ハイスクールD×D〜悪魔な2人の仮面ライダー〜 作:エルドラス
「はぁ!?逃げられただぁっ!?」
「そうなんだ。今日の昼、留置所から脱走したと政府から連絡があった」
その話にネクスと真は驚きの声を上げる。
「ちょっと待ってください。彼は私とネクスの二人でボコボコにして、しばらくは動けないはずですよ?」
真が疑問に思っていると、マスターは訝しげに話し始める。
「その通り、奴は自力で逃げ出したんじゃねぇ。何者かが留置所を襲撃して奴を逃したんだ」
「その何者かとは、いったい何なんですか?」
「分からない。人間でも無ければ悪魔でも、堕天使でも、妖怪ですらない化け物だったらしい」
マスターはそう言うと、懐から一枚の写真を取り出し、二人にそれを見せる。
「っ!?これは…」
そこに写っていたのは、殺された被害者達の顔だった。が、その顔は何故か『幸せそうな笑顔』だった。
「この場にいた奴らはどいつもこいつもこんな顔で死んでたんだ。しかも辺りには酷い悪臭まで漂ってたからな」
その言葉を聞き、二人は不思議そうに写真を見つめる。
「けどよぉ、これだけじゃ何にもわかんなぁよなぁ」
「ま、そういう事だから、報酬を出す訳にはいかないんだ」
「くそっ!折角の500万が…」
あまりの悔しさからか、ネクスは掴んでいたテーブルにヒビを入れてしまう。
そして、その修理費を出さなければならなくなり、真に怒られるのだった。
真とネクスは公園のブランコに座り、それぞれ缶コーヒーとぶどうジュースを飲みながら揺れていた。
今までこの二人が捕まえた、又は殺した賞金首の中で二人から逃れられた者は一人もいなかった。
真はそうでもなかったが、ネクスは多少ではあるがその記録を破られた事にショックを受けた。
「あ〜〜〜、流石に気が滅入るわぁ」
「そうですね。それに500万が水の泡になってしまいましたし、暫くは貯金があるから生活には困りませんが、この町では賞金首も少ないですからね」
ネクスは缶コーヒーを飲み干し、近くにあったゴミ箱へシュートするが、狙いがズレ、弾かれた缶は地面を転がる。
「ま、すぎた事を気にしても仕方がねぇよな。それに、逃げたならまた捕まえ…いや、次は殺せば良い。脱獄の首謀者も殺す。これで報酬が貰える!」
「全く、まぁ間違ってはいませんけどね」
そして二人は帰ろうとする。
「ん?あれは…一誠さんとアーシアさん?」
「え、マジで?」
ベンチに見覚えのある2人が座っていた。
リアス・グレモリーの眷属、兵藤一誠と金髪シスターのアーシアだ。
何やら様子がおかしかったので、真とネクスは気になって2人のもとへと走っていった。
二人と一誠はアーシアの口から、「聖女」と祭られた彼女の末路を聞いた。
生まれてすぐに両親から捨てられた事。
教会兼孤児院で育てられた事。
八つの頃に不思議な力、
そこからカトリック教会の本部に連れて行かれ、「聖女」として担ぎ出された事。
皆が裏で自分の力を異質なものを目で見ている事を。
怪我をしていた悪魔を助けた事。
それが原因で「聖女」は、今度は「魔女」と恐れられ、カトリックから捨てられた事。
誰一人、教会で自分を庇ってくれる人がいなかった事。
神から力を授かったと言うのに、あまりにも酷い仕打ちだった。
神は助けてくれなかった。
神への祈りと感謝を一度も忘れた事などない少女を………神は助けてくれなかった。
彼女の救いは「はぐれ
「……きっと、私の祈りが足りなかったんです。ほら、私、抜けているところがありますから。ハンバーガーだって、1人で買えないぐらいバカな子ですから」
アーシアは笑いながら涙を拭った。
一誠は慰めようにも、かける言葉が見付からず、真とネクスは拳を震わせていた。
それは神に対しての怒りだった。
アーシアは誰よりも神に敬意を払っているのに、誰よりも救いを求めているのに、何もしてやらない神に怒りを覚えた。
二人は神の存在など信じないが、この時ばかりは自分の中ではこの世にいないと決めつけている神に怒りを覚えた。
ふざけるな…と。
二人は低い声音で空に向かって暴言を放ち、ネクスは側に立っていた木を拳で穴を開ける。
「一誠、真、神に見せつけんぞ。アーシアに何もしなかった
「…えぇ、勿論です」
真の答えの後、一誠も頷き、二人と一緒にアーシアの手を取る。
一誠の言葉にアーシアはキョトンとしている。
「昨夜真が言ったろ?俺っち達や一誠を頼れって。気軽に遊びたい時も、何かあった時も呼べばいい。携帯の番号も教えてやる」
「……どうしてですか?」
「どうしてもこうしてもあるもんか!今日一日、俺とアーシアは遊んだだろう?話しただろう?笑い合っただろう?なら、俺とアーシアは友達だ!真やネクスだって頼れって言ってるんだ!二人もアーシアの友達だ!」
「……それは悪魔の契約としてですか?」
「違う!俺とアーシアと真とネクスは本当の友達になるんだ!わけの分からない事は抜き!そういうのは無しだ!話したい時に話して、遊びたい時に遊んで、そうだ、買い物も今度付き合うよ!本だろうが花だろうが何度でも買いに行こう!な?」
その言葉を聞いたアーシアの目から涙が溢れ出る。
しかし、その涙は悲しみの塊ではなく、喜びを表す涙だった。
