光を支えるもの   作:黒の眷属

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今回普段の倍くらいあります

12/25フェイトのアリシアの呼び方修正しました。


友達になりたいんだ

~サイフォンSide~

 

 

 

 

 

時の庭園から帰還した後、俺は早々に医務室に入れられた。庭園の入り口まで逃げる時もまともに動けなくて、リニスに背負われる形で脱出したのだ。

 

まあ戦闘で身体はボロボロなうえに、儀式のせいで生命力も低下していたからな。

今はリニスに治療を施され、ベッドの上で横になっている。

 

 

「悪いな、助かったよ」

 

「これくらい気にしないでください。貴方はそれだけのことを成し遂げたんですから」

 

「そうだよ!フェイトちゃんのお母さんも助けちゃうし、アリシアちゃんもなんだか生き返っちゃったし」

 

「ほんと、驚いたよね」

 

「あれは俺の力じゃないんだがなぁ」

 

さらっと嘘をついたこの場には俺の他にリニス、なのは、ユーノがいた。フェイトとアルフは今回の事件の重要参考人として隔離されているらしい。それとは別の場所にプレシアが隔離されている。今までの仕打ちを考えると一緒にしてやれないとのことだ。

そしてアリシアはというと……

 

 

「サイフォン!お見舞いに来たよー!!」

 

「よお、アリシア。元気そうだな」

 

「君もその様子を見るに、一先ず大丈夫そうだな」

 

「ほーんと、一時はどうなるかと思ったよ」

 

クロノとエイミィと一緒にいたようで3人で部屋に入って来ていた。クロノが来たってことは――

 

 

「君には悪いんだが、君が飛び降りた後のことを聞かせてもらっていいか?」

 

「ああ。別に構わねえよ」

 

「ではまず、君は何故虚数空間でも魔法が使えたんだ?」

 

「あ、それわたしも気になってた。ユーノ君は魔法が消えちゃうって言ってたし」

 

俺とリニス以外の全員が興味深げにしていた。アリシアはよくわかってなさそうだったが

 

 

「あー、それか。俺が元居た世界で魔法を使うのに使ってた、魔力とは異なる力を使ってたからだよ。エーテルって言って、俺と使い魔契約したリニスも使えるぞ」

 

「エーテル……聞いたことがないな。それに元居た世界というが君はどこ出身なんだ?」

 

「管理外世界なのは間違いないだろう。俺はお前さんらのことも知らなかったからな。俺が住んでた世界――いや星か?そこは<アーテリス>と呼ばれていた」

 

「アーテリス……聞いたことがないな。エイミィ」

 

「うーん、私も知らないなぁ。今軽く検索かけてみたけど、データベースにも無さそうだね」

 

管理局でも把握してないってなると、やっぱ帰るのは無理そうだな。まあ死人が戻ったところでって感じはあるが

 

 

「一先ずその件に関しては後で調べておこう。もう1つ、これが重要なんだが――」

 

「アリシアの件……だな」

 

「そうだ。死んだはずの彼女が何故生き返っているんだ?彼女に聞いても君に救われたこと以外は分からないと言っていてな」

 

「なるほどな……。なら順を追って話そうか」

 

俺はリニスの助けを借りて身体を起こすと、皆に語り始めた。

 

 

「まず結論から言うと、アリシアはジュエルシードの願いを叶える力を使って生き返らせた」

 

「何だって!?そんなことが可能なのか?」

 

実際は禁術も使ったから正確には違うが、それを言うと果てしなく面倒な予感がしたから省いたのだ

 

 

「実際できているからそうなんだろうな。ただ、今回は条件が揃っていたからってのもあるだろうな」

 

「条件?それは何なんだ?」

 

「アリシアの魂がまだ存在していたからだ。そして俺は夢の中ではあるがアリシアと会話したこともある。なあアリシア」

 

「うん!ちゃんと話せたのは2回くらいだったかな」

 

