光を支えるもの   作:黒の眷属

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勉強会

~サイフォンSide~

 

 

部屋に戻るとそこにはリニスが座って待っていた。

 

「先にお邪魔してますよ」

 

「ああ、待たせちまって悪いな」

 

俺にあてがわれた部屋は、最初に眠っていたところだった。

畳の部屋は馴染み深いので素直にありがたかった。

 

この屋敷は結構広いらしく、部屋も余っていたようでリニスは畳ではない部屋にしてもらったようだ。

 

 

「それではまずは私達の世界の魔法について教えていきましょうか」

 

2人が集まったのは他でもない、魔法の勉強のためだ。

早速リニスに家庭教師としての仕事を依頼したのだ。

 

 

「私達の世界の魔法は魔力を消費して発動される現象のことを指しています。このあたりは貴方の世界の魔法ともあまり差がないかと思いますが」

 

「ああ、そうだな。俺の世界では生命エネルギーであるエーテルを用いることで超常の現象、いわゆる魔法を発動させていた」

 

「エーテル……ですか。やはり聞き覚えの無い単語ですね」

 

リニスはオトガイに人差し指を当てながら首を傾げていた。

 

 

「エーテルというのはもしかして私の治療をする際にも使ったりしましたか?」

 

「ああ。こっちの世界のことはなにも分からなかったからな。最初はエーテルを注いで直そうと思ったんだが、込めてるそばから漏れ出ていてな。その時に偶々こっちの世界の力と思われるもの、リンカーコアの存在に気付いて魔力も一緒に入れたんだ」

 

「それで魔力が制御できず垂れ流し続けた結果、気絶してしまったと」

 

するとリニスがジト目でこちらを見ていた。

 

 

「し、仕方ないだろ。あの時はお前さんを助けるために必死だったんだ」

 

「ふふっ、わかってますよ。少しからかっただけです」

 

そういうと彼女は悪戯っぽく微笑んだ。

猫に変身した時といい、この使い魔は主人をからかう癖でもあったんだろうか

 

 

「でもこれでようやく合点がいきました。この力がエーテルなのですね」

 

「……どういうことだ?」

 

「貴方が私に注いだエーテルという力ですが、今も私の中にあるのを感じます」

 

「なんだって!?」

 

異なる世界の力同士が混ざり合うことなんてあるんだろうか?

なんて思ったがその最たる例が自分だった

 

 

「その……身体に異常はないのか?」

 

「ええ、特におかしな部分はありません。寧ろ今までより魔力量が上がった気さえします」

 

リニスは力こぶを作ってえへんと胸を張っていた。

このお嬢さんに危機感は無いんだろうかと頭を抱えていると

 

 

「恐らく貴方が私に魔力を送る際に、エーテルも込めていたことで仮契約時に、魔力と一緒にエーテルも送られるようになったのでしょう。本契約してからは身体に馴染んできましたし、大丈夫ですよ」

 

「まあ、お前さんが大丈夫ってんなら構わないんだが」

 

安定している今の状態を無理して戻した結果、最悪の事態になるよりはいいか

 

 

「それに、これは貴方が私を救ってくれた証でもありますから……」

 

「ん、なんか言ったか?」

 

「なんでもありませんよ。さて、大分話が逸れてしまいましたがこの世界の魔法の話に戻りましょうか」

 

「あ、ああ」

 

なんと言ったのか気にはなるが今は魔法のことに集中しよう

 

 

「魔法の発動に関しては先程説明しましたね。その魔法ですがいくつか体系があります。その中でも最も使われているのは<ミッドチルダ式>と呼ばれるものです。発動時には真円の魔方陣が展開されます」

 

「ん?もしかして使い魔契約の時に出てたあれのことか?」

 

「そうです。よく覚えていましたね」

 

彼女は誉めて伸ばすタイプなんだろうか。誉めると同時にこちらの頭を撫でていた

元の年齢差を考えると複雑な気分だ

 

 

