光を支えるもの   作:黒の眷属

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騎士の鎧

~サイフォンSide~

 

 

 

 

 

「騎士甲冑の試運転?」

 

「ああ、そうだ」

 

 

俺は無限書庫での調べ物の息抜きにはやての家に遊びに来ており、そこでシグナムに唐突に騎士甲冑の試運転に付き合ってくれと言われたのだ。

 

 

「我らは武器はあるが甲冑は主に賜っているのだ。先日、主はやてに騎士甲冑を賜ったので問題なく使えるか試したいのだ」

 

「成程な。でもはやてはどうやって甲冑を渡したんだ?まだ魔力をうまく扱えないと思ったが」

 

「はやてちゃんにはデザインだけ考えてもらって、後は私達の魔力で作ったのよ」

 

俺の疑問にシャマルが補足してくれたことで納得がいった。

 

 

「試運転なんて言って、サイフォンと戦いたいだけなんじゃないか?シグナムはバトルマニアだからな」

 

「そ、そんなことはないぞ。私はあくまでもしもの時の備えとしてだな……」

 

「まあ俺は別になんでも構わんが。場所はどうするんだ?」

 

「あ、ああ。近場の無人世界で行うつもりだ。そこならば管理局や他の人間に気付かれることも無いだろう」

 

「了解。それじゃ座標を教えてくれ」

 

 

ここ最近は調べ物にかかりっきりで、リニスとの訓練も少なくなっていたからな。身体を動かす良い機会だ。

 

シグナムと細かい部分の打ち合わせをしていると、はやてが不安そうな顔をしながら近づいてきた。

 

 

「サイフォン兄ちゃんとシグナムが戦うん?」

 

「戦うって言ってもあくまで模擬戦みたいなものだ。訓練と変わらんからそう心配しなさんな」

 

「うん……。2人とも、怪我とかしないよう気ぃつけてな」

 

「はい。十分に注意いたします、主はやて」

 

 

俺ははやてを安心させるために軽く頭を撫でやり、俺達は目的の無人世界に転移した。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

「成程。こんだけ広けりゃ思いっきり暴れられそうだな」

 

俺とシグナムは模擬戦を行う無人世界の大地に降り立った。そこは視界いっぱいに荒野が広がっており、近くに生き物の気配も感じられない場所だった。

 

 

「私が結界を張っておくから2人とも周りの事は気にしないでね。それと治療もするけどはやてちゃんに心配かけないように怪我には気を付けて」

 

「わかってるよ」

 

「そう心配するな」

 

この場には俺とシグナムの他に医療班兼、結界と審判担当としてシャマルが一緒に来ていた。他の面々は、はやてと一緒にモニター中だ。

 

 

「それじゃあ騎士甲冑の試運転だけど、2人で軽く模擬戦をしてみてちょうだい。あと、シグナムはやりすぎないこと!」

 

「何故私だけに言うんだ」

 

「貴方はやりすぎるからよ!」

 

「まあまあ。俺だって簡単にやられたりしないから大丈夫だってシャマル」

 

シグナムは心外だと言わんばかりの表情をしていたが、ここに来る前のヴィータの発言からしてシャマルの言う通りやりすぎるのだろう。

俺としては同じ穴の狢の様な気がして好ましくはあるが。

 

 

「まったくもう……。それじゃ2人ともセットアップして」

 

「「わかった」」

 

 

シャマルの言葉にうなずき俺達はバリアジャケットを展開する。シグナムがはやてに用意してもらった騎士甲冑の見た目は、全体的に軽装で胴体部はピンクを基調とした布地で構成されている甲冑というよりは騎士の服といった様相だった。そういえばはやてがそういったコンセプトでデザインしたと言っていたな。

防御力がなさそうに見えるが、シグナムの魔力で作られた物だし問題はないのだろう。そしてその手には前にも見た剣のデバイスが握られていた。

 

対して俺はシグナムとは対極の格好をしていた。暗黒騎士にジョブチェンジして頭を除いて全身漆黒の重厚な鎧に身を包み、その背には戦士の武器と同様に籠めた魔力で回転率を上げるチェーンソーの様な刃をもった身の丈程もある大剣を背負っていた。

 

 