アリシアはオトガイに人差し指を当て答えた。俺達のやり取りをクロノは真剣に見ていたが、嘘はないと判断したのか1つ頷いていた。

 

 

「それで、魂があることがどう繋がるんだ?」

 

「ああ。実は俺の世界では神のような存在がいてな、その神の力を使って死者を蘇らせようとした者がいたんだ」

 

「神とは……またスケールの大きい話になってきたな」

 

「まあその神の力を以ってしても、死者を完全に蘇らせることはできなかったんだがな。肉体を再生し、そこに命を吹き込むことはできても魂までは宿らなかったんだ」

 

元居た世界の豊穣と癒しの力を司る美神ラクシュミ。その力を使ってアナンタ族の族長は亡くなった娘を生き返らせようとして失敗していたのだ。

 

 

「だが俺はアリシアの魂と出会っていた。それにアリシアからプレシアが彼女の肉体を綺麗なまま残していると聞いたからな。そこで俺は彼女に自身の肉体の側にいるように言って、俺がジュエルシードの力を使ってアリシアの肉体に命と魂を宿らせることで生き返らせたんだ」

 

「そんなことがあったのか……」

 

「ああ。アリシアの肉体、魂――そしてジュエルシード。どれか1つでも欠けていたら成功しなかったろうさ。そのジュエルシードも力を使った反動で10個とも砕け散っていたがな。俺に答えられるのはここまでだ」

 

実際成功するかも分からない大博打だったが、結果として上手くいったのは僥倖だった。

 

 

「他に聞きたいことが無いんなら俺からもいいか、クロノ?」

 

「あ、ああ。一旦は了解した。聞きたいこととは?」

 

「フェイト達はどうなるんだ?」

 

「フェイトは次元干渉犯罪の一端を担ってるからね、このまま無罪放免とはいかない。重罪だし数百年以上の幽閉が普通なんだが、今回の事件はかなり特殊で彼女は真実を知らなかった。言い方は悪いが道具として利用されただけだし、情状酌量の余地はある。少なくとも執行猶予は取れるよう働きかけてみるよ」

 

「そいつを聞いて安心したぜ。ありがとなクロノ」

 

「これが僕の仕事だからね。それに何も知らされずただ母親の願いを叶えるために、一所懸命なだけだった子を罪に問う程、時空管理局は冷徹な集団じゃないから」

 

「ただ、この手の裁判は長引くんだよねぇ。最短でも半年、長いと2、3年かそれ以上かなぁ」

 

「まあそこはフェイトの今後の行いと、僕の腕次第だね」

 

この手のことは本職に任せることにするか。もちろん俺としても協力は惜しまないが。そうなると――

 

「アリシアは今後どうなるんだ?」

 

「そうだな――まず彼女は今回の事件には関わっていない。だから管理局として身柄を抑えなければいけない立場ではないんだが……。彼女の家族はプレシア達だけだ。裁判が終わるまでは1人になるだろうから、艦長が保護するとのことだ。フェイトの保護責任者になると言ってたから一緒にいられた方がいいだろうという配慮だ」

 

「そうか」

 

アリシアの問題はこれで大丈夫だろう。残るは――

 

 

「プレシアはどうなる?フェイトよりも罪が重くなるんじゃないか?」

 

「そうだな――彼女はアースラに攻撃もしてるし、民間人や局員へ危害も加えた。それに下手したら次元断層まで発生しかねない事態まで巻き起こした。それこそ数百年――いや千年以上の幽閉は免れないだろう」

 

「そうか……。クロノ、その件でお前さんを優秀な執務官と見込んで頼みがあるんだが」

 

「なんだ急に、気持ち悪いな」

 

普段クロノを褒めたりしてないぶん非常に警戒されていた。

正直に伝えただけなのに失敬な

 

 

「プレシアが最初に起こしたアリシアを亡くした事故。あれを詳しく調べてもらえないか?裁判の記録も裏に何かないか見てくれ」

 

