光を支えるもの   作:黒の眷属

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今回からA's編前日譚





魔法少女リリカルなのはA's
始まりの誕生日


~サイフォンSide~

 

 

 

 

 

ジュエルシードを巡る事件が終わり、関係者は漸く一息つけると思っている中、俺は一大イベントを目前にしていた。

 

フェイト達が本局に移送された日から2日後の6月3日。俺は八神宅の前で泊まり道具を持って佇んでいた。

 

はやての誕生日を祝うようになってから恒例のお泊り会だ。

2回目の誕生日の時に日付が変わってから祝うだけならメールか電話でもいいんじゃないか?なんて言ったら頬膨らませながら説教をされたのだ。曰く、もっと女心を勉強した方がええわとのことだ。

前は少しじゃなかったか?悪化してるみたいに言われてたんだが……女心はやはり難しい

 

いつまでも突っ立ってるわけにはいかないので、俺はインターホンを押してはやてを呼び出した。

 

――ピンポーン

 

はーい!

 

はやての声がして少しの間待つと――

 

 

「サイフォン兄ちゃんいらっしゃい!」

 

「よっ、はやて。今年も2日間、よろしくたのむ」

 

はやてが普段遊びに来る時と変わらぬ様子で出迎えてくれた。

俺が荷物を1階の泊まる部屋に置いて戻る頃には、既にお茶が用意されていた。

 

 

「ありがとなはやて。――うん、久しぶりに飲んだけどやっぱはやての淹れるお茶は美味いな」

 

「ほんま久しぶりやねー。サイフォン兄ちゃん忙しいゆーて、中々来てくれへんかったから寂しかったわ」

 

はやてはよよよと泣き崩れる仕草をしてみせる。だが口元が笑ってるので噓泣きなのが丸わかりだった

 

 

「悪かったって。これからはまた前みたいに遊びに来れるから、機嫌直してくれ」

 

「しゃあないなぁ。しょうがあらへんから許したるか!」

 

はやては泣いたふりを直ぐにやめ、ころころと鈴を転がすように笑っていた。

こういったやりとりも久しぶりに感じる位には、ここ最近の出来事は濃密だったからな。今日ぐらいはこうしてゆっくりしているか……

 

その後ははやてと2人で久しぶりに落ち着いた時間を過ごしていた。はやての作る料理に舌鼓を打ち、はやてが最近読んだ本や俺が来なかった間にあった出来事を話したりしていると、時間はあっという間に過ぎていき、そして()()()()()()()()()

 

 

「なあはやて。やっぱ1日くらいならいいんじゃないか?」

 

「あかんて!女の子なんやから……いやそれ以前に身体は毎日綺麗にせなあかんやろ?」

 

「それはそうなんだがなぁ」

 

今現在俺ははやてと風呂について揉めていた。最初の誕生日の時は俺が日にちを間違ってきたせいでヘルパーさんがいたこともあって、はやては風呂に入れてもらってたんだが問題は2回目。

お泊りが恒例になった時にはヘルパーさんを呼んでなかったので、今度は俺がはやての風呂の介護をすることになったのだ。

 

当然最初は抗議した。しかしさっきみたいな事を言われたり、俺なら別に気しないとかで頑として譲らなかったのだ。

そこで俺の方が仕方なく折れて、はやての湯浴みを手伝う事になったのだ。まあ実年齢的には娘の風呂の面倒を見てるような感覚だったからいいんだが、ずっとという訳にはいかないだろうし折をみてきちんと話さないとな……

 

そんなこんなで今年もはやてに押し切られる形で湯浴みを手伝った。

風呂上りには髪を乾かし、櫛で梳いてやった。梳かれている間、はやてはご機嫌そうに鼻歌を口ずさんでいた。

 

 

「やっぱサイフォン兄ちゃんに梳かしてもらうんはええなぁ」

 

「そうかぁ?ヘルパーさんの方が手馴れてるだろうに」

 

「サイフォン兄ちゃんだからええんよ。わかってないなぁ」

 

はやてはやれやれと言った感じで首を振っていた。これはあれか。いつもの女心が云々とかいうやつなんだろうか

 

