光を支えるもの   作:黒の眷属

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今回は次回本編開始に向けた説明回みたいなものです





闇の書というもの

~サイフォンSide~

 

 

 

 

 

俺は今、八神家のリビングでシグナムと向かい合っていた。はやて達は今買い物に行って席を外しており、この場には俺達2人だけだ。

 

いや、正確には3人か?

 

というのも俺達の近くには夜天の書が浮かんでおり、心なしか俺達を心配しているかのように周りをぐるぐると漂っていた。

そんな彼女を安心させるために大丈夫だと一声かけ、シグナムに話す前に軽く目を瞑り調べたことを整理することにした。

 

そもそも俺がこうしてシグナムと対面しているのは、闇の書の調査結果について確認することがあるからだ。

無限書庫に調査の為に通い出してから、もう2ヶ月が過ぎていた。

ユーノに教わった読書魔法や検索魔法があったとはいえ、慣れない魔法を駆使した調査だったこともあり思った以上に時間がかかってしまった。

 

だが、その甲斐もあって闇の書の情報をある程度知ることができた。

 

 

まず闇の書は第一種危険指定遺産のロストロギアだということが分かった。要は指名手配みたいなもので見つけ次第管理局に報告し、即座に封印を施さないといけないレベルの代物だということ。

 

だが、俺はその事実を知ってもクロノ達に報告するようなことはしていなかった。何故かというと、ここ最近何者かに監視されていることに気付いたからだ。それも地球にいる時だけでなく、無限書庫のある()()()()()()()だ。

 

初めて違和感を感じたのは、はやての誕生日の日に帰る時だ。クロノと通信している時に何か視線の様な物を感じて最初は気のせいだと思っていた。だがそれが何度も続くとなるとそうもいかなかった。

 

視線は主にはやての付近にいる時と、無限書庫に闇の書の調査に来ている時に感じていた。視線の主の目的はいまだ判明しないが、恐らく管理局に関わる人間だと俺は踏んでいる。

そうでなければ本局にまで監視の目が来る筈がない。流石に時空管理局程の巨大な組織が、怪しい人間をみすみす本局に入れるとは思わないことを考えると、次に怪しいのは内部の人間だ。

管理局内部の人間が怪しい以上、クロノ達に闇の書のことを迂闊に言わない方がいいと思ったのだ。そもそも闇の書を封印なんてしたら彼女(管制人格)を救うことも出来ないだろうしな。

 

 

次に、調べていく過程で分かった闇の書の性質についてだ。大まかな部分は夜天の書の管制人格に聞いた内容と同じだったが新たなことも判明した。

 

まず闇の書は一定期間魔力の蒐集が無いと持ち主の身体を徐々に蝕んでいくのだ。管制人格の以前の態度を見るに、はやての足はこの性質によるものだろうが闇の書に持ち主として認められた今、その浸食は加速している可能性がある。

 

そして、闇の書は魔力を蒐集することでページを増やし、666ページ集めると主に大いなる力を与えるとシグナムに聞いたが、これには抜けている部分がある。それは闇の書が完成すると、ため込んだ魔力と主の魔力を無差別破壊の為に際限なく使わせるということだ。大いなる力を与えると謳いながらも、与えた力で主の魔力が尽きるまで暴走させていくもので、歴代の主もこの性質のせいで破滅していったのだ。

 

更にたちが悪いことにこれらの機能をどうにか改変しようにも、闇の書が完成後に認めた真の主でなければシステムへの管理者権限が使えないうえに、無理に外部から操作しようとすると主を吸収して転生するシステムもあるそうだ。そのことを考えると闇の書の完成前にどうこうしようとするのは恐らく無理だろう。

 

狙う隙があるとすれば完成直後だが、それには先の主への浸食や暴走の原因となっている物が邪魔になってくる。

歴代主の改変によって加えられた闇の書の自動防衛運用システム――<ナハトヴァール>。こいつは闇の書完成から一定時間が経つと、管制人格である彼女よりも闇の書の制御権が優先になるらしい。だが逆を言えば制御権が完全に移り切る前にシステムに手を加えるなりすることができれば何とかできる可能性があるわけだ。

 

簡単にいくとは思えないが望みがないよりはマシではあるだろう

 

そういえば闇の書を調べていく過程で他に気になる部分があったのだ。まだ断片的な情報しか見つかっていないが、どうやら過去に夜天の書を安全に管理・運用するために後付けされたシステムがあったようだ。柴天の書というらしいが、シグナム達や夜天の書の周りには見受けられないあたり今は機能していないのだろうか?

