赤い河童は人を求める   作:河童さん

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第1話

 この世の中で、私はすべてに拒絶された。

 人間にも、妖怪にも、そして世界からも拒絶され、否定された。

 小さなころ、私がどうやって生き延びたのかはあまり記憶に残っていない。生まれてほどなくして妖怪……正確には河童だった母が死に、残った人間の父も後を追うように死んでしまった。そこからは本当にひどい生活であった。私は子供なのに行き場を失い、ろくに水も食料もない状態で暮らしていた。そんな中でも、私は必死に生き延びようとしたことを覚えている。こんな妖怪でもない人間でもない中途半端な存在である私でも、受け入れてくれる場所がきっとあると信じていた。

 だが、そんな希望はすぐに砕け散った。どこへ行っても私は拒絶され、否定された。受け入れてくれる者などいなかった。

人間にも妖怪にも、半分別の血が入っているというだけでひどい扱いを受けた。

 昔、私が生まれたころは妖怪と人間は盟友というくらいに仲が良かった。そして、人間と妖怪の間に初めてできた子供、それが私。そして、その私のせいで妖怪と人間の関係は壊れてしまった。その生まれた赤ん坊……私の顔は、異様に赤かった。その血まみれのような顔を見て、人間も妖怪も私を恐れた。やはり妖怪と人間は交わるべきではないと、その時彼らは思った。そして私の存在を消そうとした。妖怪と人間の仲の良かったことなんて消し去ってしまうために。そして、まだ赤ん坊に近い私を、親が死んだのをいい事に彼らは河に流した。

 ……なんだよ、それ。そんなのおかしいじゃん。私は、何も悪い事してないじゃない。なのに、私はすべてから拒絶され、否定されて……

 ……結局、私は世界の隅に一人棒立ちをしていた。

 

 

 

 寒い、冬の夜はただでさえ寒いというのに、今日は雪まで降っていた。体をぼろきれ一枚だけ巻いている私には、寒いどころの話ではないのかもしれない。実際、指の先の方は感覚がもうすでになかった。動かそうと思っても、動かない。最悪、壊死している可能性もあるな、まあ、正直もうどうでもいいことだ。

 

「私って、生きている意味があるの?」

 

 ふと、そんなことを呟いてみる。

 毎日のように思う、すべてから否定された私は、この世にいる価値などあるのだろうか?生まれてきても良かったのだろうか?

 昔、何かの本で読んだことがある。「生物は、どれもが絶対に生きる意味を持っている。この世に生きる意味を持ってない生物などいない」と、じゃあ私のどこに意味があるの?誰から必要とされているの?

 

「……って、考えても無駄か」

 

 どうせ私は、もうじき死ぬ。

 ここ数か月間、食べ物はおろか、水すらろくなものを飲んでない。食べ物はそこらへんに捨ててある生ごみ、またはそれよりもひどいもの。水は濁りきった茶色い泥水。

 あまりにも気分が悪いので、そんなものを口にするのは最近になってやめた。そこまで生きることに執着しなくてもいいと分かったから。おかげで、私の体はさらに衰弱していた。あんなものでも少しは栄養源になっていたのが少し驚きであった。そして、妖怪の血が入っている私でも、どうやら数週間何も口にしてないとかなり危険ならしい。

 もうじき死ぬであろうというのに、私には恐怖など少しも感じなかった。逆に少し嬉しかった。この苦しみからももうじき解放される、何からも受け入れられることはないが、同時にだれからも否定されることがなくなる。私にはそれだけで十分だった。

 ただ、一つだけやり残したことがある。

 私の閉ざした心の殻を、破ってくれる人に、一度でもいいから会いたかった。妖怪でも人間でも誰でもいい、自分を誰かに受け入れてもらいたかった。

 だからこそ今日までしぶとく生き延びてきた、だけどもう十分だ。私は持てる限りの事を尽くした。だけど、もう無理だ。私の閉ざした心をこじ開けてくれる人なんて、どこにもいない。

 だから、もう私は生きていなくてもいい。

 そう思って、私は両目を閉じてその場に倒れた。

 

 

 

『……うお!?……んで……所に……というか…………河童じゃ……とりあえず、……』

 

 

 

 ……あり得ない、なんでだ。

 私の、二度と開くことのないと思っていた瞼が開いた。まぶしい日差しが私の目に入ってくる。

 

「なんで、生きているの?」

 

 あり得ない、妖怪が丈夫だからと言って、衰弱しきった私の身体ではあんな過酷な夜を越えるのは無理だと思っていたのに……。運が良いにも程がある、いや、どちらかと運が悪いか。生きているよりは死にたかったわけだし……案外、妖怪というのはしぶといのだな。

 私は、仰向けになっていた体を起こす。昨日感覚のなかった指先を見てみると、赤紫色に腫れていて、なにか毒々しかった。それでも、指はちゃんと動く。これでよく壊死していなかったものだなと、自分の身体の丈夫さに少し感心した。

 そしてなぜだか、昨日よりも少しばかり体調がいいように思えた。ここ数日は何も口にしてなかったはずなのに気分がすっきりする。

 と、そこでさらなる異変に気が付いた。私がいる場所は、私が夜に倒れた場所ではないのだ。

 夜、あれだけの雪の量が降ったのにもかかわらず、周りはまったく雪が積もっていなかった。私の目の前は、大きな河が勢いよく流れている。

 まさかとは思うが……私は誰かに助けられたのか?いや、ありえない。こんな私が行き倒れているところで、助けようなんて思う奴がいるわけがない……だって、私は今までにさんざん拒絶され、否定されてきた。それなのに、そんな私が助けられるなんて……

 

「でも、それ以外は考えられない……よね」

 

 嘘だ、ありえない。と、思う反面、私は今までにない程興奮していた。私を助けてくれた人がいる、今日以外にも死にそうな日はあったが、私に手を差し伸べてくれる人なんていなかった。そして、私を助けてくれたという事は、私を拒絶していないという事。つまり私を受け入れてくれるかもしれない……それだけで、心臓の鼓動は速くなっていく。

 

「と、これはなんだ」

 

 私の腕に、何かが書かれていた。たぶん文字だろうが、あいにく私は喋る事はできても読み書きはできない。なのでこの文字の意味は分からなかった。

 だが、これを書いたのは私を助けてくれた人に違いない。

 

「……なんて書いてあるんだろうか……」

 

 気になった、私を助けてくれた人が書いたこの文字にはどんな意味があるのだろうか。知りたい、会いたい……私を助けてくれたその人に

 

「……もしかしたらまだ近くにいるかも……」

 

 そうだ、その可能性も十分ある。

 だったら探す以外に選択肢はない。

 だって、私のずっと望んでいた人に会えるかもしれないのだから……

 

「会ってみたい……いや、絶対に会って見せる!!」

 

 私は、その場を飛び出した

 

 

 

『ありゃ、おかしいな。ここで待っていろってちゃんと書置きしたはずなんだけどな……なんでいなくなっちゃってるのよ……』

 

 後から来たリュックを背負った青い河童は、その場に一人棒立ちをしていた

 




みとりって地底にいるんじゃなかったっけ?いや知らない知らない、僕はナニモシラナイ
うん、まあこの小説では地底には行ってないっす
感想は批判も絶賛受付中、ていうか欲しいな。カモン批判!!
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