「どういうことだい?」

 

「どうも腑に落ちねぇ。あれだけの大魔導士が、安全管理不良なんかで事故を起こすとは思えねえんだ。当時の人間や、プレシアのいたエネルギー企業会社、それと実験依頼を出した会社を洗って欲しいんだ」

 

「つまり、君はプレシアは何らかの事情があったせいで事故発生に巻き込まれ、アリシアを亡くした。その結果、精神的に追い詰められて今回の事件を起こしたと?」

 

「そういう可能性もあるんじゃないかと思ってな。すまんが頼まれてくれるか?」

 

「君には事件解決に尽力してもらったし、訓練にも付き合ってもらった借りがある。手は尽くしてみよう」

 

「助かる。ありがとなクロノ」

 

これで何かしら分かって、少しでもあの親子が家族として過ごせるようになればいいんだがな

 

 

「俺の聞きたいことはそれぐらいかな。お前さん達の方は他になにかあるか?」

 

「あっ!そういえば」

 

「んぁ?どしたなのは」

 

「うん。わたし達、時の庭園で黒ずくめの人にあったんだ」

 

「「何だって!?」」

 

俺とクロノは思わずハモってしまった。まさか俺のいない間に遭遇してるだなんて……

 

 

「お前さんら、奴と遭遇して大丈夫だったのか!?」

 

「う、うん。寧ろ助けてもらったの」

 

「助けて……?どういうことだ?」

 

「うん。前サイフォン君に見せてもらった映像は男の人の声だったんだけど、わたし達が会ったのは女の人の声だったんだ。それで同じような格好をした悪い人を探してるって」

 

黒ずくめがもう1人いて、更には恐らく俺達が会った方と敵対している?だが助けてくれたとはいえ、こっちの味方である確証が持てないな……

 

 

「後ね……サイフォン君と深い仲だって」

 

「――は????」

 

深い仲……?っていうとあれか?つまりはそういう関係の間柄ってことか???

なのはは凄いジト目をしながらこちらを見ていた。リニスは笑顔なんだが見てるととてつもなく寒気がする。怖い

クロノは何が面白いのか不敵な笑みを浮かべていた。今度模擬戦でしばこう

 

 

「待て待て待て待て!俺は交際した相手もしてる相手もいないぞ!誰だよその黒ずくめは!」

 

「わたしが知りたいよー。でもね、その人がVerstarkun(増幅)って言葉で強くなった傀儡兵を倒す力を貸してくれたんだ」

 

「そうか……そうなるとやつの介入があったのは間違いなさそうだな」

 

そしてなのは達を助けた謎の黒ずくめ……。少なくとも俺とは知り合いみたいだが、まったくもって身に覚えがないな……何者だ?

 

 

「その人物については今後気にかけておこう。まだ味方かも分からないしね。聞きたいことも聞けたし、他に無ければ僕達はもう行くよ」

 

「おう、悪いな。例の件だけよろしく頼む」

 

「わかったよ。それじゃあ」

 

クロノ達はそういうと退出していったが、なのはだけがその場に残っていた。

 

 

「なのは?まだなにかあ――」

 

あるのか……そう聞こうとした瞬間、なのはがギュッと抱き着いてきた。

 

 

「なのはさんや……ちょいと痛いんだが」

 

「言ったでしょ……わたしもするから覚悟してって」

 

覚悟って――ああ。俺がリニスに引き上げられた時か

 

 

「すっごく、すっっっっっっごく心配したんだからね……」

 

「ああ……。すまんな心配かけて」

 

「もう戻ってこないんじゃないかと思ったんだから……。二度と会えないんじゃないかと……」

 

「でもこうして戻ってきただろ?」

 

「それはリニスさんのお陰でしょ!!!!」

 

「――今のは不謹慎だったな、すまん……」

 