俺はそんなことを考えながらもはやての髪を梳かしていき、それが終わると彼女を寝室まで運んでやった。そして日付が変わる直前まで他愛もない話に花を咲かせていた。

 

 

「もうすぐだな」

 

「せやねぇ。サイフォン兄ちゃんが来てくれるようになってからは、この日が一層嬉しくなったわ」

 

「大袈裟だな。でもまあ喜んでくれんならなによりだ。――っとそういえば今回のプレゼントはいつもと違うんだ。お前さんの誕生日になるのと同時に渡そう」

 

「ほんまか!それは楽しみやわぁ」

 

「それじゃあ取ってくる。ちょっと待っててくれ」

 

「はーい!」

 

はやての寝室を後にして、俺が泊まる部屋に行きプレゼントを手に取ろうとした瞬間だった。突然はやての寝室の方に()()()()()()()()()のだ。

 

 

「はやて!?」

 

俺は即座にはやての方に行こうとして思い出した。夜天の書の管制人格の言っていた封印の期限を。

 

(まさか封印が解けたのか!?今はアレを持ってきていない……場合によっては体勢を立て直す必要があるが――まずは、はやての安否を確認しねえと!)

 

そして俺は、はやての寝室のドアをけ破る勢いで開け放った

 

 

「はやて無事か!!」

 

「「「「っ!?」」」」

 

するとそこには、黒のタンクトップとスカートを身に着けた見知らぬ女性が3人。同じく黒のタンクトップにズボンの犬耳の男性が1人いた。

そしてその内の1人。赤髪の小柄な少女が()()()()()()()()の近くにいた。

 

 

「貴様ら――はやてに何をしたあああああああああああああああああああああ!!!!」

 

俺は即座にバリアジャケットを展開し、リーパーにジョブチェンジするとその大鎌を赤髪の少女に振り下ろした。

 

 

「くっ!?こんのやろおおおおおおお!!」

 

「ちっ!」

 

少女は俺の攻撃を咄嗟にシールドで防いでいた。俺は他の面子の動きを警戒して直ぐにその場を離れた。

向こうにははやてがいる、迂闊に魔法は使えないな

 

 

「てんめえ!いきなり何しやがる!!」

 

「てめえこそはやてに何しやがった!!事と次第によっちゃ――」

 

「ま、待ってください!!」

 

「ヴィータ落ち着け!!ザフィーラ、奴を刺激しないようにヴィータを抑えてくれ!」

 

「心得た」

 

「離せっての!!」

 

俺と少女が一触即発の雰囲気だったところ、突然緑髪の女性が割って入ったと思ったら、犬の耳が付いた男性が少女を羽交い絞めして止めていた。

そしてピンク髪の女性……恐らくリーダー格と思われる人物がこちらを見てきた。

その手にはいつの間にか剣が握られており、その立ち姿からは隙が見当たらなかった。

 

 

「お前は()()()()の知り合いか何かか?」

 

「主だあ?てめえらこそ何もんだ!はやてからはてめえらの事なんざ一度も聞いたことねえぞ」

 

「はやて。我らが主の名ははやてというのだな」

 

「……?いまいち要領を得ねえな。主だと言いながら、名前も把握してねえだなんて。もう一度聞くが、てめえら何もんだ?」

 

「我らは闇の書の主を守る守護騎士――ヴォルケンリッターだ。私はヴォルケンリッターが将、シグナムだ」

 

……闇の書?夜天の書なら分かるが闇の書とはなんだ?それに主を守る守護騎士だって?

 

彼女の言い分を信じるなら今の状況的にはやてがその闇の書の主ということになるが……

 

 

「こちらも、もう一度問うがお前は我らが主の何なのだ?」

 

「俺ははやての友達だ。今日はその子の誕生日だからな。お祝いの為に来てたんだよ」

 

「では、我らが主に害をなす気はないのだな?」

 

「それはこっちの台詞だ。俺としてははやてが何で倒れてるのか聞きたいんだがな。そこの赤いのがなんかしたんじゃねえだろうな?」

 

「はあ!?んなわけねーだろうが!!」

 

少女は今にも殴りかかってきそうなくらい怒っていたが、犬耳男性に止められていた。そして緑髪の女性がこちらに近付いてくると

 

 

「ごめんなさいね。私達が突然現れちゃったから気絶しちゃったかもしれないの」

 

「アンタは?」

 

「私は同じくヴォルケンリッター、湖の騎士シャマルよ。貴方は――」

 

「サイフォンだ。黒鐵サイフォン」

 

「サイフォン君ね。私達もさっき出たばかりで気付いた時には、はやてちゃん?が倒れてたから……」

 

「そうなのか」

 

他の面々と比べ、このシャマルという女性は雰囲気が柔らかかった。彼女は少しは信用できそうだ。主の守護騎士とか言ってたしこの分なら大丈夫そう……か?