ネクスも聞いててむず痒くなったが、神にざまーみろと心の中で罵り、真と一誠と共に笑う。
「……私と友達になってくれるんですか?」
「ああ、これからもよろしくな。アーシア」
「俺っちも忘れず、よろしくな」
「よろしくお願いいたします、アーシアさん」
こうして、アーシアに初めての友達が3人も出来た。
「それは不可能ですね」
しかし、突如飛んでくる否定の声がした。
真とネクス、そして一誠が声のした方向へ顔を向ける。
そこには白いスーツ姿の男と、一誠を殺した堕天使レイナーレがいた
「ゆ、
「お前、あの時の堕天使か。それと、そこのお前は誰だ?」
「お初にお目にかかる。私の名は
秋風湊と名乗る男は、黄色い球のようなものを真とネクスに投げつける。
二人はそれを避けようとするが、球は二人の目の前で爆発した。
「っ!ぐ、がぁ!?この匂い!?」
「くっ、メッチャクッセェ!?」
そして二人は、爆発した球から放たれる酷い悪臭に鼻を抑えるが、直ぐに二人の体に異変が現れた。
「ぐっ!?」
「んだ、これ!?」
そういうと二人はその場に倒れ込んでしまった。
しかし、真は最近聴いたとある話を思い出した。
『しかも辺りには酷い悪臭まで漂ってたからな』
「まさか、留置所を襲撃してフリード・セルゼンを逃したのは…貴方ですか!」
「えぇ、その通り。彼にはまだまだやってもらいたい事がありますのでね。あそこでリタイアしてもらっては困るんですよ」
「っ!テメェのお陰で……俺っち達は報酬を貰えなかったんだぞ……!覚悟しとけよ……!」
「それは簡単に死ぬ看守達に言ってくださいな。それにあっさり死ぬとどんな夢を見たか分からないじゃないですか」
「…どういう意味です?」
「私が先程貴方達に放ったガスには、幻覚作用がありましてね。それで好きな幻覚を相手に見せる事ができるんですよ。あぁ、貴方達には幻覚は見せないのでご心配なく。…私はね、その能力で私の見せる『幸せな幻覚』を見ながら、自分が殺されてることにも気づかずに死んでいく者達を見るのが何よりも楽しいんですよ。最近は耐えられずにすぐ死んでしまう個体ばかりでしたが…」
「…そんな事の為に、看守たちを殺したってのかよ」
「えぇその通り、貴方たち二人やそこの少年は、一体どんな幸せな顔をしながら死んでくれるのか…今からとても楽しみですよ」
そう言いながら湊は不気味な笑みを浮かべる。
事情をよく知らない一誠もこれだけは分かる…
「あんたイカれてるんじゃないのか!?そんな事の為だけに人を殺して来たのか!」
「純粋な探求欲を満たす為には犠牲は付き物だ。何処に怒る必要がある?」
「ふざけんな!そんな勝手な理由で殺されてたまるか!
一誠が叫ぶと、左手に赤い籠手が出現する。
新も右腕に鎧を展開して戦闘体勢を取る。
「上の方々にあなたの
レイナーレは心底おかしそうに一誠を嘲笑う。
「私も
そう言って秋風も一誠を嘲笑する。
「弱い
「あ、あれ?なんか涙が…」
「お前らまで憐れみの目を向けるなーっ!ちきしょう、今は何でも良い!
『Boost!!』
次の瞬間、籠手から機械的な音声が発し一誠の体内に力が流れ込むが、秋風が手から放った紫色の光弾に脚を撃ち抜かれる。
「ぐぁっ!」
「一誠!」
「一誠さん!」
二人は一誠を助けようと動こうとするが、何故か指一本動かせなかった。
「無駄だよ。私が君たちに浴びせたガスには身体を麻痺させる効果があるからね。暫くは動けないよ」
秋風はそう言うと、真とネクスに近づき、二人を蹴り飛ばす。
「どうだねレイナーレくん、私が協力すればいとも簡単に『
「ええ。アーシア。その悪魔と人間を殺されたくなかったら、私達と共に戻りなさい。あなたの
「『
一誠の傷を治すアーシアに秋風は冷酷な提示をする。
そして、一誠が喋る前にアーシアはレイナーレと秋風の提示を受け入れた。
「アーシア!」
「イッセーさん。今日は一日ありがとうございました。本当に楽しかったです。真さんもネクスさんも、私と友達になってくれてありがとうございました」
「待てアーシア!」
「行ってはダメです!」
その叫びも虚しく、アーシアは秋風とレイナーレの方へ進み出す。
「いい子ねアーシア。それでいいのよ。問題ないわ。今日の儀式であなたの苦悩は消え去るのだから」
不吉極まりない単語、一誠はアーシアへ叫ぶ。
「アーシア!待てよ!俺達は友達だろう!」
「はい。こんな私と友達になってくれて本当にありがとうございます………さようなら」
別れの言葉を告げられ、アーシアの手を取る秋風。
そしてレイナーレ、秋風はアーシアと共に空の彼方へと消え去る。
あとに残されたのは黒い羽とあたりに舞う花粉だけだった。
一誠は生まれて初めて自分の非力さを呪い、真とネクスは悔しさの末に拳を地面に叩き付けた。
「やっと、やっと『
教会に着いたレイナーレは歓喜しながら儀式の準備に取り掛かる。
カラワーナとミッテルトも地位を約束されたので張り切って準備を進める。
「ふん、そうやって喜んでいるが良い。彼女は今夜、救われるのだから………我々『デットマンズ』の新たな仲間としてね」
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