「ミッド式の魔法の特徴としては基本となる射撃や砲撃、追尾・制御が可能な誘導弾、スフィアのような発射体の形成に効果付与や補助魔法と、幅広くいろんな事ができます。ちなみに得意な射程はミドルレンジからロングレンジになります。他には()()()ミッドチルダ式と双璧を為していた<ベルカ式>というものが存在します」

 

「かつて……今は違うのか?」

 

「ええ。今でも使っている人はいるのですが最盛期に比べると数は減ってしまっていますね。ベルカ式を扱うのに先天資質に対する依存が大きいのと、ベルカ式特有のカートリッジシステムの扱いづらさがあったり、ベルカという国自体が崩壊したこともあって廃れてしまったのです」

 

国が滅んでもその魔法が受け継がれているのはまだマシ……なんだろうか

かつて死の宙域でみた星々は何も残すことなく終末に呑まれていたからな……

 

 

この時のサイフォンは知る由も無かったが、当の宙域は現在復興中でカフェまで出来上がっていた

そこには例の光の戦士が当然の様に関わっていたとかなんとか

 

閑話休題

 

 

 

「ところでそのベルカ式の特徴は何なんだ?」

 

「ベルカ式の特徴は何といってもカートリッジシステムとクロスレンジでの圧倒的な戦闘力にあります。優れた術者は<騎士>とも呼ばれていますね。扱う魔法は武器攻撃に自らの魔力を乗せて、威力を高めた攻撃を放つ魔力付与と強化に特化する反面、ミッド式のような射砲撃による遠距離戦闘は苦手としているのです。ちなみに魔法陣は頂点に円がある正三角形の中で、剣十字の紋章が回転しているものです」

 

 

「なるほど……ところでさっきも出てたカートリッジシステムというのは?」

 

「それを説明する前にまずはデバイスの説明をしましょうか」

 

そういうとリニスは何もない空間から、黄色い球体が先端についた杖を取り出した。

 

 

「デバイスというのは簡単に言うと魔導士が使う杖のような物です。これが私のデバイスですよ」

 

「杖のようなというか杖そのものじゃないか?これ」

 

「私のデバイスがたまたま杖型というだけです!混ぜっ返さないでください!」

 

「す、すまん」

 

ここは余計な口出しをせず大人しく聞いておこう

 

 

「コホン。このデバイスというのは魔法を使う際の補助として用いる道具です。魔法のプログラムを記録・保存する記憶媒体としての役割がメインですね」

 

「ぷろ……ぐらむ?」

 

「えっと、貴方の世界にはそういったものはありませんでしたか?」

 

「いや、その単語自体は聞き覚えがあるんだが高度な文明過ぎてよくわかっていないんだ」

 

確かアラグの遺産がそんな言葉を発していた気がする

 

 

「わかりました。簡単に言えば魔法そのものを杖に保存できるんです」

 

「保存するのはいいが、それをどうやって使うんだ?それに態々保存してから使うメリットがあまり思い浮かばないんだが」

 

「良い着眼点です。この世界の魔法の発動に魔力が必要なことは最初に教えましたが、更に魔法の発動には引き金。<トリガー>となる行為が必要です」

 

「引き金……というと呪文の詠唱か?」

 

元の世界でも魔法の発動には呪文の詠唱が必要だったがこちらでもそうなのだろうか

 

 

「それもトリガーの1つではありますが、他にも3つあります。それが<コマンド>、<アクショントリガー>、<デバイス発動>です。実際に見せた方が分かりやすいでしょう」

 

リニスは立ち上がると杖を構えた

 

 

「フォトンスフィア」

 

その一言でリニスの周りには黄色の球体が複数浮かび上がっていた

 

 

「これが魔法をデバイスに保存するメリットです。デバイスに予め魔法を記憶させておくことで、その発動を補助してもらいコマンドを言うだけで魔法を高速で展開することができるのです」

 

「魔法を使う時の補助というのはそういうことか。なるほど、これは便利だな」

 

「今見せたのはコマンドによるトリガーです。アクショントリガーは名の通り動作をトリガーとするもの。デバイス発動はデバイス自身の判断をトリガーとするものですね」

 

「デバイス自身?」

 

 

目の前の杖からは特に何も感じないが、アニマウェポンのように人造精霊のような意志が宿ったりしているのだろうか?