 

俺はバリアジャケットを解除して武装を解いた。向こうもシグナムが剣に掛けていた手を放し、互いに休戦状態になった。

 

 

「さっきはいきなり襲い掛かって悪かったな、赤いの」

 

「誰が赤いのだ!アタシはヴォルケンリッター、鉄槌の騎士ヴィータだ!覚えとけ!!」

 

「それとアンタは――」

 

「ヴォルケンリッター、盾の守護獣――ザフィーラだ」

 

これで互いの自己紹介は済んだ訳だが、先ずははやての安否を確認するか。

俺ははやてに近付き様子を診てみた。外傷も特に無く呼吸も安定していた。どうやらシャマルの言っていた通り気絶して寝てるだけだった。

 

一旦はやてをベッドに寝かせ布団をかけてやり、俺達は下で話すことにした。

 

 

「そんじゃあお前さんらに聞きたいことがあるんだがいいか?」

 

「私達に答えられることならばな」

 

「ああ、頼む。先ず、闇の書ってのは何なんだ?」

 

はやてが持っていた魔導書の管制人格は夜天の魔導書と言っていた。彼女らの言ってる闇の書とは別のものなのか、それを知らなければ

 

「闇の書はベルカで作られた魔導書だ。魔力を蒐集することでページを増やし、666ページ全てを集めると主に大いなる力を与えるものだ。そして私達、ヴォルケンリッターは闇の書の主を守護するプログラムだ」

 

「なるほどな。しかし、なんだってはやての所にそんなもんがあるんだ?」

 

「闇の書は主が居なくなると次の主の元にランダムで転生するシステムがあるの。それではやてちゃんの所に来たんだと思うわ」

 

「成程。だからはやての所にあるわけか。何ともまあ傍迷惑な……」

 

どういった代物かは分かったが肝心な部分がわかっていないな

 

 

「その闇の書だが今はどこにあるんだ?はやてが主だというならこの家にありそうなものだが」

 

「それならお前の後ろにいるぞ」

 

「は?」

 

シグナムの言葉に後ろを振り向くと、そこには()()()()が浮かんでいた。

やっぱりか……

 

 

「追加で質問いいか?」

 

「なんだ?」

 

「夜天の魔導書という言葉に聞き覚えはないか?」

 

「夜天の魔導書……?いや聞いたこと――っ!?」

 

「うっ……ぐっ……」

 

「頭が……」

 

「ぬっ、ぐあああ!?」

 

「お、おい!大丈夫か!?」

 

俺の言葉を聞いた瞬間に皆が一様に頭を抱え苦しみだしたのだ。

 

どういうことだ!?いったいなにが……

 

4人はそれから少しすると頭痛が止んだのか様子が落ち着いたようで一安心した。

 

 

「大丈夫なのか?」

 

「あ、ああ。すまない、お前の言葉を聞いた瞬間何やら激しい頭痛に襲われてな……。お前がさっき言った言葉もうまく思い出せないんだが、さっきは何と言っていたんだ?」

 

「それは――」

 

夜天の魔導書だ。そう言おうとすると俺の勘が脳内で激しい警鐘を鳴らしてきた。それを聞くなと。

 

そしていつの間にか夜天の書がこちらにすり寄るようにして身体をくっつけてきていた。

意識があるのか分からないが、もしかしたら彼女も聞くなと言ってるのかもしれない。

 

 

「お前さん達は()()()の管制人格は知っているのか?」

 

「――っ!?何故お前が彼女のことを知っている?」

 