なのはは胸に顔をうずめ、肩を震わせ泣いていた。俺はそんな彼女の頭を優しく撫でてやった。

 

暫くの間そうしてやると、なのはは顔を上げてこちらを見てきた。

 

 

「サイフォン君」

 

「なんだ?」

 

「お願いがあるの」

 

「俺にできることならいいぞ」

 

「うん……。あのね、お願いだからもっと自分の命を大事にして。サイフォン君が傷つくとわたしも悲しいし、いなくなっちゃうなんて考えたくない……」

 

 

――――もう自分の身を危険に晒すような無茶はしないと。貴方は自分を犠牲にし過ぎです……

 

 

リニスにも確か似たようなことを言われたな。結局俺はその忠告を聞けず無茶したわけだが……

 

 

「すまんな、なのは。俺は恐らく今回みたいなことがあったら、また無茶をするんだろう。俺がサイフォンという人間である限り、それは恐らく変わらん」

 

「うん……そうだよね……。サイフォン君は……きっとそう言うと思った……」

 

「すまん……」

 

「だからね、お願い。わたしと約束して。今後そういうことがあっても1人で背負い込まないで、もっとわたし達を頼って。サイフォン君から見たら頼りないかもしれないけど、わたし達もあなたの力になりたいの!だって――友達だから!!」

 

「なのは……」

 

 

そうだな……俺はなんで何もかも1人でやろうとしてたんだろうな。いつも誰かを見ては、なんでこいつは1人で抱え込んでんだと思い、手を差し伸べていたのに――自分が抱え込んでんのには何も気づかないで……

 

わたし達を頼って……か

 

 

「わかったよ、なのは。今後はもっとお前さん達を頼らせてもらうよ――友達だし、な」

 

「――うん!うん!!」

 

なのはが漸く笑顔を見せてくれたことで俺もホッとした。

 

 

「あっ、そうだサイフォン君。リニスさんにも後でちゃんと謝った方がいいよ。すっっっっっっごく心配してたんだから」

 

「あ、ああ。わかった」

 

そういえば庭園では時間が無くて直ぐに脱出で、アースラに戻ってからも直ぐ治療してとゆっくり話せてなかったな。またお叱りを受けそうだが自業自得か……

 

そしてなのはは部屋を出ていき、1人になった俺は疲れがたまっていたこともあり、一気に眠気が襲ってきた。

 

とっとと寝て元気になったら、少しでもフェイト達の罪が軽くなるように俺も色々手伝わないとな……

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

時の庭園での決戦から5日経って、世間はもう6月に入っていた。俺の方はアースラから自宅に戻り、十分に休息をとることで漸く身体が本調子に戻って、まともに動けるようになった。

 

そして今は待ち合わせ場所の海辺の公園に、リニスと向かっている最中だ。

 

あれからクロノが色々と動いてくれたおかげで、フェイトとプレシアの裁判が来週から時空管理局の本局で行われることになったのだ。

 

その護送に際して少しだけ時間が取れるということで、フェイトと会えることになったのだ。流石にプレシアは首謀者だけあって無理だったみたいだが、仕方ないだろう。

 

そして会えることになったフェイトは、どうやらなのはと俺、リニスに会いたいと言っていたそうだ。あの子が自分のやりたいことを、ちゃんと言えてるみたいで俺は嬉しかった。

 

 

そうこうしているうちに、公園についたみたいで、そこにはフェイト、アリシア、アルフ、クロノ、ユーノが待っていた。ユーノはジュエルシードの回収が終わったこともあって、一旦アースラにいることにしたらしい。

 

 

「よー、久しぶりだな」

 

「久しぶりと言うほどでもないと思うけどね」

 

「そうだよね」

 

「まあそう言うなって」

 

俺はからからと笑いながらクロノ達と軽口を叩きあっていた。クロノとは初対面の時に比べ随分と仲良くなったもんだ。

 