 

 

「ああ、私の杖ではデバイス発動はできませんよ。できるのは<インテリジェントデバイス>というAI、人工知能があるデバイスでなければいけません。ちなみに私の杖は<ストレージデバイス>という魔法の蓄積とその使用に特化したものになります」

 

「他にも種類はあるのか?」

 

「ええ。武器の様な形状をしていて主にベルカ式で使われている<アームドデバイス>、主と融合することが可能な意志のある<ユニゾンデバイス>、そして魔力射出と射出制御に特化した<ブーストデバイス>があります」

 

中々に種類が豊富なようだ。個人的にはアームドデバイスとやらに惹かれるが

 

 

「ここまで話したところで、いよいよカートリッジシステムについてです。これは主にベルカ式のアームドデバイスに搭載されているシステムです。残念ながら私はミッド式のストレージデバイスなのでカートリッジシステムはついていませんが」

 

「そうなのか……」

 

ちょっと残念だ

 

 

「このカートリッジシステムですが、事前に圧縮した魔力を詰めた弾丸を武器内で炸裂させることで、瞬間的な魔力の底上げを行うことはできます。極端な話、一撃の威力を2倍にして攻撃することができる……といえば分かりやすいですかね」

 

「分かりやすい例えをどーも。だがそれならどうしてリニスはカートリッジシステムのあるデバイスを使ってないんだ?」

 

リニスの例で言えば簡単に自身の攻撃力を跳ね上げたり、防御に回す魔力を上げてより強固にできそうなものだが

 

 

「カートリッジシステムですがこれはとても強力な分、制御が難しいのですよ。下手をしたらデバイス内で炸裂させた魔力が暴発して、使用者やデバイスが負傷する危険性もありますからね。それに私の場合は戦闘スタイルがミッド式で、かつアームドデバイスでは無い方が戦いやすいからですよ」

 

「なるほど。よくわかった」

 

「デバイスの説明はこれくらいですかね。他にも魔法の種類や細かい説明もありますが、夜も遅いですしまた今度でいいでしょう」

 

気付けばもう時計の針が12時を跨ごうとしていた。外見上は12歳だし黒鐵夫婦にばれたら怒られそうだ

 

 

「最後にサイフォンに聞きたいことがあるのですが」

 

「ん?改まってどうしたんだ?」

 

「今日の魔法の授業を受けてミッドチルダ式とベルカ式、どちらを学びたいですか?」

 

意外だった。今回の説明を聞く限りミッド式を勧めてくるものだと思っていたからだ

 

 

「選んで大丈夫なのか?」

 

「教え子の学びたいことを教え導くのが私の先生の……家庭教師としての在り方です。だから私もことは気にせず、貴方の学びたいことを私に教えてください」

 

リニスはこちらを慈しむような微笑みを向けていた。

内心ドキッとしたが、表情には出さないよう我慢した。

ばれたら後でかわかわれそうだ

 

 

「じ、じゃあベルカ式メインでもいいか?多分俺の戦闘スタイル的にはそっちの方が合ってそうだ」

 

「わかりました。ではそれ用にカリキュラムを組んでおきましょう。任せてください、貴方を必ず一人前の魔導士。いいえ、騎士にしてみせますから!」

 

「いや、別にそこまでしてもらわなくても……」

 

というか俺は既にナイト(騎士)だから別にそんな改めてならなくてもいいんだが……

 

 

「遠慮することありません、貴方は私の命の恩人なのですから。それに安心してください。私は既に1人、魔導士を一人前に育て上げていますから!」

 

いや、遠慮はしてないし不安だらけなんだが

ただ普通にこの世界での魔法が使えるようになればそれでいいんだ……

 

その思いは届かず、リニスは滅茶苦茶張り切りながら部屋を出て行った。

今後の授業が酷く不安になるサイフォンだった

 

 




まだ主人公のジョブ関連をリニスに話してないし説明パートはもうちょい続きそうだなぁと
次回は道場回やって次にジョブ関連の話をして、その次辺りにあの子と合わせたいですな
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