「ヴィータに仕掛けた時とは格好が違うのだな」

 

「俺はその時々に応じて戦闘スタイルを変えるんでな。別にあれが全てじゃないのさ。それだけに1つの事を極めた相手には勝てそうにないんだがな」

 

肩を竦めながら思い出すのは今もアーテリスにいるであろうかつての相棒(ウルカ)のこと。結局彼女にはちゃんと勝てたことはなかったな

 

 

「それにその得物。以前も思ったが、お前もベルカの騎士なのか?」

 

「そうだ。とはいえ俺の場合はちょっと特殊でな。ミッド式の魔法も使うがメインがベルカ式だから()()ベルカの騎士だな」

 

「成程、今の時代では珍しいことだ。だが、ヴォルケンリッター以外のベルカの騎士を相手に手合わせできるのはいい刺激になりそうだ」

 

シグナムは嬉しそうに笑みを浮かべていた。彼女は生粋の武人といった感じがする上に、ヴィータの言う通り戦闘狂(バトルマニア)のきらいがあるのかもしれない。

 

俺はその様子に苦笑しながらお手柔らかにな、と言い互いに位置に付いた。

 

シグナムは抜刀すると、正眼の構えをとった。対する俺は両手で剣を持ち、肘を上げて切っ先を斜め下にするように構えた。同時にデバイスに魔力を通すことで刃を回転させた。

 

 

「2人とも位置に付いたわね。それでは――始め!」

 

「――っ!」

 

 

シャマルの合図と同時にシグナムは即座に距離を詰めてきた。その様子をを注意深く見ていると、シグナムの姿が視界から消えた。

俺は後ろからの気配に対し、振り返りながら大剣を横に振りぬいた。ガキイインという激しい金属音が響き渡り、少しの間ガリガリと金属を削るような音がしたがシグナムは直ぐにその場を離脱した。

 

距離を離したシグナムは苦い表情を浮かべながらこちらの武器を一瞥していた。

 

 

「厄介な得物だな……それは」

 

「だろうな。自分で使っといてなんだが、俺だってあまり相手にゃしたくないさ」

 

常に回転する刃は削る事に特化している。鍔迫り合いなどしようものなら、余程の業物でなければ忽ち相手の武器をボロボロにするだろう。

 

シグナムもそれを感じ取ったから直ぐに武器を離して距離を取ったのだろう。次の出方を探っていた彼女に考える隙を与えない為に、今度はこちらから仕掛けることにした。

 

 

《Unmend》

 

「いけっ!」

 

俺は漆黒の魔力スフィアを3つ生み出すと、それぞれを時間差で発射した。だがシグナムはそれに動じず静かに佇んでいた。

 

 

「レヴァンティン、甲冑を」

 

《Panzergeist!》

 

それはかつてフェイトとの戦いで俺も使った装身型のバリア魔法だ。全力で魔力を回せば砲撃すらも防げるものだ。しかし――

 

 

「こいつまで防げると思うなよ!」

 

「ちっ!」

 

魔力スフィアに続いて俺自身もシグナムに向かって一気に跳躍し、デバイスを振り下ろした。だが彼女はすかさず空中に逃れこちらの一撃を避けると、デバイスを構え直して急降下してきた。

 

 

「レヴァンティン!ロードカートリッジ!」

 

《Jawohl!》

 

「シュッツライゼンデ!ロードカートリッジ!」

 

《Jawohl!》

 

シグナムがカートリッジロードしたことでデバイスに炎を纏わせたのを見て、俺もカートリッジロードして攻撃に備えるべく左手をシグナムに向けて魔力を高めた。

 

 

「紫電一閃!!」

 

「ブラックナイト!!」

 

シグナムの攻撃と俺を覆うように張った漆黒の半透明のバリアがぶつかると、凄まじい激突音とともに辺りに衝撃波が広がった。シグナムはバリアを突破しようと力を込め続けていたが、突破することは叶わなかった。

持続時間は短いが俺の扱える防御魔法の中でも随一の硬さを誇るものだ。そう簡単に突破はさせんさ

 

俺はデバイスを持ったもう片方の手を、今もバリアを抜こうとしてるシグナムの胴体目掛けて振り抜いた。

 

「くっ!」

 

「逃がさねえよ!」

 

