光を支えるもの   作:黒の眷属

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時間軸的には本編開始ですが、今回も大体説明回になっています





新たな戦いの火蓋

~サイフォンSide~

 

 

 

 

 

リニスと闇の書対策に乗り出してから約3ヶ月程経過したある日。12月に入り気温も下がってきており、世間では季節はもう冬だねーなんて声も聞こえてくるぐらいだ。

 

そんな中、普段は手分けしてどちらか片方が来ていたが、今日俺とリニスは調査に追い込みをかけるべく2人で無限書庫で闇の書についての情報を集めていた。

 

無限書庫には膨大な数の本が所狭しと並んでいる。俺が調べたことなんてほんの一握りにも満たないだろうから、リニスに事情を説明したあの日から手分けして調べることにしたのだ。

 

だが成果はあまり芳しくなく、得られる情報に目新しいものはあまり無かった。

しかし逆を言うと今まで調べた内容とあまり変わりがないということは、闇の書の暴走については完成したらほぼ間違いなく起こるだろうということだ。

 

 

そしてその闇の書だが現在少々不味いことになっている。

ヴォルケンリッター達がどうやら()()()()()()()()()()()()なのだ。

はやての家に行っても闇の書……夜天の書からは特に大きな魔力は感じないのだが、妙な違和感を感じるのだ。それに11月頃を境にシグナム達が個々に外出する機会が途端に増え出していた。今までは、はやてと常に一緒と言ってもいい位いつも居た筈なのにだ。

 

それにうまく隠蔽しているようだが、以前騎士甲冑の試運転に付き合った際に使用した転移魔法の痕跡が度々見つかっている。

恐らく別世界に行って魔力の蒐集を行っている可能性が高いが、現状裏を取ることができていない。そのうえ下手に追求すると何をしでかすか分からない以上、俺はリニスに話した闇の書問題の解決方法のプランを切り替えることにした。

 

 

リニスに話していた解決方法は2つあった。

当初やろうとしていたのは、俺とリニスで闇の書を完成させて、闇の書の制御権が管制人格からナハトヴァールに完全に移る前にそのシステムに介入することだ。

まず闇の書の完成についてだが、これには俺の魔力を使うつもりだ。闇の書の魔力蒐集は本来、魔導士のリンカーコアに対して行われる。そこで俺は擬似的なリンカーコアを生成して、それにありったけの魔力を毎日込めていき、666ページ分の魔力を蒐集させようとしていた。

過去の文献から必要な魔力量自体は算出できていたから、後はそれに達するように毎日魔力を込めるだけだった。まあその結果、毎日のように魔力切れを起こしてぶっ倒れそうになってはなのは達に心配をかけていたんだが

 

次に闇の書のシステムへの介入だ。夜天の書の歴代主の誰かによって行われた悪意ある改編。その積み重ねにより夜天の書本来の姿が分からないのだ。

無限書庫を調べ尽くせばもしかしたら分かるかもしれないが、現実的に考えてあそこからピンポイントでその内容を探すのは無理だ。それこそ砂漠の中で砂金を見つけるようなものだろう。

 

だからこそ、ここで俺が夜天の書の管制人格と出会った日からリニスに教わってきたデバイス作成が活きてくる。

あれから作り始めていた魔道書型のストレージデバイス……そこに管制人格を闇の書から切り離して新たに組み込むのだ。

 

以前彼女(管制人格)と会話した際には、彼女(管制人格)自身には問題は見受けられなかった。となると問題があるのは闇の書となった夜天の書本体だ。そこでリニスには過去と現代の両方のデバイス技術を調べてもらい、デバイスから管制システムを切り離すプログラムを組んでもらった。

リニスのデバイスマイスターとしての腕前もあるが、無限書庫で調べた情報を元にプログラム自体は割と早めに完成させることができた。

後はこれを闇の書を完成させて、ナハトヴァールに制御が移る前にはやてに使ってもらい、彼女(管制人格)を俺謹製のデバイスに避難させれば第一目標の達成だ。

その後は無限再生をする闇の書とナハトヴァールを、再生する(いとま)を与えないぐらいの超火力で塵1つ残さず消滅させればミッションコンプリート。

 

まあ、その最後の1つがある意味鬼門ではあるんだが……

 

現状俺とリニスで火力が高いのはリミットブレイクもある俺の方だ。だがハッキリ言って元の身体であったとしても、リミットブレイクの一撃だけで完成した闇の書を消滅させるのは不可能だろう。

 

ならばどうするか――

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

リミットブレイクは1度全力発動するだけでも身体やデバイスにかかる負荷が尋常じゃない。現にジュエルシードをフェイトと封印する直前に発動した時もボロボロになっていたからな。

そもそも魔力リソースが足りなくて連発する間もなく、魔力が枯渇するだろう。

そこで俺は疑似リンカーコアに魔力を込める傍ら、体内エーテルを凝縮してクリスタルとして抽出していた。リミットブレイク発動時にこのクリスタルからエーテルを吸収し、即席の魔力リソースとして使うことで足りない分を補うのだ。