機能していれば闇の書制御の一助となったかもしれないが、無いものをねだっても仕方あるまい

 

頭の中を整理し終えた俺は軽くため息をつき目を開けると、シグナムに目線を合わせた。

 

 

「どこか疲れているようにも見えるが……大丈夫か?」

 

「ちっとばかし調べ物をしてて疲れてるだけだ。気にしなさんな」

 

「そうか。だかお前がそんな顔をしていては主はやても心配するだろう。あまり無理はするなよ」

 

「自分の限界ぐらいは分かってるさ。だからそんな心配すんなって」

 

俺は手をヒラヒラと気怠そうに振りながら返事をした。こちらの表情を見て察してくれる位には仲良くなったんだなぁ

 

俺は話を切り出すために軽く咳払いをして居ずまいを正すと、シグナムも雰囲気が変わったことを感じ、真剣な表情でこちらを見ていた。

 

 

「今日こうして話の場を設けたのは闇の書の事について聞きたいことがあるからなんだ」

 

「闇の書の事について?それなら初めて会った時にも話したと思うが」

 

「まあそうなんだがな。だが聞いた限りじゃどう考えてもロストロギアクラスの代物だったからな。管理局の知り合いに頼んで無限書庫っていう図書館で調べてみたんだよ」

 

「私達は闇の書のプログラムだ。あの時私達の知っていることを全て話したつもりだが、それ以上に何かあるとでもいうのか?」

 

闇の書のプログラムである自分達の知らないことなどあるのかと、シグナムは訝しむような表情でこちらを見ていた。

 

 

「別にお前さん達のことを信じてない訳じゃないさ。ただ、前にも言った通り、俺は闇の書の管制人格と会ったことがある。その時に聞いた内容で気になることがあってな。念のため調べてたんだよ」

 

「成る程、事情は分かった。それで、お前が無限書庫とやらで調べてみて改めて私に聞きたい事とは何なのだ?」

 

ここからが本題だ。初めて会った時、本来の名である夜天の書の事について聞こうとしたら、彼女達は突如として謎の頭痛に苦しみだして夜天の書についての質問を記憶できていなかった。

 

闇の書の欠陥についても、もしかしたら意図的に記憶を消されているのかもしれない。そんな彼女に闇の書の真実を伝えたらどうなるのか。

あわよくば問題解決の為の協力者を増やせればいいんだが――

 

(正直望み薄だな……)

 

とはいえ闇の書のプログラムであるヴォルケンリッターを頼ることが出来るか否か、ハッキリさせるためにも今回の対話は必要だ。

俺は意を決して、シグナムにこれまで調べてきたことを伝えた。

 

話を聞いている間、彼女は終始険しい顔をしており、はやての身が危ないことを悟ると顔を青ざめさせていた。

 

 

「これが俺がここ最近調べて分かったことの全てだ」

 

「主はやての足の病気の原因が闇の書だと……?それに防衛プログラムの暴走だと……今話したことは本当なのか?」

 

「ああ、そうだ。少なくとも時空管理局で管理している資料を閲覧して得た内容だから、多少の誤差はあれど間違いはないんじゃないかとは思ってる」

 

内容を改竄された可能性が絶対に無いとは言えないが、数多ある書物やロストロギアの中で闇の書の内容だけ書き換えることはないだろうと思いたい

それにいずれの文献でもおおよそ暴走の件や持ち主を破滅に導く旨の記載がある辺り信憑性は高そうだ

 

 

「そうか……お前がこんなたちの悪い嘘を言うような男ではないことは分かっている。だがそれでも信じたくないというのが本音だ」

 

「まあ無理もないさ。闇の書のプログラムであるお前さん達も把握してない内容みたいだしな。信じろって方が難しいだろう」

 

「だが事実だとしたら早急に対策を練らねばならないだろう。他の皆にもこの内容を共有して――」

 

それは突然のことだった。シグナムが突然言葉を切ったと思ったら、俺達の間に闇の書が割り込んできたのだ。

 

途轍もなく嫌な予感がする

 

 

「闇の書……?いったいどうしたというのだ?」

 

「待てシグナム。嫌な予感がする……今すぐこの場から離れ――」

 

《魔力蒐集の障害となる情報を検知。直ちに対象のプログラムを修正します》

 

「なっ――!?」

 

「ちっ!」

 

 

恐らく初めてシグナム達と会った時同様に記憶を消すつもりなのだろう。嫌な予想が当たってしまったな……!