《Salted Earth》

 

「なっ!?」

 

シグナムはこちらの攻撃に気付き後ろに跳躍しようとしたところで、俺は先程まで防御に回していた左手を何かを引っ張るようにして引いた。すると足元に漆黒の魔法陣が展開され、シグナムを引き寄せた。

そして振り切った状態のデバイスに左手を添え、無防備なシグナムに返す刃をお見舞いした。

 

 

「――っ!無礼(なめ)るな!!」

 

「おっと、あぶねえ――なっ!」

 

防げないと思われた攻撃をシグナムはデバイスを持った片手で受け、こちらの攻撃の勢いを利用して身体を捻って宙に浮かせるとそのままデバイスを振りかぶり突っ込もうとした。

それに対し俺は左手を天に掲げ拳を握りしめると、先程展開した魔法陣から漆黒の魔力弾が吹きあがった。

シグナムは間一髪のところで踏みとどまり大きく距離を取っていた。中々に勘がいいようだ。

 

 

「つくづくやりづらい相手だな、お前は」

 

「ははっ、誉め言葉として受け取っておくぜ。お前さんの方こそ決定打を与えさせてくれねえじゃねえか」

 

「これでもヴォルケンリッターの将なのだ。そう簡単に負けてはやれん」

 

シグナムはデバイスを鞘に納めると居合の構えをとった。この距離で構えるとなると斬撃でも飛ばしてくるのか?

そう思っていると脳内で警鐘がけたたましく鳴るのと同時に、シグナムの魔力が爆発的に高まるのを感じた。俺は直ぐにカートリッジをロードし、渾身の一撃を放った。

 

 

《Schlangeform!》

 

「飛竜一閃!!」

 

「闇よ穿て!!」

 

《Shadowbringer!》

 

蛇腹剣と化し、魔力を纏ったデバイスと漆黒の魔力砲がぶつかり合い、激しい爆発が巻き起こった。魔力同士の衝突により生じた煙に紛れ、俺は漆黒の魔力を纏わせ刃を激しく回転させたデバイスを引っ提げシグナムの元へと突貫した。

向こうも同じことを考えていたようで、通常の剣の状態に戻し炎を纏ったデバイスを片手に煙の中から姿を現した。

 

そのまま再度激突するかと思った瞬間、辺りの煙が晴れると同時に俺達の身体がバインドで拘束された。

 

 

「ストーーーーーーップ!!2人ともやりすぎよ!!」

 

「シャマル……」

 

「あー、悪い。つい……な」

 

審判をしていたシャマルが頬を膨らませながら俺達の頭上にいた。シャマルは大層ご立腹なようでシグナムも顔を引きつらせていた。

 

 

「つい――じゃありません!!騎士甲冑の試運転だって言うのに2人ともいつの間にか本格的に戦い始めるし。それにシグナム、私はやりすぎないようにって言ったわよね?」

 

「だ、だが私だけでなくサイフォンも――」

 

「言・っ・た・わ・よ・ね?」

 

「あ、ああ……すまない」

 

あーあ、こりゃ結構マジで怒ってんな。くわばらくわばら

 

 

「それとサイフォン君」

 

「え?」

 

「はやてちゃんに心配かけないようにって言ったでしょう?貴方までシグナムに合わせて本気になってやりあわなくてもよかったんじゃないの?」

 

「いや、それをいったらそもそもシグナムが――」

 

「…………」

 

「あー、えっと……なんだ。俺も悪かった、ごめん」

 

無言でこちらを見つめるシャマルは笑顔だったのだが、とんでもない圧力を感じて俺は謝るしかなかった。

 

 

「分かってくれればいいのよ。さて、それじゃあ2人とも帰りましょっか」

 

「お、おう」

 

「ああ」

 

幸い2人ともこれといった怪我は無かったので、そのまま転移してはやての家へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

「ただいまー」

 

「ただいまもどりました」

 

「ただいまかえりました~」

 

「皆おかえりー!」

 

「お疲れー」

 

はやての家に戻ると皆が出迎えてくれた。ザフィーラは相変わらず無口だったが玄関まで出迎えてくれていた。

 

そのままリビングに行き、はやてのお茶をごちそうになりながら先程の騎士甲冑の試運転の話をしていた。

 