その横ではフェイトとアルフとアリシア、それにリニスが話していた。

 

 

「リニス……」

 

「なんでしょうか?フェイト」

 

「リニスはサイフォンの使い魔になったって言ってたけど、わたし達の前からいなくなってからどういった経緯でそうなったの?」

 

「そうですね……手短に話すと、私とプレシアの契約が終わって消えかけていた時に、何故か時の庭園にいたサイフォンに命を救われたのですよ」

 

「「ええっ!?」」

 

そういやそんなこともあったなーとか思っていると、アルフとクロノ、それにユーノに呆れたような視線を向けられた。

解せぬ

 

ちなみにフェイトはポカンとした表情をして固まっていたが、アリシアは「わたしは見てたから!」だそうだ。

 

 

「君は普段から何をしでかすか分からなかったが、それは昔からなのか」

 

「アンタ仮にも大魔導士の拠点に1人で行くなんて何考えてんだい」

 

「なんかサイフォンさんらしいというか、なんというか」

 

「お、俺にも色々事情があんだよ!」

 

前の世界で死んで、気が付いたら若返って時の庭園にいたなんて言って誰が信じるか!

 

俺がぶつけようのない憤りを抱えていると、リニスはしゃがんでフェイトに視線を合わせると、その頭を優しく撫でていた。

 

 

「今でこそ私はサイフォンの使い魔ではありますが、フェイトとアルフ――貴方達2人が私の大事な教え子で、大切な家族であることは変わりません。もちろんアリシアも」

 

「リニス……」

 

「だから、また会える日が来たら顔を見せに来てください。サイフォンと一緒に待っていますから」

 

「うん……!ありがとう、リニス……」

 

リニスはその後、フェイトとアルフ、そしてアリシアとも抱擁を交わし合っていた。

家族ってのは……やっぱいいもんなんだな

 

その様子を見守っていると、抱擁を終えたフェイトがこっちをジーっと見ていた。

何か言いたげな顔をしていたので待っていると――

 

 

「フェイトちゃ――――ん!!!!」

 

「おっ、来たか」

 

「――っ!」

 

なのはが手を振りながらこちらに駆け寄っていた。フェイトもなのはに会えたのが嬉しいのか笑顔だった。

 

 

「僕達は向こうにいるから」

 

「焦らずゆっくり話すといいさ」

 

「あっ――うん。ありがとう!」

 

「ありがとう」

 

俺達はなのはとフェイトを2人にしてやり、少し離れた位置から見守ることにした。

遠目から見ても、2人はとても嬉しそうだった。

 

 

「あはは。いっぱい話したいことあったのに、変だね……。フェイトちゃんの顔を見たら、忘れちゃった」

 

「わたしは――そうだね……わたしもうまく言葉にできない。――だけど……嬉しかった」

 

「うん?」

 

「真っ直ぐに――向き合ってくれて」

 

「うん!友達になれたらいいなって思ってたの!でも――もう、今日はこれから出かけちゃうんだよね……」

 

そう。フェイトは護送までの短い時間で俺達に会うのを許された。護送されてからはまた暫く会えなくなるのだ。

 

 

「そうだね……少し長い旅になる」

 

「また――会えるんだよね?」

 

「――うん。少し悲しいけど、やっと本当の自分を始められるから」

 

なのはとフェイトの本気の勝負。あの時に投げかけた言葉はちゃんとフェイトにも届いていた。なのははそれを聞いて嬉しそうにしていた。

 

 

「来てもらったのは返事をするため」

 

「――!」

 

「君が言ってくれた言葉――友達になりたいって……」

 

「あっ、うん!うん!!」

 

「わたしにできるなら――わたしでいいならって!――だけどわたし、どうしていいか分からない……。だから教えて欲しいんだ。どうしたら友達になれるのか」

 

あの子は出自のせいで家族はいても、周りに友人と呼べるような存在はいなかった。だからこそ分からないのだろう

なのははフェイトをジッと見つめていたが、やがて口を開いた。

 

