~サイフォンSide~
「リニスさんや」
「なんですか、サイフォン」
「なんで俺は正座させられてるんですかね?」
「ご自分の胸に聞いてみてはいかがですか?」
笑顔が怖いぞリニス……
俺となのはがフェイトと友達になった日。なのはと別れて帰宅したのだが、家に着くなり俺は自室でリニスと向かい合い、正座させられていた。
いや、身に覚えが無いと言えば嘘になるんだが……
「私は貴方に言いましたよね?自分の身を危険に晒すような無茶はしないでください――と」
「あ、ああ。覚えているとも。でもあの時はできるだ――いや、何でもないですはい」
リニスに物凄い形相で睨まれて俺は黙るしかなかった。あのまま最後まで言ってたらそれこそ烈火の如く怒られただろう。
「それなのに虚数空間に飛び込むだなんて、いったい何を考えているんですか貴方は!」
「い、いや。お前さんもエーテルのことは知ってただろ?この世界の魔力とは違うから
「思った……?貴方は確証もないのにあんな危険な行動にでていたんですか!!」
やっべ、藪蛇だ。確かにあの時は検証する時間もなくぶっつけ本番だったが、そのことは誰にも言ってなかった。多分なのはとフェイトあたりが知ったら追加で怒られそうだ……
リニスは深いため息をつくとジト目でこちらを見ていた。
「はぁ……貴方が死んだら私も後を追うと言ったのに……貴方はそんなに私を死なせたいのですか?」
「そんなわけないだろうが」
「それなら無茶は程々にしてください。貴方は言っても聞かないので、無茶をするなとは言いません。だけど――」
「リニス?」
リニスはこちらに近寄ると以前のように力いっぱいではなく、優しく抱き締めてきた。
「お願いですから……死に急がないでください。――貴方を失いたくないんです……」
「……」
彼女の顔を見ることは出来なかったが、恐らく泣いているのだろう。部屋にはすすり泣く音が響いていた。
俺は何度彼女をこうして泣かせただろうか。それも全部俺を心配させてのことだ。
死に急ぐ……か。そんなつもりはなかったんだが、そう見えているのか。
それならせめて彼女の不安は解消してやらないとな。
「大丈夫だリニス、俺は死なない。――お前さんやなのは、フェイト達を置いて勝手に死ぬような真似はしないさ。約束する」
「本当……ですか?」
「ああ、本当だ。なのはにも似たようなこと言われちまったからな。もし俺が死ぬ気でやらなきゃいけないようなことがあったら、俺一人で何とかしようとしないでお前さん達を頼る。それじゃ駄目か?」
リニスは少しの間沈黙すると、身体を離して目を合わせてきた。
「わかりました。ではそういった時は、必ず私達を頼ってください。もし出来なかったら――私達の言うことを1つ聞いてもらいますから」
「なっ!?」
「これでも十分優しいではないですか。それに私達をちゃんと頼ればやらなくてもいいんですから、安いものでしょう?」
「――い、いいだろう。まあ、無いとは思うが、万が一、仮に、もしかしたら、お前さん達を頼れない時があった場合は、頼むから俺の出来る範囲のことにしてくれ……」
「ええ。私も何もそこまで鬼ではありません。善処しておきます」
ああ、うん。駄目な奴だこれは。何だかんだリニスとの付き合いも結構長いから分かってしまう。こりゃなのは達を頼るのを忘れないようにしないとな……
俺は今後の身の振り方を改めようと考えていると、リニスがこちらをジッと見ていた。
「どうしたんだ?」
「あっ、いえ。貴方が無事でよかったと改めて思っていただけです」
そう言うとリニスは両手を胸の前に持ってくると――
「貴方との繋がりが、貴方を救うことができて――本当に良かった……」
心底安心したような表情でこちらを見てくるのだった。
俺はその様子を見て、リニスがどれだけ俺を心配してくれていたか改めて実感した。
これからはあまり心配かけないように頑張ってみるか……
その後、俺達は今回の事件のことを振り返ると今後の話に話題を変えた。
「そういえばはやてさんの誕生日がもう3日後ですが、いつも通り前日に行くんですか?」
「ああそうだな。そういえばここ最近は事件で忙しくて、殆ど会えてなかったなぁ」
「きっと貴方が来るのを楽しみにしてますよ。プレゼントはちゃんと用意したんですか?」
「おう。アースラでジュエルシード探索中の時にも、時間を見つけては手を加えてたからな。もう完成してるぞ」
リニスに女の子らしいものと言われてネックレスにしてみたが……喜んでくれるといいんだがねぇ。いや、あの子のことだし喜んでくれるか。
毎年笑顔で喜んでくれたあの子の顔を思い出しながら、3日後の誕生日に思いを馳せていた。
――――運命の日は近かった
~???Side~
ジュエルシードを巡る事件に残った謎。そのうちの1人は謎の空間で、狂気に満ちた笑みを浮かべていた。
「ククク……漸く――漸く姿を見せやがった。とは言え、ここで焦ったら元も子もねえ。入念に準備を重ねて……時が来たら――てめえのオモチャ諸共、全部壊してやるからよぉ!!!!!」
――――ヒャハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!
謎の空間には男の笑い声だけが木霊していた。
~???Side~
そしてもう1つの謎。なのは達を助けた全身黒ずくめの女性は、海鳴市の遥か上空でとある映像を見ていた。そこに映っていたのはリニスに抱きしめられたサイフォンだった。
「あらー、サイフォンってばモッテモテだー。むむむ……前の世界ではウルカって子ぐらいでそうでもなさそうだったから油断したなぁ。というか年下の子にモテてるっぽい?でも本人にその気は無さそうだし、ひょっとすると年上好きとか……?」
謎の女性は考え事をしながら辺りをグルグルと回っていた。
「
彼女はここではないどこかに潜む標的を睨むように空を見上げた。
「今に見てなさい。何もかも自分の思い通りに行くとは思わない事ね」
そう呟くと謎の女性は海鳴市の上空から姿を消した。
次回からはA's編。流石にペースは落ちるかも?