 

「そういや、甲冑の使い心地はどうだったんだよ」

 

「悪く無い仕上がりだ。これならいつ実戦があっても問題ないだろう」

 

「そんなことが起こらないことを俺は祈るよ」

 

「そうやで。前にもゆーたけど、わたしは闇の書にはなんも望みないから皆はうちで仲良く暮らすことがお仕事や」

 

「ええ。承知しております、我が主」

 

案の定はやては闇の書の大いなる力には興味はなく、ただ新しくできた家族との平穏な日々を望んでいた。ヴォルケンリッターの皆も慣れないながらもそれを受け入れ、日常を過ごしているようだった。

 

 

「それにしても2人の戦いはすごかったなぁ。魔導士ってのは皆あんな風に戦うん?」

 

「この2人は特別だよ。そもそもシグナムとあんなにやりあえる奴なんて久々に見たし」

 

「ああ。私も久方振りに良き相手とやりあえて満足した。是非ともまた――」

 

「シ~グ~ナ~ム~?」

 

「い、いや。なんでもない……」

 

実力的にはシグナムが一番強いんだろうが、怒らせたら一番怖いのはシャマルなんだろうなぁ

俺は2人の様子を見ながらしみじみと思っていると、ヴィータがこっちをジッと見ていた。

 

 

「ヴィータ、どした?」

 

「いや、アタシの方も今度騎士甲冑の試運転してくれねーか?シグナムみたいなことにはならねーからさ」

 

「ああ。それぐらいならお安い御用だ」

 

「へへっ。ありがとな」

 

ヴィータは笑顔で鼻の頭をこすっていた。この子も喧嘩っ早いところがあるからさっきの戦闘を見て血が騒いだのかもしれない。とはいえシャマルが止めてないあたり、シグナムより自制がきくのだろう。当の本人は解せないといった表情をしていたが

 

 

「それならついでだし私達もおねがいしましょうか、ザフィーラ」

 

「そうだな。手数をかけるが、よければ頼む」

 

「別に構わんさ。俺の方もいい訓練になるしな。ただ皆やる日は分けてくれよ、流石にくたびれるからな」

 

和気藹々と次の試運転の日程を話していると、はやてがその様子を嬉しそうにニコニコと見ているのに気がついた。

 

 

「どうしたはやて。なんか良いことでもあったか?」

 

「うん!皆が楽しそうにしてるのもやけど、サイフォン兄ちゃんがその中にいるんがなんか嬉しくてな」

 

「そうなのか?」

 

「最初の方に比べて最近は皆が仲ようなってるから。皆の仲が良いとわたしも嬉しいんよ」

 

「そうか……」

 

はやての言う通り最初はヴォルケンリッターとの間には壁を感じていたが、ここ最近はそういったものは感じなくなっていた。向こうも気を許しており、以前の様にどこか警戒するような気配は感じられなかった。

 

俺の方も彼女達にはやてを害したり、利用したりするようなことが無いと分かってからはいつの間にか警戒を解いていた。彼女達は大丈夫なんだと

 

 

「我々もサイフォンは信頼に足る人物であることが分かりましたから」

 

「まあ、悪い奴じゃあねーしな。料理もギガウマだし!」

 

「こっちにきてから、はやてちゃんと一緒に色々と助けてもらってますから」

 

「信ずるに値する人物かと」

 

「な、なんか照れるな」

 

皆がこぞって褒めるので照れくさくなり頭をポリポリとかいていると、その様子を見てはやてがクスクスと笑っていた。

 

 

「ふふふっ。まあこれからも皆で仲よくしていこなー」

 

「「「「「はい!(ええ)(おう)」」」」」

 

 

その日ははやての家に泊まることになり、夕食は普段よりも豪勢で賑やかなものだった。

 

 

そして束の間の休息は終わりを迎えようとしていた。

 

 

 







新年一発目。ファンフェスやら色々あったりモチベの回復やらでちょっとかかりましたね。
まあそんな感じで前回も言ったようにペースは落ちますが気長にやってきます。

暗黒の装備は80AFに武器はコンドライト・マジテックディバイダー


次回は多分、前日譚編ラストになるかも?
それが終わればいよいよ原作本編開始ですね
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