光を支えるもの   作:黒の眷属

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道場からの歓迎

~サイフォンSide~

 

 

「サイフォン……起きてください」

 

「う、うーん……」

 

誰かに身体を揺らされている感覚がするが正直まだ眠い……

 

「もう朝ですよ、起きてください!」

 

「あ……あと……」

 

「お決まりのセリフはいいから早く起きなさい!」

 

最後まで言わせてもらうことができず、声の主……リニスに布団を引っぺがされてしまった。

 

 

「もう朝ごはんができているんですから、早くお茶の間に行きますよ!」

 

「へいへい」

 

我が使い魔はどうにも主に厳しいらしい……

もう少しゆっくりとした朝を迎えたいもんだ

 

そのまま渋々起き上がり、布団をたたむとリニスと一緒に茶の間に向かった。

 

 

「おはようございます」

 

「うむ、おはよう」

 

「あら、サイフォン君おはよう。わざわざ起こしに行ってもらって悪いわねリニスちゃん」

 

「こちらこそ朝ごはんの用意を手伝えず申し訳ありません」

 

「まだどこに何があるか分からないでしょうし、気にしなくていいのよ。ささ、皆で朝ごはんを食べましょう」

 

リニスと共に席に着き、手を合わせ

 

 

「「「「いただきます」」」」

 

朝食は焼き魚に味噌汁、それと白米と漬物が添えられていた。

昨夜の歓迎会でも思ったが、どうやら食事は元居た世界のひんがしの国とあまり変わりがなかった。

 

洋食の方がいい時は遠慮なく言ってね~と、(みぞれ)殿に言われたから他にも料理の体系があるのだろう。

ちなみに昨夜食べたのと今食べているのは和食というらしい。

 

 

(昨日も思ったが(みぞれ)殿の料理の腕前は大したものだな)

 

サイフォンはエオルゼアでは有名なレストラン<ビスマルク>の秘蔵っ子と言われる程、調理師としての腕前は高かったが、その目から見ても高い水準にあった。

 

そのうち料理の感覚を取り戻すためにも台所を借りようか

そんなことを考えながら漬物をポリポリと齧っていると

 

 

「のう、2人とも。よかったら今日は道場の見学にこんかの?」

 

「「見学?」」

 

「うむ。リニスちゃんの出勤自体は準備があるからまだじゃが、折角なら働き先の下見も兼ねてどうかと思ってな」

 

暫くは急いでやることもなし。周辺の地形把握のためにも外に出るのは悪くなさそうだ

そう思いこちらを見ているリニスに軽く頷いた

 

 

「わかりました。ご一緒させていただきます」

 

「うむ。では朝餉を済ませたら早速顔を出しに行こうかの。おお、そうじゃサイフォン君」

 

「なんだい父上?」

 

流石にまだ言い慣れてなくて変な感じがする。

こらそこ、満足気な表情をしない

 

 

「道場に行く時なんじゃが、その脇にある物は置いていきなさいよ。大事な物ではあるんじゃろうが、そんな物騒な物を持ち歩いていては捕まってしまうでな」

 

「脇?――ああ」

 

視線の先には愛刀が置いてあった。

向こうでもよっぽどのことが無ければ肌身離さず持っていたからな

 

「分かった。部屋にでも置いていくよ」

 

「そうするとええ」

 

まあこの辺りからは危険な気配も感じないし、リニスも探索魔法とやらで見た感じ大丈夫そうだと言っていた。

余程のことが無ければあれを使うようなことにはならないだろう

 

そして朝食を食べ終えると4人は夫婦が経営する道場に向かっていった

 

 

◆◆◆

 

 

「ここが儂らの経営する<黒鐵剣術道場>じゃ」

 

「おー、そこそこ大きいな」

 

「こら、失礼ですよサイフォン」

 

「いいのよリニスちゃん。正直私達には勿体ないぐらい大きいんですもの」

 

道場の中からは今も門下生たちのものであろう声が聞こえてくる

少し中の様子を探ってみるが……

 

 

(この2人以上に強そうなのはいなさそうだな)

 

ここに来るまでの様子を見て思ったが、この世界では元の世界の様にモンスターがいない分、戦いが直ぐそばにあるような環境ではないのだろう。

 

 

『そういえば、お前さんは剣を扱えるのか?デバイスはただの杖みたいだったが』

 

『問題ありませんよ。私は教え子に対して近接戦闘の手ほどきもおこなっていましたから』

 

