本当に貴方なの?」

 

「ママ……。うん、わたしだよ。久しぶりって言うのもちょっとおかしいのかな?普段から顔を見てたわけだし」

 

アリシアはえへへと無邪気そうに笑っていた。

 

親子の時間を邪魔したくはないがそうも言ってられないな……

 

禁術のせいで体内エーテルも底を尽きつつある。急いで戻らねえと

俺は飛び降りた場所に戻るべく、飛行魔法と高速移動魔法を使って急上昇していた。

 

 

「お前さんら、ちょっと動かないでくれよ。俺も体力が限界に近いんだがこっから戻らねえといけねえ」

 

「わかった」

 

「え、ええ」

 

「それと、今のうちに言っとく。プレシア・テスタロッサ――お前さんは一度フェイトと向き合ってちゃんと話すんだな」

 

「それは……」

 

「今回の借りはそれでチャラにしてやんよ。それぐらい別にいいだろうが」

 

「そうだよママ!それにわたしもママには言いたいこと、たっっっっくさんあるんだから!」

 

「――――わかったわ」

 

言質も取ったしこれで後は帰るだけだ。

2人を抱えたまま飛び続けていると、見覚えのある地形が見えてきた。

 

縁の方では合流したのかなのは達も含め、皆が待っていた。

 

(もうすぐ――っ!?)

 

 

俺はその姿に安堵したが、突然脳内で警鐘が鳴り響いた。限界が来ていたのだ

 

 

「フェイト!アルフ!2人を頼む!!」

 

「サイフォン!?」

 

「貴方いったい何を!?」

 

騒ぐアリシアとプレシアを無視して俺は残ったエーテルを使い、残りの距離を一気に加速すると身体強化をフルに使って、2人をフェイト達の方に投げ飛ばした。

 

2人はフェイトとアルフによってしっかりとキャッチされた。そして俺は――

 

 

「ちっ……間に合わねえか……」

 

2人を投げるのに使った身体強化で体内エーテルが完全に底をついてしまい、飛行魔法が切れた俺は虚数空間に向かって落下し始めた。

 

 

「サイフォン君ーーーーーーーーーーーー!!」

 

 

 

なのはの叫ぶ声が聞こえていた。見ればユーノに羽交い絞めされて止められている。

 

あの子には悪いことをしたな……。

魔法を発動しようとしてみたが、やはり発動することはできなかった。まあそうなるか……

 

エーテルも使えない――魔法も使えない。となれば後はもう落ちるだけだ

 

落下していく中、心の中で皆に謝ると目を閉じて落下するのに身を任せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はふと目を開けると違和感に気付いた。()()()()()()()()()のだ。

 

 

「どういうことだ……?」

 

疑問に思い考えを巡らせようとした瞬間、身体が急激に引き上げられた。

どこか懐かしい感覚を覚え、自分の身体を確認すると小さな光の玉が周囲をグルグルと回っていた。

 

 

「リニス……気付いてくれたんだな」

 

今俺に使われている魔法、レスキュー(救出)は元居た世界で使っていたもので、リニスにも教えていたものだ。対象を自分の元に引き寄せることで、敵の攻撃から避難させるのを目的にしている。

 

リニスは俺との契約時に、魔力の他にエーテルも送れるようになっていた。今も魔力の代わりに自らの中にあるエーテルを使って、虚数空間内に魔法を使っているんだろう。

 

(ほんと、優秀な使い魔だよ――お前さんは)

 

そのまま俺はどんどん飛び込んだ場所に戻っていき、リニス達の元に引き上げられた。

だが引き寄せる勢いが強く、そのまま術者のリニスに抱き着く形でぶつかってしまった

 

 

「いってて。悪い、直ぐに離れ――リニス!?待ってくれ、マジでいてえから!」

 

 

リニスはそのまま俺を離さず、いつぞやの様に力いっぱい抱きしめてきた。

 

 

「嫌です。甘んじて受けてください……」

 

「そうだよ!心配かけたサイフォン君が悪い!――わたしも後でするから覚悟しといて」

 

周りを見ても皆お前が悪いという目で見ている。この場に味方はいないのか……

フェイトは――あっ駄目だ、なのはと同じ感じがする

 

俺はとりあえず味方を探すことを諦め状況を確認した。

 

 

「いててて。そ、それより状況は?崩壊はどうなってる?」

 

「そうだった!君のせいで一瞬忘れてたが、艦長が今崩壊を止めている。だがあまり猶予は無さそうだから直ぐに脱出しよう。君への皆からの説教はその後だ」

 

「おい待てクロノ!なんだそれ聞いてねえぞ!」

 

「今言ったからな。皆に心配かけた分、そっちもきちんと受けることだ」

 

折角死地から戻ってきたってのに世知辛いねぇ……

まあ心配かけたのも事実だし、仕方ねえか

 

そして俺達は庭園の入り口まで戻ると、アースラまで転移してもらい無事に脱出することができた。

 

 

 







次回かその次辺りで無印編は最終回ですかね。多分次々回になりそうだけど

A'sは、はやての誕生日があるから間が殆ど無いんですよねぇ

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定