ちょっと長くなりそうだったんで前後編で分けます。
~サイフォンSide~
ヴォルケンリッターがなのは達を襲撃した日の翌日。俺とリニスは
俺達のいる工房は自宅に作った転送ゲートを渡った先の、海鳴市内にある近くの山にあるものだ。ここではリニスが俺のデバイスを作ったりした場所で、今では俺が夜天の書救出のためのデバイスを作っている場所でもある。魔力探知妨害や人避けの結界も張っているから余程の事がなければ見つかることもないだろう。
そういえば俺がデバイス作成を始める時に初めて訪れた時は、その設備やデバイス作成の為の素材の数に目を見張ったものだ。
いったいどこでこんなものを用意したんだと以前聞いてみたが、その時は意味深な笑顔と共にはぐらかされてしまったんだよなぁ
それはともかく
「んにしても、昨日の策は思いの外上手くいったな」
「あの場から離脱する時に、クロノ執務官が近くにいた時は冷や汗が止まりませんでしたよ……」
「確かに。あれは焦ったなー」
俺達があの場を去る時にリニスに話した策。それは幻影魔法による分身を生み出して囮にしている間に、俺達はバニシュの魔法で姿を消しつつ、魔力探知を妨害しながらその場を離脱するというものだ。
その時に分身の核として闇の書用に作ったクリスタルを砕いたものに魔力を籠めることで、分身全てに魔力反応を持たせてどれが本物か分からないようにしたのだ。そして証拠隠滅のために誰かが近づいたり、攻撃を受けた場合はその場で自壊するようにした。
分身のデザインはあの時点では姿が割れてなかった、使い魔の女性が変身していた仮面の人物をモデルにした。
俺達の姿を見られるわけにもいかなかったしな
「まああの後もこっちの方に追手が来てる感じはなかったし、上手いこと撒けただろう。それよりも今はあの使い魔だ。目を覚まし次第、主のことや俺達を監視していた
「素直に話してくれるでしょうか……?」
「素直に話すならそれでいいさ。そうじゃないなら話させるまでだ」
この時の俺は、はやてや夜天の書が関わっていること。そしてなのは達まで巻き込んでしまったことによる苛立ちもあり、表情や声色がまるで
事実、此方を見ていたリニスは一瞬驚いた様な表情をした後に、不安げな顔で俺を諭してきた。
「――あまり乱暴なことはしないでくださいね」
「……善処しよう。――っと、そろそろ目を覚ましている頃かもしれないし、一旦様子を見に行くか」
「あっ――いえ、分かりました」
リニスの様子を見てバツが悪くなった俺は、その場から逃げるように隣にある使い魔の女性を寝かせている休憩室に向かっていった。
実際、何かが動いている様な気配を感じたし丁度良いだろう
部屋の前に立つとリニスが隣に近付いてきたが、俺はそれを手で制して念のため
「起きているかー?起きているなら返事をしてくれー」
――シーン
「サイフォン。やはりまだ目を覚ましていないのでは……?」
「いや。さっき、何かが動く気配を感じた。お前さんは念のため俺の後ろにいろ」
「それなら私が先にドアを――ってマスター!?」
使い魔としては主に庇ってもらうのが不服だったのか、リニスは不満げな声を上げて前に出ようとしていたが俺はそれを無視して扉に手を掛けた。
そして扉を開け部屋の中を見た瞬間だった。目の前に魔力弾が眼前に迫っており、誰が見ても避けられる距離ではなかった。
リニスはその様子を後ろから見て思わす叫んでいたが、当の本人である俺はいたって冷静だった。
魔力弾はそのまま俺の顔面に直撃すると瞬く間に霧散していた。
事前に掛けていた
「ちっ、バリアを張ってたか……!」
「目覚めの挨拶にしちゃあ随分と過激だな。別にお前さんを今すぐどうこうする気はないんだから、そう警戒しなさんなって」
「……」
「信じられないって顔だな。俺達にその気があるならお前さんをそんな風に寝かせてないし、傷の治療だってしちゃあいないぞ?」
俺の言葉に女性はふと自分の額に手を当てて考え込んでいるようだった。
昨日盛大に頭突きをかましたからな。治療してなければ今頃真っ赤に腫れていただろう
するとやがて警戒した様子は残しながらも、女性は構えを解きこちらをじっと見つめてきた。
「分かってくれたようで何より。こんなとこで話すのも何だ。向こうの部屋で話そうか。ああ、この部屋みたいに
「――っ!……わかった」
そう、この部屋には彼女が設置したバインドの魔力の揺らぎのようなものを感じた。つくづく用心深いというか、目覚めてからの短時間でよくやったものだ。
俺が密かにこの使い魔の女性の優秀さに感心していると、ふと背後から視線を感じた。
「……?どうしたリニス?」
「いえ――何でもありません!お茶を淹れてくるので居間で待っててください」
「あ、ああ。よろしく頼む」
何故か少し頬を膨らませていたように見えたが、どうかしたんだろうか?