 

 

闇の書がベルカ式特有の魔法陣を展開して禍々しい光を放つと同時に、シグナムは頭を抱えだして苦しそうにしていた

 

 

「ぐっ……くっ……あああああああ!?」

 

「シグナム!おい、しっかりしろ!!」

 

俺はすぐさまシグナムに駆け寄り闇の書の妨害を試みようとしたが、その身体に触れた瞬間――

 

 

――バチバチバチッ!

 

「つっ……!?」

 

かつて受けたプレシアの雷撃を思わせるような衝撃が走り、俺は即座に手を離した

余計な干渉はさせないってか……!

 

俺は他に何か打てる手が無いか思案しようとしたが、プログラムの修正とやらが想像以上に早く、いつの間にか闇の書からは先程までの光が消えて、すぐ近くでシグナムが肩で息をしながら頭に手を当てていた

 

 

「シグナム!大丈夫か!?」

 

「あ、ああ。すまない、大丈夫だ」

 

俺は彼女の息が整うのを待ち、落ち着いたのを見計らって確認を取ることにした

 

 

「シグナム。早速で悪いが聞きたいことがある。さっきまで話していた内容は覚えているか?」

 

「いや……先程の頭痛のせいか、頭に(もや)がかかっているようで何も思い出せん……私達はどういったことを話していたんだ?」

 

「それは――」

 

数瞬の逡巡ののち、闇の書を視界に収めた俺はシグナムに告げた

 

 

「別に大した内容じゃないさ。単なる世間話みたいなもんだから、あんまり気にしなさんな」

 

「だが今日こうして話の場を設けたのには何か理由があるのではないのか?」

 

「ああ、そのことか。なーに、最近はやてのとこには中々来れなかったからな。ケータイで連絡が取れるとは言え直接お前さんの目から見た近況を聞きたかっただけだよ。それもさっきの会話で聞けたし、大丈夫さ」

 

シグナムは若干納得のいっていないような表情をしていたが、俺は敢えてそれを無視して荷物をまとめた

 

 

「もう行くのか?」

 

「聞きたいことも聞けたし、この後はちと用事があるんでな。悪いがはやて達にもよろしく伝えておいてくれ」

 

「分かった。また今度来る時はゆっくりしていくといい」

 

俺は返事代わりに気だるげに手をひらひらと振りながらその場を後にしようとしたが、最後に言い忘れていたことを思い出した

 

 

「なあ、シグナム。お前さん達ははやてと約束したんだよな?はやては闇の書の完成を望まないから魔力の蒐集なんてしないって」

 

「そうだ。闇の書の大いなる力があれば恐らく足も治るだろうとお伝えしたんだが、他の人に迷惑をかけてまでそんなものを手に入れたくないと聞き入れてくださらなくてな。だからこそ私も騎士の剣にかけて誓ったのだ。主はやての望まぬ魔力の蒐集は行わないと」

 

「そうかい。俺としてもそうあってくれることを願うよ。――よっし、それじゃあまたなー」

 

「ああ。また会おう」

 

今度こそその場を後にし、俺は八神宅を出て帰路についていく中で物思いに耽っていた。

 

 

(やっぱり駄目だったか……それに今回直接見ることになったが、やはり闇の書に記憶を消されているみたいだな。となるとシグナム達は闇の書の問題解決の力にはなれないと見た方がいいな。それどころか最悪の場合、闇の書の干渉によって敵対する可能性もありそうだ)

 

問題は色々と山積みだ。はやてや管制人格の救出に闇の書の暴走の阻止……そして恐らく管理局絡みであろう謎の視線への対処。

正直言って手が足りないな

 

(かといってなのは達を巻き込むわけにはいかんしなぁ。今は嘱託魔導士の試験やらで忙しそうだし、管理局の一部が絡んでいそうなことには余計関わらせたくない。となると……)

 

 

「背に腹は変えられんし、リニスを頼る……か。本当ならあの子も巻き込みたくは無かったんだがなぁ」

 

まあ言わないまま事を進めて後でばれた結果、またとんでもなく怒られる――なんて自体を避けるためにも話しはしておくか。

協力者はどちらにせよ必要になるだろうしな。決して怒られたくないからでない、うん

 

リニスに協力してもらうことを決めた俺は念話で相談があることを伝えて家に帰っていった。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「なあリニスさんや」

 

「何でしょうか」

 