「そう警戒しなさんな。俺がはやての友人だというのは話しただろ?それではやてと一緒に昼寝することがあってな。その時に何故かあの子の夢の中に入り込んでしまって、その時に出会ったんだ」

 

「なるほど。覚醒前にはやてちゃんに話しかけていたところに貴方が来ちゃったのかしらね」

 

「多分な。とはいえ、最初の1回きりでそれからは1度も会っていないんだがな」

 

だがその1度の邂逅があったことで、事前に俺謹製のデバイスを用意できた。俺の救出策が上手くいくかは、闇の書と夜天の書の関係を更に洗い出さないといけないだろうが……はやての身体のこともあるし、彼女らの事が一段落したら直ぐにクロノに連絡をとろう

 

 

「俺の聞きたいことは一旦聞けた。お前さんらの方では何かあるか?」

 

「そうだな……先程のお前の様子を見るにどうやら魔導士の様だが、管理局員なのか?」

 

「いや、俺自身は管理局には入ってないな。まあ局の友人とか知り合いならいるが。別にお前さんらの事は無闇矢鱈に話したりせんよ。はやてに累が及ぶのは俺としても望むところじゃない」

 

「そうか」

 

魔力の蒐集とやらが具体的にどうするのか分からんが、はやてのことだしそんなことはしないだろう。

 

その後はこの世界の常識やらを色々と教えていった。はやてを主を仰ぐのならこの先この世界で住むことになるだろうし、知っておいて損はないだろう。俺が来た時も苦労したことだしな

 

話が終わるとヴィータとザフィーラが外の空気を吸いに行くらしいので、俺も一緒に付いていくことにした。シグナムとシャマルははやての様子を見に行った。

 

外に出るともう日が昇り始めていた。はやてが気絶してから長いこと話し込んでいたようだ。

 

 

「せまっ苦しい街だなぁ。魔法の匂いもしねえ」

 

「少なくとも争乱や戦が渦巻く土地ではないようだ」

 

「だから言ったろ?そういうとこだってよ」

 

「この目で見るまでは信じらんねえからな。ふんっ」

 

第一印象が悪かっただけに、俺はヴィータに目の敵にされているようだ。ザフィーラも完全にこちらを信用している、といった感じではなさそうだった。警戒しているという点ではシグナムも同じか。シャマルも表面上は穏やかではあったが内心はどうだか……

 

 

「何が闇の書の守護騎士だよ。適当に選ばれた主とやらの為、闇の書のページ集めの為に戦うだけの存在。どうせ一生こうなんだろアタシ達は」

 

「いつか壊れて果てるまでは――な」

 

俺はヴィータの言葉を聞いて少し驚いた。シグナムは自分達のことをプログラムと言っていたから命令には異議を唱えず忠実であると思っていた。だが、ヴィータは今の自分を憂いているように見えた。プログラムとは言うがその姿を見た俺は、彼女達は生きている人間と変わらないんだなと思った。

 

 

「まあ、なんだ。今の主――はやての所じゃそんなことにはならねえんじゃねえかな」

 

「どーいうことだよ?」

 

「はやてはそんな大いなる力とやらは望まんだろうよ。だからお前さんらも、ページ集めとやらは気にせず過ごせばいいさ」

 

「どーだか」

 

ヴィータは心底胡散臭そうにこちらを見ていたが、あの子をよく知る身としては確信を持って言える。あの子は料理が上手くて読書が好きな、優しい普通の女の子なのだから。

 

 

『ヴィータちゃん、ザフィーラ、それとサイフォン君、戻って。新しい主様、はやてちゃんがお目覚めだから』

 

『了解。直ぐに戻る。念のため俺もいるから安心するよう伝えてくれ』

 

『わかったわ』

 

まだ大分早い時間だが、気絶して寝っぱなしって感じだったからなぁ。睡眠不足になってないか心配だな……。

 

俺はこの後はやてにどう説明するか考えながら2人と一緒に戻っていった。

 

 

 







遂に入ったA's編。とは言え本編時系列に入るには結構かかるかも?
端折るかもしれないけども、まあ頑張ります

A's編はBoAの要素入れたいなとか考えてたり。
ReflectionとDetonationもGoDの要素入れようかなとか。好きな作品だし生姜ないね
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