使い魔の心主知らず。
サイフォン達は隣の部屋に移り、リニスがお茶を持ってくるのを待っていた。
その間も目の前の女性はずっとこちらを警戒するように睨み付けていた。
まあ同じ状況だったら俺も同じだったかもしれないが、居心地悪いったらないな
そんな重苦しい雰囲気の中腕を組みながらどう話を切り出していくか考えていると、リニスがやってきてお茶を配り終えると俺の隣に座ってきた。
「さて、と。そんじゃあ昨日のことについて話をしようじゃあないか。まあ正確には今までのことについても何だが……。俺はサイフォンだ。こっちは俺の使い魔のリニス。あんたの名は?」
「……リーゼアリアよ」
「そうか。なあ、リーゼアリア。あんたは何で俺やはやてのことを監視していたんだ?」
「……」
「お前に語るようなこと何もはない――ってか?まああくまで俺の予想なんだが、お前さんとその主は闇の書の完成を目指してるんじゃないかと思うが、違うか?そうじゃなかったら態々ヴォルケンリッター達を助けるような真似はしないんじゃないかね」
「……」
使い魔の女性……リーゼアリアは依然として沈黙を貫いたままだった。俺が昨日彼女が変身魔法で姿を変えていたときの声を真似しながら言った時は、眉間に皺が寄っていたから全く聞いていないと言うわけではないようだ
聞く耳すら持たないというのならこちらも手段は選ばなかったが、まだ交渉するだけの余地はありそうだ
うちの使い魔の為にも手荒なことは避けたいからな
というわけで俺は早速カードの1つを切ることにした。無限書庫で闇の書のことを調べていく過程で知った、
「そういえば俺は以前、とある事件のことを知ったんだよ。何年前のことだったかねぇ」
「……?」
突然話を変えて自分語りのようなことを始めた俺に、リーゼアリアは訝しげな顔を向けてきた。
無視はしてないみたいだな。それなら好都合だ
俺は態とらしく頬杖を付きながら、想いを馳せるかのように遠くを見つめるような表情で続けた
「あぁ、そうだ。
「――っ!?」
俺の言葉にリーゼアリアはその表情を驚愕の色に染めながら見つめてきたが、直ぐに取り繕うかのようにこちらを睨み付けてきた。
その様子に満足した俺は、居住いを正すと続きを話し始めた
「管理局が闇の書を見つけ出して、魔導師4人がかりで厳重封印して主と一緒に護送している時だった。突如として闇の書が暴走し、護送していた艦船エスティアの制御を乗っ取った。そしてそのまま合流予定だった本隊と交戦し、最後は魔導砲アルカンシェルによって撃墜された。当時エスティアの艦長だった人物の名は――
「……アタシが関係者だったら何だっていうのよ」
「なーに。あんな凄惨な事件があったっていうのに、闇の書の完成を助長しようとしているあんたらの目的が何なのか気になってるってだけさ」
「それは……」
リーゼアリアの表情には迷いが見えた。話すべきか否か。もうひと押しみたいだし、もう1枚カードを切りたいところだがその前に確認しなければならないことがある
「なあ、1ついいか?」
「何よ?」
「お前さんの主は闇の書を完成させて良からぬことを企んでるって訳じゃないよな?」
「――っ!お父様はそんなことしたりしない!!あの日クライドを失ってから今までずっと――」
と、そこまで言うと彼女は口を閉ざしてしまった。余計なことを喋ってしまったと渋い顔をしていたが、俺にはそれだけで十分だった
「なあ、リーゼアリア。俺達と協力しないか?」
「協力ですって?」