 

「――簡単だよ」

 

「えっ?」

 

「友達になるの、すごく簡単!」

 

「……?」

 

フェイトは少し悩む素振りを見せたが分からなかったようだ。それを見たなのはは優しく告げた。

 

 

「――名前を呼んで。初めはそれだけでいいの。君とか、貴方とかそういうのじゃなくて――ちゃんと相手の目を見て、ハッキリ相手の名前を呼ぶの。わたし、高町なのは。――なのはだよ」

 

「――なのは……」

 

「うん、そう!」

 

「なのは」

 

「うん!」

 

「なのは!」

 

「――うん……」

 

フェイトは何度もなのはの名前を呼び、なのはもそれに応えた。

2人は名前を呼ぶ度に、確かな絆が芽生えていることを感じていた。

 

そしてなのはは優しく両手でフェイトの手をとった。

 

 

「ありがとう……なのは」

 

「うん……」

 

「なのは」

 

「――うん!」

 

「君の手は温かいね、なのは……」

 

「――っ!うっ……ぐすっ……」

 

なのははいつの間にかその瞳に涙を浮かべていた。

俺達の方もアルフとリニス、アリシアがその様子を見てすすり泣いていた。

 

 

「少しわかったことがある。友達が泣いてると、同じように自分も悲しいんだ」

 

「――っ!フェイトちゃん!!……ぐすっ……ひっく」

 

なのはは感情を抑えきれなくなったのか、フェイトに抱き着いていた。そしてフェイトはそれを優しく受け止めていた。

 

「ありがとう……なのは。今は離れてしまうけど、きっとまた会える。――そうしたらまた、君の名前を呼んでもいい?」

 

「うん……うん……」

 

 

「会いたくなったらきっと名前を呼ぶ」

 

「あっ」

 

「だからなのはも、わたしを呼んで。なのはに困ったことがあったら、今度はきっと――わたしがなのはを助けるから……」

 

「ううっ……ぐすっ……うん……うん!」

 

フェイトもいつの間にかその笑顔に涙を溢れさせていた。互いを想いあい流れ出た涙はきっと2人の絆を強固なものにするだろう。

 

 

「なのはは……ぐすっ……本当に良い子だね……。フェイトが……あんなに笑ってるよ」

 

「本当に……ぐすっ……あの子がフェイトのご友人になってくれて……本当に良かったです……」

 

「フェイトが立派になって……ぐすん……お姉ちゃんは嬉しいよ……」

 

「3人とも良かったね……ううっ」

 

「そうだな……」

 

気付けばいつの間にかユーノまでもらい泣きしていた。まあ俺もあの光景を見て目頭が熱くなってきてたが我慢した。あの子達の前じゃそんな顔見せられんしな

 

再びなのは達に目を向けると、2人は互いのリボンを交換していたようで、髪が解けていた。そして何やら小声で話し合っい、それが終わるとこちらに小走りで駆け寄ってきた。

 

 

「クロノ。時間ってまだある?」

 

「まだ大丈夫だよ」

 

「ほんとに?」

 

「心配しなくてもいい。話したい人がまだいるんだろう?」

 

「うん……。ありがとう、クロノ」

 

何だかんだでクロノは面倒見がいいよな。しかし、フェイトが話したい人ってのは――

誰かと思って周りを見てると皆の視線が俺に集中していた。

 

 

「んぁ?」

 

「あのね、サイフォン。話したいことがあるんだけど、いい?」

 

「あ、ああ。別に構わんが」

 

「こっちに来て」

 

そういってフェイトに手を引かれ先程まで2人が立っていた位置に連れていかれた。

髪の解けたフェイトはいつもより少し大人びて見えた。

 

 

「それで、話ってのは?」

 

「うん、先ずはお礼。母さんとアリシア――お姉ちゃんとリニスを助けてくれて、本当にありがとう」

 