「どうして俺は正座させられて――すみません、俺が悪かったですはい」

 

「分かっているなら聞かないでください……」

 

家に帰ると俺はリニスを部屋に呼び、はやてや夜天の書、そして闇の書のことや今置かれている状況とこれまで調べてきたことを全て伝えた。

まあその結果が今こうして正座させられることになったわけなんだが

リニスは盛大なため息をつきながら頭を抱えていると、こちらを向いてジト目を浮かべていた

 

 

「まあ今回は事前に話をしてくれただけよしとしましょう。それにしても遅すぎる気はしますが……」

 

「そこは勘弁してくれ。俺にも色々と考えがあったんだ」

 

「仕方ありませんね……貴方はそういう人ですし、言っても聞かないでしょうから。ですが貴方が急にデバイス製作の事を授業に組み込むよう言ってきた訳が漸く分かりました。その闇の書……いえ、夜天の書でしたか?そのロストロギアをどうにかしようとしているんですね」

 

「話が早くて助かる。まあ今のところ机上の空論だが、解決方法は練ってある。正直アリシアの時以上に不確定な要素が多すぎて分の悪い賭けではあるんだが、なにもしないよりはマシだと思ってな」

 

現状の情報だけでは今考えている以上の最善策は思い付かない。そのことに俺は苦虫を噛み潰したような顔をしていると、リニスは真剣な表情でこちらを見つめていた。

 

 

「マスター。貴方の考えているその方法というのは、また貴方が無茶をするようなことですか……?」

 

「そりゃ――」

 

そりゃ無茶ぐらいはするだろうさと。俺はおどけながら軽口を叩こうとしたが出来なかった。

リニスの声やその手が震えていたことに気付いたからだ。

 

今までも散々無茶をして心配をかけてきたんだ。中には生死に関わるようなこともあっただけに、リニスはそれを心配しているんだろう。

それでも――

 

 

「悪いな、リニス。例え無茶であろうとも、俺の手の届く範囲にいるあの子達を救うためなら、俺は出来る限りのことをしたいんだ」

 

「貴方という人は――。はあ……分かりました。止めても無駄でしょうし、貴方は貴方の思うがままに行動してください。きっとその方が事が上手く運ぶでしょうし、フォローはお任せください」

 

「そいつぁ助かる……いつもありがとな」

 

「いえ、これが私の役目ですから」

 

リニスは途中までずっと渋い顔をしていたが、最後には苦笑しながら仕方ないなという表情でこちらを見ていた。

何だかんだ言いつつもこちらを信じて好きにやらせてくれる当たり、彼女には本当に頭が上がらないな

 

 

「それでサイフォン。貴方の考えている方法というのはどういったものなんですか?」

 

「ああ、それはだな――」

 

俺は現状ある情報での解決方法をリニスに説明した。聞いている途中からリニスは頭を抱えだし、先程よりも渋い顔をしながらまたジト目でこちらを睨んできた。

まあ成功する保証もなく、下手したら()()()()()()()()()()()()()()()()()からなぁ。何より俺自身への負荷がとんでもないのも拍車をかけてるだろう

 

 

「全く……貴方の考えることはいつもどこかぶっ飛んでいるというか、自分の身を顧みないというか……」

 

「いつもって訳じゃないさ。たまたまその時取れる手段がそれしかないってだけだ」

 

「もういいです。貴方が無茶し過ぎないように私も付いていますから、()()()良しとしましょう」

 

「ははっ、頼りにしてるぜ」

 

 

リニスがまだ何か言いたそうな表情をしていたが、協力者の件は一先ず大丈夫だろう。

後は闇の書についての情報を集めつつ例のデバイスに改良を加えていき、(きた)るべき時に備えて魔力とエーテルを()()しておかないとな。それに、シュッツライゼンデのフレームも今より更に頑丈にして俺自身も鍛え上げないと恐らく()()に耐えられないだろう……やることは多いがなんとか間に合わせねえと

 

時間を無駄にしないためにも、俺とリニスはその日の夜から互いに役割を分担し闇の書問題解決のために奔走していった

 

 

 

 

 

そして月日は流れて迎えた12月2日――

 

その年の冬に物語は大きく動き始めた

 

 

 

 






大分期間空きましたが更新です。説明詰め込んだし駆け足ぎみだけど、次回からはA's本編に入ります。
サイフォンの考えている解決方法はアリシアの時同様後々明かす予定です。
気まぐれ更新なのであまり期待せずお待ちいただければと

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