「ああそうだ。お前さんの様子から少なくとも闇の書を完成させて悪いことしようって感じには見えなかったからな。俺達としても人手が増えるのは歓迎だし、何より管理局の動向を把握できるメリットもあるからな」
「アンタ達と協力することでアタシ達に何かメリットはあるの?アンタが強いのは分かったけど、それだけで闇の書をどうにかできるとは思えないわ」
リーゼアリアは目を細めながらこちらを値踏みするように見てきた。闇の書の驚異を知っているだけに一人や二人増えたところでどうにもならないと思っているのだろう
故にここでもう1つの手札を切る
「俺達には闇の書――正確には闇の書の防衛プログラムを消滅させるプランがある。その為のデバイスも用意してあるし、必要な魔力リソースも準備している。そして信じるか信じないかはお前さん達次第だが、俺は闇の書――正確には夜天の書の管制人格と会話したことがある」
「何ですって……?闇の書は無限に再生を繰り返すのよ。それをいったいどうやって……。それに管制人格と会話って――過去の文献を見ても暴走している姿しかなくて会話の余地なんてなさそうだったけれど」
「さてな。さっきも言ったが、信じる信じないはお前さん達次第だ。対防衛プログラム用プランの具体的な内容については話してやってもいいんだが、お前さん達がやろうとしていることについても話してもらうことが条件だ。協力関係を結ぶかどうかはその後でもいいだろう」
「……アタシの一存では決められないわ。お父さ……主と話をして決めたいのだけれど」
「いいだろう。ならお前さんに渡すものがあるから待ってな」
俺は徐に立ち上がり作業場に行って青い石を手に取り戻ると、彼女に2つ差し出した
「これは……何かの結晶?」
「テレポストーンといって、俺の作った魔法の道具みたいなもんだ。まあ簡単に言えば転移の魔法が籠められた魔法石みたいなもんだ。転移先はこの工房に設定してある。それを使って明日の朝、地球時間の6時にまたここに来な。その時に答えを聞かせてもらうさ。できればお前さんの主とやらとも話してみたいから連れてこれるなら連れてきてくれ」
「確約はできないけれども善処するわ。それとあと一人連れてきたいからもう1つもらえるかしら」
「ああ、構わんさ」
恐らくリニスが相手にしていたもう一人の仮面の分だろうか。となると使い魔が二人にその主が一人か。仮に交渉が決裂し、最悪戦闘になったとしても遅れを取るつもりはないが、工房や近隣に被害が出るのは避けたい。
念のため備えだけはしておくか。
俺はもう1つのテレポストーンを渡すと、直ぐにでも戻って話をまとめるとのことなので工房の入り口まで見送ることにした。
「そんじゃまた明日。色好い返事を期待したいもんだ」
「決めるのはアタシじゃないから。でもアンタ達と敵対するのはリスクが高そうだし、そっちのプランも気になるから少しくらいは口添えしておくわ」
リーゼアリアは肩を竦めながらそう言うと踵を返し、変身魔法で昨日の仮面姿に変身すると転移魔法を展開してその場を去っていった。
さて、明日までの間にできる限りのことをしておこう。管理局の人間を敵に回す何ていう最悪の事態が起こる可能性が0ではない以上、最善を尽くしておきたい。
それから俺はリニスに明日話す内容については軽く打合せをした後に、交渉が決裂した場合についてのことを相談し、準備を進めていった。
次回で出す予定だったキャラ出せたらいいなと
ただSAOFD発売されて暫くそっちに注力するんで更新は遅くなるかなぁ