『なるほど。それなら今度慣らしに付き合ってくれ。今の身体に慣れておきたいからな』

 

『お任せを』

 

念話で会話しながら2人の後を付いていくと稽古場に辿り着いた。

すると門下生達が一斉にこちらを向き挨拶してきた。

 

「おはようございます!師範!」

 

「うむ、皆おはよう。今日も元気なようで何よりじゃ」

 

挨拶を終えると門下生達はまた稽古を再開しだした。

するとその中から1人、大柄な30代くらいの男性がこちらに近寄ってきた。

 

 

師匠(せんせい)方、おはようございます」

 

「おお、オスティル君か。おはよう」

 

「そちらのお2人は新しい門下生でしょうか?」

 

「正確には違うんじゃが、まあ似たようなもんじゃな。2人とも、こちらはこの道場の師範代のオスティル=グレイン君じゃ」

 

「オスティル=グレインです。どうぞよろしく」

 

俺は今何とも言えない表情をしているだろう。

前の世界にいた人物とそっくりだったからだ。

あっちは似非侍だったが

 

 

「私はリニスと申します。よろしくお願いします、オスティルさん」

 

「さ、サイフォンです。よろしく……」

 

「2人は今日は見学なんじゃ。稽古はいつも通りで構わんでな」

 

「承知しました」

 

「それじゃ儂らは指導に行くでな。2人は好きに見学しとくれ。何かあれば遠慮なく呼ぶんじゃよ」

 

「「わかった(わかりました)」」

 

そして3人が離れていったのでリニスと2人で端の方に行き見学を始めた。

型の様に決められた動作をするもの、実戦形式で打ち合っているものやその見取りをしているものがいたりとあちこちで稽古が盛んに行われていた。

 

 

「リニスから見てどう思う?」

 

「そうですね。皆いい動きをしていると思いますよ。流石に教導できる立場にない人達は粗削りな部分はありますが、磨けば光りそうです。貴方はどうですか?」

 

「まあ概ね同意見だ。だが……」

 

これでは全然足りない。実戦の感覚を取り戻すには至らなさそうだ。

命のやり取りが常だった向こうの世界と比べたら、この中に混じっても精々運動程度になるくらいだろう。

 

 

「だが……なんです?」

 

「いや、なんでもない。魔法のカリキュラムの中にお前さんとの近接戦闘訓練も入れておいてくれ」

 

「勿論そのつもりですよ。貴方には立派な騎士になってもらいませんと!」

 

「それは別にいいんだって……」

 

そんなことを話していると黒鐵夫婦がこちらにやってきた。

いったいどうしたのだろうか

 

 

「リニスちゃん。ちょっとええかの」

 

「はい、如何なさいましたか?」

 

「実はの。さっきのオスティル君なんじゃが、リニスちゃんを新しく先生として迎えることを伝えたら、手合わせしたいと申してな。儂らとしてもリニスちゃんの実力を見ておきたくてな。どうじゃろうか?」

 

「ええ、構いませんよ。改めて弟分に私がどれだけ強いのか見せてあげないといけませんから」

 

いや、お前さんが戦ってる姿は見たことないんだがね

まあ2人に伝えた事情的に知ってないとおかしいからああ言ったんだろうが

 

 

(とはいえこの道場にいる面子じゃリニスには勝てないだろうな)

 

先程のオスティルもそうだが、見た感じどれもリニスにはかなわなそうだった。

やはり訓練はあの家庭教師殿に頼んだ方がよさそうだ

 

 

「それじゃ早速行きましょうか。オスティル君ったら張り切ってたから、今か今かと待ってるかもしれないわ」

 

「リニスちゃんはあまり気負わんでな」

 

そして4人連れ立って、稽古場の一角に向かっていった。

 

 

◆◆◆

 

 

~リニスSide~

 

 

稽古場の一角には既に人が多少集まっていた。

これから手合わせをするオスティルさんはどうやら道場内でも上位の実力者らしく、その見取り稽古に来ているのでしょう

 

 

(まあそれでも負ける気は(はな)からありませんが)

 

先程対面した感じからいっても恐らく負けることはないでしょうし、我が主にいいところでも見せましょうか

その主からもこちらが負けるとは微塵も思っていないような感情が伝わってくるのでちょっと嬉しかったり

 

防具を身に着け竹刀をもらうとオスティルが近付いてきた。

リニスの身長は165㎝とそれなりに高めだが、相手は2mはあろうかという巨体だった。

 