「そのことか……いいんだよ別に。俺がやりたくてやったんだ。お前さんが気にすることないさ」

 

「ううん、そんなことない。それにそれだけじゃないの。サイフォンは、わたしがピンチの時にはいつも助けてくれた……。サイフォンがいなかったら、わたしはここに立っていなかったかもしれない……」

 

「そんな大袈裟な――」

 

「大袈裟じゃない!!!!」

 

フェイトは今まで聞いたことのないような大声をあげていた。

 

 

「最初に会った時もそう。サイフォンがいなかったら、わたしとアルフはあそこでやられてたかもしれない……。街なかでジュエルシードを発動させた時も、サイフォンが一緒に封印してくれなかったら、わたし死んじゃってたかもしれないんだよ!!」

 

「それは……」

 

「それに母さんの攻撃からもわたしを庇ってくれた……。サイフォンはいつもわたしのせいで傷ついていった……それがわたしには辛かった……」

 

気付けばフェイトの目からは再び涙が溢れていた。

 

 

「一番辛かったのは……この前、母さん達を助けてくれた時。サイフォンがわたしに、わたしのやりたいことをやっていいって、我儘を言っていいって言ってくれて……わたしはサイフォンに母さん達を助けてって言った――()()()()()()()……。普通は死んでしまうような場所にサイフォンを行かせてしまった!!」

 

「フェイト……」

 

フェイトは堰を切った様に泣き始め、こちらに抱き着いてきた。

 

「わたしはサイフォンに甘えてたんだ!サイフォンならきっと何とかしてくれるって……ううっ……。けど……サイフォンが戻ってきた時に母さん達を投げて、サイフォンだけが落ちていった……ぐすっ……。あの時、もしリニスがいなかったらって思うとわたし……わたし……!」

 

「……」

 

「ごめんなさい!!――ぐすっ……本当にごめんなさい!!!!」

 

俺は知らぬ間に、この子をここまで追い詰めてしまっていたのか。交流した回数こそ少ないが、フェイトがとても優しい子だということは分かっていた。

それだけに随分と悪いことをしてしまった。

 

俺はフェイトを安心させるようにその頭を優しく撫でてやった。

 

 

「心配かけてすまんな、フェイト。でも、そこはごめんなさいじゃなくて別の言葉の方が嬉しいな」

 

「……えっ?」

 

「そういう時はありがとうって言うんだ。お前さんはリニスがいなかったら~、なんて言うがあそこにリニスはちゃんといた。それにあらかじめ、俺はリニスにいざという時は助けてくれーって言ってただろ?」

 

「うん……」

 

「だからあの時、俺が助かったのは必然だ。お前さんが気に病むようなことじゃない。それに言ったろ?お前さんのことを手伝って、やりたいことを叶えてやるって。安心して俺に言えって」

 

フェイトは涙で顔をぐしゃぐしゃにしながらこちらを見上げていた。俺は赤子をあやすように、そんな彼女の背中をポンポンと叩いてやった。

 

 

「前にも言ったがフェイトは今まで十分頑張ったんだ。だから我慢なんてしなくていい――もっと我儘を言っていいんだ、な?」

 

「ぐすっ――本当に……いいの?」

 

「ああ、もちろんだ」

 

「うん……うん……!ありがとう……サイフォン――うっ、うわああああああああああああああん!!」

 

フェイトは今まで我慢していた分を吐き出すかのように泣き出した。これまで辛くても悲しくてもずっと我慢してきたのだろう。弱音を吐けなかったから……頑張るしかなかったから

 

でもこれからはきっと大丈夫だ。この子を縛るものはもう無いのだから

 

俺はフェイトが泣き止むまで、背中をさすってやった。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

「もう、大丈夫か?」

 

「うん……ありがとう、サイフォン」

 