 

次に問題となるのは俺の身体とデバイスだが、俺自身の方は無限書庫から得た知識を参考にリミットブレイクの術式を改良し、火力の向上と反動の軽減に成功した。それでも連発する都合上、身体に限界が来るのは目に見えてたから少しでも長く持たせるよう、隙間時間は全て身体を鍛えることに費やした。

魔力もエーテルもカツカツの状態での鍛練は正に地獄のようだった……

 

そしてデバイスの方はリニスに頼んで耐久性をより重視してカスタマイズすることで、数発程度なら耐えられるようにしてもらった。その分魔力効率なんかは下がってしまったが、背に腹は変えられんからな

 

 

そんな形で途中までは順調に進んでいた計画だが、ヴォルケンリッター達が魔力蒐集を始めた疑いが出てからはもう1つの計画に変更を余儀なくされた。

 

そのもう1つの計画というのが、俺達以外の者が闇の書を完成させた場合の物だ。

 

俺達以外に闇の書完成に動き出す可能性があったのは管理局絡みであろう謎の視線の主だ。

正直こちらはあまりにも情報が無く、計画自体もあくまで保険として用意していたものだったが、まさかシグナム達相手に使うことになるとはな……

 

計画の内容としては、闇の書を完成させた直後を狙い対象を制圧する。それ以外は基本的に1つ目の計画と流れは同じだが、自分達で闇の書を完成させる必要がない分、疑似リンカーコアに使った魔力をそのまま闇の書を消滅させるための魔力リソースとし使えるのが大きいな。

その分闇の書を完成させた者――シグナム達を先に無力化する必要があるが、なんとか説得できないだろうか……

 

 

そんなこんなで闇の書対策に日々忙殺されていた日常の中、嬉しい出来事もいくつかあった。

 

まずなのはやフェイト達が嘱託魔導士の試験に合格することができたのだ。その結果が後押しする形となり、フェイトの方の裁判は晴れて無罪で幕を閉じることとなった。

お陰で今度はリンディさんの他になのはやフェイトの2人にも、いつ嘱託魔導士になるのかせっつかれる羽目になった訳だが……あとクロノもか

 

 

そのクロノからも吉報が届き、プレシアの過去の事故における彼女の正当性が証明されつつあった。クロノが賢明に調査してくれていたのもあるが、プレシアの当時の部下の証言があったりプレシア自身も捜査に協力的だったこともあり順調に進んでいるようだ。聞いた限りでは今ではもうすっかり憑き物が落ちたようで穏やかでいるそうな。

後は彼女が開放されて娘達と平穏に暮らすことができれば万々歳なんだが、それにはもう少しかかりそうかねぇ。クロノも別の件で忙しくなってきたって聞くしな

 

 

そして嬉しい出来事の中でも一番のメインイベントが1()2()()2()()の今日行われる。

なんと、裁判を終えたフェイトがアリシアやアルフ達と一緒に海鳴市にやってくるのだ。しかも先の事件の休暇も兼ねてリンディさんも一緒に来るらしく、4人で暫く海鳴市に住むことになるそうな

 

俺とリニスはなのはに気を遣って用事があるからと今日は敢えて会わないようにして、無限書庫で情報収集に勤しんでいると言う訳だ

その分フェイトには明日は絶対に会おうと念を押されてはいるし、今の内に少しでも有益な情報を集めておかないとな

 

 

「フェイトやアリシアは今頃なのはさん達と学校に行ってる頃でしょうか」

 

「だなー。リンディさんもあの2人を一緒に通わせる辺り気が利いているというかなんというか」

 

そう。フェイトとアリシアはこちらに住むにあたって、なのはやアリサ、すずか達の通う私立聖祥大学付属小学校に入学することになったのだ。

ちなみに俺は平日だというのに無限書庫にリニスと居るが、以前のジュエルシード事件の時同様、どうしてもやらなきゃらないことがあるということで魔法の事情は伏せ両親を説得して今は休学中だ。なのは達にはインターミドルチャンピオンシップとかいう、全管理世界の10代の魔導師達がスポーツとして魔法戦技術を競う大会に出る為に暫く休学すると伝えている。今の所はバレていないが、サイフォン君なら絶対優勝できるよ!とか、絶対応援しに行くからね!とか言われてしまっているので、本当のことがバレた時のことを考えると憂鬱でしかないな……

しかもなのは達を誤魔化す案をリニスに伝えた際に、それもアリですね……何てことを言ってた気がするが絶対に気のせいだ、うん。いやそうであってくれ

 

 

「本当にあの方には感謝しかありません……さて、明日はフェイト達と久々に会えるのですし、その分今日はめいいっぱい調べておきましょうか!」

 

「おう。とは言え最近はずっと忙しかったんだし、あんまり根を詰めすぎるなよー」

 

「心配無用ですよ。それより貴方の方が身体的には無理をしているんですから、くれぐれも倒れるようなことにはならないでくださいよ」

 