 

「来たばかりだというのにせわしなくてすみません」

 

「いえいえ、こちらとしても早く道場に馴染みたいですし、ここのレベルを知れるいい機会です」

 

「では本日はよろしくお願いします」

 

「ええ、こちらこそ」

 

互いに握手を交わし所定の位置についた。

そして礼をしてどちらからともなく竹刀を正面に向け、正眼の構えをとる。

 

 

(先程の稽古の様子でも見て取れましたが、この人は見た目の通りパワーで押すタイプ。ですが、それにかまけてごり押してくるようなことはしていない。それなら……)

 

「それではこれより、オスティル師範代とリニスの手合わせを始める」

 

審判を務める(あきら)の声を皮切りに場に緊張が走る。

 

 

「……」

 

「……」

 

「始めっ!」

 

開始の合図とともにオスティルは踏み込み、突きを放ってきた。

巨体に似合わぬスピードでこちらに迫ってくるがその動きはリニスの()()()()だった。

 

私は突き出された竹刀の側面を叩き、相手が体制を崩している隙に相手の竹刀を巻き上げ弾き飛ばした。

そしてその間にこちらも相手に肉薄し、首元に竹刀を突き付けた。

 

 

「勝負あり!」

 

「「ありがとうございました」」

 

オスティル師範代が負けた……

嘘だろ、なにもんだあの人……

周りはざわざわと騒がしくなってきた

 

我が主はというと、こちらと目が合うと軽く手を振ってくれた

こちらも軽く振り返しているとオスティルさんが近付いてきた

 

 

「いやー、参りました。まさかあそこまで綺麗に決められるとは思いませんでした」

 

「たまたま読みがうまく当たっただけですよ」

 

「ご謙遜を。完全に動きを読まれてしまっていましたよ。こちらで勤務されるとのことですし、よければまた手合わせをお願いしても?」

 

「ええ。こちらこそいい経験になりますし、その時はよろしくお願いします」

 

改めて互いの健闘を称え握手を交わすと黒鐵夫婦とサイフォンが近付いてきた。

 

 

「いやー、リニスちゃんはお見事じゃったな」

 

「ええ、思った以上の腕前だったわ」

 

「ありがとうございます、師範」

 

「オスティル君は残念じゃったが、これを糧とし精進してゆこうか」

 

「はい。とても良い経験をさせてもらいました」

 

和気藹々とする中、サイフォンの方をみると退屈そうに欠伸をかいていた。

この人はほんとしょうがないですね……

 

 

「そろそろ帰りましょうか?」

 

「ん?ああ、見たいものは見れたしな。道場の雰囲気もある程度分かったし」

 

「そういうわけで師範、少し早いですが先に帰ってもよろしいでしょうか?」

 

「おお、構わんよ。鍵を渡しておくから儂らが帰るまでゆっくりしておいで」

 

「ありがとうございます。それじゃあサイフォン、行きましょうか」

 

「おう」

 

 

そして2人で道場を後にした。

 

 

(やはりあそこではこの人にとって退屈なんでしょうか……)

 

道場ではずっとつまらなそうな表情をしていた主。

そんな彼がどう思っているのか尋ねてみることにした。

 

 

「サイフォン。あの道場は貴方にとっては退屈でしたか?」

 

「あー、有り体に言えばそうだな。実戦の感覚を取り戻すのにはあそこじゃぬるすぎる。道場なんだから仕方ないと言えば仕方ないさ」

 

「そうですか……」

 

「でもあれだ。お前さんの腕前は見事だったな。それだけに今後の近接戦闘訓練は楽しみだよ」

 

彼は機嫌がいいのか、珍しくはにかんだような笑みを向けていた。

主に認められるというのはやはり嬉しいもので、こちらも自然と微笑んでいた。

 

以前の主は使い魔である自分どころか、その娘さえも褒めることがなかった。

教え子であるあの子は今頃どうしているんだろうか

 

 

(フェイト……。アルフ……)

 

かつての教え子達の無事を祈りながら2人は家路についた。

 

 




オスティルはよくある別世界の同一人物的な感じ(見た目は侍ジョブクエの奴。性格は全然違うけど)
配役に困ったりしたらそんな人物が今後も出るかも

次回はジョブ回をやっていよいよあの子の出番。
ジョブ回で余裕あれば出せるかなぁとか淡い希望を持ってたり
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