フェイトは思う存分泣いたせいか、少し気恥しそうにしていた。だが、居住まいを正すとこちらを真っ直ぐに見据えてきた。

 

 

「サイフォン。我儘を言っても……いい?」

 

「ああ。いいぞ」

 

「わたしは――サイフォンと対等な関係でいたい」

 

俺はその言葉に少し驚いた。思っていた我儘とは違ったからだ。

 

 

「サイフォンはわたしをいつも助けてくれて、守ってくれた。でも、それだけじゃ駄目なんだ。いつまでもサイフォンに頼ってばかりの――守られるだけの自分ではいたくないの……。だからわたしは――」

 

 

 

 

 

フェイトの顔は決意に満ちていた。強い意志を宿した瞳でこちらを見て、そして――

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

――――私と――お友達になってください!!

 

 

フェイトの告げた言葉は、いつの日か公園で聞いた少女の言葉を彷彿とさせるものだった。そしてそれは、なのはがフェイトに告げた言葉でもあった。

 

あの時の俺はなんて答えたんだったか……。俺なんかでいいのか~なんて言ってたが、既に十分気持ちを聞いたこの子にそれを言うのは無粋か……。

 

俺の返答は決まっていた。だからフェイトにあの時なのはにしたものと同じ返事をした。

 

 

「わかった。俺でよければ友達になろう、フェイト」

 

「――っ!!ほんとに……いいの?」

 

「いいに決まってるさ。そんな不安そうにしなさんな」

 

「うん。ありがとう……サイフォン」

 

俺達は固い握手を交わし、ここに友達になった。

この世界の友人も随分と増えたもんだ。

 

俺が感慨に耽っていると、手が離れないことに気付いた。フェイトが今もギュッと握っているせいだ。上下に振っても離れない。

 

 

「あ~、フェイト?」

 

「あの――我儘……駄目……かな?」

 

「お安い御用で」

 

俺は苦笑しながら受け入れていると、アリシアがこっちに駆け寄ってきた。

 

 

「フェイトずるーーーーい!もうお話終わったんでしょ!アタシもサイフォンと握手するー!」

 

「お、お姉ちゃん!」

 

「賑やかだねぇ。しんみりしてたのが馬鹿らしくなってきたよ」

 

「よいではありませんか。暫くは会えなくなるんですから」

 

「時間がオーバーしそうだから手短にしてくれよ」

 

「にゃはは!フェイトちゃんも元気になって良かった!」

 

「ほんと、姉妹一緒でよかったよ」

 

するといつの間にか皆集まってきていた。ちなみに俺は絶賛両手をテスタロッサ姉妹にブンブン振り回されている(主にアリシアに)。

 

そろそろ時間らしいので、2人を落ち着かせてアースラ組と地上組にわかれた。

残るのは俺とリニス、それとなのはの3人だ。

 

 

「また会おうな~。風邪ひいたりすんなよー」

 

「皆さん、どうかお元気で」

 

「皆またねー!」

 

俺達は手を振り、皆を見送った。アースラ組もこちらに手を振り返し、転移が終わると後には俺達だけが残った。

 

 

「行っちまったな」

 

「そうですね」

 

「うん……」

 

「やっぱ寂しいか?なのは」

 

「寂しくはあるけど。これでお別れって訳じゃない。また会えるから!」

 

「そうだな……。よっし、俺達も帰るかー」

 

「「はい(うん!)」」

 

 

俺達はそのまま各々の家路についた。

 

 

これにてジュエルシードを巡る一連の事件は終息した。

 

しかしこの事件ではまだ解決していない謎が残っていた。

その謎が今後巻き起こる新たな事件でも波乱を呼ぶことになると、この時は誰も知る由も無かった

 

 

 









無印編完結です。今回は過去最高に詰め込みました。
次回は後日談をやってからその次にA'sですかね。
なのはの次にやりたいのもほぼほぼ決まってて、そっちも書きたいけどまずは1個ずつ終わらせますか。
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