「へいへい」

 

一先ず魔力とエーテルに関しては何とか目標値に達したから以前程疲れる心配はなさそうだが、リミットブレイクに少しでも長く耐えられるように今度は鍛錬の量を増やしていかないとな……

 

その後も俺とリニスは闇の書の情報集めを続け、時間は過ぎていった。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「サイフォン。もうすぐ夕飯の時間が近いですし、そろそろ帰りましょう」

 

 

「んぁ?もうそんな時間か」

 

あれから思いの外、時間が経っていた様で無限書庫の調査チームの人達の姿も(まば)らになっていた。

 

 

「ぼちぼち帰るとしますかね。そっちの方は何か収穫はあったか?こっちは正直あまり芳しくないな」

 

「そうでしたか。私の方は貴方が前に話していた紫天の書――でしたか?断片的ではありますがそれに関する記述や術式があったので、管制人格さんを助けるプログラムに組み込めそうですね」

 

「おっ、そりゃ朗報だ。しっかし、よくもまあそう新しい情報を見つけてくるもんだ」

 

「これでも貴方の先生ですからね。生徒には負けていられませんよ」

 

リニスは腰に手を当てながらフフンと鼻を鳴らして自慢気にしていた。実際ユーノに教えてもらった読書魔法や検索魔法を直ぐに使いこなしていたり、更には自分で術式をアレンジして効率を上げていたりとリニスは俺なんかよりも早いペースで調査を進めていた。

 

戦闘はともかく、魔法に関してはやっぱりまだまだ師匠(せんせい)には敵わんな

 

俺が苦笑しながらリニスの方を見ていると、突然ケータイが鳴り出した。どうやら電話が掛かってきたようで、相手は――クロノ?

 

 

何方(どなた)からですか?」

 

「クロノだ。珍しいこともあるもんだな。ちょっと失礼するぞ」

 

「ええ」

 

もしもの時のためにクロノには番号を教えて、アースラからも電話が繋がるようにしてもらっていたのだが……妙な胸騒ぎがする

 

 

『もしもし、クロノか?いったい――』

 

『サイフォン!大至急地球に戻ってきてくれ!()()()()()()()()()()()()()!!!』

 

『なっ!?』

 

電話を繋いだ瞬間、開口一番に言われたのは耳を疑うような言葉だった。()()()()に危険が迫っているだと?

 

 

『おいクロノどういうことだ!あの子達にいったい何があったんだ!!』

 

『正確な状況はまだ完全には把握しきれていない。だが、海鳴市内で大規模な結界魔法の発動が確認された。その範囲内になのはの家も含まれているんだ。母さん達の住まいも含まれてはいるが、あそこは魔力を隠蔽する魔法をかけてあるから暫くは安全だろうが、見つけられるのも時間の問題だ』

 

『なんだって急にそんなことに……まさか――』

 

他に転移した者が居ない限り、いま海鳴市内で魔法を使える者は限られている。なのはやフェイト、それにアリシアとリンディさん、そして……

 

 

「ヴォルケンリッター……あいつら!!」

 

『どうしたサイフォン、何か心当たりがあるのか?』

 

『――いや、分からねえ。もしかしたら例の黒ずくめかもしれねえが、とにかく行ってみねえと。俺とリニスは現地に急行する。そっちはどうするんだ?』

 

『もしかしたら僕が今担当している事件に関連する可能性があるから、武装局員や結界魔導士を手配し次第直ぐに向かう。それまで彼女達の事を頼む!』

 

『言われるまでもねえ。時間が惜しい、また後でな!』

 

『ああ、健闘を祈る』

 

不味いことになった。まさかなのは達が狙われることになるとは……

よりにもよって俺とリニスのどちらも居ない時だなんて――いや、もしかしたらそれを狙っての事なのか?

 

様々な思考が頭をよぎるが、今はなのは達の安全が最優先だ。

 

 

「サイフォン。クロノ執務官はなんと?」

 

「詳細は道すがら話す。今すぐ地球に戻るぞ!なのはやフェイト達に、危険が迫っている!!」

 

「――っ!?分かりました。事情を説明して直ぐに帰還できるよう手続きを行ってきます!貴方はなのはさん達と連絡が取れないか試してみてください!」

 

リニスが直ぐにその場を離れていったのを確認した俺はなのはやフェイトにケータイで連絡を取ろうとしたが、案の定繋がることはなかった。恐らく結界に阻まれているのだろう

 

街中で魔力蒐集を行うなんて目立つようなことをする辺り、向こうも余裕がないのかもしれない。

 

もしなのは達の身に何かあったその時は――

 

俺は握りしめた拳から血が滴るのを感じながら覚悟を決めた。

手遅れにならないことを祈りつつ戦士のバリアジャケットを身に纏い、手続きを終えたリニスがこちらに走ってくるのを確認すると、俺達は急ぎ地球への帰路についた。

 

 

 

新たな戦いの火蓋が切って落とされようとしていた

 

 

 

 







次回からは本格的に本編開始です
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